メン・タンク・マッチ:MTM
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初動編
MTM:初動編 第3話「戦備(そなえ)」
前書き
メン・タンク・マッチ:初動編の第3話を掲載開始しました。
初動編は、主人公達がメン・タンク・マッチに参加するまでの話です。
*メン・タンク・マッチ:MTMはまだ未完成の作品のため、全てを一度に掲載することは出来ません。また、各話の修正などで更新が遅れる上、更新期間がランダムで投稿することになります。一応、最終話まで投稿する予定です。
MTMは20話以上の物語を予定しています。
メン・タンク・マッチの説明会が終わってから数日が過ぎ、ゴールデンウィークに入った。
5月1日の昼過ぎ
学校が休みとなったことで学生はこの時期、遊んだり勉学や部活動などに励んでいるだろう。
そんな頃、天桐は一人だけ部屋で、苦難な状況に追われていた。
机の前に座り、シャーペン片手に何かをノートにメモをしている。
「まずは、メンツを集めないとなぁ」
メン・タンク・マッチの説明会後、説明が載っている資料を貰った。
そこには、メン・タンク・マッチに必要なことが多く書かれている。
「えーと、戦車に乗るメンバーに、戦車を整備出来る人、更にチームを管理補佐する人か。基本的に10人程度は居るみたいだが」
天桐はその資料を見ながら確認する。
「てか、俺以外誰もいね―。それに、戦車だって用意しないと」
頭を掻きながら苦い顔をしながら考える。
「ウーーン」
天桐は壁に掛かっているカレンダーを見た。そして、その隣に貼られている紙を見る。
紙には、予選7月24日と赤いマジックで書いてある。
説明会後、大会側から連絡があったのだ。大会の説明会に来た全員に伝えられたのは、大会の予選があるのは7月24日。
それまでに、出場するチームを作り、使用する戦車を用意しないといけない。
それを、あとおよそ3ヶ月しかない期間で。
「ぐ、ぐわぁー、問題多すぎだろ」
天桐は椅子から立ち上がると両手を上に伸ばす。
「やべー、最初の一歩目でハードな壁にぶち当たっちまった」
(メンバーをどうにか集めるしかないな。けど、男子で一緒に戦車道をやってくれる奴は居るんだろうか。うちの学校でそんなの居ればいいが。)
天桐はパソコンを開き電源をつける。
(メンバーも大事だが、それよりも戦車だ、戦車。)
パソコンの検索で戦車の入手法を調べ始める。
「さて、何から検索すれば、」
指でキーボードを押していき。
「戦車の販売はと」
検索すると、日本戦車道連盟のHPや戦車道販売専門店などの名前が出た。
1つ1つ調べていくと全て戦車道連盟の規制に則った戦車あパーツ部品などが主に売られていることが分かった。また、入手するには書類や許可申請がいるのもあるらしい。
天桐は次々と調べていると1つの名前が目に入る。
「せんしゃ倶楽部?」
調べると日本全国にある戦車関係から軍関係の物資や商品を扱っている店らしい。
「うちにあるかな」
店舗検索をする。
「近くに1件か」
店名をクリックすると住所が出た。
「歩いて1時間のところか。よし」
天桐は、着替えて外に出かけた。
家を出て40分程歩き、目的地に到着した。
天桐は目の前の建物に目をやる。
[せんしゃ倶楽部]と書かれた看板が下がっている2階建ての店だ。
「ここか」
自動ドアに向かって歩き、店に入る。
「いらっしゃいませ」
店に入ると店員に挨拶される。
天桐は、店内を見渡す。
始めてこういう店に入ったので少し新鮮な気分がした。
店を見ていくといろいろなものがある。
戦車の弾のようなもの、大きな歯車軍人の制服など見たことがないものばかりだ。
だが、いくら店の中を見ても、肝心な戦車の姿がどこにもない。
天桐はレジに居る店員のところに行き。
「す、すいません」
「はい、なんでしょうか?」
「この店に戦車って売っていますか?」
「えーと、今はうちにはありませんが、取り寄せなら出来ますよ」
「そ、そうですか。」
(よし、手に入るかもな。)
「宜しければ、カタログをご覧になりますか?」
「は、はい。お願いします」
そう頼んでカタログを見せてもらうことになった。
「こちらになります」
「ありがとうございます」
店員が持ってきたカタログを開いてみて戦車を見ていった。
中は種類やメーカー、国別などに分けられている。
1つ1つ戦車を見ていくが、次第に天桐の額には汗が溢れ始めた。
(よ、予想はしていたけど。)
その原因は、
(高―――。)
戦車の値段にあった。
(こんなにするの?え?無理だろ。)
どの戦車も想像以上の年段が書かれていた。
(くそ、ネットでちゃんと価格も見とけばよかった。)
それらの金額を見て驚く天桐には無理もないだろ。
それだけの金があれば、1年間は飯を贅沢できる上に、デザートや菓子もいっぱい買えると、天桐は思った。
すると、店員は天桐の様子を見て察したのか。
「まだ安いものもありますけど、」
ページを捲ってくれて店員が説明してくれる。
「こちらのは結構低価格なものとなっています」
そのページの値段を見ると、確かに先程のより安いものや、0が1つ少ないものもあった。
が、それでも十分高かった。
「失礼ですが、ご予算の方はどれくらいで?」
「え?えーと。・・・じゅ、十万ぐらい」
店員に所持金を聞かれ天桐は目を泳がせながら答える。
「・・・・・・。」
店員はただ無言でしかなかった。
自動ドアが開き
「有り難うございました」
天桐は、店の外に出た。
店に入って15分も経たずに店を出た。ここに来ての収穫は、
戦車は凄く高い、自分の手持ちの資金が遥かに少ない、など大会に出る以前の問題を背負っている自覚だった。
「はぁー」
もう深い溜息しか出ない。
「チクショウ。これじゃ、・・・出れないじゃないか」
天桐は俯き似ながら家へと足を動かした。
あれから天桐は、ちょうど店から家まで半分の距離のところを帰る途中だった。
店を出てもう20分は経つが、未だ俯いたまま歩いている。
「・・・どっかに戦車落ちてないかな」
そう呟いていると、3メートル先のゴミ捨て場にあるものが視界に入った。
戦車だ。
「あ、合ったー」
思わず天桐は大声を出し、駈け寄る。
「・・・あれ?」
よく見ると10センチ程度の小さなおもちゃの戦車だった。
「おもちゃか。・・・ハァーー」
一瞬で現れた希望の光、いや戦車が偽物だと知ったせいで、もう元気が完全に出なくなった。
そんな天桐の側を一台のバイクが通り過ぎた。
すると、そのバイクはブレーキをかけ、突然Uターンをして戻って来て天桐の後ろで停まった。
「おい、士良」
突然、呼ばれた天桐は振り返るとバイクに乗った加埜が居た。
「こんな所で何してんだ?」
「・・・加埜」
「うん?どうした?」
天桐の様子が少し変なのに気付いた加埜は、天桐を後部座席に載せ、走り始めた。
5分後、着いたのは加埜の喫茶店だった。
時刻は午後5時を過ぎていた。
加埜のおごりで苺のショートケーキとミルクティーを出してくれた。
「一体どうしたってんだよ。ゴールデンウィークにそんなしけた面してさ」
「あぁ、・・・ちょっとな」
天桐は元気がない状態でただそう答える。
そんな天桐を見た加埜は
「悩みがあるなら言ってみろ」
気になって仕方なく聞き出す。
それに対し、天桐は加埜に全部話そうか少し迷った。
話せば楽になるだろうと思ったが、これは、自分で解決しないといけない。それに相談してもどうにもならないだろうとも思ったのだ。
「いいから話せ。俺とお前の仲だろ」
「あぁ、・・・そうだな」
加埜は、天桐の心を読んだのかそう言った。それを言われた天桐も言うことにした。
全部説明した。錦さんとの出会い。男の戦車道、メン・タンク・マッチ。最初から全てを話した。ケーキを食べながら。
話し終えた天桐の顔は先程より顔色が良くなって少し明るくなった。
「なるほどな。男の戦車試合か」
「あぁ」
悩みを聞いた加埜はコーラを片手に天桐の相談に乗る。
「それで参加するために、メンバーや戦車を用意する必要があると」
「そうなんだ」
天桐は、ショートケーキを食べ終わるとミルクティーを飲んだ。
「けど、中々メンバーを集めれないし、戦車も手に入れられなくてな」
「うーん」
天桐の抱える問題が大変なことなのを知った加埜は腕組みをして考えた。
「メンバーか。それは、まぁ、なんとかなりそうかもしれないな。学校の奴らを探せば」
「あぁ、それよりも戦車をどうするかだ」
「戦車か」
二人は無言になり、ただ悩むしかなかった。
そんな静かな時間が3分程経過した時だ。
「あ、そうだ」
加埜が口を開いた。
「戦車ならツテがあるぜ」
「・・・え?・・・マジ?」
「あぁ、マジだ」
天桐は目を大きく開きながら言う。
「俺の知り合いの先輩が自動車整備の工場で働いているんだ。そこに以前、バイクのメンテで行った際、確か戦車みたいのを1台ぐらい見た気がするんだ」
「ホントか?」
「あぁ、確かそうだった」
「え?けど、修理工場だから客のじゃねぇか?」
「分かった」
加埜は右ポケットに手を入れて携帯を取り出した。
「電話して確認するよ。」
そう言い携帯の電話帳を開いて番号を探し、電話を掛ける。「もしもし、俺です。進一です」
加埜がさっそく話す。
「はい、実は」
天桐は両手を合わせて祈るしかなかった。
(頼む。)
そう心で叫んだ。
「はい。それじゃあ明日」
加埜は電話を終えると天桐に顔を向け、右手でグッドをした。
翌日
天桐と加埜は、バイクで二人乗りをして走っていた。
二人は午前中に町から出て関東地区内の内陸側に向かっていった。
海がない山ばかりの方へ進んでいく。
「結構、遠いんだな」
「あぁ、家からこいつで2時間は掛かるからな」
後部座席に座る天桐は運転する加埜にそう聞く。
「半分はいったから、あと1時間も掛からないだろう」
「別にいいけど。少し速くないか?安全運転で頼むぜ」
「あぁ、大丈夫だ。もう点数が半分しかないからな」
「・・・マジで頼むぜ」
あれから50分が経過し、無事に目的地の町についた。
ちょうど昼頃だったので、二人は昼食を摂ることにした。
店を探す途中で、ラーメン屋を見つけたのでそこでラーメンと餃子を食べた。
食事が済むと二人は早速目的地に向かった。
15分後には、ある場所に到着した。
柴田自動車整備工場と書かれた看板がコンクリートの塀に取り付けられ、中に入れる片引ゲートが開いている。中は、広々とした敷地に3階建て位ある大きな建物などがあった。
「よし、いくぞ」
「お、おう」
天桐はバイクを押す加埜の後ろからついて行く。
「柴田さん」
加埜は片手を挙げてそう言う。
「おう、来たな進一」
工場の中に居た一人の男性は加埜に返事をする。
「こいつが言ってた天桐だよ」
「どうも、はじめました」
「あぁ、いいよそんなに畏まらなくて」
天桐は柴田に挨拶する。
「悪いな、突然」
「ほんとだよ。いきなり、電話して来て何かと思えば。戦車はないかって」
柴田は油で汚れた手袋を外しながら、加埜と話す。
「で。電話で言ってた戦車というのは?」
「おう、こっちだ」
柴田に案内され二人は工場内に入る。
中では、3人の作業員が車やバイクの修理を行っていた。
工場内の奥に入っていくとシートが掛かった物体が見えてきた。
「こいつだ」
(おお、ついに戦車が。)
天桐は心に喜びの声でいっぱいだった。
「いくぞ」
柴田はそういうとシートを剥がす。
中から見えたのは、黄色っぽいカラーリングにキャタピラが2つついた鉄の乗り物だった。
それには、武器のような黒い筒が2つ並んで付いている。
それは、明らかに車やバイクではなく戦車みたいだ。
だが、天桐と加埜は、
「・・・うん?」
「なんすか、・・・この小さいの?」
余りいい反応はしなかった。
「CV33、カルロ・ヴェローチェだ。イタリアの豆戦車だよ」
柴田はそう言う。
「これ、ほんとに戦車か?めっちゃ小さいし、大砲も小さいのしかついてねーぞ」
加埜はCV33を手で触ってみた。
「大昔の戦車は大体機関銃程度のものが付いてるのが多かったのさ」
「この戦車、どこで手に入れたんだ?」
「あぁ、こいつはな。2年程前に、ある高校が何台かの戦車をうちに修理で持ってきたんだ。だが、修理費が足りないらしくて1台だけ代金代わりに貰ったんだよ」
そう説明する柴田に天桐は、
「すいません。・・・他にないですか?戦車は」
「あー、・・・ないな」
「・・・」
バタン
天桐と言うビルは一瞬で発破解体され崩れ落ちた。その姿は、加埜に相談した時と同じ、いやそれ以上の酷い状態だ。
「そういや、何で戦車が欲しいんだ?」
柴田に質問され、加埜は天桐から教えてもらったことを軽く説明した。
「なるほど、そう言うことか。」
「あぁ、だからどうしても戦車を手に入れないといけないんだ。」
加埜は一息おいて落ち込んでいる天桐を見た。
「頼む。どうしてもアイツの力になってほしい。」
「うーん、けどなぁ。戦車なんて、・・・・・・あ!」
「ん?」
「一つだけ、いい提案があるんだが」
「提案?」
「戦車が手に入るかもしれない」
その一言により、
「・・・・・・本当ですか!」
天桐ビルは一瞬で半壊まで戻った。
「あぁ、あるところに行けばもしかすると戦車を入手できる可能性がある」
「どこです?どこに行けば戦車が。」
柴田は、袖を引っ張り聞いてくる天桐を
「わ、わかったから教えるから引っ張るな」
と振り解いた。
「・・・アルベルトの館だよ」
「「アルベルト?」」
ガシャン
突然、天桐と加埜の後ろから大きな金属の音がした。
どうやら、誰かがスパナを落としたらしい。
「し、柴田さん。あそこは」
音を作った作業員と思われる人が顔色を少し悪くしながら柴田に言う。
「不味いですよ。あそこに行かせるとか」
別の作業員も同じ顔色で言う。
「あぁ、分かってるよ。けど、もうあそこしかない」
「「?」」
天桐と加埜には何が何なのか、ただ疑問しかなかった。
あれから柴田に地図を渡されある場所に行けと言われた。彼らが教えてくれたアルベルトの館と言う場所へは、バイクで向かった。
30分以上走ると、ある場所が見えた。そこは、山に挟まれ広い畑に民家が数件しか見えない広々とした田舎のような所だ。
「どうだ?」
「確かこの辺に」
天桐は地図を見ながら方向を確かめる。
「あそこだ」
石橋を渡り森の中へと入っていく。
「ほんとここ、綺麗だな」
「おい、なんか見えてきたぞ」
加埜に言われ前を見ると建物が見えてきた。
カーカー
ギャーギャー
カラス達が鳴く。
木々で日が入りにくいせいか凄く暗い。
そして、建物に近づくとそれは古い洋館のような家だった。
「なんか、やばいな・・・ここ」
「ホラー映画に出て来そうなやつだ」
二人は、周りの状況に家の見た目から少しビビってしまった。
「さぁ、行くか」
「おう。」
二人は気味が悪いこの状況に動揺しつつも、バイクから降りて家に歩いて行く。
玄関のドアの前に立つと呼びベルを見つけた。
「いいか?押すぞ」
「あぁ」
天桐は恐る恐る呼びベルを押した。
ピンポーン
それから相手が出るのを待った。
・・・
1分が経過した。
「あれ?」
天桐は、もう一度押した。
ピンポーン
・・・
再び1分が経過した。
「おかしいな」
「壊れてるんじゃね?」
また天桐は、押すが家から反応がない。
「留守かな?」
「おーい、誰か居ねーのか」
加埜がドアを殴り、ドアノブを握って開けようとした時だ。
周りの壁や花壇、屋根や床から妙な金属の物体が飛び出た。
天桐と加埜は突然の出来事に驚くが、それは突然出てきたことよりも、飛び出た物の方に驚いた。
それは、飛び出た物体が銃口みたい形をしているからだ。
「警告スル」
どこからか機械のような声が聞こえた。
「コレヨリ先ヘノ侵入ハ認メナイ。早急ニ、退避サレタシ」
「なんだこれ」
「よく分からないけど、防犯システムかな」
どうやらこの家の警備システムを二人で作動させてしまったらしい。
おそらく、加埜がドアを殴った上、ドアノブを握って開けようとしたからだろう。泥棒に間違われたのかもしえれない。
だが、それよりも銃口のようなものが周りから向けられているのが気になって仕方がない。
「やべーぞ」
「ふ、ふん。大丈夫だろ。どうせ、おも」
加埜がしゃべる途中、銃口の1つが二人と別の方向の壁に向いた瞬間、
ヴァン!
大きな音がなった、空気が焦げ臭くなった、そして、壁に穴が空いた。
銃声だ。これは本物だ。
「・・・マジ?」
「ガチだな」
発砲した銃口が二人の方へ向きを戻すと、銃口全てから
ガチャ
と何かを動かした音を一斉にならした。
「そういや、この前の深夜に映画見てよぉ?」
「え?あ、あぁ」
「その映画のワンシーンで同じようなのがあったのさ。主人公が、敵に囲まれて銃を四方八方から向けられているだ」
「へぇー、それで?」
「全弾躱して敵を倒したのさ。素手で。カッコよかったな」
「カッコいいじゃん」
「俺達にも出来るかな?」
「出来るんじゃね?」
「「・・・・・・」」
「「無理に決まってんだろ!」」
二人は一斉に同じ方へダッシュした。
「死ぬ気で走れ!振り返るな!」
「くそー、戦車を貰いに来たのに生者を取られに来ちまった」
二人は命懸けで走る。その二人を追いかけるように銃口も向くが、どの銃口からも発砲は一切しない。
「あれ?撃た」
突然、二人が走っていた床が無くなった。
そして、
「「ウワァーーー」」
闇の中に落ちていく二人の断末魔はすぐに消えた。
「う、うーーん」
「おい、無事か?」
床に倒れる加埜は天桐に話し掛けられる。
「一体何があったんだ?」
「落ちたんだよ。情けなく落とし穴にはまってな」
「あぁ、そうだったな。あれ?周りが暗いな」
「くそ、何にも見えない」
「俺達、生きてるよな?」
「あぁ、多分。痛、生きてるよ」
「俺達スゲー高いところから落ちたんだよな。よく無事だな」
「あぁ、それは、うん?」
天桐は携帯画面の光で辺りを照らしていた。
「床見てみろよ」
「うん?」
「床が何かの布で出来ている」
「本当だ。若干フワッてしてる」
「こいつのお陰で助かったみたいだ。けど、「それよりもどうするか」
天桐は上を照らす。
「くそ、穴が塞がってるのか何も見えねー」
上を確認する天桐に
「おい、壁の向こうから何か聞こえてくるぞ」
加埜が何かに気づいたそうだ。壁を触っていると
ベリ
壁が剥がれて奥の方に空洞が見えた。
「あ、ここの壁だけ布だ」
どうやら一部の壁が布だった。
二人は立ち上がると、その布の床の場所から空洞の方へ歩いた。
すると、壁に矢印のマークが書いてあった。
「行くか」
「あぁ」
あれから二人は、印に沿って奥へ歩いていく。途中で様々なトラップやトリックに出くわした。
二人はそれを難なく乗り越えていき1時間程が経過した。
「くそ、出口はどこだ」
「やべー、マジ疲れた」
あれから天桐と加埜はもう疲労が溜まってボロボロだった。
二人が歩いて行くと、
「ここまで良く辿り着いたな」
突然、男の声で話をかけられた。
「!、誰だ?」
「くそ、次はなんだ」
「どこだ」
周りを見るが誰もいない。
「こっちだ」
二人の斜め上の方が小さく光りだした。
まだシルエットでしか分からないが、人が足を組んで椅子に座っていた。僅かに分かる体格、服装や声からしてそいつは男だと思った。
「あんたは?」
天桐は謎の男に名を聞いた。
それに対して男は、
「人に名を尋ねるときは先ずは自分から名乗るのが筋だろ」
と言い返してきた。
天桐は、男の言うことに一理があったので
「天桐だ。さて次は・・・」
自分の名を名乗った。すると、天桐は何かに気づいた。
「もしかして、・・・あんたが?」
「フン」
男は立ち上がった。
「あぁ、俺が、」
パァ!
強い光を放つライトが点灯しそいつを照らす。
正体は、白衣を着た金髪で眼鏡を掛けた外国人っぽい顔立ちの男だった。
そして、そいつは、
「アルベルト・四十院(アルベルト・しじゅういん)だぜ、イェーイ」
何かのロックバンドで決める様なポーズをきめる。
「「・・・」」
二人とも無反応で無言だった。いや、もう何が何なのか理解が出来ていなかった。
ただ1つ分かったことは、天桐の心境で、
(ここには、来るべきではなかった)と思ったことだけだ。
後書き
予告:
戦車を手に入れるため、天桐と加埜は謎の男、
アルベルト・四十院の館にやって来た。
天桐は、アルベルトと交渉するが、とんでもないことになっていく。
大会までに本当に戦車は手に入れられるのか?
次回、天桐と加埜は・・・・・・。
*第4話は、6月から投稿予定。
詳しい日付は後程報告します。
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