メン・タンク・マッチ:MTM
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初動編
MTM:初動編 第2話「迷道(まよいみち)」
前書き
メン・タンク・マッチ:初動編の第2話を掲載開始しました。
初動編は、主人公達がメン・タンク・マッチに参加するまでの話です。
*メン・タンク・マッチ:MTMはまだ未完成の作品のため、全てを一度に掲載することは出来ません。また、各話の修正などで更新が遅れる上、更新期間がランダムで投稿することになります。一応、最終話まで投稿する予定です。
MTMは20話以上の物語を予定しています。
夕日が沈む頃、町では学校帰りの学生達や仕事帰りに買い物帰りの大人達が帰宅している。
そんな町中にある喫茶店[可華蜜]の店内で、二人の客がテーブルを挟んで会話をしていた。
「すいません、錦さん。俺、耳が悪い訳ではないですけど、よく聞こえなかったみたいです。もう一度いいですか?」
天桐は錦から聞かれた質問を聞き違えたと思い再度聞いてみた。
「戦車の試合に出てみないかね?」
錦は、天桐に再度質問をした。
質問の内容はさっき聞こえたのと同じで間違いではない。
だが天桐は、その質問内容を理解した上で少し顔色を変えた。
「こんなこと言うのも何ですが、錦さん。からかわないで下さいよ」
天桐は少し作り笑いをして錦が冗談を言ったと受け取ったと伝える。
「冗談ではないよ、天桐君」
錦はそう平然と答え、コーヒーを飲んだ。
天桐は、錦が冗談ではないと言ったことで余計に気分が変わり口が少しきつくなった。
「言っていることがよく分からないんですが、戦車道は女性がするものですよ。俺は、見ての通り男です。」
「確かに、君の言う通り戦車道は女性がやる伝統のものだ」
そう言うと、残ったコーヒーを全て飲み干し、手を上げて顔を店員に向けて呼んだ。
「はい」
「すいません、コーヒーのおかわりを」
「はい、ただ今お持ちします」
店員が行くと錦は、顔の向きを天桐に戻し、
「だが、仮に男性でも戦車道を、戦車で試合を出来るとしたらどう思う?」
「どう思うって・・・言われても」
またそんなことを突然聞かれたせいか、少しだけ答えるのを悩んだ。それだけでない、今の自分の本心は、どうなのだろうかと、自分自身分かっていないのもある。戦車道に興味が出た。だが、女性しか戦車道をしない。だから、戦車道は自分に関係のない話。それなのに、戦車道を男性が出来たらどう思うのかを聞かれたことで、少し混乱したのかもしれない。
「お待たせしました」
店員がおかわりのコーヒーをテーブルに置き、帰って行くと天桐は口を開いた。
「それは、凄いことなのかもしれません。女性しかしていなかった戦車道を男性もやることは。ずっと、男が戦車に乗るのは昔在った戦争か自衛隊や軍位しかやらないと思ってましたから」
本音を少しだけ交えてそう答える。
「だろ、私もそう思う」
錦はおかわりのコーヒーを飲みながらそれだけを答える。だが、先ほどの質問がよく理解出来てないのに変わりがない天桐は錦に問う。
「それで、さっきの質問はどういう意味ですか?」
天桐には、少しは察しが出来ていた。だが、それはにわかに信じ難かったため、それを確認したかった。
錦は少し笑みを浮かべ
「実は今、戦車道関係で面白い計画があってね」
「面白い計画?」
「余り公にはまだ出来ないのだが、その計画では男性を募集している。特に若い青年位の年頃をね。何故だと思う?」
天桐は錦のいう面白い計画が予想と同じものだと分かり始めると、
「それって、まさか」
「そう。男性の戦車道をやるという計画だからだよ。その名もメン・タンク・マッチだ」
やはりそうだった。
「メン・タンク・マッチ。男の戦車道?・・・そんなことが本当に」
「本当だとも、3年程前から始められた計画でね」
言う内容は嘘のようだが、錦が言っていることは真実だろう。
天桐にとって胸を躍らせる話だ。だが、
「けど、・・・俺は無理ですよ。戦車道なんて男がやっても」
天桐の言葉を聞いた錦は、目を瞑り腕を組み少し考え事した。
そして、目を見開いた。
「そうだ今度の日曜日に、高校戦車道の試合があるのだが、良かったら見に行ってみないかね?」
「え?」
「一度、戦車道の試合を見てみればいいさ。そうすれば、きっと良い答えが出ると思うのだがどうかね?」
「は、はぁ」
そう言い試合会場の場所が書かれたメモを貰った。天桐と錦は喫茶店を出て別れた。錦は、駅の方へ天桐は自宅へと帰った。
家に帰ってから天桐は着替えて、晩飯の準備をした。今日は外食でもコンビニに行く気分ではないからだ。炊飯器で米を炊き、レトルト系と切った野菜を混ぜてフライパンで炒めた。今晩は、ご飯と野菜炒めと味噌汁らしい。
食事を終えると、食器を洗い明日の授業準備を終え、シャワーを浴びた。
寝間着に着替えると歯を磨いたり、ベッドに寝そべって好きな漫画を読む。寝る前は大体こうだ。だが、今日は、余り気分が乗らず読むのを中断し、電気を消した。
今度の土曜日に行われる戦車道の試合のことを考えた。
「見るぐらいならいいか。」
そう決めると天桐はいつの間にか熟睡した。
次の土曜日
天桐は朝食を食べた後、外出の準備をして9時頃、駅に向かった。駅で電車に乗り出発して1時間後、試合会場のある町に到着した。この町には何度か来たことがあるが、今日は少し違った。町のあちこちで軽い荷物を持った親子や観光客みたいな人たちが同じ方向に歩いていた。歩いている方向には、[この先、安全区域]と書かれた看板がちらほら置かれている。他には、町のあちこちで警察をはじめ、市の職員や大会関係者達が町から一般人を退去させたり、町の一部を封鎖して試合準備を行っていた。車道を走っている戦車道連盟と書かれたジープが停車し、降りた女性が係達に指示を出している。
今回の戦車道の試合ではこの町の一部と周囲の森林地帯を使用する。その為、試合で使用する区域は全て封鎖し、町から一般人を安全区域に避難させる。これは、日本全国の戦車道試合では常識らしく戦車道連盟に日本政府関係が承認にして行われている義務らしい。以前、ネットで調べた時、戦車道の公式に書いてあったのを思い出した。
安全区域に入ると、試合を観戦出来るスペースがあちこちで設けられている。試合観戦をする人が多い中、天桐も観戦するため、どこかいいところがないか探していると。
「やぁ、天桐君。やはり来たね」
突然、聞き覚えのある声で呼ばれた天桐は、振り向くと男性が見えた。やはり、声の主は錦だった。
「錦さん。えぇ・・・まぁ」
少し頭を掻くと
「さて、こっちだよ」
錦さんは天桐をどこかへと案内する。
「?」
分からない天桐はそのまま錦に付いて行くと、向かったのは観客席の方だった。10段位ある席の山には、多くの観客が座っている。錦が観客席のエリアに入ろうとすると係の人が止める。だが錦は、係の人に身分証のようなのを提示するとすんなりと通してくれた。天桐は錦と一緒に観客席に座れることが出来た。普通、観客席には試合関係者や町から選ばれた人、偉い人達位が主に座れる。これは、座席の数が少ないことと試合をより間近で見れる。試合の所々を多く見れる上に専用大型モニターまでがいくつも設置されているという理由で、観客の多くが座りたがるからだ。
しばらくすると、
「間もなく、試合が開始されます。観客の皆様は、」
練習試合開始の時間が近づいたことを大会の運営が放送で観客に伝えてきた。
練習試合が始まる5分前。
観客席前のグランドの真ん中に3人の審判が立っていて、左右に5人ずつの生徒が相手チームと互いに顔を向けて並んでいる。
そして、審判の合図で各校の生徒がお辞儀をした。
今回の試合で対戦するのは、神奈川県の聖グロリアーナ女学院、対するは福島県の伯爵高校だ。
この試合では、各校お互いに5輌の戦車が参加する。
試合形式は、殲滅戦。これは、先に全滅した方が負けというものだ。
観客席にある大型モニターには、試合場所となる全体マップに各校の配置場所や参加車輌の名前と数が表示されている。
参加する車輌には、
聖グロリアーナ女学院
Mk.VIII セントー(A27L) 巡航戦車*1
クロムウェル巡航戦車*1
チャーチル歩兵戦車 Mk.VII*1
歩兵戦車 Mk.II マチルダII*2
伯爵高校
Renault R-35*2
Maresal M-05*2
AH-IV*1
と表示されている。
各校の車輌が所定の位置についた。
緊張感が流れる中、審判が腕時計を確認している。
そして、
「試合開始!」
そう言葉が放たれた。
(はじまった)
号令と共に各校の戦車が一斉に動き出した。
聖グロリアーナは、町の西側の森林地帯からスタートを始めた。くの字型に戦車を並ばせながら走っている。
これは、戦車の陣形というやつだろう。天桐は、調べた戦車道関係の少ない知識でそう思った。
一方、伯爵高校は、町の東側の大きな公園から始めた。最初に、こちらは二手に別れた。4輌の戦車と1輌だけの戦車に。
別れた1輌だけのAH-IVは足が早くどんどん西側の相手チームに向かっていく。
おそらく偵察と思われる。
残り4輌は森林に隠れた。
3分後、偵察のAH-IVは聖グロを発見した。
隠れていた4輌は森林から出て聖グロが通る予定の方向へと進んだ。
先回りた場所は狭い道で左右に古い倉庫や森、民家が存在する。
伯爵高校の4輌は森の中や古い倉庫などに隠れた。
どうやら、聖グロを待ち伏せして攻撃するようだ。
それを露知らずに聖グロは今度は道に合わせて縦になって進んでいる。先頭には、チャーチルとマチルダが、真ん中に指揮官が乗っているセントーに後方にクロムウェルとマチルダの順だ。
そして、隠れている伯爵高校の真ん中をセントーが通った瞬間、いくつもの砲撃が鳴った。
伯爵高校は、隠れた所から不意を突いて聖グロに撃つ。
砲弾は聖グロに向かって飛んでいき、大きな音と土煙を作り上げた。
普通ならこれで決まったはずだが、聖グロが何輌かが撃破されたと思ったが、実際は違った。
聖グロの車輌は一輌足りとも撃破されていない。
そこで天桐は思い出した。
聖グロリアーナ女学院はイギリス文化主体の学校だ。使用する戦車もイギリスの戦車。
そして、イギリスの戦車は速度が遅いが装甲が厚い。これは、ネットで見た情報だ。
聖グロは隠れている敵を確認すると反撃に出た。
伯爵高校は、作戦に失敗したためか、各自バラバラになって行動を取った。
Maresalがセントーに向かうが、あっさり撃破された。
続いて、R-35はマチルダに撃破された。
残る3輌は逃げていく。
Maresalはクロムウェルの背後を取ろうとするが、マチルダに近距離から側面を打たれた。
足の速いAH-IVは森林に入りジグザグに逃げる。
だが、チャーチルがAH-IVを一発で撃破した。
残るはあと一輌のR-35、相手の指揮官が乗っている戦車だ。
そのR-35は町中をジグザグに逃げている。
何かの時間稼ぎなのかは分からないが、町中を走りまくっている。これは長くかかるかなと思っていたが、それも直ぐに終わった。
クロムウェルが相手の逃げる方向を先読みし、待ち構えていた。そして、目の前を通る瞬間、一発の砲弾が最後の敵車輌を撃破した。
「R-35の戦闘不能。各校の残像車輌を確認中」
審判が各校の戦車を確認している。
そして、
「試合終了。聖グロリアーナ女学院の勝利」
その瞬間、大きな歓声が響いた。
試合が終わり夕方になった時間、大勢の人が町に戻ったりしている。町中では、試合の後片付けや観客席の撤去作業などが行われている。
天桐と錦の二人は駅前に来た。
「どうだったね、戦車道の試合を見た感想は?」
錦は、天桐に見た感想を聞いた。
「す、凄かったです」
天桐は素直にそう答えた。
「そうかそうか。君を誘って良かったよ」
満足した錦は笑みを浮かべる。
天桐はそんな錦に
「錦さん。1つ聞いてもいいですか?」
「うん?何かね」
「どうして俺を誘ったんですか?」
「え?」
「あの時、まだ出会って一日しか立っていないのにどうして俺に戦車道を誘ったんですか?」
天桐は錦に聞きたかったことを言った。
錦は少し考え黙り、一息入れてから口を開いた。
「それは、またいつか話すよ」
「え?」
天桐は、錦野の答えに納得は言っていない。
だが、なぜか
「分かりました。ですがいつか必ず話して下さいね」
「あぁ、勿論だ」
天桐はなぜか答えを待ってもいいと考えた。
「それはそうと、どうだい?例の大会に出てみたくなったかね?」
「それは、まだ」
まだ迷っている天桐に錦は、
「まぁ、まだ時間はある。その気があるなら名刺の番号に電話してくれ」
「・・・はい」
「では、またいつか」
そう言い錦は去って行った。
帰りの電車
天桐は夕日を眺めながら、
「俺、何やってるんだろうな」
そう呟いた。
平日の学校
昼休み
「士良、聞いてくれよ」
「なぁ、どう思う?」
「それは、ヤバイな」
天桐は、三人で談笑をしながら学食で昼飯を食べるいつもの通りの生活を送っている。
放課後、他の二人がバイトと塾のため、一人で家に帰ることになった。
「あ、そうだ」
帰りにまた近くの本屋に寄った。
天桐は、この前の雑誌コーナーで戦車道を探した。
前回見た雑誌の隣に最新版が来ていた。
最新の雑誌を手に取ると自分の側に誰かの気配を感じた。「うん?」
その方を見ると、同じ学校の制服を来た男子が立っていた。
その生徒の目を見ると、自分が持っている雑誌に見ているのに気がついた。
「これ買いたいのか?」
「え?あ、はい」
どうやら買いたい雑誌を先に取って立ち読みしようとしていたようだ。
天桐は、持っている雑誌を差し出す。
「ほら、俺は買わないから」
「あ、ありがとうございます」
受け取った生徒は礼を言うとレジに走っていった。
(うちの後輩か。)
その生徒が来ていた制服の学年章で後輩の2年生だと分かった。
家に帰ると着替える前にテレビをつけた。
制服を脱ぎ、部屋着を着るとベッドに座り少し休憩を取り始めた。
「ふぅー、疲れた」
テレビでは、スポーツ特集をやっているようで、今は卓球の話をしている。すると、次に戦車道特集を始めた。
「今回は、高校戦車道で有名校の1つ。プラウダ高校に取材を」
「また、戦車道か」
ここ最近、戦車道という言葉をよく聞くようになっている。その言葉を聞く度、なぜか天桐は心に妙な感覚が走ってしまう。
天桐はテレビのチャンネルを変えた。
晩飯を食べ終わり、軽く宿題を済ませて、テレビでバラエティ番組を見た。それから、ベッドに仰向けになり、しばらく考え事をし始めた。
自分と戦車道、この組み合わせた大会が間もなく行われる。
それを知った時、自分もやりたいと思った。だが、それでいいのか迷ってしまった。
十分程、部屋は静まった。そして、天桐は
「俺にも」
と一言いうと。何かを決心したのか天桐は、ベッドから起き上がり携帯を手に持ち、ズボンのポケットから錦さんから貰った名刺を取り出した。
名刺に書いてある錦の電話番号を携帯に打ち、掛けた。
「もしもし、錦さんですか?天桐です」
天桐は錦に
「俺、参加してみようと思います」
意志を言った。
日曜日
天桐は電話で錦に説明会に参加したいと言うと説明会会場の日程と場所を教えてもらい。会場のある場所で待ち合わせをした。
「いーや、よく来てくれたね」
錦が天桐に近づいていき鞄から何かを取り出す。
「はい、これ説明会の許可書ね。これがないと入れないから」
錦から許可書を受け取り、
「は、はい。ありがとうございます」
「では、行こうか」
天桐は、錦に続いて歩き会場に向かった。
説明会の会場に二人で入ると受付に錦さんから貰った説明会の許可書を提示して中に入れた。
受付より置くに進むと説明会に来たと思われる同年代ぐらいの男性が結構見かける。その数が段々増えていく。
「意外と来てるな」
天桐は周りに居る大勢の人を見てそう言う。
「関東地方からだけで、二百人近く来ているからね」
錦はそう言って、周りを見渡す。
「この大会は、余り公にはなっていないが。君みたいに関係者から知った者が多くいるからね」
そして、錦と途中別れた天桐は、説明会が行われるル―ムに入った。中は、広々とした空間で学校の体育館ぐらいあった。前には、大きな壇上があり、大型スクリーンや椅子が並んでいる。一方、壇上の前には二百近い椅子が置かれていて、既に百人近くが座っている。席は自由らしく、天桐は適当に前が見える位置に座った。
しばらくして、二百人近くの人が入り説明会の時間が来た。
すると、
「皆様、」
壇上横にあるマイクで眼鏡をかけた男性が話し始めた。
「本日、司会進行役を勤めさせてもらいます。田村肇と申します。今日は、メン・タンク・マッチの説明会に大勢の方がお越しに」
と長い言葉で始まった。
「本日は、日本戦車道連盟理事長の児玉七郎様にお越しになっていただきました。」
体が大きく和服を着た頭髪のない男性が立ち上がった。
「皆さん、はじめまして。戦車道連盟理事長の児玉です」
顔は優しそうに見えるが、何か強そうなものを天桐は感じた。
「今回、メン・タンク・マッチについて説明をなさいます」
児玉の隣に座っていたガタイの大きい男性が立ち上がった。
「東城真人様です」
年は見た感じ三十位だろうか。いかついた顔で少し怖いかもと天桐は思ったが、真面目そうにも見えた。
「東城です。本日は、大会について説明を致しますので、どうぞ宜しく」
しばらくして、お偉いさん方の挨拶や少しだけの戦車道の話が行われ20分程が経過した。会場のほとんどが寝ていたり、
体を崩したりしている。天桐は片膝に肘をかけて顎に手をやっている。
そして、いよいよ肝心な時間がやって来た。
「では、これよりメン・タンク・マッチについて説明を始めさせてもらいます」
やっとかと思い天桐は、姿勢を戻す。
「それでは東城様、お願いします」
司会に合図を受けた東城はマイクのある壇上に立ち。
後ろの大型スクリーンの映像が変わった。
スクリーンには[メン・タンク・マッチ 説明]と書かれている。
「では、説明を始める」
会場が一気に静まった。
「まず、参加出来るメンバーは男性とする」
「この競技は個人ではなくチームメンバーによる参加となっている。そして、チームメンバーの役割は、チームーリーダーをはじめ、戦車搭乗員、整備員、管理補佐などの役所が必要となる」
「次に、各チームが参加使用できる車輌は1輌だけとする。
対戦方式は、全て各チームによる1対1での対決とする。
そして、参加使用が出来る車輌は、戦車道と同じ
現存する第二次世界大戦時までに、戦線で活躍もしくは設計が完了し試作されていた車両と、それらに搭載される予定だった部材を使用した車両のみ」
ここまでは、予想通りのという顔を皆がしている。が、次に言ったセリフが皆の顔色を変えた。
「が、予定であるはずだったが、」
「「?!」」
今、この会場にいる説明を聞きに来たほとんどが同じ反応をした。
「今大会では、それに加え、車輌の改良を認めるものとする。また、独自製造を行ったオリジナル戦車の参加使用も認めることなる」
更なる予想外の説明に多くの参加者が動揺し始めた。
「え?」
「どういうことだ」
会場にどよめきが出ているにも構わず説明を続ける。
「ただし、使用できる材料技術レベル等は今大会で認められたものとする。なお、参加する戦車は、参加前に審査する」
東城の説明が終わると、イマイチ理解していない人も多くいるようだ。
すると東城はマイクを手で握り、
「よく分かってないみたいだから、簡単に言うと」
「つまり、条件を満たしたものなら、君たちが考えて作った
この世で1つしかないオリジナルの戦車を作って、それで戦えるということだ」
天桐を含めその言葉の意味は理解したが、納得というべきか腑に落ちないことがまだまだある。
「では、続けて説明する」
それに構わず東城は、説明を再び始めた。
それから数十分後、
「これで説明は全部だ」
説明が終わるが会場にはまだ少しどよめきが続いている。
説明が終わったことで司会が再びマイクの前に立ち
「では、東城様、ありが」
と閉めようとした時、
「そうだ。最後に一言」
突然、東城はマイクを握りしめ再び話し始めた。
「君たち。・・・男に生まれた以上、何か熱いことに打ち込まないと損だぜ」
そう言うと会場が静まった。
「以上だ」
それから長くかかった説明会は、3時間半程で終わった。
今後の大会については、また後日連絡が来るらしい。
会場を出ると、錦が待っていた。
「さて、いろいろ大変なことにだろうな」
「そうですね。説明だけでも、びっくりしました」
天桐はそう今の気持ちを言う。
「さて、これからだ。頑張りなさい」
錦は天桐に応援する。
「はい」
天桐は家に帰った。
翌日
学校
放課後になって生徒のほとんどが下校や部活をしている頃、3―Aの教室では、天桐と担任の藤吉と二人で、生徒の席に座って話をしていた。
「で、見つかったか?」
「・・・」
天桐は無言で手に持っていた進路希望用紙を先生に渡す。
今日は以前先生に言われた約束の期限。
先生は受け取った用紙に目をやる。
「えーと、・・・・・・あ」
進路希望用紙の希望覧全てが白紙だった。
覧には点や線すら入っていない。
「天桐、お前」
天桐は目を少し逸らす。
「・・・ハァー」
先生は溜息をつくと
「ま、そう簡単に見つかればこうはなってないか」
と頭を掻きながら言う。
「まぁ、お前の人生なんだから、じっくり見つけた方がいいのかもな」
「この短期間じゃあ。そうは見つからんか」
先生はそう言うと
「けど、見つけたものはありますよ。俺の心から熱くなれそうなのが」
「え?」
天桐は席を立ち
「すいません。俺、もう帰ります」
「おいおい、進路は」
「また、今度お願いします」
天桐は教室を出た。
そんな天桐を先生は止めなかった。
いや、止めてはいけないと思ったから止めなかった。
なぜなら、先生の目には天桐が、以前よりも燃えているようで生き生きしているように見えたからだ。
後書き
予告:
メン・タンク・マッチに出場することを決めた天桐。
ゴールデンウィークに入った中、出場準備を行う彼だが。
いきなり、多くの無理難題のせいで行き詰まってしまう。
メンバーは?戦車は?
そんなこんな苦難な連休の話。
次回、とんでもない奴が出るかも?
*第3話の本文は、5月25日~27日中に投稿予定。
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