英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第165話
~クロスベル市・中央広場~
「あの二人がさっきの話にあった”零の至宝”……普通の人達にしか見えなかったわよね?」
「それよりも先程の子供の方が最後に言っていた言葉が気になるな……」
ルファディエルと二人のキーアが去った後アリサは戸惑いの表情をし、ユーシスは考え込んだ。
「”試練”と仰っていましたが。」
「しかもあの口ぶりだとバリアハートやリベールに向かった連中にも”試練”とやらがあるみたいに聞こえたな。」
エリスの言葉に続くようにトヴァルは真剣な表情で呟いた。
「その話も気になりますが……先程現れた女性の方は私達の事を知っている様子でしたが……」
「むしろ知っていて当然だと思うぜ?さっきの女刑事は”叡智のルファディエル”って言うとんでもない切れ者の女刑事でな。奴は”特務支援課”のリーダー―――ロイド・バニングスが契約している異種族にして、クロスベル警察の中でも刑事としてトップクラスの能力を持つとんでもない女だ。当然戦闘能力も相当な使い手だと聞いているぜ。」
エリスの疑問にトヴァルは静かな表情で答え
「何だと!?」
「という事はロイドさんも異種族と契約していたのですか……!」
「ええっ!?い、異種族って……さっきの人、どう見ても”人間”でしたよ!?」
トヴァルの説明を聞いたユーシスやリィンは驚き、アリサは信じられない表情をした。
「”叡智”は天使族なんだけど、何でも話によると天使族は”人間”に変化できる術があるそうよ。」
「え……じゃ、じゃあ先程の方は”天使”なのですか……!?」
「見た目は普通の人間にしか見えませんでしたが……」
サラ教官の説明を聞いたエリスは驚き、リィンは戸惑いの表情をした。
「驚く事はそれだけじゃないぜ……あの女刑事はとんでもない腹黒女でな。膨大な知識量とずば抜けた推理や予測で数々の難事件を解決したり、未然に防いできたそうなんだが……”鉄血宰相”とロックスミス大統領が”通商会議”でメンフィルと”六銃士”に嵌められた件は覚えているか?」
「え……どうしてその話が出てくるんですか?」
「……まさか、あの女があの件に関わっていたのか?」
トヴァルの問いかけを聞いたアリサは戸惑い、ある事を察したユーシスは真剣な表情で尋ねた。
「ええ。というか”叡智”が”鉄血宰相”とロックスミス大統領を嵌める”策”を考えて、その”策”を実行する為にメンフィルと”六銃士”と手を組ませて実行させた”真の黒幕”よ。」
「な―――――」
「ど、どうして天使族の方が御二方を陥れるような事をしたのでしょうか……?」
サラ教官の答えを聞いたリィンは絶句し、エリスは不安そうな表情で尋ねた。
「”叡智”の真意については不明だが、エレボニアとカルバードの”通商会議”での暗躍を考えれば、クロスベルに対する二大国の暗躍を防ぐかつ大反撃をして、2度とクロスベルに手を出させない為だと思うぜ。」
「何?”通商会議”での暗躍だと?一体どういう事だ?」
トヴァルの話を聞いたユーシスは眉を顰めて尋ねた。そしてサラ教官とトヴァルはオズボーン宰相とロックスミス大統領はそれぞれ自分達が”通商会議”の際にテロリスト達に狙われる事を知っていて、それを利用してクロスベルの治安維持の欠点を指摘し、エレボニアとカルバード、それぞれの軍をクロスベルに在留させるつもりであった事を説明した。
「それは…………」
「帝国政府が雇った猟兵団―――”赤い星座”が”G(ギデオン)”達の逃亡先に待ち構え、その前に”六銃士”達が待ち構えて”帝国解放戦線”を制圧したとの事ですが……そのルファディエルさんはまさか、”帝国解放戦線”とカルバードのテロリストの行動すらも読んでいたのでしょうか?」
説明を聞き終えたアリサは複雑そうな表情をし、リィンは真剣な表情で尋ねた。
「ええ。信じられない事にテロリスト達の侵攻ルートから暗殺に失敗した時の行動や逃亡ルートまで全て予想していたそうよ。」
「フン、という事はクロウが考えた”計画”を”鉄血宰相”が利用し、更に先程の女がクロウと”鉄血宰相”の計画を利用したという事になるな。」
「あ…………」
サラ教官の話を聞いてある事に気付いたユーシスの話を聞いたリィンは複雑そうな表情をした。
「ええ、そうなるわね。ちなみにプリネ達をクロスベルで特別実習をする事になったのはクロスベルで”表の顔”として貿易商を営んでいるカルバードの裏組織にプリネ達と戦わせる事で、メンフィル皇女並びに貴族の殺害を企てた犯罪組織に仕立て上げる為だったそうよ。」
「ええっ!?じゃ、じゃあプリネ達をクロスベルに向かわせたリウイ陛下――――メンフィルの”真の目的”って……!」
「プリネさん達だけクロスベルで特別実習をした本当の目的は先程の女性――――ルファディエルさんの”策”を実行する為だったのですか……」
サラ教官の説明を聞いてある事に気付いたアリサは驚き、リィンは重々しい様子を纏って呟いた。
「しかも性質の悪い事にあの”通商会議”で”鉄血宰相”とロックスミス大統領を糾弾したのは”六銃士”で、”叡智”はほとんど目立たなかったから、事情を知らないエレボニアとカルバード、レミフェリアはあの糾弾は全て”六銃士”が企んだ事だって勘違いしていると思うぜ?」
「も、もしかしてそれも”策”の一つなのでしょうか……?」
トヴァルの説明を聞き、ある事に気付いたエリスは不安そうな表情で尋ね
「恐らくそうでしょうね。あれだけの大事を考えて実行した上、あえて肝心な所は目立ちたい人物達に任せて自分の周りには敵を作らない………ホント、あんな腹黒女が何で警察に務めているのかわからないわ。」
「天使ではなく”堕天使”と呼ぶべき女だな。」
サラ教官は答えた後疲れた表情で溜息を吐き、ユーシスは眉を顰めて呟いた。
「……あ。もしかしてオリヴァルト殿下が言っていた女性ってルファディエルさんの事でしょうか?」
「あ………」
リィンの問いかけを聞いたアリサや他の者達はルイーネに対するオリヴァルト皇子の感想を思い出した。
ハハ……とんでもない女性だ……私の知る謀略に関して、天才的な能力を持っているクロスベル警察に所属するもう一人の女性とも同等かもしれないな……
「間違いないと思うぜ。クロスベル警察で謀略に長けている人物で有名なのは”叡智”しかいねぇからな。」
「しかもクロスベル警察でもそれなりの地位もある”叡智”は”特務支援課”の課長の一人……―――つまり”Ⅶ組”で言えばあたしやレーヴェと同じ担任教官のような存在で、”叡智”がもう一人の課長と共に”特務支援課”を育て上げたといってもおかしくないわ。」
「という事はロイドさん達の強さや凄さはあの人も関係しているのですか……」
「フン、同じ教育者として少しは見習ってもらいたいものだな。」
トヴァルと共に説明したサラ教官の話を聞いたアリサは目を丸くし、ユーシスはジト目でサラ教官を見つめた。
「うっさいわね!あんな腹黒女とあたしを比べるんじゃないわよ!――――それよりも今は優先すべき事があるわ。」
「はい。急ごう、”ウルスラ病院”へ……!」
サラ教官の言葉に頷いたリィンは仲間達を見回して号令をかけた。その後リィン達は徒歩でウルスラ病院に向かい始めた。
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