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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)

作者:sorano
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第147話

士官学院を見て回っていたリィンは旧校舎にいるエマが気になり、近づいて声を掛けた。



~旧校舎~



「委員長……旧校舎の様子を見に来ていたのか。」

「はい、しばらく離れていましたから念のために。ヴァリマールが目覚めたあの日から、大きな変化は起きていないみたいですが。」

「そうか……ひとまずこちらは気にしなくても大丈夫そうだな。しかし委員長、ありがたいけど今夜くらいは”魔女”は休業したらどうだ?明日からも忙しくなりそうだ。委員長もゆっくりしてほしい。」

「リィンさん……ふふ、そうですね。あとでまた文芸部に顔を出してみるつもりです。興奮気味のドロテ部長の熱も少しは冷まして差し上げないと。」

「はは……がんばってくれ。」

話が途切れるとエマはジッとリィンを見つめた後決意の表情で口を開いた。



「リィンさん、お願いがあります。もしよければ、今から私と旧校舎を見て回りませんか?勿論、見て回ると言ってもエレベーターがあるあたりまでです。私達にとって始まりの場所である旧校舎……この場所を一緒に見て回りたいんです。」

「委員長……ああ、わかった。それじゃあ今から行こうか。」

「ふふ……ありがとうございます。」

その後二人は旧校舎の中に入って行った。



「懐かしいな……入学式の後に行われたオリエンテーリングが何だか昔のようだ……」

「ええ……あの時は本当に驚きましたね。いきなり床が傾いたのですから。」

「ハハ、そんな事もあったな。それじゃあ軽く見て回ろうか。」

「はい。」

その後旧校舎内を軽く見て回ったリィンとエマはエレベーターの前まで来た。そしてある事が気になっていたリィンはエマに尋ねた。



「クロウは……クロチルダさんに導かれて”蒼の騎士”になったんだよな。」

「……はい。そう言っていましたね。たった一人で、旧校舎地下のような”試練”を乗り越えたと。」

「俺の時はⅦ組のみんながいた……クロウもそうだけど、最後はリウイ陛下やエステルさん達、そしてセリカ殿も手伝ってくれた。たった一人で戦うというのは相当な覚悟だったはずだ。……今、たった一人で俺達と敵対している事も含めて。あいつを取り戻すためには、なんとしてもあいつ以上の覚悟を示さなくちゃならないだろう。」

「ふふ……リィンさんならきっと大丈夫です。私も”灰”を導く魔女として、最後まで見届けたいと思います。」

決意の表情をしているリィンに応援の言葉を送ったエマは微笑んだ。



「ああ、ありがとう。どうか力を貸してくれ。」

「…………」

リィンの言葉に応える事無くエマはリィンをジッと見つめた後静かな笑みを浮かべて口を開いた。

「リィンさん。私は”魔女”として生まれて本当によかったと思っています。そうでなくては、使命に導かれて士官学院に来ることも……Ⅶ組のみなさん―――そしてリィンさんに会うこともなかったと思いますから。」

「委員長……俺も同じさ。委員長以外の誰かが導き手だったなら……きっとここまでは来れなかっただろうから。」

「ふふ……嬉しいです。そんなふうに言って貰えて。」

リィンの言葉に微笑んだエマは昔を思い出し、複雑そうな表情をした。



「……私は、ずっと魔女としての使命のために生きてきました。……幼い頃からずっと……その本当の意味すら知らないまま。ただ、それを果たす為だけに私の人生はあったと思います。」

「委員長……」

「ですが……リィンさんやⅦ組の皆さんとともに苦難を乗り越える中で。私にとっての”使命”は少しずつ変わっていきました。魔女として、騎神と起動者の運命を見届けるだけではなく――――共に在りたい――――在り続けたいと思えるようになったんです。最高のクラス”Ⅶ組”の一員エマ・ミルスティンとして。」

「……ありがとう。いつも面倒見がよくて、優しくて、皆の事を陰から支えてくれて……そんな委員長がいてくれたから、今のⅦ組があるんだと思う。だから、お礼を言わせてくれ。」

エマの言葉を聞いて静かな表情でエマを見つめたリィンは微笑んだ。



「ふふ……お礼を言うのはこちらのほうです。私が”委員長”として頑張れたのは……私がそうあれたのは、きっとⅦ組の皆さんが―――……いいえ、リィンさんが私を受け入れてくれたから……」

「…………あ………………」

頬を赤らめているエマにジッと見つめられたリィンは呆けた。

(ちょっとこの雰囲気って……!しかも人気のないこの場所といい、絶好の機会(チャンス)じゃない!?ううっ……ついにエマまで処女じゃなくなっちゃうのね……)

二人の様子を見ていたヴァレフォルは表情を引き攣らせた後肩を落とし

(うふふ、今日は一体何人抱くのかしら♪)

(ふふふ、そして最後に抱くのは恐らく”彼女”でしょうね。)

(むしろ”彼女”以外は考えられないわよね……)

(……マスターの性欲は無限の気がしてきました。)

(ア、アハハ……ひょっとしたらお父様並みかもしれませんわね……)

ベルフェゴール達が微笑ましそうに見守っている中、ジト目になっているアルティナの念話を聞いたメサイアは冷や汗をかいて苦笑していた。



「…………っ………………」

リィンと見つめ合っていたエマは恥ずかしさのあまり、リィンから視線を逸らした。

「委員長―――いや、エマ。……俺のほうも、君が俺を導く”魔女”であって本当に良かったと思っている。”起動者(ライザー)”になったことも、最初の頃は戸惑うばかりだったけど…………君がここまで導いてくれたから、俺も起動者としての”使命”を果たそうと思えたんだ。」

「……リィン、さん…………」

「………………」

エマが自分を見つめている中、次の答えを言うのを躊躇っていたリィンはふとアンゼリカの言葉を思い出した。





重婚は本人達が納得しているのなら、別に気にする必要はないと思うよ?というかそこまで寛大な心を持つ女性達全員を愛して幸せにする事が多くの女性達に想いを寄せられている者の義務だと思うね♪





「好きだ―――エマ。この先、どんな運命が待っていようとも構わない。エマやアリサ達と一緒なら、俺は自信を持って歩いていける。その……多くの女性と付き合っている俺が言うのは色々と間違っているかもしれないが、これからも一緒に来てくれるか?」

「…………リィンさん…………はい……!喜んで……!」

リィンの告白に嬉しそうな表情で頷いたエマはリィンに近づいてリィンを抱きしめ、リィンもエマを抱きしめ返した。

(他にも可愛い女の子たちを侍らせておいて、よくエマに告白できるワね……)

(そう言えば……ご主人様が自ら告白したのは彼女が”初めて”なのでは?)

(言われてみればそうね……うふふ、よかったわね♪貴女もご主人様の”初めて”になれたじゃない♪)

(アリサさん達がこの事を知ったら更に怒るでしょうね……)

(まあ、リィンの告白を待たずに自ら動いたアリサ達の判断も間違ってはいないけど、告白を”する”と”される”は全然違うからね……)

(どちらにしても、マスターがまた”罪”を増やした事には違いありませんが。)

二人の様子を見守っているヴァレフォルはジト目になり、ある事を思い出したリザイラの念話を聞いたベルフェゴールは目を丸くした後微笑み、メサイアとアイドスは苦笑し、アルティナは呆れた表情をしていた。



「ふふっ……姉さんや婆様も驚くかもしれませんね。私が選んだ道は……魔女としては未熟極まりないでしょうから。」

「……構うもんか。示し続けていこう……俺達が、俺達らしくあれる道を。」

「はいっ……!リィンさん…………」

リィンの言葉に嬉しそうな表情で頷いたエマはキスをねだるかの目をつぶり

「エマ…………」

エマの求めに応じたリィンはエマと口付けをした。互いを抱きしめ合って口付けをしているリィンはエマの豊満な胸を押し付けられている感触にも気付くと強い興奮を覚えた。



「あ……その……リィンさん…………」

リィンと体を密着している事でリィンが自分に興奮している事に気付いたエマは顔を真っ赤にし

「ご、ごめん。すぐに離れるから。」

リィンはエマから離れようとしたがエマはリィンを離さないように強く抱きしめていた。

「エマ……?」

「…………リィンさんがしたいのでしたら、いいですよ。私もアリサさん達に追いつきたいですし……それに実は”こんな展開”になっても、大丈夫なように誰も来ない”ここ”を選びましたから……」

「……っ!本当にいいのか?」

頬を赤らめて自分から視線を逸らして呟いたエマの言葉を聞き、エマが最初から自分に抱かれる事を目的で旧校舎を共に見て回るように提案した事に気付いて更に興奮した。

「はい……その……どうか私もアリサさん達のように愛してください……!」

(うふふ、ここなら大丈夫だとは思うけど念の為に結界も展開しておかないとね♪)

その後二人は愛し合った後、互いに恥ずかしそうな表情をしながら旧校舎の前でわかれた。



~喫茶『キルシェ』~



「ハア~…………ううっ……ついにエマまでもが…………」

リィンとエマがわかれてそれぞれの行動をしている中、ヴァレフォルが哀愁を漂わせて喫茶店で酒を飲んでいた。

「?何をしてるのよ、こんな所で。」

そこに町を見て回っていたセリーヌが店に入ってヴァレフォルに近づいてきた。



「あ~!アンタ、エマのお目付け役を”自称”しているならエマの男の見る目も心配しなさいよ!何で今まで放置していたのよ!?」

「ハア?言っている意味が全然よくわかんないわよ。何?その口ぶりだとエマが番う相手に告白でもしたのかしら?」

ヴァレフォルに睨まれたセリーヌは眉を顰めた後不思議そうな表情で尋ねた。

「ちょっと、耳を貸しなさい。…………」

そしてヴァレフォルはセリーヌに小声である事を耳打ちした。



「…………………ハアッ!?ちょ、ちょっと!それ、本当なの!?」

ヴァレフォルに耳打ちされた話――――エマがリィンの恋人の一人となり、更にその後リィンと愛し合った事実を知って一瞬石化したかのように固まっていたセリーヌは我に返ると声を上げ、信じられない表情で尋ねた。

「非常に残念だけど本当のことよ。」

「…………よ、よりにもよってあの節操なしな男を選んだ所か、告白したその日に処女まで捧げるなんて…………これからの事を考えたら”色々な意味”で頭が痛くなってきたわ……ハア…………」

ヴァレフォルの答えを聞いたセリーヌは疲れた表情で溜息を吐いた。

「……何か頼む?同じエマの”使い魔”として今日だけ特別に奢ってあげるワよ。」

「ええ……お願いするわ。」

そしてヴァレフォルの申し出を受け、その後酒を飲むヴァレフォルと共に哀愁を漂わせてミルクを飲んでおつまみを食べながら互いに愚痴を言い合っていた。 
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