英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第194話
同日、15:10――――
やがて―――会議の前半が終了し、休憩時間に入る前に、報道陣による各国首脳への合同取材が行われた。そしてアリサ達は休憩の為に客室に向かったオリヴァルト皇子やリィン達の元へと向かい、話し始めた。
~エルベ離宮~
「つ、疲れた……」
「だ、大丈夫ですか、お兄様!?」
「リィンの気持ち、わかるよ……端末で会議の様子を見ていた僕達ですらも会議の雰囲気に呑み込まれていたしね。」
「会議のメンバーが凄まじすぎるからな……」
疲れた表情をしているリィンをセレーネが心配している中、エリオットとマキアスもそれぞれ疲れた表情をしていた。
「でもリィンの場合は慣れないと不味いわよね?」
「アハハ……リィンさんはクロイツェン州の統括領主になる事になっていますから、ああいった雰囲気の会議に否が応でも参加する事になるでしょうしね……」
「やれやれ、先が思いやられるわね。」
「う”っ……」
苦笑しているアリサとエマ、呆れた表情をしているセリーヌの言葉を聞いたリィンは冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「アルフィン義姉様は大丈夫ですか?」
「ええ、これでも皇族の端くれだから、ああいった雰囲気にもある程度慣れているわ。」
エリスに心配されたアルフィンは若干疲れを見せながらも答え
「それでもアルフィン、リィンみたいに疲れているように見えるけど………」
「……無理もない。会議に参加しているのは各国の王か、もしくは跡継ぎの方達ばかりだからな。」
「そこに加えて祖国の存亡がかかっているという重圧もあるのだから、ああいった雰囲気に慣れている殿下達でも精神を相当消耗しているだろう。」
心配そうな表情でアルフィンを見つめるゲルドの言葉にラウラとユーシスはそれぞれ重々しい様子を纏って呟いた。
「クレア、実際メンフィルとクロスベルは情状酌量を認めてくれそうな雰囲気かな~?」
「……まだ何とも言えません。前半は今までの詳細な経緯を説明するだけでしたから。」
「本番は後半の会議か。」
「そこでエレボニアの未来が決まるのか……」
ミリアムの疑問に静かな表情でクレア大尉は答え、フィーとガイウスはそれぞれ真剣な表情で呟いた。
「ハハ……だけどリベールの配慮かどうかはわからないけど、エステル君達があの会議に参加してくれたお蔭で少しだけ緊張が解けたよ。」
「エステル達が参加していた事にも驚きましたけど、あたしはエステルとミントがS級に昇格する事が内定している事に驚きましたよ……ハア、完全に追い抜かれてしまったわね……」
苦笑するオリヴァルト皇子に続くようにサラ教官は疲れた表情で呟いた。
「リィン、会議に参加して何か気付いた事とかないかしら?」
「気付いた事か…………そう言えば、あの会議に参加しているメンフィルとクロスベルからの代表者のメンバーを考えると、あくまで俺の予想だけどメンフィルとクロスベルは本気でエレボニアを滅亡させたいと思っていないかもしれない。」
アリサに尋ねられたリィンは考え込んだ後ある事に気付いて真剣な表情で答えた。
「え…………」
「に、兄様……?」
「……一体どういう事でしょうか?」
リィンの答えにアルフィンは呆け、エリスは戸惑い、クレア大尉は真剣な表情で尋ねた。
「……まず、クロスベル。ギュランドロス皇帝の名代としてエルミナ皇妃がヴァイスハイト陛下に同行して今回の会議に参加しているけど……以前俺達にエレボニアの現状を教える為にレン姫と共に現れたルイーネ皇妃ではなくエルミナ皇妃がヴァイスハイト陛下に同行してこの会議に現れた事に違和感を感じているんだ。」
「ルイーネさんではなくエルミナさんが現れた事に違和感……?」
「―――なるほどね。交渉事や論争に関して無類の強さを誇るあの女がせっかく制圧した自国の領地が減るかもしれないこの会議に参加していないのは確かにおかしいわね。」
「あ……!」
「た、確かに論争になる可能性が高いこの会議に論争に長けているルイーネ皇妃が参加していないのはおかしいですわね……」
リィンの疑問を聞いたガイウスが不思議そうな表情をしている中、何かに気付いたサラ教官の推測を聞いたアリサは声をあげ、セレーネは驚きの表情で頷いた。
「メサイアの話ではエルミナ皇妃の専門は”軍師”だそうだ。勿論外交関係に関する交渉事や論争もある程度できるそうだけど、それでもメサイアが知る交渉事や論争に長けている人―――例えばルイーネ皇妃みたいな人ほどではないって話を聞いた。」
「フム……メンフィルは何故だと思ったんだい?」
リィンの話を聞いて考え込んでいたオリヴァルト皇子は続きを促した。
「メンフィルは参加者の中にシルヴァン陛下がいなかった事です。」
「え……シルヴァン陛下がいない事がですか?」
「……シルヴァン陛下の名代として参加しているリフィア殿下に加えてリウイ陛下御自身が参加しているのですから、シルヴァン陛下の代わりは十分務まっていると思うのですが……」
リィンの答えを聞いたアルフィンは目を丸くし、クレア大尉は戸惑いの表情で問いかけた。
「リウイ陛下の正式な立場は”メンフィル大使”です。前皇帝である事からどうしてもリウイ陛下を”メンフィル皇帝”として見てしまいますが、”現メンフィル皇帝”はシルヴァン陛下です。しかもリウイ陛下御自身も仰っていたように、今のリウイ陛下は皇帝の位から退き、シルヴァン陛下を始めとしたメンフィル帝国政府の方針に滅多に口出しする事はせず、隠居の身です。当然リウイ陛下の正妃であるイリーナ皇妃もリウイ陛下同様隠居の立場です。」
「フム……確かにその通りだが、シルヴァン陛下の直系の娘であり、次期皇帝であるリフィア殿下が参加しているんだよ?」
リィンの説明に頷いたオリヴァルト皇子は続きを促した。
「確かにシルヴァン陛下の名代として跡継ぎであるリフィア殿下は相応しいですが普通、せっかく手に入れた自国の領土が削り取られるかもしれない会議に”皇”である自身は参加せず、自分の娘を代わりに参加させるでしょうか?」
「……一理あるな。」
「ああ。それにそもそも本気でエレボニアを滅ぼすつもりならオルディーネの件で我らに配慮して、わざわざ交渉をする機会等与えないと思うしな……」
リィンの推測を聞いたユーシスは静かに頷き、ラウラは考え込んでいた。
「更にリフィア殿下達の補佐役としてイリーナ皇妃の専属侍女長であるエクリア様は参加せず、エリゼが参加している事だ。」
「え……ね、姉様がですか?姉様はリフィア殿下の専属侍女長なのですから補佐役として参加して当然だと思うのですが……」
「そのエクリアって人が参加していない事はそんなにおかしいの?」
リィンの説明を聞いたエリスは戸惑い、ゲルドは不思議そうな表情で尋ねた。
「ああ……エクリア様は何といってもかの”姫将軍”。大国の王女であり、将軍でもあったのだから当然論争や交渉術もある程度修めていると思えるから、少なくてもまだ経験が浅いエリゼと比べればどちらが参加するべきかはわかるだろう?」
「確かに言われてみればそうですね……」
「もしかして妹を大切にしているアンタの動揺を誘う為じゃないかしら?」
リィンの話を聞いたエマは考え込み、セリーヌは真剣な表情で問いかけた。
「その可能性がないとは言い切れないけど、俺はあくまで補佐役だ。エレボニアの”本来の代表者”であるオリヴァルト殿下に対しては正直意味がないし、”通商会議”のメンフィルの参加者の事を考えると俺達がエリゼも参加する事を予想している事くらい簡単に想像できるだろうし。」
「う~ん、できれば後半の会議の前にメンフィルとクロスベルの思惑を知りたいけど、そんなの無理だよね……」
リィンの説明を聞いたエリオットが考え込んだ後疲れた表情で溜息を吐いたその時ミュラー少佐が入室した。
「――――少しいいか。」
「?どうしたんだい、ミュラー。」
「……先程メンフィルとクロスベル、それぞれの兵から伝言があった。メンフィルはリフィア皇女、クロスベルはヴァイスハイト陛下からそれぞれ休憩時間中、リィン・シュバルツァーと直接話がしたいと。なお、リフィア皇女と面会する際ゲルド・フレデリック・リヒターも同行させて欲しいとの事だ。」
「な――――!?」
「なっ!?リィンと!?」
「しかもどうしてリフィア皇女は私まで指名しているの?」
ミュラー少佐の話を聞いたリィンとマキアスは驚き、ゲルドは不思議そうな表情をした。
「ゲルドさんの場合はケルディックの件ではないでしょうか?」
「ゲルドの予知能力のお蔭で被害を最小限に抑えられたといっても過言ではないしな……」
「後はもしかしたら演奏会でケルディックの人々の心を癒した件かもしれませんわね。」
「ゲルドはそれでいいとしても……リィンは何でなのよ?」
エマとガイウス、セレーネの推測に頷いたアリサは不安そうな表情をし
「まさか後半の会議に邪魔だからリィンを拉致するとか?」
「さすがにそれはありえないわ。こんな公な場でそんな事をしたら大問題になるし、そもそもメンフィルにはエリゼがいるんだからさすがにエリゼもそんな事をされたら黙っていないはずよ。」
フィーの推測にサラ教官は静かな表情で否定した。
「フム……ミュラー、リィン君とゲルド君に同行者をつけてはいけないのかい?」
「同行者は4人程度なら構わないそうだ。……まあ、さすがにお前やアルフィン殿下は遠慮して欲しいとの事だが。」
「リィンさん、ゲルドさん。どうするのですか?」
二人の身を心配するかのようにアルフィンは心配そうな表情でリィンとゲルドを見つめて問いかけた。
「―――勿論申し出に応じるつもりです。二国の思惑を知れるちょうどいい機会ですし。」
「私も。ただ話をするだけだし。」
「それに予知能力を持つその娘が特に何も言わないんだから、そんなに警戒しなくていいんじゃないかしら?」
リィンと共に答えたゲルドに視線を向けていたセリーヌは仲間達を見回して助言した。
「リィンさん。もしよろしければ私も同行させて下さい。護衛の意味もありますが直接本人達から聞いた方が何かわかる事があるかもしれませんし。」
「わかりました、是非お願いします。」
クレア大尉の申し出にリィンは静かな表情で頷き
「……後皇族と会うんだから皇族に対して失礼を働かないメンバーを選びなさいね。特にミリアムとフィーは絶対に止めておきなさい。」
「えー、なんでだよ~!」
「サラも同じようなものだと思うけど。」
サラ教官の指摘にミリアムは不満そうな表情をし、フィーはジト目で指摘し
「フフ、そうなると皇族や貴族の方々に対する礼儀作法を習得している我らが同行した方がいいかもしれぬな。」
「ああ。」
「ううっ、私はできれば遠慮したいわ……」
苦笑するラウラの言葉にユーシスは静かな表情で頷き、アリサは疲れた表情で呟いた。
その後リィンはゲルド、クレア大尉、ユーシス、ラウラ、ガイウスと共に2国の代表者達に訪ねる事にし、まずリフィア達がいる部屋を訪ねた。
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