英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第164話
同日、14:00――――
~クロスベル市・中央広場~
「駄目ね……確かにクロスベルのVIPの人達が市内で復興活動はしていたけど、クロスベル帝国軍の人達が傍にいるから迂闊に近づけないわね……」
「後探していないのはオルキスタワーと市外だが……」
「あ…………」
アリサとトヴァルが考え込んでいたその時碧色の髪を持つ女の子の声が聞こえ、声を聞いて振り向いたリィン達は辛そうな表情で自分を見つめている少女に気付いた。
「えっと……」
「何だ、迷子か?悪いが他を当たれ。普段の俺達ならともかく今の俺達はそれどころじゃない。」
「ユ、ユーシスさん……」
「あなたね……せめて警察まで連れていって事情を説明してあげればいいじゃない。」
「!!」
「おい、その娘は確か……!」
リィン達が少女の登場にそれぞれ反応している中、少女の容姿を見て何かに気付いたサラ教官とトヴァルは血相を変えた。
「――――14:00ちょうど。キーアの時代のミントが言っていた通りの時間だね。」
その時少女の容姿に似たイーリュン教の司祭服を身に纏った女性が少女の背後から現れた。
「へ……」
「貴女は一体……」
「…………―――”この時代”では”初めまして”だね。リィン、アリサ、エリス、ユーシス、サラ、トヴァル。」
「何だと……?」
「”この時代では”……まさかあんたもあのエステルの娘と同じ……!?」
戸惑っているリィン達を見回して呟いた女性の言葉を聞いたユーシスは眉を顰め、ある事に気付いたサラ教官は真剣な表情で女性を見つめた。
「―――キーア・バニングス。キーアは今から10年後の未来から来たキーアだよ。」
「ええっ!?そ、その名前は確か……!」
「先程の話にあった”零の至宝”か……」
「そ、それじゃあそちらの方はまさか……!」
女性―――未来のキーアの自己紹介を聞いたアリサは驚き、ユーシスは真剣な表情で呟き、エリスは信じられない表情で少女を見つめ
「うん……キーアがリィン達と同じ時代を生きる時代のキーアだよ。ちなみに今のキーア達は”零の至宝”としての力はほとんど失っているよ。」
少女―――キーアは静かな表情で頷いて答えた。
「……あたし達に何の用かしら?」
「マルギレッタを探しているのでしょう?それをリィン達に教えるのがキーアの”役目”だから。」
サラ教官に問いかけられた未来のキーアは静かな表情で答え
「え……じゃあ、貴女が先程のサティア様の話にあった……!」
「俺達にマルギレッタさんの居場所を教えてくれる人か……それでマルギレッタさんはどこにいるんですか?」
未来のキーアの話を聞いたエリスは驚き、リィンは真剣な表情で尋ねた。
「――――”ウルスラ病院”。今はそこで病院の人達の手伝いをしているよ。」
「”ウルスラ病院”……クロスベルの南方面にある市外の病院ね。」
「よし……居場所はわかったんだ。急ぐぞ!」
未来のキーアの話を聞いたサラ教官は静かな表情で呟き、トヴァルはリィン達を促した。
「―――待ってください。一つだけ聞かせて下さい。何で俺達の”歴史の流れ”を滅茶苦茶にしたのですか……?”本来の歴史の流れ”なら、俺達はクロウ達と決着をつける事ができたとサティアさんから聞いていますよ……!?」
「リィン……」
「兄様……」
唇を噛みしめて怒りを必死に抑えている様子で二人のキーアに問いかけるリィンをアリサとエリスは辛そうな表情で見つめていた。
「―――そうだね。でも、”本来の歴史”ならクロウは死んでいた上、クロウが人生を費やしてまで行った人―――オズボーンの暗殺も結局は失敗に終わったよ?リィンはそれでよかったの?」
「ッ!!それは…………だったら、貴女がそうならないようにできたんじゃないんですか!?」
「逆に聞くけど何でキーアが”赤の他人のリィン達の為にそこまでしなくちゃならないの?”」
「な、何でって……」
未来のキーアの口から出た非情な答えにリィンは信じられない表情をした。
「……それとどの道クロウの死は避けられないよ。例えあそこで生き延びる事ができたとしても、クロウのやって来た事はあのオズボーンって人もそうだけど”エレボニア帝国”も許さないよ。」
「……ま、テロリストのリーダーだから”極刑”が降されるのが当然でしょうし、鉄血宰相が生きていたら間違いなくクロウを処刑していたでしょうね。」
「帝国解放戦線の幹部―――”V”の猟兵団もオズボーン宰相を狙ったから、皆殺しにされたらしいから、当然クロウも……」
「ッ!!…………」
そして話を続けた未来のキーアの指摘やサラ教官の推測、アリサの話を聞いたリィンは息を呑んだ後辛そうな表情で黙り込み
「今がリィン達にとってもクロウにとっても”一番マシな歴史”……それは確かな事だよ。」
「フン…………とは言ってもそのクロウがいつ死んでもおかしくない状況だがな。」
静かな表情で呟いた未来のキーアの話に対して鼻を鳴らしたユーシスは厳しい表情で二人のキーアを見つめた。
「………嬢ちゃん達に聞きたいんだが……さっきのリィンの質問――――”歴史の流れ”を変えた理由はまさか”特務支援課”が関係しているのか?確か嬢ちゃんはあいつらをかなり慕っているって聞いた事があるぞ。」
「!!………………」
「どうやらその様子だと当たりみたいね……まあ、あたし達の時代の貴女は10歳くらいだから、親代わりでもある彼らの為に自分の”力”を使うのも当然と言えば当然かもしれないわね……」
トヴァルの問いかけに目を見開いた後辛そうな表情をしたキーアの表情を見たサラ教官は複雑そうな表情で呟いた。
「例えそうだとしても奴らの為だけに俺達―――ゼムリア大陸の”歴史の流れ”を変えるのは間違っているぞ。貴様らの身勝手な行動によってどれ程の多くの犠牲者が出たと思っている?」
「ユーシス、まだこんな幼い女の子にそこまで言わなくてもいいでしょう!?」
ユーシスの指摘を聞いたアリサは真剣な表情で指摘し
「ううん……ユーシスの言う通り、ロイド達にもそれは間違っているって言われし、ユーシスは当然の事を言ってるだけだよ。」
キーアは首を横に振って辛そうな表情で答えた。
「……ヨアヒムに殺されるロイド達……その因果をキーアが変えても列車砲でオルキスタワーが砲撃されて、それに巻き込まれて死ぬロイド達……因果を変える事が悪いとわかっていても、キーアには変えられないという事はできなかったの……!」
「キーアさん………」
辛そうな表情で語った未来のキーアをエリスは辛そうな表情で見つめ
「おい、ちょっと待て。今何かとんでもない事を口走らなかったか?」
「オルキスタワーが”列車砲”で砲撃されたみたいな事を言っていたけど……まさか!?」
ある事に気付いたトヴァルは驚きの表情をし、サラ教官は血相を変えて二人のキーアを見つめた。
「うん……”リィン達が一発目の砲撃までに間に合わず、列車砲の砲撃によってオルキスタワーが崩壊する歴史”もあったよ……勿論、その時にリィン達の知り合いの人達も…………」
「何だって!?」
「じゃ、じゃああの時”列車砲”が空砲だったのは……!」
「嬢ちゃん達が”事故防止の為に最初は空砲という設計がされてある因果へと操作した”からか……」
「……もし、あの時砲撃されていたらトワやオリヴァルト殿下は間違いなくオルキスタワーの崩壊に巻き込まれていたでしょうね……」
「キーアさんは私達にとっても恩人に当たるのですね……」
「………………」
キーアの話を聞いたリィンは血相を変え、アリサは信じられない表情をし、トヴァルとサラ教官の推測を聞いたエリスは辛そうな表情で二人のキーアを見つめ、ユーシスは複雑そうな表情をした。
「正直貴女達には他にも色々と言いたい事がありますけど、貴女達によってクロウや会長達の命を助けられたのだから、俺達が貴女達のした事について指摘する権利はありませんし、そもそもその役割は貴女達の育ての親であるロイドさん達だから俺達はこれ以上何も言いません。―――ですが一つだけ正直に答えてください。」
「何を答えればいいの……?」
「貴女達によって”改変された歴史”のクロウとクロチルダさんは生きているのですか?」
「…………二人の未来についてキーアが答えられるとしたら、”リィン達次第”としか言えないよ。」
「え…………」
未来のキーアが答えた予想外の答えにリィンは呆けていた。
「あら?二人揃ってこんな所で何をしているのかしら?」
その時人間の姿をしているルファディエルが近づいてきた。
「あ、ルファディエル。」
(”ルファディエル”ですって!?)
(よりにもよって”叡智”かよ!ヤバイ奴に見つかっちまったな……!)
キーアの口から出たルファディエルの名を聞いたサラ教官とトヴァルは血相を変えてルファディエルを警戒していた。
「えっと……その人達に用事があったけど、もう終わったから帰る所だよ。」
「?……………!貴方達は確か…………」
未来のキーアの話を聞いたルファディエルはリィン達をジッと見つめてある事に気付き、ルファディエルの視線にリィン達は冷や汗をかいて黙り込んでいた。
「……フフ、本来なら密入国の罪でクロスベル警察まで同行してもらうべきだけど、こっちにも事情があるし、貴方達に構っている程暇じゃないから今回は見逃してあげるわ。―――二人とも行くわよ。」
「はーい。」
「うん……えっと……キーアが言うのは間違っているかもしれないけど…………頑張って……!リィン達の”シレン”は他の人達と比べると厳しいけど、リィン達ならきっと超えられるよ……!」
ルファディエルに促されたキーアはリィン達に応援の言葉を送った後未来のキーアと共にその場から去って行った。
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