魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~
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Eipic1-I移ろいゆく季節~Celebration~
前書き
まずい。手抜き(のつもりはないんですが)サブタイトルを続けてる所為で、新しいサブタイトルを考えるの面倒になってきた。
†††Sideなのは†††
ユーノ君の無限書庫司書長の就任、クロノ君のアースラ新艦長の就任、そしてシャルちゃんのAクラス1位をお祝いするパーティーを今日、アースラで開くことになった。本当なら、シャルちゃんと同じようにAクラス1位になったトリシュちゃんやクラリスちゃん、それにBからAクラスの6位に上がったアンジェリエちゃんのことも一緒にお祝いしたかったんだけど、どうしても都合がつかなくて断念した。
「食材はもう昨日までに買い込んでおいたから問題ないとして・・・」
「家に帰って着替えを済ませたら即アースラに行って調理を始めないとね」
「人数が人数だしね~。料理の量も数もとんでもないことになるよ」
授業の全てが終わっての放課後、部活や帰宅するために教室から出てくクラスメイト達に「また明日ね~!」手を振って挨拶し合いつつ、私たちチーム海鳴も昇降口に向かいながらこれからのことを相談する。
「でもなんか複雑だよ。Aクラス1位にはなったけど、プラダマンテにはボッコボコにされたから」
シャルちゃんが大きく溜息を吐く。シャルちゃん達は昇格試験の2週間を闘い抜いて、見事に1位になった。けど試験最終日に行われた各騎種別の対パラディン戦で、シャルちゃん達はコテンパンにされちゃった。それがどれだけ衝撃的だったか。シャルちゃん達の強さを知っているからこそ余計に信じられなかった。
「マジで驚いたわよ。シスター・プラダマンテとの試合、開始1分とせずに負けたでしょアンタ・・・」
「絶対切断のスキル使ったんでしょ?」
「それでも勝てないって、シスターってどれだけ・・その・・・化け物なんだろう・・・?」
アリサちゃん、アリシアちゃん、すずかちゃんと思い思いに感想を言ってく。みんなが驚いた、シスター・プラダマンテの実力。絶対切断のスキルに一切の怯みもなく、真正面からシャルちゃんを打ちのめしたあのシーンは、思い出すだけでも鳥肌がすごい。
「15年間の無敗記録が18年に更新。・・・むぅ~! どうやったら勝てるの!?」
うがー!って頭を掻き毟るシャルちゃん。正直シスター・プラダマンテに勝てる方法は無いと思う。シグナムさんどころかルシル君でさえも、正攻法じゃ勝てない、って評価を下した相手だし。私自身も、闘ったらきっと勝てない、って思う。
「はぁ。トリシュ達との約束もまた3年後にお預けか~」
「今はとにかく1位になったことをお祝いしようよ、シャル」
「そうだね。うん、そうだよ、シャルちゃん。次の試験に向けて英気を養う。それが一番だよ」
パラディンになれなかったのは残念だけど、それでも結果は残すことが出来た。それを蔑ろにして暗い雰囲気になるの可笑しいもんね。私たちの言葉に「んっ♪ 3年後は絶対に勝つ!」シャルちゃんは背筋をピンッと伸ばして、次の試験に向けて決意を改めた。
「そう言えば、ルシルはちゃんと出席するんでしょうね」
「再三メールしてるし、返信も来てるから大丈夫なはずやよ」
「最近はちゃんとメールを返してくれるようになったよね」
「あとルシル君からもメールをくれるようになったし」
「すごい進歩だよね」
ルシル君と再び繋がれたような感じがしてとっても嬉しかったなぁ。もう同じ空を飛ぶことは難しいと思うけど、でもいつかまた同じ空を飛びたい。そう強く思う。
それから校舎を出て、グラウンドで部活をやってるクラスメイトと手を振り合いながら校門へと向かってると、「あれ? なんか人だかり出来てるよ」アリシアちゃんが指を差した。
「芸能人でも来てるのかしら・・・?」
「まっさか~」
何か黄色い歓声のような聞こえてきてるんだけど。その人だかりを眺めながら校門まで近付いて・・・「あっ!」原因を見てビックリ。
「「「ルシル君っ!?」」」「「「「ルシルっ!?」」」」
先輩後輩問わず女子に囲まれてる(まぁ女子校だから当たり前だけど)のはルシル君だった。私たちは手を振りながら「ルシル君!」のところまで駆け寄ると、ルシル君や周りの女の子の目が一斉に私たちに向けられた。
「あ、シャルロッテ先輩だ!」
「うわぁ! 月村先輩たちが勢揃いしてる❤」
後輩たちがわっと私たちの周りに集まる。私たちの通う聖祥大学付属のこの中学校は、小学校から大学までエスカレーター式だ。だから中学校での1学年違いなら、小学校時代からすでに有名だった私たちのことを知ってる子たちばかりになる。
「セインテスト先輩が居たから、どこかに行かないように確保しておきました!」
それに、私たちと常に・・・と言って良いのかどうかだけど、私たちと一緒に居ることが多かったルシル君もまた有名人。ルシル君が進学しないで海外に帰ったって話も当然知られてる。そして先輩たちは、グッと身長が伸びていよいよ本格的に男の子になってきたルシル君の体をベタベタ触っては黄色い声を上げてる。
(あー、ルシル君すごく困ってる。それに・・・)
チラッとシャルちゃんとはやてちゃんを見る。相手が先輩ということもあって抑えてるけど、かなり不機嫌そうだよ。2人がいつドッカーン!するかハラハラしていると、「あー、先輩方」ルシル君が声を出した。
「すいません。彼女たちと約束がありまして。今日はこれにてお暇したく」
「えー、そうなの~?」
「ざんね~ん」
「ねえ。いつ国に帰るの?」
「今度時間があったら遊んでよ~♪」
先輩たちからの遊びの約束を取り付けられそうになってたルシル君は「あはは。」と愛想笑いで応えて、先輩たちから離れて私たちの側に来た。私たちも後輩たちに「ありがとう」お礼を言って、ルシル君と合流。先輩後輩たちが解散してく中、私たちも歩き出す。まずはそれぞれ自宅に戻って着替えないとね。
「じゃああたしとすずかはここで一旦離脱するわね」
「みんな、アースラでね♪」
アリサちゃんとすずかちゃんは、迎えに来てたアリサちゃん家の自家用車に乗って帰宅の路に着いた。みんなで「アースラで~!」2人の乗った車を見送った。
「・・・あー、参った。いきなり集団で囲まれるとは思いもしなかった」
再び歩き出す中、ルシル君がそう言いながら首をコキコキ鳴らした。私としても校門の前で女子生徒に群がられてるルシル君が居るとは思いもしなかったよ。
「にゃはは。でもルシル君。海鳴市に来るなんてホント久しぶりだよね」
「この前の休みの日は、結局シャルちゃんのお家に泊まったから、海鳴市に帰らなかったし」
「あれだけ帰って来ることを渋ってたのに、今日はどうして海鳴市に?って言うより、中学校前に来てたの? あ、判った。わたし達の制服姿を見に来たんだ! もう。言ってくれれば写メくらい送るのに♪」
「違う」
「あ! なに、もしかして他の女子生徒の制服姿を覗きに来たの・・・!? だったらわたし、一体どうすれば!」
「当然の如くそれも違うから、どうもせんでよし」
とっても懐かしいシャルちゃんのボケとルシル君のツッコミ。なんかこのやり取りを海鳴市でやってるっていうだけで、心がホッコリする。
「ん? 今日はユーノたち含めての祝賀パーティだろ。遅刻しないように、と念を押されていたから、こうしてやって来たわけだ」
「どこの家のトランスポーターを使ったの?」
「いや普通にはやての家だろう。今はもう出て行った身としては少し悩んだんだが、勝手知ったるというか」
「もちろん大歓迎やよルシル君! なんなら今日は家に泊まってくか?」
「嬉しい提案だけど、すまない、今日は夜から仕事なんだ。都合によるけど途中でパーティを抜けるかもしれない。アイリは置いて行くから、あの子だけでも泊めてやってくれ」
「それは残念やな」
それから他愛もない話をして、私、シャルちゃんとフェイトちゃんとアリシアちゃん、はやてちゃんとルシル君は、それぞれ自宅に帰るために「アースラで!」手を振り合って別れた。
†††Sideなのは⇒イリス†††
学校の制服から私服へと着替えたわたしとフェイトとアリシア、それに留守番してたアルフは、ハラオウン邸に備え付けられてるトランスポーターを使ってアースラへと転移する。そして向かうのは、パーティー会場になるレクリエーションルームなんだけど・・・
「はい。シャルはここまで♪」
「主役はパーティが始まるまで別室待機だよ」
アリシアがドアの前に立ちはだかった。今回のパーティでお祝いされるクロノとユーノとわたしは、開始時間までは会場以外の場所で自由に待つことになってる。だから会場のセッティングが終わるまでは入れさせないつもりなんだ。
「(でも、こう拒まれると逆らいたくなっちゃうのも人の性)・・・よしっ」
「よし? あ、まさか・・・!」
さすがフェイト。同じ屋根の下で5年と暮らしたことで、すぐにわたしの考えを察した。わたしを扉の前から退かそうと両手で押して来たんだけど、「ちょいとごめんね」まずはフェイトからの押しを後方にクルっと回ることで「え・・・?」いなしてフリーになる。押すべき対象だったわたしが急に居なくなったことで、フェイトは前のめりに転びそうになる。
「シャ・・・、フェイ・・・!?」
わたしの突然の行動にアリシアが混乱を見せる。これはもうクリアしたも同然。アリシアの意識や体は完全にフェイトに向いてる。このままドアに向かうだけで良し。と、そう思ったわたしだったけど、大きな見落としがあるのを忘れてた。
「何やってんだい!」
そう、アルフが居たのを失念してた。だって小さいから見えなかったんだもん。小さい体でわたしに足払いを掛けてきて、「あいたっ!」わたしは体勢を立て直す前に仰向けにすっ転んだ。ちなみにフェイトは、アリシアが手を取ったことで転ぶことはなかった。アリシア、あなた、ホント強くなったよね。
「廊下で寝転んで、何をやっているんだ?」
「「「あ、ルシル」」」
声を掛けてきたのはルシルで、その後ろにははやてやシグナムたち八神家が勢揃いしてた。わたしは「ん」ルシルに向かって手を伸ばす。するとルシルの代わりに「はい、シャルちゃん」はやてがわたしの手を取って立ち上がらせてくれた。
「ありがと」
「どうも♪」
わたしとはやての視線がバチバチと交わる。卒業式の日、はやてはとうとうルシルに告白した、って聴いた。本格的にルシル争奪戦に参戦したんだけど、その当日にルシルが居なくなるって言う想定外の事態になっちゃった。しかも何かと理由を付けてわたし達と距離を取る始末。どれだけ寂しかったか。
『わたし、ルシルに起こしてもらおうって思ったんだけど?』
『うん、知ってる♪ そやからわたしが助けたんよ』
「「・・・・」」
そして最近、ルシルは以前のようにコミュニケーションを取ってくれるようになった。そう。争奪戦も再開となったわけだ。
「シャルロッテ。お前は今日、主役の1人だろう」
「今からあたしらはお前らのために会場のセッティングの手伝いをやんだ。だから・・・」
「ええ。主役は別室で大人しく待っててね♪」
「です!」
手を繋いだままではやてと見つめ合ってると、シグナム達にそう言われた。続けて「ほら。今日は俺も調理組だから、楽しみに待っていろ」そう言って微笑みかけてくれた。それだけでわたしはもう満足です。
「ん。楽しみにしてる。・・・フェイト達も、はやて達も、今日はありがとね」
フェイト達と手を振り合って別れて、私はひとり時間を潰すために艦内をぶらつくことにした。とりあえずは元わたしの部屋に行ってみる。私物はアースラから降りる時に全て持ち出したから、ただの一般室になってた。それから色々と回った後、ブリッジに行くと・・・
「お、今日の主役2人をはっけ~ん!」
「シャルか。君が最後とは思わなかったな」
「久しぶり~」
クロノとユーノ、それに「シャルちゃん、やっほ~♪」エイミィ、元同僚のアレックスやランディを始めとしたスタッフ達が居た。ていうか、「なんで制服着てんの?」クロノにそう指摘する。エイミィや他のスタッフ達はみんな私服なのに。
「馬鹿を言え。アースラに乗艦して運用するのに私服で艦長席に座る奴があるか」
「クロノ君、お堅~い」
「エイミィ達が緩すぎるんだ」
「アースラでクロノとエイミィの夫婦漫才を見ると、あー戻ってきた~って感慨深くなるよ」
「夫婦じゃない!」「えへへ」
クロノは真っ赤になって必死に否定して、エイミィは照れくさそうに微笑みを浮かべた。ほら、もうみんなは2人がそういう関係なんだって判ってるんだから、素直になって交際(と言っていいのか判らないけど)してることを認めてしまえばいいのに。
「はいはい。あ、そう言えばセレネとエオスは今日、来るんでしょ?」
「いや、もう来てるよ。会場でセッティングの手伝いをしてると思う」
「そっか。あの2人のこと、ちゃんと大事にしてあげてよ」
「判ってるよ。仮にも姉だからね」
「「・・・・」」
クロノを宥めてたエイミィと一緒にユーノをジト目で見ると、「な、なに・・・?」ユーノはたじろいで、「どうしたんだ・・・?」クロノは小首を傾げた。だから「鈍い・・・」エイミィと揃って呆れの溜息を吐く。というか、セレネとエオスって、未だにユーノに告白してないのかなぁ・・・。
「「??」」
「「なんでもない」」
男どもはこれだからもう。セレネとエオスも苦労するね、ホント。それからはエイミィだけと話したり、携帯端末でネットワーク大戦をしたりして時間を潰すこと「もう1時間かぁ・・・」気付けばそんなに経ってた。あとどれだけ待てばいいのかぁ~、なんて思ってると・・・
『お知らせしまーす。本日の主役、クロノ・ハラオウン艦長、ユーノ・スクライア司書長、イリス・ド・シャルロッテ・フライハイトAクラス1位! どうぞ会場へお越しくださーい!』
そんな放送がブリッジに流れた。ルシルとシグナムとヴィータとザフィーラを除くチーム海鳴メンバーと、セレネとエオスの声による放送だ。でも、「わたしだけなんか物足りない祝い理由だよね・・・」やっぱりちょっと落ち込む。
――今はとにかく1位になったことをお祝いしようよ、シャル――
フェイトにはそう言われたし、わたし自身も納得はしたんだけど、クロノやユーノに比べるとちょこっと、ね。だからと言って気落ちしてるのはナンセンス。パチンと両頬を叩いて「今は楽しめ!」だ。
そしてわたしとクロノとエイミィとユーノ、それにブリッジスタッフは会場であるレクリエーションルームへ。アースラは一応停泊中だから、オートモードにしていても問題ない。何かあればすぐにクロノか通信主任のエイミィに通信が入るしね。
「さて。クロノ君とシャルちゃんとユーノ君が先に入ってね」
レクリエーションルームの前に着くと、エイミィ達が数歩下がってわたし達の背後に着いた。さすがに主役より先に入らないか。そういうわけでわたし達は顔を見合わせて頷き合い、三角陣形でドアに歩み寄った。
プシュッと開閉音と共にドアがスライドした瞬間、「おめでとー!」の言葉と一緒にクラッカーの炸裂音。さらに後ろに居たエイミィ達からも「おめでとー!」とクラッカーの炸裂音が。
「「わっ!?」」「・・・!」
なんとなくだけど、なのは達からのクラッカーは想像できてた。だけど、エイミィ達からも来るとは思わなかったからビックリ。そしてまた「おめでとー!」と一緒に、今度は拍手がわたし達に送られた。
拍手が鳴り止まない中、わたし達はレクリエーションルームに足を踏み入れた。いくつもある長テーブルの上には、ビュッフェ方式ということもあって大皿が何十枚と置かれてて、美味しそうな料理がたくさん盛られてる。
「すごい・・・」
「横断幕まで作ったのか・・・」
わたしとクロノとユーノ、3人分の横断幕が壁に掛けられてた。そんなわたし達は室内に招かれて横一列に並ぶ。そして「はい、ジュースだよ♪」わたしはなのはから、クロノはエイミィから、ユーノはセレスから、ジュースの注がれたグラスを受け取った。
「では! 本日の主役であるクロノ君、シャルちゃん、ユーノ君から一言頂きましょう!」
「「え・・・?」」「なに・・・?」
まさかの無茶ぶり。断ろうにもみんなから拍手が起きちゃってるし、そんな雰囲気じゃない。ここで拒否しようものならこの空気をぶち壊すことに。ここは意を決して、何でもいいから喋ろう。
「コホン。本日は、僕クロノのアースラの新艦長就任、シャルの教会騎士団・剣士Aクラス1位、ユーノの無限書庫司書長の就任の、祝いの席を催して頂きありがとうございます。前艦長のリンディ艦長に比べあまりに若輩ではありますが、粉骨砕身の思いで努力を重ねて行きたいと思います。よろしくお願いします」
クロノが先陣を切ってくれた。わたしはユーノと頷き合って、「ユーノ・スクライアです」クロノに続いて挨拶をする。
「無限書庫の司書長に就任することになりました。今の僕がここに居られるのは、なのはやシャル、アースラの皆さんと出会ったからだと思います。えっと・・・セレネとエオスにも支えてもらって心強かったです。あの・・・こうしてパーティを開いてくれたこと、とても嬉しく思います。ありがとうございます!」
「えー、イリス・ド・シャルロッテ・フライハイトです! クロノやユーノとは違って特別な役職への就任ではないけど、剣士でのAクラス1位はわたしの夢の一歩で、それをお祝いしてくれることはとても嬉しいもので・・・。今回の昇格試験じゃパラディンになれなかったけど、みんなからのお祝いの言葉や応援を糧にして、次こそパラディンになって見せます!」
わたし達の挨拶が終わって治まらない拍手の中、「ではでは! 乾杯の音頭を、我らがリンディ前アースラ艦長に取って頂きましょう!」司会進行のエイミィがマイク片手に言う。
「え? 私で良いのかしら・・・?」
アースラの艦長職を息子であるクロノに譲って(もちろんクロノは艦長になるための試験や研修を行った)第一線を退いたリンディさんは、次元航行部から総務部に異動して内勤職になった。それも、この家で子供3人の帰りを待つため、ってことみたい。今の服装も私服だし、髪型もポニーテールじゃなくてうなじ付近での1つ結び。なんか、お母さん、って感じ。
「やはりここは艦長でないと」
クロノのその言葉にここに居る全員が頷いて同意を示した。リンディさんは「それじゃあ・・・」承諾してくれて、少し考え込んだ後・・・
「クロノ。あなたも19歳。これほどまでに立派になってくれたことが母としても、前艦長としても、とても誇らしい。きっと天国のクライドも喜んでいるわ。自慢の息子だって」
「母さん・・・」
「イリス。あなたと出会って6年。アースラスタッフとして一緒に働けたのは1年と短かったけど、まるで娘が出来たみたいでとても楽しかったわ。あなたがPT事件、なのはさん達を協力者として迎えてくれたおかげで、こうして素晴らしい“現在”を過ごせている。ありがとう。あなたの成長、これからもずっと応援させてもらうわね」
「・・・はい!」
あー、ダメだ、鼻の奥がツンとして今にも泣いちゃいそうだよ。
「ユーノ君。無限書庫の司書長就任、おめでとう。管理局発足以来、ずっと混沌としていた無限書庫の整理を行い、まだまだ時間が掛かるでしょうけどその成果を着実に上げて行っているあなたの司書としての手腕、とても素晴らしいものです。これからも頑張っていってください」
「はいっ、ありがとうございます!」
「クロノ、イリス、ユーノ君のますますの活躍を願って。乾杯!」
グラスを掲げたリンディさんに続いて「乾杯!」わたし達もグラスを掲げた。乾杯の後はみんな談笑しながら立食パーティを楽しむ。料理担当はエイミィを筆頭に、はやて、ルシル、シャマル。スイーツはなのは、アリサ、すずか、フェイト。アリシアはなんと味見班という名のサボりだ。
エイミィ達が丹精込めて作った料理の数々を食べ終えて、なのは達が精いっぱい頑張って作ってくれたケーキを食べてると・・・
「さぁ、ここでお祝いメッセージをご紹介したいと思いま~す!」
エイミィがそう言うと大画面モニターが1枚と展開された。なのは達はざわざわ小声で話してるのが聞こえたから耳を澄ましてみれば、誰がやったの?だとか、知らされてないよねとか聴こえた。どうやら主催者側のなのは達にとっても初耳らしい。
室内の明かりが落とされて映像が見やすくなる。モニターに最初に映し出されたのは・・・
『ユーノ。元気でやっているか? ペリオだ』
セレネとエオスの実父であり、ユーノにとっても義父にあたる男性・ペリオ・スクライアさんだった。唯一ペリオさんからメッセージを貰えそうなセレネとエオスですら「お父さん!?」驚く始末。
「ペリオさん!」
『お前がロストロギアを探すと言って群を離れてから5年。事件が無事に終わったら終わったで今度は、時空管理局の入局したいと聞かされて驚いたものだ。しかし、それもお前自身が選択した道。俺は応援したいと告げ、お前を見送った。そして気が付けばお前は無限書庫の司書長という大任を任されるほどに成長していた。義理とはいえ父としてとても誇らしい。ユーノ、お前ももう立派な男だ。これからもお前の成長を見せてくれ』
「・・・っ」
「「ユーノ」」
ユーノが嗚咽を漏らすけど、泣き声はだけは噛み殺して耐えてる。そんなユーノにセレネとエオスが歩み寄って抱き寄せた。ペリオさんに続いて他のスクライア一族の面々からもお祝いのメッセージが贈られた。どれもこれも温かな想いに包まれた、家族からのメッセージだった。
「はい。とても心温まるメッセージでしたね。続きましては、この方たちからのメッセージです」
ペリオさん達の集合映像が途切れて、次に映し出された映像に「え・・・!?」わたしどころか、学校組であるなのは達も驚いた。何せ映し出されたのは「咲耶たち、なんで・・・!?」小学校の頃からの友達で、わたし達が魔導師であることを知ってる咲耶、依姫、天音、亮介君、護君、天守君の6人だったから。
『シャルさん。教会騎士団、でしたかしら。その剣士の部においてのAクラス1位、おめでとうございます』
『おめでとう、シャル。お祝い事があるなら教えてくれないと困るよ』
『そうそう! わたし達もお祝いしたいもん!』
『映像見せてもらったけど、すげぇ格好良かったぜ!』
『うんっ! 決勝戦って言うのかな? それは負けちゃったけど、それでも格好良かったし、それまでの試合もすごく格好良かった!』
『でも決勝戦でのシャルは、ちょっとエロかった』
最後に天守君がポツリと漏らすと、亮介君と護君までもが顔を赤くして目を逸らした。そう言えばさっき亮介君、映像を見せてもらった、って言ったよね。それに護君は、決勝戦、って。わたしとプラダマンテの試合は実質決勝戦にあたる。。わたし負けた時に騎士服がボロボロになっちゃって、結構素肌を晒してた。
「~~~~っ!!」
顔だけじゃなくて全身が熱くなる。咲耶たちが『破廉恥ですわ!』だとか『これだから男子は』だとか『○ね』だとか、亮介君たちを非難してるけど、今のわたしにそんな余裕はない。一体誰がこのビデオメッセージを撮影したのか、そして誰がわたしの試合映像を見せたのか、それを知りたい。
『なぁなぁ、ルシル。あの試合映像、貰えないか?』
亮介君がカメラに向かってそう言ったことで、このビデオメッセージを撮影したのが誰か判った。わたしは犯人である「ル~シ~ル~・・・!」の元へとドスンドスン足音をわざと出して向かう。そして詰め寄って両肩を鷲掴んだ。
「どういうこと!? なんで見せたの!?」
「いや、だって実際に見せないと、どれだけすごいのか伝わらないだろ?」
「だからってわたしの恥ずかしいところを見せて良いってことにはならないでしょうが!」
「大丈夫。見られて困るような恥ずかしい部分は布地で隠れてるし」
「そういう問題じゃな~~~~~い!!」
「安心しろ。亮介たちには君の試合映像は渡していない。あの場で見せた1回限りだ」
「だからもぉぉぉ~~~~~~!!」
もういいや、何を言っても上手く返されそう。大きく溜息を吐いたわたしは「もういいよ」そう言ってルシルから離れると、「すまない。配慮が足りなかった」ルシルが頭を下げて謝った。胸がズキッと痛む。そうだよね、ルシルだってわたしを困らせるためじゃなくて、喜ばせようとして撮って来てくれたんだもんね。
「わたしの方もキツく言ってごめんね。ちょこっと減点部分もあったけど、それでもみんなからメッセージを貰って来てくれてありがとう」
「シャル・・・。ああ、どういたしまして」
わたしとルシル、お互いに微笑み合って和解。そして最後のお祝いメッセージが流れる。モニターに表示されたのは、「グレアムおじさん、リーゼアリアさん、リーゼロッテさん・・・」はやてが言うように、艦隊指揮官・執務官長と言った経歴を持つ元顧問官、ギル・グレアム、それにその使い魔でありクロノの師匠でもあるリーゼ姉妹だった。
(そして、はやてにご両親の知り合いだと騙って援助していた。さらに、闇の書の封印のためという名目で、はやてごと闇の書を永久凍結封印しようと企てていた。まぁそれもルシルによって阻止されたんだけど)
グレアム元提督が“闇の書”事件の手綱を握ろうとしてたのは、事件後に本人から聴いた話だったんだけど、はやてを犠牲にしようとしてたことを知ったのは中学校の入学式当日だ。はやての家にグレアム元提督とリーゼ姉妹がやって来て、グレアム元提督がこれまで抱えてた秘密を全てはやてに打ち明けた。
(はやては自分を死なそうとしてたグレアム元提督たちを笑顔で許して、それどころかこれまで守ってくれてたことに感謝した。はやてはホント器の大きな子だよ)
『クロノ。久しぶりだな。リンディやルシリオン君から、お前がアースラの艦長に就任すると聞き、こうしてメッセージを送らせてもらうことした』
『やっほー、クロスケ♪ ロッテだよ~♪』
『アリアだよ、クロノ。久しぶり』
『まずは、アースラ艦長就任おめでとう、と贈らせてほしい。あの小さかったクロノが艦長職に就ける程にまで成長するという時間の経過が早いことに驚いているよ』
『本当だよ。あのクロスケが一国一城・・・うんや、一艦の主になっちゃうなんてね~』
『父さまと同じ思いだよ。あんたに魔法を教えてた頃のことがまだつい最近のように思えるのにね』
『私に言えることじゃないが、お前の父はとても優秀で素晴らしい艦長だった。そして母もまた同様に良き艦長だった。共に素晴らしい艦長だった両親を持ったことを誇れ。そして胸を張れ、クロノ。お前もまた優秀な艦長となるだろう』
『うん。クロスケ、おめでとう』
『おめでとう、クロノ。師として誇らしいよ』
『私とアリアとロッテは、この遠き地よりお前たちを応援しているよ。では最後に、改めてアースラ艦長就任おめでとう』
滅多に泣かないクロノも今回ばかりは涙ぐんでる。今がどうあってもグレアム元提督たちはクロノにとっては大恩人だしね。
こうしてわたしとクロノとユーノを祝うパーティーの幕は閉じた。とても美味しい料理を食べれたし、サプライズのビデオメッセージも見れたし、すごく満足できた。今度の主役は一体誰になるのかな。まぁ誰になっても、今回のパーティーに負けないようなものにするけどね。
「――ところでさ、ルシル。咲耶たちのビデオメッセージ、アレっていつ撮ったの?」
「大体1週間くらい前か」
「それってつまり海鳴市に帰って来てたってことだよね?」
「まぁ、そうなるな」
「わたし達、ルシルが帰って来てるなんて知らなかったんだけど?」
「教えたら、何しに来たの?と訊いてくるだろ? そうだとサプライズにならじゃないか」
「そんなん訊かんわ! 教えてよ、帰って来たら! すんごい寂しいんだから!」
「お、おう・・・。というか、学校の帰り道で訊いてきたよな」
「お、おう・・・、ごめん」
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