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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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第170話

~ウルスラ間道~



「―――至ったか。」

声が聞こえた方向に視線を向けるとアリオスがリィン達の行く手を阻むように静かに立ち塞がっていた。

「貴方は一体……」

「おいおい……マジかよ。最悪の予想が当たっちまったじゃねえか……」

「……―――お久しぶりです、アリオスさん。」

アリオスの正体がわからないリィンが戸惑っている中、トヴァルは疲れた表情で呟き、サラ教官は複雑そうな表情で会釈した。



「え……」

「お二人のお知り合いですか?」

トヴァルとサラ教官の反応を不思議に思ったアリサは呆け、エリスは不思議そうな表情で尋ねた。

「ああ……あの人には俺達も世話になったからな。それとリィン、”八葉一刀流”の使い手であるお前さんなら、アリオスさんの名前くらいなら聞いた事があるんじゃねえのか?」

「え…………”アリオス”…………―――!まさか……貴方が”風の剣聖”アリオス・マクレインなんですか!?」

トヴァルに視線を向けられたリィンは自分の思い当たるある人物を思い出し、信じられない表情でアリオスを見つめた。



「”剣聖”だと!?」

「じゃ、じゃああの人もカシウス准将やエリゼと同じ……!」

「―――”八葉一刀流”の”型”を”皆伝”されている方ですか……」

「相当手強い相手が来ましたわね……」

アリオスの正体にユーシスとアリサが驚いている中、エリスとメサイアは不安そうな表情でアリオスを見つめた。



「サラにトヴァルか……壮健そうで何よりだ。―――いや、エレボニア帝国の内戦の切っ掛けとなった”クロイス家”に協力していた俺が言えた義理ではないな……」

「……アリオスさん。何であんた程の人が”D∴G教団”の真の黒幕で自分達が作った”至宝”でゼムリア大陸の歴史を滅茶苦茶にしようとした連中の味方になったんだ?」

「もしかして5年前の事故の件ですか?」

アリオスに質問するトヴァルに続くようにある事を察したサラ教官は複雑そうな表情で尋ねた。



「それも要因の一つだ。だが一番の理由はクロスベルという地に纏わりつく呪いから解き放つ為だ。」

「の、”呪い”ですか……?」

「……それは一体どういうものなのですか?」

アリオスの答えを聞いたメサイアは戸惑い、エリスは不安そうな表情で尋ねた。



「……妻であるサヤを奪い、娘であるシズクの目を奪った事故――――二大国の破壊工作による”事故”という名の”呪い”だ。」

「そ、それって……!」

「”クロスベル問題”か。」

アリオスの説明を聞いたアリサは血相を変え、ユーシスは重々しい様子を纏って呟いた。



「なるほどな……アリオスさんがクロイス家に加担した理由は二大国の重圧からクロスベルを解放する為だったんですか。」

「アリオスさん。”通商会議”の時にメンフィルと協力した”六銃士”が二大国からの干渉を弱めた所か、クロスベルで犯罪を犯した二大国出身の犯罪者の罪も二大国の干渉によって軽くできなくなったと聞いています。それでは満足できなかったのですか………?」

「―――根本的な解決にはなっていない。逆に聞くがカルバードのロックスミス大統領もそうだが、エレボニアの”鉄血宰相”がその程度の事でクロスベルを諦めると思っているのか?」

「…………………」

「フン、確かにあの男なら隙あらばクロスベルを領土にする為に暗躍しただろうな。」

トヴァルの後に問いかけた自分の質問に答えたアリオスの話を聞いたサラ教官は複雑そうな表情で黙り込み、ユーシスは鼻を鳴らして真剣な表情で呟いた。



「それに俺は”至宝”となったキーアの”奇蹟”に頼り、シズクの目に再び光を与えて貰い、更に俺達の計画に気付き、俺達を止めようとした親友も死なせてしまった。今更後戻りできる道理はない。」

「アリオスさんの親友……遊撃士協会にも知られていたクロスベル警察の一課の刑事、ガイ・バニングスですか。という事は彼の殺害事件に貴方も関わっていたのですね……」

「アリオスさん………………拘置所にいるはずのあんたが今この場にいるのも、”キリングベア”同様”減刑”の為ですか?」

アリオスの話を聞き、サラ教官と共に複雑そうな表情をしていたトヴァルは尋ねた。

「確かにその話は持ち掛けられた。だが、俺は俺自身の”減刑”の為にお前達を阻む”試練の相手”になった訳ではない。」

「え……それじゃあ一体何の為に……」

予想外の答えに驚いたエリスは戸惑いの表情でアリオスを見つめた。



「―――第2、第3のクロスベルを作らない為だ。」

「第2、第3のクロスベルを作らない為だと……?」

「一体どういう意味なんですか?」

アリオスの言葉を聞いたユーシスは眉を顰め、アリサは不思議そうな表情で尋ねた。

「もし仮にメンフィルとクロスベルに情状酌量を許されたとしてもエレボニア帝国に待っているのはかつてない衰退だ。そしてかつてのエレボニア帝国を少しでも取り戻す為にエレボニア帝国は自治州や小国に干渉し、更には暗躍する可能性も十分考えられる。―――他の自治州や小国を自国の領土とし、少しでも失った領土を補う為にな。」

「なっ!?エレボニアの皇族の方々はそのような事は望んでいません!確かに過去エレボニア帝国は自国の領土を増やす為に様々な暗躍を行いました。ですが、その暗躍の中心にいたオズボーン宰相は…………」

アリオスの話を聞いて驚いたリィンはアリオスに説明をした後複雑そうな表情で黙り込んだ。



「例え”鉄血宰相”ではなくても、そのような考えをする者は皆無ではあるまい。―――現に”鉄血宰相”の遺志を継ぐ者達の一部は未だ健在だ。」

「そ、それって……」

「間違いなく”鉄血の子供達(アイアンブリード)”の事でしょうね。」

「ま、実際今までの暗躍にあいつらが関わっていないと言えば嘘になるな。」

「………………」

アリオスの答えを聞いてある事を察したアリサは不安そうな表情をし、サラ教官とトヴァルの話を聞いたエリスは辛そうな表情で黙り込んでいた。



「第2、第3のクロスベルが現れれば、かつてのクロスベルの悲劇が繰り返され、第2、第3の俺のような考えをする者達が現れるだろう。―――ならばその”元凶”になりうる可能性が高いエレボニア帝国がそのまま滅びれば、そのような事が起こる可能性を低くできるだろう。」

「そ、そんな……!確かにエレボニア帝国は”前科”がありますから、反論できませんけど……だからと言ってそう言った事をするのはどの国も可能性があるんじゃないんですか!?」

アリオスの話を聞いたアリサは悲痛そうな表情をした後反論した。

「――否定はせん。だが、様々な事情を鑑みれば現状でそのような事をする可能性が一番高い国家はエレボニア帝国だと思うが?」

「そ、それは…………」

「クッ…………!」

アリオスの言葉に対して反論が見つからないエリスは不安そうな表情で言葉を濁し、ユーシスは唇を噛みしめた。



「…………―――アリオスさん。確かに過去エレボニア帝国がクロスベルにしてきた事を考えれば、エレボニア帝国をそんな風に見てしまうのも仕方ない事かもしれません。ですが、エレボニア帝国自身も”クロスベル問題”を重く見て、クロスベルの為に自ら動いた方がいらっしゃるのもお忘れですか……?」

「に、兄様……?」

「……一体誰の事を言っている。」

リィンの言葉を聞いたエリスは戸惑い、アリオスは眉を顰めて先を促した。

「―――”通商会議”の場でエレボニア帝国の皇族のオリヴァルト殿下が”六銃士”とメンフィルと共謀してオズボーン宰相とロックスミス大統領の政治生命に大打撃を与えた出来事はお忘れですか?」

「!!」

「そう言えばそんな事もあったな……!」

「あの時オリヴァルト殿下はオズボーン宰相の擁護に回らず、逆に非難していたと聞いているわ。」

リィンの答えを聞いたアリオスは目を見開き、トヴァルとサラ教官は口元に笑みを浮かべた。



「オズボーン宰相は皇帝であるユーゲント陛下にも強い信頼を置かれている方です。にも関わらずオリヴァルト殿下はオズボーン宰相や”革新派”どころか父親であるユーゲント陛下にも敵視され、更にはエレボニア帝国自身の立場が悪くなる可能性も覚悟の上で、”六銃士”とメンフィルの共謀に力を貸したのですよ?アリオスさんはそんな殿下の覚悟すらも無下にし、エレボニア帝国に滅びろと仰るのですか?」

「………………」

「リィン様……」

リィンの問いかけにアリオスが黙り込んでいる中メサイアは微笑み

「それに……そのような”筋の通らない”事は俺達”Ⅶ組”や、俺達と同じ考えをする方々が見逃さず、未然に防ぐ為に必ず動くで……いえ、絶対にそんな事をさせない為に動きます。どうかその可能性を信じて頂けないでしょうか……?」

「――――リィン・シュバルツァー。お前の祖国はメンフィル帝国だ。メンフィル帝国所属のお前が言ってもその言葉に意味はなさない。」

「……確かに俺はエレボニア帝国所属ではありません。だけど立場は違えど、同じ目的の為に協力するのが”Ⅶ組”です。そして”Ⅶ組”で培ってきた”絆”や経験は学院を去っても失われないと信じています……!そして先程仰ったように第2、第3のクロスベルが現れる可能性があるように、第2、第3の俺達のような存在が現れる可能性も必ずあります!」

「リィン……!」

「フフッ、一丁前に言うようになったわね。」

アリオスの問いかけに対するリィンの言葉にアリサとサラ教官は明るい表情をした。



「………そこまで言い切るのならばお前達の”意志”が”本物”か……そしてその不確かな”可能性”の為だけにエレボニア帝国の滅亡を防ぎたいのならば、自分達の”力”で示し、道を切り拓いてみるがいい!」

するとその時アリオスは膨大な闘気を全身に纏って太刀を構えた。

「……わかりました。オリヴァルト殿下に希望を託され、多くの方々の協力によって立ち上げられた特科クラスとして…………エレボニア皇族の方々を始め、大勢の人々の想いを託された”Ⅶ組”として……貴方や”特務支援課”という”壁”を乗り越え、エレボニア帝国の滅亡を防ぎ……本当の意味でメンフィルとクロスベル、エレボニアの外交問題を解決してみせ、俺達の仲間を……クロウ達を助けてみせる!」

「…………!」

「リィン……!」

「フフッ、さすがは”Ⅶ組”の”重心”ね。」

決意の表情で太刀を構えて全身に膨大な闘気を纏っているリィンの言葉にアリオスが驚いている中、アリサとサラ教官は明るい表情で武器を構え

「俺達に希望を託し、リベールに自ら嘆願をしに向かった陛下達の為にも……!」

「絶対に退()けません……!」

ユーシスとエリスはそれぞれ決意の表情で武器を構え

「微力ながら俺も手伝うぜ!」

「リィン様に仕える者として……”Ⅶ組”の方々と協力し合った”仲間”として……私も全力で助力致します!」

トヴァルとメサイアもリィン達に続くように武器を構えた!



「フフ、話には聞いていたがまさかここまでロイド達に似ているとはな……―――いいだろう!八葉一刀流、二の型奥義皆伝、アリオス・マクレイン……一身上の都合により、義に背き、エレボニア帝国の未来を阻む”壁”として立ち塞がらせてもらう!来るがいい――――特科クラス”Ⅶ組”!」

自分自身を超えたロイド達と目の前にいるリィン達を重ねたアリオスは静かな笑みを浮かべた後決意の表情でリィン達を見つめて叫び

「おおっ!!」

リィン達全員は力強く答えた後戦闘を開始した!



今ここに!かつては”クロスベルの真の英雄”と称えられた”風の剣聖”アリオス・マクレインに挑む戦いが始まった……! 
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