英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第197話
~エルベ離宮~
「貴方達が”Ⅶ組”の方達ですか?」
ヴァイス達がいる部屋の前で見張りをしていたアルは自分に近づいてきたリィン達に尋ね
「はい。」
(”蒼銀の魔剣姫”アル・ノウゲート……”六銃士”の一人であり、”黄金の戦王”と同じ元クロスベル警察の上層部だった方です。)
(”六銃士”……!)
(………確かに彼女も相当な使い手だな。)
(?あれ、耳が長い……と言う事は異種族の人?)
(恐らくそうだろうな。)
クレア大尉の小声の説明で目の前の人物が”六銃士”の一人である事にユーシスは驚き、アルの強さを感じ取っていたラウラは真剣な表情をし、ゲルドの疑問にガイウスは静かな表情で答え
(え……まさかアル様!?一体何故ルーンエルフに……!?)
(?メサイア、知っているのか?)
アルを見て驚いている様子のメサイアの念話を聞いたリィンは尋ねた。
(はい。……ですが私が知るアル様は”魔導功殻”という意志を持った人形なんです……)
「へっ!?」
メサイアから知らされたアルの正体に思わず驚いたリィンは声を上げて驚いた。
「リィン、どうしたの?」
「?私を見て驚いているようですが……私について何か気になる事があるのですか?」
リィンの様子を見たゲルドは不思議そうな表情をし、アルはリィンの態度が自分の事である事を察していた為尋ねた。
「その………俺が契約している異種族の一人――――メサイアが貴女の事を知っているようでして。それでメサイアが知る貴女と今の貴女の種族が違う事に驚いていたんです。」
「何?」
「種族が違う……一体どういう事だ?」
リィンの答えを聞いたユーシスとガイウスはそれぞれ不思議そうな表情をした。
「メサイア……ヴァイス達の話にあった並行世界のヴァイスの娘ですか。確かに当時の”私”を知る者が今の私を見れば驚くかもしれませんね。―――ですが今は私の事より優先すべき事があるのでは?」
「!はい。」
「どうぞ、中へ。」
「―――失礼します。」
そしてリィン達が部屋に入ると部屋の中にはヴァイス達に加えてエリィもいた。
「あら、貴方達は……」
リィン達の入室にエリィは目を丸くし
「エリィさん!?特務支援課の貴女がどうしてこちらに……」
リィンは驚きの表情で尋ねた。
「……私は”特務支援課”解散後、行政・外交方面の道を歩むつもりでね。局長―――いえ、ヴァイスハイト陛下のご厚意で”社会勉強”として今後のクロスベルの政治方針等を色々聞かせて頂いていたの。」
「え…………」
「”特務支援課”が解散する……一体どういう事なのですか?」
エリィの説明を聞いたリィンが呆けている中、クレア大尉は真剣な表情で尋ねた。
「――そのままの意味だ。クロスベルが生まれ変わった事で特務支援課――――ロイド達も生まれ変わったクロスベルでのそれぞれの自分達の”道”を歩む為に元々刑事志望だったロイドを除いて全員クロスベル警察を退職するとの事だ。よって”特務支援課”も解散する事となった。」
「とはいっても今すぐの話ではないわよ?」
「自分達の”道”………」
「フフッ、また先を越されたな……」
「ああ……俺達”Ⅶ組”は学院を去った後のそれぞれの”道”を決め切れていないしな。」
「……士官学院を去った後のオレ達がそれぞれにしかできない事か……」
ヴァイスとエリィの説明を聞いたゲルドは呆け、苦笑するラウラの意見にユーシスは静かな表情で頷き、ガイウスは考え込んでいた。
「ま、そんな先の未来を考えるよりまずは目の前の未来――――滅亡の危機に陥っているエレボニアを何とかするのがお前達が今為すべき事ではないのか?」
「!それは…………」
ヴァイスの言葉に仲間達と共に我に返ったリィンは真剣な表情になり
「ヴァイス様…………」
「………………」
「―――正論ですね。時間は有限です。まずは座って下さい。」
ユーディットが複雑そうな表情でヴァイスを見つめている中エリィは複雑そうな表情でリィン達から視線を逸らし、エルミナは静かな表情でリィン達を促し、リィン達はそれぞれソファーに座った。
「さてと……”本題”に入る前にエルミナ、ユーディ。一部の者達とは久々の再会にもなるのだから、まずは挨拶とお前達のことを知らない者達に対する自己紹介をしたらどうだ?」
「……余り時間を無駄にしたくはないのですが、仕方ありませんね。―――既に私の事も知っているとは思いますが改めて名乗らせて頂きます。私の名はエルミナ・エクス。ギュランドロス様に仕える”三銃士”の一人にしてそこの女にだらしない皇の正妃になる予定の者です。」
エルミナの自己紹介を聞いたリィン達はそれぞれ冷や汗をかいて表情を引き攣らせ
「エ、エルミナ皇妃殿下……」
「え、えっと……」
「あのな……もうちょっとマシな言い方はないのか?」
エリィもリィン達と共に冷や汗をかいて表情を引き攣らせ、ユーディットは困った表情をし、ヴァイスは疲れた表情で指摘した。
「私は事実を言ったまでですが?」
「フフ、そういう厳しい所も相変わらずですね、エルミナさん。」
「え……」
「ガイウスの知り合いなの?」
ジト目でヴァイスを見つめるエルミナを苦笑しながら見つめて呟いたガイウスの言葉を聞いたリィンは目を丸くし、ゲルドは尋ねた。
「ああ。エルミナさんもルイーネさん同様以前ノルドの地に僅かな期間だけ滞在していた四人の内の一人だ。」
「そして”六銃士”の一人でもあるのか……」
「これで我らは”六銃士”の内4人と出会った事になるが……残りの二人は一体どのような人物なのだ……?」
ガイウスの話を聞いたユーシスとラウラはそれぞれ真剣な表情でエルミナを見つめていた。
「後の二人……ギュランドロスさんとパティルナさんか。二人も凄まじい使い手で、豪快な性格をしている人達だ。」
「加えてその二人の戦闘能力は”六銃士”の中でも特に高く、たった二人で第四機甲師団を翻弄し、更にはクレイグ中将をも単騎で制圧しています。」
「なっ!?クレイグ中将をですか……!?」
ラウラの疑問に答えたガイウスとクレア大尉の説明を聞いたリィンは驚いた。
「そう言えばそんな事もあったな……俺もあの時の映像を見せてもらったが”帝国最強”を誇る正規軍の部隊が面白いように翻弄されていたが……さすがはギュランドロスと”三銃士”と言った所か。」
「……別に。あの程度の相手、大した存在ではありませんでした。まともな戦術も使わずただ数に任せて力押しに攻めて来るだけでしたから、対処も簡単でこちらの思い通りに行き過ぎて正直、拍子抜けでした。勿論、合同演習後の”氷の乙女”―――いえ、”鉄血の子供達”の行動も含めてですが。」
「………ッ……!」
「合同演習後のクレア大尉の行動……ですか?」
「……!まさか……」
ヴァイスの質問に静かな表情で答えたエルミナに見つめられたクレア大尉は唇を噛みしめて辛そうな表情をし、エリィは不思議そうな表情をし、ある事に気付いたユーディットは真剣な表情をし
「クレアさんが何かしたの?」
ゲルドは不思議そうな表情で尋ねた。
「ええ。元々”鉄血宰相”は”D∴G教団”の事件の影響で空いたクロスベル警備隊並びにクロスベル警察の上層部の椅子に座った私達――――”六銃士”が汚職を持ちかけてきた帝国派議員達を次々と逮捕する等、”宗主国”の一つであるエレボニアに真っ向から逆らう行動をしていた事が気に入らないようでして。エレボニア帝国の”力”を示して私達に釘を刺すか、もしくは”事故”で私達を亡き者にするつもりだったようですが……結果は自治州の警備達に帝国軍が惨敗するという失態を作ってしまい、その失態を隠す為に”氷の乙女”は演習後ギュランドロス様達の元を訪問し、第三者に演習の内容を漏らさないように”口止め”しようとしていたのです。」
「あの合同演習の後にそんな事があったのですか……」
「やはりそうでしたか……」
「それは…………」
「………………」
「フン、”脅迫”の間違いではないのか?」
エルミナの話を聞いたエリィが驚いている中ユーディットは納得した様子でクレア大尉を見つめ、ラウラとリィンは複雑そうな表情をし、ユーシスは呆れた表情で呟き
「……はい。ユーシスさんの仰る通りです。」
「クレアさん……」
「………………」
辛そうな表情で呟いたクレア大尉をゲルドは心配そうな表情で見つめ、ガイウスは重々しい様子を纏って黙り込んでいた。
「―――まあ、その結果脅迫するつもりが逆に脅迫され、”通商会議”の失態を作る羽目になったようですが。まさに”因果応報”ですね。」
「……返す言葉もございません。あの時ギュランドロス陛下達に失礼な態度で接してしまった事に今でも後悔しています……申し訳ございませんでした……」
エルミナの言葉を聞いたクレア大尉は辛そうな表情で頭を下げ
「後悔、ですか。エレボニア帝国が今の状況にならなければ、そんな気持ちは湧いて来なかったのでは?むしろギュランドロス様達にまんまとしてやられた事によってギュランドロス様や私達に対して憎悪を抱いているのでは?」
「そのような畏れ多い事は思っておりません……!」
絶対零度の視線で自分を見つめるエルミナの指摘に対し、必死の表情で反論した。
「エルミナさん……もうそのくらいにしてくれないでしょうか……?当時はわかりませんが、今のクレア大尉の気持ちは本物だとオレは思います。」
「……そうですね。ガイウスの言う通り、過去に拘りすぎていた私も大人気ありませんでした。申し訳ございませんでした、クレア大尉。」
「いえ……どうか私の事はお気になさらず。」
「ほう……意外だな。お前がギュランドロス達以外の他者の取り直しに答えるなんて。」
ガイウスに取りなされた後クレア大尉に謝罪するエルミナの様子を見たヴァイスは目を丸くし
「貴方は私を何だと思っているのですか。」
ヴァイスの言葉を聞いたエルミナは顔に青筋を立ててヴァイスを睨み、その様子を見守っていたその場にいる全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「フフ…………―――エルミナさん、挨拶が遅れましたがお久しぶりです。それとご結婚、おめでとうございます。」
「……どうも。貴方もこの世界情勢で活動して生き残り、よく”ここまで”来る事ができましたね。ギュランドロス様は貴方はいずれ大きな戦いに巻き込まれて成長すると突拍子の無い事を言っていましたが、どうやらギュランドロス様の妄言が現実となったようですね。」
「相変わらずあの男の勘の鋭さは”化物”じみているな……」
ガイウスに祝福された後ガイウスを称賛しているエルミナの話を聞いたヴァイスは苦笑した。
「その人ももしかして”予知能力”があるの……?」
「そんな大層なものではありません。あの方は基本馬鹿かつ非常識の中の非常識で、常人では理解できない―――いえ、理解もしたくない考えをお持ちなのです。」
「そうだな、それには同意だな。何せユン・ガソルの国王だった時も”バカ王”という二つ名があった上、敵国であったメルキアの俺が率いていた軍―――センタクス軍に入隊するという非常識過ぎる行動をした男だしな。」
ゲルドの疑問に対して答えたエルミナのギュランドロスに対する毒舌や罵倒も混じった答えとエルミナの答えに同意したヴァイスの話にリィン達は再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせ
(ほ、本当にギュランドロス司令に仕えていた家臣だったのかしら……?というか敵国の軍隊に一国の王が入隊するなんて滅茶苦茶よ…………)
(”六銃士”の一人にしてもう一人のクロスベル皇帝……一体どんな方なのかしら……?)
エリィは冷や汗をかいて疲れた表情をし、ユーディットは戸惑いの表情で考え込んでいた。
「ユーディ、お前の自己紹介はまだだったな?」
「あ、はい。――――初めまして、”Ⅶ組”の皆様。私の名はユーディット・カイエン。名前から既に察していると思いますが”貴族連合”の”主宰”であったカイエン公爵の娘です。父の愚行によって皆様に大変迷惑をかけた所か、エレボニアを存亡の危機に陥らせた事……誠に申し訳ございませんでした。特にリィンさんを含めたシュバルツァー家の方々にはユミル襲撃やシュバルツァー家のご息女であるエリス嬢の誘拐と決して許されない所業を父が実行してしまい、何とお詫びをすればいいのやら…………」
ヴァイスに促されたユーディットは自己紹介をした後リィンを見つめて申し訳なさそうな表情をし
「いえ、誘拐されたエリスはメンフィル帝国によって救出されましたし幸いにも郷の被害も大した事はなく、犠牲者も出ませんでした。俺や父達はもう気にしていませんのでどうかお気になさらないで下さい。それにメンフィル帝国に捕らわれたカイエン公爵閣下もメンフィル帝国によって今まで犯した罪を命と引き換えに償わさせられるとの事ですし、これ以上カイエン公爵家の方々を責めるつもりはありません。」
リィンは静かな表情で答えた。
「……寛大な心遣い、ありがとうございます。その言葉を聞けて肩の荷が少しだけ降りました。ラウラさんとユーシスさんはお久しぶりですね。」
「はい。1年ぶりになりますね。」
「……お久しぶりです。その、メンフィル帝国に捕らわれた父君に関して何とお悔やみを申し上げればいいのか言葉が出て来ず、申し訳ありません……」
ユーディットに視線を向けられ、ラウラと共に会釈をしたユーシスは辛そうな表情をした。
「父の事を気にする必要はありませんのでどうか私の事は気にしないで下さい。愚かにもユーゲント陛下達を始めとしたエレボニア皇家の方々を幽閉した所か、内戦を引き起こして多くの民達を苦しめ、挙句の果てにはエレボニア帝国を存亡の危機に陥らせた”元凶”の一人である父はその命を持って償うべきだと私も思っています。」
「ユーディット殿…………」
「……仰る通りです。そしてそれは既にメンフィルによって処刑された父や兄にも言える事……」
「ユーシス…………」
ユーディットの答えを聞いたラウラが複雑そうな表情をしている中、辛そうな表情でユーディットの意見に頷いたユーシスをガイウスは心配そうな表情で見つめていた。
「……アルバレア公達の訃報も存じています。ユーシスさんにとってはお辛い結果となってしまいましたね……ルーファス卿のかつての婚約者として、お悔やみ申し上げます。」
「え……………」
「ルーファス卿の婚約者って……!」
「―――ありえない話ではありませんね。”主宰”であるカイエン公はルーファス卿に絶対の信頼を置いていた上、ルーファス卿は”四大名門”の”アルバレア公爵家”の跡取り。更に人柄、能力を考えて自身のご息女を嫁がせる相応しい相手としてルーファス卿しか適任者はいないと判断したのでしょう。」
ユーディットの口から出た意外な事実にユーシスは呆け、リィンは信じられない表情でユーディットを見つめ、クレア大尉は静かな表情で呟いた。
「という事はユーディットさんはもしかしたらユーシスのお兄さんの奥さんになっていたかもしれないの……?」
「内戦が”貴族連合”が勝利する形で終わっていたら恐らくそうなっていたでしょうね。」
「……………………その、父は兄上と貴女の婚約の件に関して存じていたのでしょうか?ユーディット嬢が兄上の婚約者であった話は俺も初耳なのですが……」
ゲルドの疑問に静かな表情で答えたユーディットを複雑そうな表情で見つめていたユーシスは気を取り直して尋ねた。
「……どうでしょう。父―――カイエン公とアルバレア公は主導権争いをし、互いにいがみ合っていた仲。父にとって邪魔な存在であるアルバレア公を何らかの形で排除した後ルーファス卿に公爵位を叙勲させ、内戦を終わらせた後に私を嫁がせると父本人が言っていましたから。」
「なっ!?という事はカイエン公は最初からアルバレア公を切り捨てるおつもりだったのですか……!?」
「………………貴重な話を教えて頂き、ありがとうございました。ユーディット嬢を含めたカイエン公爵家の未来が明るい未来となる事、心からお祈りしております。」
ユーディットの答えを聞いたラウラは驚き、ユーシスは複雑そうな表情で黙り込んでいた後静かな表情で会釈をし
「フフ、ユーシスさんも頑張って下さい。」
ユーディットは微笑みながら答えた。
「……ヴァイスハイト陛下。俺達をお呼びした理由をそろそろお聞かせ願いたいのですが……」
「おっと、そうだったな。お前達を呼んだ理由……―――それは今回の会議の結果によってエレボニアが国として存続できた際のお前達の意識調査をしようと思っていてな。」
リィンの質問を聞いたヴァイスは意外な言葉を口にした。
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