英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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外伝~海の檻歌~
~ケルディック・礼拝堂~
「皆さん………本当にお疲れ様でした!」
「姉さん、アムドシアスさん、協力してくれてありがとう!」
「メアリー教官にアンドレさん………それにゲルドも。」
ロジーヌはリィン達を見回して嬉しそうな表情で感謝の言葉を述べ、エリオットは明るい表情でフィオナやアムドシアスを見つめ、リィンはメアリー教官やアンドレ、ゲルドを順番に見回した。
「ふふ、Ⅶ組のみんなの力になれてよかったわ。それに久しぶりにエリオットと一緒に演奏できたもの♪」
「フッ、芸術を―――音楽を愛する魔神として我は当然の事をしたまでだ。……そのお蔭で素晴らしい歌を聞く事もできたのだから、礼を言いたいのは我の方だ。」
「ええ、私もとてもいい経験をさせてもらいました。最後にはあんなに人が集まってくださいましたし……」
「フッ、俺達の奏でた愛が響き渡った証拠だろうさ。」
「えへへ、メアリー教官とも一緒に吹けての楽しかった~!」
「ふふ、僕は夏の演奏会は怪我で出られなかったから、いい機会だったかな。」
「誘ってくれてありがとう。プロの方とも演奏できてとてもいい勉強になったわ。」
演奏会に参加したフィオナ達はそれぞれ満足した様子で答えた。
「うん、吹奏楽部の者達も素晴らしい演奏だった。」
「あはは、手伝ってくれて本当にありがとう!」
「ふふ、でも本当に良い演奏会だったわよね。」
「あたしも久々にフィオナさんの演奏を生で聞けてよかったわ。」
「まあ、貴方達はよくやった方ね。――――それよりも、アタシはアンタのあの”唄”が気になっているのだけど。」
「セ、セリーヌ。」
「まるで力が沸き上がるかのような不思議な歌でしたね……ゲルドさん、先程歌った歌は何という名前なのですか?」
目を細めてゲルドを見つめるセリーヌの指摘を聞いたエマは若干焦った表情をし、ロジーヌは静かな表情でありながらも探るような視線でゲルドを見つめて尋ねた。
「――――”海の檻歌”。私を育ててくれたお爺ちゃんが”水底のメロディー”を元に作って、私に教えてくれた”歌”にして”共鳴魔法”よ。”海の檻歌”は治癒系の”共鳴魔法”だから害は全くないから安心して。」
「ええっ!?」
「……やっぱり魔法効果が秘められてある”唄”だったのね……」
「じゃ、じゃあ、さっきの歌、魔法だったの!?」
静かな表情で答えたゲルドの話を聞いたエマは驚き、セリーヌは目を細めて呟き、エリオットは信じられない表情をし
「”海の檻歌”に”水底のメロディー”……聞いたことのない曲ですね。もしかして異世界の曲ですか?」
「いや……我も初耳だ。」
メアリー教官に視線を向けられたアムドシアスは静かな表情で首を横に振って答えた。
「そ、それにゲルド、今自分を育ててくれた人の事を自分で口にしたわよね……!?」
「もしかして……記憶が戻ったのか!?」
一方ゲルドが自分の事を思い出した事に気付いたアリサは驚き、リィンは信じられない表情で尋ねた。
「うん……………みんなの演奏を見ていた時に思い出したの。」
「へ……」
「演奏が切っ掛けですって?」
ゲルドの答えを聞いたエリオットは呆け、サラ教官は眉を顰め
「多分私の記憶が蘇ったのは私を育ててくれて色んな歌を教えたり楽器を演奏してくれたお爺ちゃんに短い間だったけど、私やお爺ちゃんの為にそれぞれの楽器で色々な演奏をしてくれたフォルトお兄ちゃんとウーナお姉ちゃん……その人達は音楽に携わる人達だったからかもしれない。」
「フム……なるほどな。」
「フフッ、演奏で記憶が蘇るなんて、ロマンチックな話ね♪」
ゲルドの推測を聞いたラウラは納得し、フィオナは嬉しそうな表情で言った。
「……ゲルドと言ったか。先程のお前の歌――――”海の檻歌”だったか。それの歌詞と楽譜はないのか?―――あれ程の素晴らしい歌、是非とも我も演奏をしたいのだ!」
「フッ、抜け駆けはずるいよ?俺だって先程の歌の歌詞を知って、旅をしながら多くの人々に聞かせようと思っているのだしね。」
アムドシアスの申し出に続くようにアンドレも興味ありげな表情でゲルドを見つめ
「――――いいわよ。紙とペンを貸して。今書くから。」
「ちょっと!?」
「ゲ、ゲルドさん!?」
「……危険ではないのか?お前の話を信じるのならば先程の歌は”魔法”でもあるのだろう?」
ゲルドの答えを聞いたセリーヌとエマは慌てた表情をし、ユーシスは真剣な表情でゲルドに尋ねた。
「私のような”異界”出身の人か……もしくは”水底の民”でないと”共鳴魔法”は使えないから私以外の人が演奏しても、ただの音楽だから大丈夫だし……お爺ちゃんも多くの人達に聞いて貰って傷ついた心を癒してもらう為に作曲、作詞したからむしろ私からお願いしたいくらいだよ……」
「”異界”に”水底の民”……?」
「………………要するにさっき歌った”唄”はアンタのようなその”共鳴魔法”とやらを使う”資質”がある人間でないと、”魔法”としての効果は発揮しないのね?」
ゲルドの説明を聞いたエマが不思議そうな表情をしている中、ゲルドの説明を分析して程度推測できたセリーヌは真剣な表情で尋ね
「うん。」
尋ねられたゲルドは静かな表情で頷いた。
「フフ、それなら私もお願いしてもいいかしら?私も是非、先程の歌をピアノで弾いてみたいのよ。」
「でしたら私も是非お願いします。学生達にも是非教えたい曲でしたし………」
「ええ。」
「フフッ、二人ともちゃっかりしているわね。」
ゲルドに”海の檻歌”の楽譜と歌詞を頼むフィオナとメアリー教官の様子を見たサラ教官は苦笑した。
「フフ、何はともあれみなさんのお蔭で傷ついたケルディックの人々の心を癒す事ができました。Ⅶ組の皆さんにお願いして本当に良かったと思います。」
「ふふ、我らもケルディックのために少しでも力になれてよかった。」
「連絡をくれてありがとうな、ロジーヌ。」
「俺も少しだけ領地に義理を立てられそうだ……感謝させてもらう。」
ロジーヌにお礼を言われたラウラは微笑み、リィンは感謝の言葉を述べ、ユーシスは辛そうな様子を見せながらロジーヌを見つめて感謝の言葉を述べた。
「皆さん……ふふ、いくらお礼を言っても言い足りないくらいですね。私ができるケルディックへの恩返しもこれで一区切りがつきました。教区長様にも許可を頂きましたし、ここからは、カレイジャスの一員として学んだことを生かしたいと思います。」
「あはは、助かるよ。」
「改めて……これからよろしく頼む。」
「ふふ、こちらこそ……!」
こうして……ロジーヌの依頼を達成したリィン達は新たなカレイジャスの一員となったロジーヌと共にカレイジャスに乗り込み、ケルディックから去って行った。
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