英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第200話
同日、16:10――――
そして―――会議の後半はメンフィルからは貴族派と革新派を纏めきれず、メンフィルをも巻き込んだ内戦を引き起こした事や1度目のユミル襲撃からそれなりの猶予期間が与えられていた上戦争勃発を3度も警告されていたにも関わらずメンフィルの要求に応えなかった所か謝罪や説明すらしなかった事、クロスベルからは”通商会議”で暗躍を行い、意図的にクロスベルの安全保障に問題がある事にしようとした事や”列車砲”をガレリア要塞に搭載してクロスベルの民達の命を脅かしたオズボーン宰相の行為を見咎める事もしなかったユーゲント三世やエレボニア帝国自身への非難の言葉が次々と出され…………その度にオリヴァルト皇子やアルフィン、クレア大尉は謝罪の言葉を述べ、オリヴァルト皇子達に同情したアリシア女王やクローディア姫、アルバート大公がメンフィルとクロスベルのVIP達に対して取り直しをしている中、エイドスは会話に入る事なく黙して静かな表情で見守り続けていた。
~エルベ離宮・紋章の間~
「色々と話が逸れてしまったが……エレボニア帝国はどのような理由でメンフィルとクロスベルを納得させて、エレボニアが国として存続できるようにするつもりだ?俺達クロスベルもそうだが、実際に領地を襲撃されたメンフィルもそう簡単に許すつもりはないと思うぞ。」
「既に説明したと思うがメンフィルの民達は2度のユミル襲撃とエリス嬢誘拐に相当な怒りを抱いている上、民達には秘匿している”ケルディック焼き討ち事件”にメンフィル皇家の者達の大半の者達はエレボニア帝国の愚かさや無力なエレボニア皇家に対して怒りを通り越してもはや呆れを感じている。幾ら寛大な心を持っている我らといえど生半可な理由では許さんぞ。」
「ヴァイスハイト陛下、リフィア殿下。クロスベルとメンフィルの怒りは理解できますが、民に罪はありません。祖国が滅亡した事に民達の心にも影を落とすと思われます。民達の為に国家を立ち上げたクロスベルやエレボニア帝国と戦争状態になってもなおエレボニア帝国の難民達を保護しているメンフィルの貴方方ならば民達はエレボニア帝国滅亡を望んでいない事は理解していると思われるのですが?民達の心を理解しているのならば民達の為にもエレボニアは存続させた方がよいのでは?」
ヴァイスとリフィアの言葉を聞いたアルバート大公は静かな表情で指摘した。
「民達の為、か。―――だがその民達がエレボニア帝国の滅亡を受け入れているのならばどう指摘するつもりだ?例えばケルディック。ケルディックはまだエレボニア帝国と戦争状態になっていないにも関わらず様々な事情によってメンフィル領となった領地だが、メンフィル領となった事にケルディックの民達は反発する所かメンフィルの新たな統治を歓迎していたと聞いている。」
「なお臨時領主達の方々はケルディックの民達の纏め役であるオットー元締めや彼の部下の方々と直に顔を合わせて意見をする機会を何度も与えていますが、今まで陳情や不満の意見は出なかった所かケルディックをより豊かにする為に協力的な意見を出していたとの事で、更に遊撃士協会にケルディックの民達の心情調査の依頼をした所民達全員がメンフィル領となった事を受け入れているという結果が提出されました。」
「当時ケルディック支部に所属していたファラ・サウリン卿達もイリーナ皇妃が仰っていたケルディックの臨時領主であられるサフィナ元帥閣下達の依頼を受けたと報告に上がっているのですが?」
リウイとイリーナの話に続くようにエリゼはエステル達に視線を向けた。
「え、えっと、それは…………」
「僕達は安全保障をする立場の為意見をする資格はありませんが、この場で事実を口にしてもよろしいのでしょうか?」
突然話を振られた事にミントが答えに困っている中、ヨシュアはアリシア女王を見つめて尋ねた。
「ええ、構いません。」
「……わかりました。イリーナ皇妃の仰る通りケルディックの人々からメンフィル領である事に不満を持つ意見は全く出ませんでした。メンフィル領となった事に最初は戸惑っていたそうですが、メンフィルの統治によって税金が安くなる等生活が楽になり、また夜間も見回りをするメンフィル兵達の真面目な警備や横暴な態度を取っていた領邦軍と違い、真摯な態度で接してくれるメンフィル兵達に安心しているとの事です。」
「なお郊外で農業を営む農家の民達の心情調査も行いましたので言葉通り”ケルディックの民全員”の心情調査を行いましたわ。」
「第三者の立場であり、国家権力に左右されない民達を守る立場である遊撃士協会の報告なのだから、信憑性はあると思うのだが?」
「む、それは…………」
エステルとフェミリンスの話を聞いたリウイに促されたアルバート大公は考え込んだ。
「……ケルディックの場合はたまたま前領主であったアルバレア公が重税を課す等民達がエレボニア帝国に対して不満や怒りを抱くような統治をしていた為、そのような結果になってしまったと思われるので、エレボニアの民達全員がエレボニア帝国滅亡を受け入れると判断するのは早計だと思われるのですが。」
「その意見には一理ありますが内戦を引き起こした貴族達や皇帝でありながら内戦終結に何も貢献しなかったユーゲント三世を始めとした多くのアルノール家の方々に対して民達は怒りや不満を持っていると思われるのですが?」
「そ、それは……し、しかしオリヴァルト殿下やアルフィン殿下は内戦終結に貢献しましたし、エレボニアの貴族全員が内戦に加担した訳ではありません!その例としてアルゼイド子爵閣下は内戦を終結させる為にオリヴァルト殿下に協力していたと聞いています。それに皇家への不満や怒りはあったとしても祖国の存亡の危機になると話が別だと思われます!」
エルミナの意見に対してクローディア姫は真剣な表情で反論し
「フム……先程から意見を挟む事はせず静観されていたようですが……貴女方はエレボニアの存亡についてどうお思いですか?」
考え込んでいたアルバート大公はエイドスとセルナート総長に視線を向けた。
「……私は人々が平穏な暮らしができるのであれば正直な所どちらでも構わないと思っています。ただ祖国を思う民達の気持ちを考えればエレボニアを存続させる事を考慮に入れるべきだとも思っています。―――ただし、内戦を引き起こしてしまい、他国まで巻き込んだ上、その巻き込んだ相手であるメンフィル帝国から謝罪や説明の猶予期間を与えられていたにも関わらずメンフィル帝国に謝罪や説明を行わなかったエレボニア皇家である”アルノール家”は何らかの形で責任を取る必要があると思っています。」
「七耀教会は言うまでもなく”空の女神”を崇める組織。”空の女神”であるエイドス様の御言葉こそが何よりも優先すべき事です。よってエイドス様の意見こそが我ら七耀教会の総意でもありますので七耀教会はエイドス様の意見に同意しているものとみなしてください。」
「……確かに女神様の仰っている事も一理ありますな……今までの話によると唯一幽閉の身でなく、高速巡洋艦―――”カレイジャス”を使ってエレボニア帝国内で活動していたオリヴァルト殿下に関しましてはメンフィル帝国に謝罪と説明が可能な状況であったとの事ですし。」
「「………………」」
エイドスとセルナート総長の意見を聞いたアルバート大公は納得した様子で頷き、その様子を見守っていたクローディア姫は不安そうな表情をし、ユーディットは複雑そうな表情でオリヴァルト皇子達を見つめ
「エイドス様はアルノール家は責任を取るべきだと仰っていますが、それについてはどうお思いなのでしょうか?」
アリシア女王は真剣な表情でオリヴァルト皇子達に問いかけた。
「……その件についてだが女神の仰る通り、内戦の件を含めた様々な問題にエレボニア皇家であるアルノール家の不甲斐なさも関係している事は私達も理解している。よって父上――――ユーゲント・ライゼ・アルノールがアルノール家を代表して責任を取る事にした。」
「え……ユ、ユーゲント陛下がですか?」
「……どのような責任の取り方をするおつもりなのですか?」
オリヴァルト皇子の答えを聞いたクローディア姫は戸惑い、イリーナは真剣な表情で尋ねた。
「もしエレボニアが国として存続する事ができた際、父――――ユーゲント・ライゼ・アルノールは責任を取る形で皇帝の位から退位する事が決定しています。」
「何と……!?」
「ええっ!?ユ、ユーゲント陛下がですか!?で、でもそうなるとエレボニアは皇帝がいなくなるという事態に陥ってしまいますが……!?」
「……まさかセドリック皇太子かアルフィン皇女がユーゲント陛下の跡を継いでエレボニア皇帝に即位するのでしょうか?」
アルフィンの言葉を聞いたアルバート大公とクローディア姫は驚き、アリシア女王は信じられない表情をした後問いかけた。
「セドリック殿下が即位するのはまだ早い為、他の方にセドリック殿下が即位できる程成長するまでの間、一時的に他の方にエレボニア皇帝の代理を務めて頂くという案が上がっています。」
「なっ!?エレボニア皇帝の代理ですと!?」
「そ、そのような前代未聞な事をどなたが務めるのですか……!?」
クレア大尉の説明を聞き、信じられない思いでいるアルバート大公とクローディア姫はそれぞれ驚きの表情で声を上げた。
「……それを説明する前にメンフィル帝国とクロスベル帝国に情状酌量を認め、エレボニア帝国が国として存続できる”理由”を提示させて頂いてもよろしいですか?」
「フム?まさか今回の会議の”本題”に関係しているとはな。まあ、言ってみるがよい。」
(ついに”あの件”を持ち出すのですね、兄様……)
リィンの申し出を聞いたリフィアが続きを促している中、エリゼは静かな表情でリィンを見つめ
「メンフィルとクロスベルに情状酌量を認め、エレボニアが存続できるように領地の一部を返還して頂きたい理由……―――それは”戦争回避条約の救済条約”の対象者である彼―――リィン・シュバルツァーに我が妹アルフィンが嫁いだ際にメンフィル皇家とクロスベル皇家とも親類関係になるので、それを理由に情状酌量を認めて頂きたい。」
リフィアの申し出に対し、オリヴァルト皇子が答えた。
「なっ!?救済条約によってアルフィン殿下がそちらにいる彼――――リィン・シュバルツァーと結ばれる事でメンフィルとクロスベルの両皇家とも親類関係になるとはどういう事なのですか?」
オリヴァルト皇子の答えを聞き、唯一事情を知らないアルバート大公は信じられない表情でオリヴァルト皇子達を見つめて問いかけた。
「言葉通りの意味ですわ。我が夫であるリィンさんは他にも多くの女性達と婚約していまして。その中にメンフィル皇家である”マーシルン家”と親類関係である”蒼黒の薔薇”と名高いプリネ皇女殿下の親衛隊長にして専属侍女長――――ツーヤ・ルクセンベール卿の双子の妹であるセレーネ嬢とクロスベル皇帝の一人であるヴァイスハイト陛下のご息女に当たるメサイア皇女殿下がいるのですわ。」
「なお、リィンさん達の婚約の件はメンフィル、クロスベルの両皇家からもそれぞれ正式に許可を頂いております。」
「なっ!?リウイ陛下、ヴァイスハイト陛下。今の話は真実なのでしょうか?」
アルフィンとクレア大尉の説明に驚いたアルバート大公はメンフィルとクロスベルのVIP達を見回して尋ねた。
「―――事実だ。リィン・シュバルツァーとセレーネ・アルフヘイム・ルクセンベールの婚約はメンフィル皇家も正式に認めている。無論、セレーネの婚約者であるリィン・シュバルツァーに他に婚約者がいても特に問題とするつもりはない。貴族の当主になる者が跡継ぎを多く残す為に多くの女性を娶る事等一般的によく聞く話の上、平民も重婚が禁じられている訳ではないしな。」
「クロスベル皇家もメンフィル同様我が娘メサイアとリィン・シュバルツァーの婚約を正式に認めている。……だが、アルフィン皇女。一つだけ質問をしても構わないだろうか?」
リウイの後に答えたヴァイスは静かな表情でアルフィンを見つめて尋ねた。
「なんでしょうか。」
「先程リィンの事を”我が夫”と言っていたが、あれはどういう意味だ?」
「そのままの意味ですわ。わたくしは”既にリィンさんと結婚しています”。勿論”救済条約”の通り、シュバルツァー家の跡継ぎであるリィンさんに降嫁していますので、まだ正式な手続きはしていませんが今のわたくしは厳密に言えばエレボニア皇女ではなく、リィン・シュバルツァーの妻――――”アルフィン・シュバルツァー”ですわ。」
「なお、お二人の簡易的な結婚式を行ったユミルの領主であるシュバルツァー男爵家にはお二人が夫婦の関係である事を示す戸籍も既に登録してありますし、二人が夫婦の関係である事を証明する戸籍証明書もこの場に持ってきてあります。」
「ええっ!?」
「なっ!?」
「なぬっ!?」
「………………」
「!!!!!???」
アルフィンとクレア大尉の口から出た驚愕の事実にクローディア姫とアルバート大公、そしてリフィアは驚きのあまり声をあげ、アリシア女王は呆けた表情でアルフィンを見つめ、エリゼは目を見開いて混乱した様子でリィンとアルフィンを見つめ
「ええええええええええええっ!?」
「あ、あんですってー!?」
ミントとエステルも驚いているクローディア姫達に続くように驚きの表情で声をあげ
「二人とも。気持ちはわかるけど声を上げないでよ……」
「会議の邪魔をしてしまい申し訳ありません。私達の事は気にせず、続けてください。」
ヨシュアは呆れた表情で二人に指摘し、フェミリンスは頭を下げてアリシア女王達に謝罪した。
~待機室~
「ついに”切り札”を出したわね……!」
「ここが正念場だな……」
一方待機室に設置されてある映像端末で会議の様子を見守っていたサラ教官とユーシスは真剣な表情をし
「ゴクリ……!」
「女神様……何とかエレボニア帝国を助けてください……!」
「フフ、その女神自身が会議に参加しているが……」
マキアスは思わず息を呑んで端末に集中し、強く祈っているエリオットの言葉を聞いたガイウスは苦笑した。
「…………」
「エリス、どうしたの?」
端末を見ずに考え込んでいるエリスに気付いたアリサは尋ねた。
「あ、はい……実はひめ―――いえ、アルフィン義姉様が今回の会議の数日前に私に1度目のユミル襲撃が起こる前にアルフィン義姉様を含めた三国の姫君と兄様の婚約が既に成立し、更にメンフィルとクロスベルの皇族の方達もその時点で三国の姫君と兄様の婚約がされている事を黙認しているという気付き、それを理由にすれば情状酌量を認めてもらえる可能性は高くなると仰っていたのです。」
「ええっ!?1度目のユミル襲撃が起こる前という事はエリスお姉様達が誘拐される前の時点という事ですよね!?」
「あの事件が起こる前に既に婚約がされているとは一体どういう事なのだ?」
エリスの話を聞いたセレーネは驚き、ラウラは不思議そうな表情で尋ねた。
「わかりません……”秘策中の秘策なので当日までの秘密”と仰って教えてくれませんでしたし……」
「アンタなら何か知っているのじゃないかしら?アンタは会議の結果も知っているんでしょう?」
「そ、そう言えばゲルドさんには予知能力があるのでしたね……」
セリーヌの話を聞き、ゲルドの能力を思い出したエマはゲルドを見つめたが
「フフ、すぐにわかるわよ。それに当人のアルフィンが黙っているのだから、私が言う訳にはいかないわ。」
「え~、そんな言われ方をしたら余計気になるよ~!」
「ゲルドだけわかっているなんてなんかズルい。」
ゲルドは答えを誤魔化し、ミリアムとフィーは不満そうな表情でゲルドを見つめていた。
「……………………」
「リ、リィンさんとアルフィン皇女が”既に結婚している”って…………」
「あ、ありえねえ……」
「フフ、まさかここであの件を持ち出してくるとはね♪」
同じ頃別の待機室で映像端末を見ていたロイドは口をパクパクさせ、エリィとランディは信じられない表情をし、ワジはからかいの表情をし
「というか、お二人の年齢で結婚はできるんですか?」
「えっと……確か七耀教会が定めている結婚の最低年齢は16歳からのはずだ。」
目を丸くして映像を見ていたティオの疑問を聞いたロイドは考え込みながら答えた。
「リィンさんは17歳でアルフィン皇女は15歳のはずだから、まだ結婚はできないはずだけど…………―――あ。まさか……!」
「七耀教会の規則を簡単に変える事ができる上、”特例”として認めるように七耀教会に直接命令できる超反則的な存在である自称”ただの新妻”さんの仕業ですか?」
「フフ、その通り♪さすがに”空の女神”直々の”勅命”を守らない訳にはいからないからねぇ?」
考え込んでいたエリィはある事に気付いて目を見開き、ティオは疲れた表情でワジに尋ね、尋ねられたワジは笑顔で答えた後口元をニヤニヤさせながら端末を見つめていた。
~紋章の間~
「その……随分と思い切った事をされたのですね。一体いつ籍を入れられたのですか?」
一方目を丸くしてアルフィンを見つめていたイリーナは戸惑いの表情で尋ねた。
「わたくしがリィンさんと籍を入れたのは去年の12月31日の………いえ、今年の元旦ですわ。なおリィンさんと籍を入れる際、”偶然にも”ユミルに滞在していたエイドス様のご厚意により、エイドス様自らにわたくしとリィンさんの結婚を祝福して頂きました。」
「え……め、女神様直々にですか!?」
「今の話は本当なのでしょうか?」
アルフィンの説明を聞いたユーディットは信じられない表情でエイドスを見つめ、驚きの表情で話を聞いていたエルミナは気を取り直してエイドスを見つめて尋ねた。
「ええ。ユミルやシュバルツァー家の方々にはお世話になりましたからね。せめてもの恩返しに私自らがお二人の結婚を祝福しました。」
「確か七耀教会の規定では結婚は16歳からだと記憶しているが……その点については七耀教会はどう考えている。17歳のリィン・シュバルツァーはいいとしても、15歳のアルフィン皇女はまだ七耀教会が定めた結婚の最低年齢に達していないぞ。」
エイドスの答えを聞いたリウイは静かな表情でセルナート総長に意見を求めた。
「我々七耀教会が崇めている”空の女神”より規定年齢に達していないお二人の結婚を認めるように”勅命”をされていまして。その為アルフィン皇女は規定年齢に足りていませんが”特例”という形でお二人の結婚は正式に認定されています。」
「なるほど……確かに”空の女神”の”勅命”ならば”空の女神”を崇めている七耀教会が二人の結婚を認めない方がありえないな。」
「……アルフィン皇女殿下。何故そんなにも早く兄さ―――いえ、リィン様に降嫁したのでしょうか?」
セルナート総長の説明にヴァイスが納得している中、混乱から立ち直ったエリゼがアルフィンを見つめて尋ねた。
「それは勿論”戦争回避条約”や”救済条約”を提案して頂いたメンフィル帝国にエレボニア帝国の”誠意”を示す為とエレボニア帝国は本気でメンフィル帝国に”償い”をしたいという気持ちを伝える為ですわ。”救済条約”を提案してくださったエリゼさんには今でも感謝しています。」
「い、いえ。私の事はお気になさならないで下さい。」
アルフィンに頭を下げられたエリゼは戸惑いの表情で答え
「まさか”救済条約”を逆手に取ってくるとは……―――考えたな。」
「フフ、さすがの私達もお二人が既に結婚しているとは想像していませんでしたね。」
「ぬう………まさかこんな不意打ちをしてくるとはな。」
アルフィンの説明を聞いたリウイは真剣な表情でオリヴァルト皇子達を見つめ、イリーナは苦笑し、唸り声を上げたリフィアは疲れた表情で呟いた。
「―――それと。”救済条約”の件とは別になりますが、1度目のユミル襲撃の事件が起きる前の時点でわたくしを含めた三国の姫君とリィンさんの婚約がされ、またそれぞれの国の皇族の方々も実質わたくし達の婚約を認めているも同然の状況でした。なのでどうかその点も踏まえて考慮をお願いしますわ。」
するとその時アルフィンがオリヴァルト皇子達すらも予想していなかった言葉を口にした。
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