英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第146話
~トリスタ・第二学生寮~
「ここが”第二学生寮”か……そう言えば”Ⅶ組”に来る前のクロウもここに……」
第二学生寮の中に入ったリィンは周囲を見回し、クロウも以前は第二学生寮に住んでいた事を思い出して物思いにふけっていた。
「えへへ、待たせてごめんね。」
するとその時トワが寮に入って来た。
「トワ会長、お疲れ様です。生徒会の方はもういいんですか?」
「うんっ、あとは生徒会メンバーみんなで手分けして進めてくれるって。今夜くらいはゆっくり休んできて、なんて言われちゃった。」
「はは……そうでしたか。」
生徒会のメンバーの気持ちが何となくわかったリィンは苦笑していた。
「第二学生寮か……入学した時からずっとここに住んでいたけど、何だか懐かしい気分……」
「会長……その、俺に話があるとの事でしたが。一体何の話でしょうか?」
昔を思い出しているトワをリィンは静かな表情で見つめた後ある事を思い出し、尋ね
「え、えっと……その……とりあえず先にクロウ君の部屋とか案内するね!リィン君も気になっているでしょう?」
尋ねられたトワは頬を赤らめてリィンから視線を逸らした後話を逸らそうとした。
「え?はい、お願いします。」
その後リィンはトワの案内でジョルジュの部屋やクロウが住んでいた部屋を見て回り、最後にトワが住んでいる部屋に案内された。
~トワの私室~
「ここが会長の部屋ですか……」
「あ、あんまりみないでね!その……片付けとか全然してなくて……」
自分の部屋を見回しているリィンにトワは慌てた様子で言った後恥ずかしそうな表情をしたが
「いえ、そんな。俺の目からしたら片付ける必要が無い程部屋が綺麗ですよ。」
「そ、そうかな?えへへ……」
リィンの答えを聞き、嬉しそうな表情をした。
(うふふ、ご主人様の事だから女が自分の部屋に男を招く意味はわかっていないのでしょうね♪)
(ふふふ、十中八九そうでしょうね。ご主人様ですから。)
(それについては私も同意ね。だって、リィンだし。)
(私も同じく。現在の状況になってなお、それを自覚していないマスターですので。)
(ア、アハハ………リィン様ですから仕方ないかもしれませんね。)
ベルフェゴールの念話にそれぞれ頷いたリザイラ達の答えを聞いたメサイアは大量の冷や汗をかきながら苦笑しつつも自分もリザイラ達と同じ答えを口にした。
「Ⅶ組に来るまでのクロウはこの寮に住んでいたんですよね?」
「うん………第三学生寮に移ってからは今まで以上に楽しそうで……えへへ、実を言うとちょっと羨ましかったんだ。」
「はは、そうだったんですか。」
トワの口から出た意外な答えにリィンは苦笑した。
「……うん、やっぱりクロウ君が帰ってくるなら”Ⅶ組”―――”第三学生寮”かな。リィン君達ともわたしたちとも通じるあそこが、クロウ君の居場所だと思う。」
「……はい。貴族連合の元なんかでは絶対に無いはずです。約束通り、きっと会長たちの前に、連れ帰ってみせます。」
トワの言葉に頷いたリィンは決意の表情でトワを見つめた。
「うん……!期待してるね。………………」
リィンの言葉に嬉しそうな表情で頷いたトワはリィンをジッと見つめた後静かな笑みを浮かべて再び話し始めた。
「ふふ……リィン君は凄いよね。初めて会った時は、リィン君がこんなに頼りになるなんて思わなかったよ。」
トワの言葉を聞いたリィンはふと生徒会室でのトワとの出会いを思い出した。
「はは……それを言うなら会長のほうこそ。その、正直に言うと最初は上級生ってこと自体が信じられませんでしたけど……もの凄く優秀で、誰からも頼りにされていて……すぐに凄さに気付かされました。」
「あはは……ありがとう。……でもね、リィン君。」
「?」
突如自分の名前が呼ばれた事にリィンは不思議そうな表情をしながらトワを見つめた。
「……リィン君は本当に凄い男の子だと思う。ヴァリマールに選ばれて怖い機甲兵と何度も戦って。ベルフェゴールさんを始めとした多くの異種族の人達を仲間にした上異世界の女神様のアイドスさんどころか、貴族連合に所属していたアルティナちゃんも仲間にして。いろんな人を思いやって、手助けしていつの間にかみんなの中心にいる。―――でも、憶えていて欲しいんだ。リィン君はあくまでも、一人の人間なんだってことを。」
「あ…………」
静かな表情で自分を見つめるトワの指摘にリィンは呆けた声を出した。
「わたしね……誰よりも優れた”英雄”なんていないと思うんだ。だから……リィン君も何もかも一人で抱え込まないでね。困った時はⅦ組のみんながいる。わたしだって、応援してるから。」
「トワ会長…………」
トワの言葉に心を打たれたリィンはトワをジッと見つめた後やがて答えを口に出した。
「……ありがとう、ございます。そんな風に、他人の強い部分も弱い部分も全てひっくるめて、”それでいい”って言ってくれる……そんな会長だからこそ、俺は……」
「リィン君……………」
リィンの言葉にトワは頬を赤らめ
(あら♪これは面白い事になってきたわね~?)
(ふふふ、まさかの伏兵とは驚きましたね。)
(フフ、よかったわね、トワ……)
(……エリス様達がマスターの今の言葉を聞けばどのような反応をするでしょうね。)
(え、え~と……リィン様の事もちゃんとわかっていますから怒る事はしないと思いますよ?…………多分。)
ベルフェゴールとリザイラ、アイドスは微笑ましそうに見守り、ジト目になったアルティナの念話を聞いたメサイアは苦笑しながら答えた後大量の冷や汗をかいて疲れた表情をした。
「……会長がいてくれたおかげで俺は俺でいいんだって思えるようになりました。どんなことがあっても、自分らしく前に進んでいけばいいと。だから……本当にありがとうございます。」
「……えへへ、嬉しいな。そんな風に言って貰えて。生徒会長になれて、本当によかったって……今、心から思ってる。そのおかげで……リィン君に会えたんだから。そのおかげで……この気持ちに気付けたから。」
「トワ会長……?」
頬を赤らめているトワの言葉を聞いたリィンは不思議そうな表情をし
(アハハハハハハハッ!まだ気付かないなんてさすがはご主人様ね♪)
(ふふふ、さすがはご主人様です。)
(リ、リィン様……いつもいつも思うのですが、何故”そういう事”に関して信じられないくらい鈍くなるのですか……?)
(まあそれはリィンだから仕方ないと思うわ。)
(マスター程罪作りな男性はいないでしょうね。)
二人の様子を見守っていたベルフェゴールは腹を抱えて笑い、リザイラは静かな笑みを浮かべ、メサイアは表情を引き攣らせ、アイドスは苦笑し、アルティナはジト目になっていた。
「~~~~っ~~~!…………スーハー……スーハー……よしっ!―――リィン君、さっき言ってたわたしがリィン君に話したい事を答えるね。」
一方顔を真っ赤にしたトワは深呼吸をした後決意の表情になって、リィンを見つめた。
「わかりました。それで一体何のお話でしょうか?」
「えっと……その……――――リィン・シュバルツァー君!」
「は、はい!」
トワに突如フルネームで呼ばれたリィンは姿勢を正した。
「わたし―――トワ・ハーシェルは貴方の事を一人の男性として大好きです!だから……わたしを貴方の将来のお嫁さんの一人にしてください!」
するとその時トワは真っ赤な顔でリィンに自分の想いを伝えた!
「え。…………………………」
(よく言ったわ♪貴女の事、個人的に気にいったわよ♪)
(しかもさり気なく婚約まで持ち掛けている所はさすがと言った所でしょうか。)
(ト、トワさん、ストレートで来ましたね……)
(ここまで言われたらさすがのリィンもトワの気持ちに気付くでしょうね……)
(というかマスターにはそのくらいしないと、一生気付いてもらえないと思った為仕方なくこの方法で来たのでは?)
トワの告白にリィンは呆けた声を出した後石化したかのように固まり、ベルフェゴールとリザイラは微笑ましそうに見守り、メサイアとアイドスは苦笑し、アルティナは呆れた表情をしていた。
「えええええええええええええええええええええええっ!?」
そして我に返ったリィンは驚きの表情で声をあげ
「むう……そんなに驚くなんて酷いよ、リィン君……」
トワは頬を膨らませてリィンを見つめた。
「うっ……す、すみません。……その、会長。お気持ちは嬉しいのですが俺には……」
「リィン君がアルフィン皇女殿下やアリサちゃん達と結婚しなければならない事はわかっているし、互いを思い合っている事もわかっているよ。……わたしね、本当はリィン君の事、諦めようとしていたんだ……でも、やっぱり諦められなくて……そのね、リィン君。本当に気が向いた時でいいから、わたしの事も愛してくれないかな……?リィン君に愛される事ができるのだったら、愛人でもいいよ……?」
トワは真っ赤になった顔で懇願するような表情をし
「会長……………………――――ありがとうございます、会長。アリサ達と……複数の女性と付き合っていて、外から見たらだらしのない男性にしか見えない俺の事を思ってくれて………………その、会長の添い遂げる相手が俺でよければ、よろこんで。それに会長を愛人なんて、そんな立場にはしないつもりです。アリサ達には後で話して……会長の事も許してもらおうと思っています。」
「リィン君……!嬉しい……!ん………」
(トワ会長…………)
リィンの答えを聞いたトワは涙を流しながら微笑んで、背伸びをして自らの唇をリィンの唇に押し付けた。そしてリィンとの口付けを終えたトワは何と自らの服を脱ぎだした。
「ええっ!?ト、トワ会長!?一体何を……!?」
トワの突然の行動にリィンは驚き
(あらあら♪これは結界が必要ね♪)
「ベ、ベルフェゴール…………」
ベルフェゴールが展開した結界に気付いたリィンは冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「リィン君………その……どうかな?」
「ど、どうと言われましても……その、どうして突然こんな行動を?」
顔を真っ赤にしている下着姿のトワに問いかけられたリィンは答えに詰まった後戸惑いの表情で尋ねた。
「アンちゃんから既に恋人がたくさんいるリィン君にはこのくらいしないと、既にリィン君と何度も”している”アリサちゃん達と並べないって……」
(ア、アンゼリカ先輩……!なんてことを会長に吹きこんでいるんですか!?というか、何で知っているんですか!?)
トワの話を聞いたリィンはトワの背後で『据え膳食わぬは男の恥だよ、リィン君』と言ってウインクをして親指を立てているアンゼリカの幻影が見える錯覚に陥った。するとその時トワがリィンに抱き付いた。
「やっぱりアリサちゃん達と違って、背も胸も小さいわたしじゃダメなの……?」
「うっ……べ、別に俺は女性の身体的特徴は気にしていませんが…………」
「それならわたしにもアリサちゃん達のようにエッチな事をして、わたしにリィン君の恋人だって証拠を刻み込んで……!」
(ご主人様?女の子にここまで言わせて断ったら、逆にアリサ達に怒られるから観念して彼女を抱くべきよ?それにトワがここまで言っているのに、何も感じないのかしら?)」
「(うっ……というかどっちにしても怒られると思うんだが……)―――会長、その……ベッドに行きましょうか……」
ベルフェゴールに図星を突かれたリィンはトワから視線を逸らして呟き
「あ……うんっ!」
リィンの答えに呆けたトワは嬉しそうな表情で頷いた。その後リィンはトワと愛し合った。
「会長……その、大丈夫でしたか?」
”行為”を終えた後服を着直したリィンは上はブラウスを一枚羽織り、下は下着だけはき直したトワに尋ね
「うん……えへへ、いっぱい中に出してもらって、とても嬉しかったよ……それだけわたしに興奮しているって証拠だから……」
尋ねられたトワは幸せそうな表情でお腹を撫でていた。
「えっと……会長……あまり長居していて他の人達に気付かれたらマズイので俺はこれで失礼します。」
「うん。……あ、リィン君。一つだけお願いがあるんだけどいいかな?」
「?何でしょうか?」
「その……ね……さっきみたいに愛し合う時以外でもわたしの事、”トワ”って呼び捨てできるようにしてもらってもいいかな?わたしもアリサちゃん達みたいに……いつか、リィン君の奥さんになるんだし………」
トワは真っ赤な顔でリィンを見つめた。
「か、会長………………わかりました。できるだけ早くそう呼べるように努力します。――――それじゃあ、今夜はゆっくりと休んでください。」
「うん。リィン君も余り遅くまで起きていたら明日に差し障るから、夜更かしはダメだよ?」
「はい。」
そしてトワの私室を出たリィンは学生寮を出た。
~トリスタ~
「やあ、リィン君。どうやらその様子だとトワと”お楽しみ”だったようだね?」
「ア、アンゼリカ先輩!?え、えっと、何の事でしょうか……?」
寮を出て突如アンゼリカに声をかけられたリィンは冷や汗をかき始めた。
「フフッ、とぼけても無駄だよ。告白と同時に処女を捧げる事に迷っていたトワが君に連絡する前に迷っていたトワに背中を押したのはこの私なのだからね。」
「いい”っ!?」
アンゼリカの口から出た驚愕の事実にリィンは表情を引き攣らせ
「いや~、あのトワがこの私よりも早く”大人”になるなんて、人生わからないものだね、うん、うん。」
アンゼリカは口元に笑みを浮かべて勝手に納得していた。
「さてと。――――トワを”キズモノ”にしたのだから、当然責任は取ってくれるんだよねぇ?」
「そ、それは…………―――はい。正直アルフィン皇女殿下を始めとした多くの女性と結婚する俺なんかに、会長は勿体ないくらいなんですが……」
アンゼリカに問いかけられたリィンは一瞬口ごもった後静かな表情で答え
「重婚は本人達が納得しているのなら、別に気にする必要はないと思うよ?というかそこまで寛大な心を持つ女性達全員を愛して幸せにする事が多くの女性達に想いを寄せられている者の義務だと思うね♪」
「アンゼリカ先輩…………」
そしてアンゼリカの答えを聞くと驚きの表情をした。
(よく言ったわ!全く持ってその通りね!)
(ふふふ、さすがはご主人様のように多くの女性達を侍らしている方です。)
(私達もリィンに幸せにしてもらいたいわね……)
(フフ、そうですね。アルティナさんもそう思いませんか?)
(……わたしは……………………今のようにマスターの傍にいる事ができるだけでいいです…………)
一方アンゼリカの言葉を聞いたベルフェゴールは感心し、リザイラは静かな笑みを浮かべ、アイドスと共に微笑んでいたメサイアに念話を送られたアルティナは視線を逸らして答えを濁した後頬を赤らめて呟いた。
「まあ、その”本人達”がトワまでリィン君のハーレムの一員になった事はまだ知らないけど………もし、知ったらどんな反応をするのか今から楽しみだねぇ?」
「うっ……」
しかし口元をニヤニヤさせるアンゼリカの言葉を聞くとその時の光景を思い浮かべ、冷や汗を滝のように流し始めた。
「ちなみに無いとは思うけど、もしトワを捨てたりしたら、”わかっている”よね?」
するとその時アンゼリカは拳をポキポキと鳴らしながらリィンを見つめ
「そ、そんな事はしませんって!俺が一人前になってシュバルツァー家を継いだ時に会長を含めた多くの女性達と結婚しようと思っています!」
リィンは慌てた様子で答えた。
「フフ、それを聞けて安心したよ。それじゃあわたしはこれで失礼するよ。……ああ、そうそう。一つ言い忘れていた。」
「何でしょう?」
「今後新しい娘を増やしたてトワが望んだ時はトワに代わって、アリサ君達と共に”恒例のお仕置き”をするつもりだから、私がトワにそんな事を頼まれないようにせいぜい気を付けて他の娘達を攻略するんだよ?」
「ええっ!?な、何で先輩が……!?」
アンゼリカの口から出た予想外の答えにリィンは表情を青褪めさせて問いかけ
「フフ、セレーネ君の保護者のツーヤ君がセレーネ君の代わりに君にアリサ君達と共に”恒例のお仕置き”をしているように、トワの保護者代わりの私がそこに加わる事はなんらおかしくないだろう?―――それじゃあ、良い夜を。」
「…………………………」
そしてアンゼリカが去って行く中、リィンはしばらくの間石化したかのように固まっていた。
その後我に返ったリィンは再びトリスタや士官学院を見て回り始めた。
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