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英雄伝説~光と闇の軌跡~(3rd篇)

作者:sorano
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第36話

~隠者の庭園~



庭園に仲間達と共に戻ったリースが封印石を解放すると意外な人物が光から現れようとした。

「え………」

「この人は………」

「む?これは意外な者が現れたな………」

光から現れようとした人物を見たエステルとヨシュア、リフィアは驚き

「ま、まさか…………」

「もしかして………!」

「おいおい、マジかよ………」

ユリアは信じられない様子で呟き、アネラスは嬉しそうな様子で、アガットもユリアのように信じられない様子で呟いた。そして光が消えるとなんとそこには現在は民間の調査会社を経営しているはずだが、かつての情報部の士官服を着たリシャールが現れた!

「くっ………閃光弾か!?何者だ―――名乗りたまえ!」

光から現れ地面に膝をついていたリシャールは唸った後、一歩下がって抜刀の構えをして叫んだ!

「なっ……………………………」

しかし目の前にいるエステル達に気付いた後、驚き、呆けて黙り込んだ。

「あはは………これは予想外だったわね。」

「………やはりお知り合いの方でしたか?王国軍の方のようですが………」

苦笑している様子のエステルに気付いたリースは尋ねた。

「ええ………馴染み深い人です。」

「え、えっと………これはさすがに予想できなかったね、ミントちゃん。」

「う、うん…………」

そしてリースの疑問にヨシュアは頷き、ツーヤとミントはそれぞれ戸惑った様子でリシャールを見つめていた。

「これは一体………エステル君にヨシュア君………ミント君にルクセンベール卿………そ、それにクローディア殿下にユリア大尉、リフィア殿下にプリネ姫、そしてティア姫………それに貴方方はユイドラ領主夫妻…………!」

一方抜刀の構えを解いたリシャールは目の前にいる人物達をよく確認して驚いた。



「リシャールさん。お久しぶりですね。」

「…………ご無沙汰しています。」

「久しいな。余もこんな所で再び邂逅するとは思いもしなかったぞ。」

「フフ、お久しぶりですね。」

「……わかってはいましたけど、ティア(あの娘)を知っている方達はみんな、私をあの娘と勘違いしてしまいますね…………」

「初対面なのに、俺達の事も知っていたんだ。」

「フフ、私達の事も新聞等で報道されていましたからね。」

「…………あなた達はともかく、私まで知られる必要はなかったんだけどね………」

クローゼは微笑み、ユリアは目礼をし、リフィアは声をかけ、プリネは微笑み、ティナは苦笑し、ウィルは驚き、その様子を見たセラウィは微笑み、エリザスレインは溜息を吐いていた。

「………こちらこそ。挨拶が遅れて申し訳ありません。王太女殿下並びに我が国の盟友たる殿下達、ウィル閣下達におかれましてはご機嫌うるわしく………」

そしてリシャールは臣下の態度―――地面に膝をついて顔を下に向けて挨拶をした。

「やれやれ………堅物な所は相変わらずだな。」

「え、え~と………そこまで身分は高くないから、そんなにかしこまった言い方をしなくていいよ?」

「ふふ、顔をお上げ下さい。お元気でいらっしゃいましたか?」

その様子を見たリフィアは溜息を吐き、ウィルは戸惑い、クローゼは苦笑した後、優しい微笑みを浮かべて尋ねた。

「は、女王陛下の格別のお慈悲を持ちまして………しかしこの状況………どう考えても判然としません。できれば詳しい事情をお教え頂けないでしょうか?」

「………それについては私の方からご説明しましょう。」

「君は………」

「初めまして。七耀教会、星杯騎士団所属、リース・アルジェントと申します。」

「星杯騎士団…………!………なるほど。尋常ならざる事態が起きているものとお見受けした。」

リースの正体を知ったリシャールは驚いた後、納得した様子で呟き、そして立ち上がった。

「………お初にお目にかかる。私の名はアラン・リシャール。元・王国軍情報部大佐にしてクーデター事件を企てた逆賊………そして現在では『R&Aリサーチ』という調査会社を経営している者だ。」

その後リース達はリシャールに状況を説明し、初対面の者達は自己紹介をした。



「なるほど。事情は一通り理解した。しかし……何と言ったらいいものか。」

「ん、どうしたの?やっぱりこんな話、いきなり信じるのは無理?」

戸惑っている様子のリシャールを見たエステルは尋ねた。

「正直な所、それもある。だがそれ以上に………『なぜ私なのか』と思ってね。」

「へ………」

「顔ぶれを拝見する限り、ここに集まった者はそれなりに縁のある者同士のようだ。両世界とは異なる世界から集まった者達に関してはいずれも若輩ながらもここにいる者達に負けない英傑ばかり………女神の導きか、何らかの意図か………まさに共に協力し合うのにふさわしい関係にあると言えよう。」

「言われてみれば………」

「………僕は”冒険家”。確かに今までの冒険でさまざまな国が抱えていた問題を解決したけど、そこまで評価される事は無いと思うんだけどな………」

「あ、あはは………”英傑”だなんてさすがにそれは言い過ぎだと思いますよ?」

「謙遜する事はないの、ナユタ。ナユタはクレハ様や私達、そして星中のみんなを助けたんだから!」

リシャールの話を聞いたエステルは納得した様子で呟き、アドルは静かに答えた後考え込み、ナユタは苦笑し、ノイは嬉しそうな様子でナユタを見つめた。

「ボクは別にあんたと協力したくないけどね。ノーテンキが移りそうだし。」

「あ、あんですって~!?」

「………2人とも。」

いつものように口喧嘩を始めようとしたジョゼットとエステルをヨシュアは呆れた様子で見つめて呟いた。

「コホン………だが、この私はどう考えてもこの場にいるのに相応しい人物だとは思えない。かつて大それた陰謀を巡らし、君達、いやリベールそのものを窮地に陥れた大罪人………いったい何の間違いかと思ってね。」

「リシャールさん………」

リシャールの話を聞いたクローゼは心配そうな表情で見つめた。



「で、でも………!大佐だって王都が襲われた時、駆けつけてくれたじゃない!?」

「そ、そうですよ!あの部下の人達と一緒に街のみんなを助けてくれて………」

「ふふ………正直、あれは助かったわね。」

「その後も、ハーケン門に向かった僕たちやクローゼの代わりに王都の守りを引き受けてくれました。」

「たしかに、そういう意味じゃ協力者だったと言えなくもねぇな。」

「それに大罪人でしたらリシャール殿と同じく情報部の少尉として暗躍し、そして結社の”執行者”としてリベールを窮地に陥れたロランス少尉―――レーヴェも同じですけど、レーヴェもリシャール殿と同じようにこの”影の国”に取り込まれている可能性もあるんですよ?」

「取り込まれていないかもしれないけどね。………というかむしろその方がいい。」

「全くお前とリウイのレーヴェへの態度は全然変わらんな………”神格者”になる為にあのミラの修行に耐えているのだから少しは評価してやってもいいだろうに。」

リシャールの言葉を聞いたエステル、ティータ、シェラザード、ヨシュア、アガット、プリネは納得させる言葉を言い、エヴリーヌが呟いた言葉を聞いたリフィアは呆れた表情で溜息を吐いた。

「しかし………」

エステル達の言葉を聞いたリシャールだったが、それでも納得していない様子だった。

「フッ、リシャール殿。それを言うなら、まさにその時、エステル君やリベールの敵として立ち塞がっていたのはこのボクだ。そのボクが何のためらいもなく仲間として身分を謳歌している………それを考えたら、貴方がそんなに葛藤する必要はないと思うけどねぇ。」

「……お前はもう少し葛藤した方がいいと思うのだがな。」

その様子を見たオリビエは助言をし、オリビエの助言を聞いたミュラーは顔に青筋を立てて呟いた。

「ですが、皇子………あなたは最初から帝国軍の陰謀を食い止めるために動いておられた。やはり私とは立場が違うでしょう。」

「それを言うならボクは?ボク達だって、あんたたち情報部に利用されていたとはいえ、空賊をしてたことには変わりないよ。ま、色々あったけど今は女王陛下に赦してもらって民間の運送会社なんかやっている。似たような立場なんじゃないの?」

「それは……」

「ま、大切なのは過去じゃない。現在(いま)と未来ってことでしょう。」

「そうですよ!リシャールさんの剣があれば私達もすごく助かりますし………ここは是非、ご協力をお願いします!」

オリビエの言葉を聞いてもまだ納得していないリシャールにジョゼット、ジン、アネラスはそれぞれ納得させる言葉を言った。

「………アネラス君。」

「って、アネラスさん。何気に大佐と知り合いだったりするの?」

「あ、えへへ………この前、カシウスさんと会った時にちょっとあって。」

「へ、父さんと?」

アネラスの話を聞いたエステルは驚いた。



「―――話を伺っている限り、あなたの協力を拒む理由はどこにもなさそうですね。むしろ是非とも力になって頂ければと思います。何でしたら、星杯騎士団への協力という名目でも構いません。いかがでしょうか?」

「…………………解った。どうかよろしくお願いする。」

「やった!」

「ふふ………良かった。」

「よろしくお力添えください。」

「”剣聖”直伝の抜刀技………どのような剣技なのか見せてもらうぞ?」

「………よろしければ後でどのような抜刀なのか見せて下さい。もしかしたらあたしの抜刀技に組み込めるかもしれませんので。」

そしてリースの言葉を聞いてようやく納得したリシャールを見たエステルは喜び、クローゼとユリアは微笑み、リフィアは不敵な笑みを浮かべ、ツーヤは静かな表情で言った。

「はは………期待に沿えればいいのだが。それはともかく………一つ、確認したいことがある。」

「………何でしょうか?」

「私達全員、ほぼ同時刻にいきなり白い光に包まれてこちらに飛ばされてきた………―――その時の格好は皆、そのままなのだろうか?」

「へ………」

リシャールの疑問を聞いたエステルは何のことかわからず、首を傾げたが

「!そういえばリシャール殿………退役されたはずなのにどうして情報部の軍服を?」

「あ………」

「ふむ、そういうことか………察するに、白い光に包まれた時、貴方は別の格好をしていたのだな?」

何かに気付いたユリアの言葉にエステルも気付き、ミュラーは頷いた後静かに尋ねた。



「…………お察しの通りだ。現在、私はルーアン市で事務所を構えているのだが………そこでかつての軍服に袖を通したことは一度もない。白い光に包まれた時もシャツにスラックスという普通の出で立ちだったはずだ。」

「それは………確かにおかしな話ですね。今までにないパターンなのかもしれません。」

「はっ、もしかして………あの”影の王”君が『やっぱり大佐には軍服だよね』ってわざわざ着替えさせたりしたとか?」

リシャールの説明を聞いたヨシュアは考え込む一方、オリビエは全員を脱力させる言葉を言った。

「あ、あんたね………」

「そ、それじゃあただの軍服フェチじゃない。」

「あ、でもちょっとわかる気がするけど………」

「うーん、ボクも。」

「…………………」

オリビエの言葉を聞いたシェラザードとエステルは呆れたが、アネラスとジョゼットは納得した様子で頷き、クローゼは黙って何度も頷いていた。

「君達………」

「ったく、最近の小娘どもは………」

「「???」」

その様子を見たリシャールとアガットは呆れ、ティータとミントは首を傾げていた。

「ま、いずれにせよ、新たな手掛かりにはなりそうだ。俺達が飛ばされてきた理由………そろそろ掴めそうな気がしてきたな。」

「ええ、僕もそんな気がします。それどころかこの”影の国”の成り立ちも………」

「そうか………ならば私も、この件については今は気にしないでおくとしよう。」

その後リース達は探索を再開した所、さらに封印石を見つけたので、解放する為に庭園に戻り、そして封印石を解放した。



「え………」

「まあ…………」

「………”影の王”の言葉通りになりましたね………」

「ああ。………やれやれ。リウイ達が解放された時の事を考えると頭が痛いな。」

「…………………出てこなくてずっと封印石の中にいたらよかったのに。」

(フン、同感だな。)

(グルルル…………)

封印石が解放され、光から現れようとした人物を見たエステルとティナは驚き、プリネは静かな表情で呟き、リフィアは頷いた後溜息を吐き、エヴリーヌは嫌そうな表情で呟き、リフィアの身体の中にいたディアーネは不愉快そうな表情で頷き、エステルの腕輪の中にいたカファルーは唸っていた。

「フフ、私はお妃様達の結婚式で会ったからそれほどでもないけど、ナベリウスは結構久しぶりでしょ?」

「うん…………」

「わあ………エクリア母様にやっと会えたです~!」

「まったく、手間をかけさせおって………」

「これで後はご主人様だけね。」

「あら?でも、格好が少しおかしくありません………?」

一方リタは微笑んでナベリウスに尋ね、尋ねられたナベリウスは頷き、サリアは喜び、レシェンテは苦笑し、マリーニャは口元に笑みを浮かべて呟き、シュリは何かに気付いて不思議そうな表情をした。そして光が消えるとそこにはなんとメイド服ではなく、かつて”姫将軍”と恐れられた服装で、さらに腰に刺し、鞘に収めてある連接剣を装備したエクリアが現れた!

「……一体今の光は?………!それよりもセリカ様達の無事を確認しないと………!……………え!?」

地面に膝をついていたエクリアは眩しそうな様子で呟い後、目を開いて立ち上がって決意の表情になったが、目の前にいる人物達に気付いて驚いて固まった。

「フフ、こんなにも早くまた再会するとは思わなかったよ、エクリアちゃん。」

「久し………ぶり…………」

「ご無事で何よりです。」

「エクリア母様~!」

「けど、どうしたの、その恰好は?」

「うむ。………いつの間に着替えたのじゃ?」

驚いているエクリアにリタとナベリウス、シュリは微笑み、サリアはエクリアに抱きつき、マリーニャとレシェンテは尋ねた。

「え……………なっ!?そ、そんな………!あの時の服や装飾品は全て売り払ったはずなのに…………!」

戸惑った様子でサリアを受け止めていたエクリアはマリーニャ達の言葉に首を傾げ、そしてすぐに自分の服装に気付いて驚き、信じられない表情をした。



「あ、あはは………大佐に続いてまさかエクリアさんも同じパターンになるとは思わなかったわ。えっと、久しぶりね、エクリアさん。こんなにも早く再会する事になるとは思わなかったわ。」

「エステルさん………………!そ、それに貴女達は………!」

エステルに話しかけられ、エステルに気付いたエクリアは驚いた後、リフィア達に気付いてさらに驚いた。

「久しいな、エクリアよ。フム………それにしてもまさか歴史で学んだ”幻燐戦争”時の………”姫将軍”としての服装で現れるとは余も予想できなかったぞ。」

「お久しぶりです、エクリア様。」

「あの時は道案内、ありがとうございました。」

「…………………」

そしてリフィアはエクリアに話しかけた後興味深そうな様子でエクリアを見つめ、プリネとツーヤは会釈し、エヴリーヌは嫌そうな表情をして黙っていた。

「リフィア殿下、プリネ姫……………そ、それに貴女は……………!」

リフィア達に話しかけられたエクリアは驚いた後、ティナに気づいてさらに驚いた。

「………こうしてお会いするのは”幻燐戦争”時以来ですね、エクリア様。まさか再びエクリア様と邂逅する時が来るとは思いもしなかったです。」

「ティナ様………なぜ神格者でもない人間の貴女が当時の姿で………?……………………………どうやら今までにない尋常な事態が起こったようですね。もしよければ、事情の説明の方をお願いします。」

「………どうやらマリーニャさん達と同じく”使徒”の方のようですね。わかりました。」

ティナに驚いた後、考え込み、そして真剣な表情のエクリアの言葉にリースは頷いた。そしてリース達はエクリアに事情を説明し、初対面の者達は自己紹介をし合った。



「……………そんな事が。………………………」

「え、え~と………やっぱり今の話じゃ信じられない?」

事情を聞いて考え込んでいるエクリアにエステルは苦笑しながら尋ねた。

「確かにそれもありますが、皆さんの話を聞いて少し気付いた事が。」

「え!?」

「一体何なのでしょうか?」

そしてエクリアの答えを聞いたエステルは驚き、リースは真剣な表情で尋ねた。

「その前にリシャール様。貴方に一つお聞きしたい事が。」

「私に?」

エクリアに急に名指しされたリシャールは驚いた。

「貴方はかつてエステルさん達と敵対していたと先ほどお聞きしましたが、今でもその事を強く後悔しているのですか?」

「!!ああ…………今でも後悔している。祖国たるリベールを窮地に陥れてしまったのだから…………」

「リシャールさん………」

「…………………」

エクリアに尋ねられ驚いたリシャールは辛そうな表情をし、その様子を見たクローゼとユリアは心配そうな表情で見つめていた。

「やはりそうですか………」

「納得していないでわらわ達にも教えてほしいのじゃ。」

「できればわかりやすくお願いします。」

リシャールの話を聞いて納得している様子のエクリアにレシェンテはせがみ、リースはエクリアを見つめて頼んだ。

「……………何らかの形で強い思い入れがある物………それが形になって現れた事です。」

「あ………!」

「…………確かにエクリア様にとってその服装はある意味強い思い入れがある服装ですものね…………」

そしてエクリアの答えを聞いたエステルは納得した様子で声を出し、ティナは辛そうな表情で呟いた。

「………事情はよくわかりませんがエクリアさんもリシャールさんと同じくその服装に強い思い入れがあるご様子………つまり、人の思いが何らかの関係があるようですね。」

「ルシオラ姉さんが見せた夢に少し近いかもしれないわね………」

一方リースとシェラザードはそれぞれ考え込んでいた。

「まあ、その話は後で考えるとしてエクリアさんはこれからどうするの?え、えっと………同じ”使徒”のマリーニャさん達が力を貸してくれているんだから一緒に戦ってくれるよね?」

そしてエステルはは期待した様子でエクリアを見つめて尋ねた。

「はい。………それに話によればセリカ様だけでなく、あの娘も………イリーナも巻き込まれたご様子。二人を探す為にも是非、手伝わさせて下さい。」

「やった!”姫将軍”のエクリアさんがいれば、百人力ね!」

「フフ………まさかエクリア様と共に力を合わせる機会が巡って来るとは思いもしませんでした。」

エクリアの答えを聞いたエステルは喜び、ティナは微笑んでいた。

「…………(まさか”姫神”に連なる者が存在しているなんて………ね。)…………」

(………”フェミリンス”…………どこかで聞き覚えが……………)

(?2人とも、どうしたんだろう………?)

(ククク………”姫神”に連なる者、”戦乙女”と契約せし者、さらには”古神”の一柱を”使徒”にしているとは………興味深いぞ、”神殺し”…………)

一方エリザスレインは目を細め、セラウィは黙ってエクリアを見つめて考え込み、その様子を見たウィルは首を傾げ、ウィルの腕輪の中にいたアスモデウスは不気味に笑った後、興味深そうな様子でエクリアを見つめていた。



その後探索を再開したリース達はさらに進んで行くと、また封印石を見つけ、解放する為に庭園に戻り、封印石を解放した。



「なっ!?そ、そんな………!な、何故………!?」

「へ?どうしたの、アドルさん??」

「お知り合いの方なのですか?」

封印石が解放され、光の中から現れようとした人物を見たアドルは狼狽え、その様子を見たエステルは首を傾げ、リースは尋ねた。そして光の中から美しいセルリアンブルーの髪と瞳を持ち、さらに背中に一対の美しい白い翼を生やした女性が地面に倒れた状態で現れた!

「う………こ………こ………は…………?」

地面に倒れていた女性は起き上がり、周囲の様子を見て呟いた後、信じられない表情で自分を見つめているアドルに気づいた。

「あ………その赤毛………その優しい瞳………アドルさん………!」

「フィ、フィーナ………!」

女性―――フィーナはアドルを見て幸せそうな表情をした後アドルに抱きつき、抱きつかれたアドルは信じられない表情で震える手でフィーナを優しく抱き締めた。

「嬉しい………!またアドルさんと会えるなんて夢みたい………!」

アドルに抱き締められたフィーナは幸せそうな表情で涙を流して呟いた。

「………僕もだよ、フィーナ。…………ハハ…………今だけはこんな状況にしてくれたこの世界に感謝しないとね。」

「え………?」

アドルの言葉に気付いたフィーナはフィーナ自身の突然の行動を見て、驚いて固まっているリース達に気付いた。

「あ、あはは………感動の再会の所をお邪魔して、スミマセン………」

「フッ、お詫びにこのボクが場を盛り上げる曲を弾くので、どうぞ続きをしてくれたまえ!」

「やめんか、阿呆。」

エステルは顔を赤らめて苦笑し、オリビエは酔いしれった様子でリュートを出して茶化し、その言葉を聞いたミュラーは顔に青筋を立てて呟いた。

「………!この神気は………まさか………”神”!?」

一方エリザスレインはフィーナから感じる神気を感じて驚いた。

「え?え?アドルさん、どうなっているの??」

「ハハ……今、わかっている部分の説明はするからとりあえず離れてくれないかな?その………さすがに恥ずかしいし。」

「!ご、ごめんなさい………!」

そしてアドルの言葉を聞いたフィーナは自分の状況を思い出して顔を真っ赤にした後、アドルから離れた。そしてリース達はフィーナに状況を説明し、初対面の者達は自己紹介をし合った。



「アドルさんの世界の”女神”ですか………確かにフィーナさんから漂う霊圧からして、そんな気はしていたのですが………」

「”神”自身が二柱も集まるなんて普通、ありえないわね………」

「まあ、わらわに比べれば力はイマ一つのようじゃがな。」

「あんたは規格外すぎるのよ………」

フィーナがアドルの世界の女神と知ったリースは驚き、シェラザードは疲れた様子で溜息を吐き、自慢げに胸を張っているレシェンテの言葉を聞いたマリーニャは呆れた様子で呟いた。

「………私自身今の状況に戸惑っているけど………それでもこうしてアドルさんと会えたんだから、今の状況に凄く感謝しています。」

「フィ、フィーナ……」

(あの様子だと2人は恋仲のようだね。)

(ええ………確かあの冒険日誌の主人公―――アドルさんは最後まで結婚しませんでしたけど、その理由はこういう理由だったんですね………)

(モチのロンよ!フィーナは世界を守る為にアドルさんと別れたんだから!うんうん、やっぱりあたしの勘は間違ってなかったわね!)

一方幸せそうな表情のフィーナの言葉を聞いたアドルは表情を赤らめ、その様子を見たジョゼットとクローゼは微笑ましそうに小声で会話し、エステルは2人の言葉に頷いた後、微笑ましそうに2人を見つめていた。

「それでフィーナ………これから君はどうするんだい?」

「勿論、私も手伝います。元の世界に帰り、役目に戻る為もあるけど、それに何よりアドルさんと一緒に冒険が出来るんですもの。」

そしてアドルに尋ねられたフィーナは優しい微笑みを浮かべて答えた。

「フィ、フィーナ………気持ちは嬉しいけど、君、戦えないんじゃ………」

「フフ………これでも”女神”ですから。争いは本当は嫌ですけど攻撃魔法もある程度使えるし、治癒や補助なら皆さんをサポートできます。だから、心配しないで下さい。」

「(まあ、同じ有翼人のエルディーンさんもかなり強かったから大丈夫………なのかな?)………わかった。ただし、無茶だけはしないでくれよ?できるだけ君の事は守るけど、それでも間に合わない時があるかもしれないし。」

「はい、お願いします。」

アドルの忠告にフィーナは頷いて答えた。



「えへへ、よろしくね!あ、そういえば結局あたしの予想は当っていたようね、アドルさん♪」

「う………」

からかうような表情のエステルに見つめられたアドルは唸った後一歩下がった。

「?どういう事ですか?」

「えへへ………それはね………」

その様子を見たフィーナは首を傾げて尋ね、そしてエステルは説明した。

「まあ…………アドルさんの生涯の活躍が物語に………フフ、それは素敵な事ですけど、アドルさん…………やっぱり、色んな女性達を惹きつけたのね。」

「フィ、フィーナ!?」

「あ、やっぱりそうなんだ。」

エステルから事情を聞いたフィーナは驚いた後、苦笑しながらアドルを見つめ、見つめられたアドルは慌て、エステルは納得した様子で話しかけた。

「ええ。アドルさんが素敵なのは私自身が一番わかっている上、わかりやすい例としてリリアがいましたし、レアも怪しかったですから。………エステルさん。アドルさんが親しくなった女性達の事、後で教えてくれませんか?」

「うん、いいわよ!」

(な、なんだろう………?嫌な予感しかしないんだけど………)

(………ご愁傷様です、アドルさん。)

そしてフィーナとエステルの会話を聞いたアドルは冷や汗をかき、ヨシュアは哀れな視線でアドルを見つめた。



その後探索を再開したリース達はさらに進んで行くと、先程まで探索していた光に満ちた迷宮とは真逆の闇に満ちた異空間の迷宮に出て、探索をした所、なんとパテル=マテルがあり、その近くにあった封印石を見つけ、中にいる人物を解放する為に庭園に戻った…………


 
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