英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第130話
~オルキスタワー~
「なっ!?」
「お、お義兄様……!?」
「一体どうしてここに…………」
リウイ達の登場にロイドやエリィは驚き、ティオは戸惑った。
「――――ここにいたか。シズク・マクレイン。俺達に同行してもらうぞ。」
「な―――」
「なっ!?まさかシズクちゃんを拘束する気ですか!?」
「なんであんたらがシズクちゃんを拘束するんだよ!?」
「お義兄様!まさかシズクちゃんに危害を加える気なのですか!?」
「シズクさんには何の罪もないんですよ!?」
シズクを厳しい表情で見つめるリウイの言葉を聞いたダドリーは絶句し、ロイド、ランディ、エリィ、ティオはリウイを睨んだ。
「――――敵将に精神的な攻撃をする為に敵将の家族を拘束する。”戦”の鉄則だぞ。」
「ま、実質は”保護”に近い。その娘には何の危害も加えられないから安心しろ。」
「……シズクさんの件は元々決まっていた事なのです。」
「局長!?ギュランドロス司令!?それにエリゼさんまで!?」
「まさかあんた達も絡んでいたのか!?」
ヴァイスやギュランドロス、エリゼの答えを聞いたロイドとランディは厳しい表情で3人を睨んだ。
「………地位や名誉を奪った所で、今の奴には痛くも痒くもないだろう。ならば奴にとって最も奪われたくない家族を奪えば、少しは奴も堪えるから、罰にもなるだろう?」
「シズク・マクレインの”保護”は始めから決まっていた。諦めな。全てはメンフィルや俺達に睨まれた奴が悪い。」
「ふざけるな!互いを大切に想っている家族を引き離すのか!?」
ヴァイスとギュランドロスの答えを聞いたエリィは怒りの表情になり、ロイドはリウイやヴァイス達を睨んで怒鳴った。
「”保護”に近いと言っただろう。それに逆に尋ねるがクロスベルの民達から恨まれているアリオスの娘であるシズクが今後クロスベルで平穏無事に生きていけると思っているのか?当然、エレボニアやカルバードもその娘の身柄を狙っているぞ。」
「!!」
(まあそうね。迫害される事や人質にされる事、最悪アリオスへの”見せしめ”として拷問された挙句嬲り殺される事や暗殺される事は目に見えているわ。)
「そ、それは……………」
「………………………」
「少なくともアリオスの娘である限り、クロスベルの民達からは白い目で見られ、石を投げられる事になるであろうな……」
「……先日の様々な宣言で市民達の怒りはディーター大統領達だけでなくマクレインにも向けられているのは事実だ……奴の事を”裏切者”と呼ぶ者も少なくない。」
「今まで信頼していた分、裏切られた時の怒りは大きいでしょうね……”風の剣聖”はずっとクロスベルを護り続けて来た”クロスベルの英雄”だったのだから……」
「ええ……その娘の身を守る為にもそちらの方がいいと思うわ。」
「シズクさん……………」
しかし静かな表情で語ったヴァイスの話を聞いたロイドは目を見開いて息を呑み、ルファディエルは納得した表情をし、エリィは言いよどみ、ランディは目を伏せ、ツァイトとダドリーは重々しい様子を纏って呟き、複雑そうな表情をしているルフィナの言葉にロカは静かな表情で頷き、ティオは複雑そうな表情をしていた。
「……………わかりました。」
するとその時シズクが辛そうな表情で答えてリウイ達に近づき
「シズクちゃん!?」
「貴女がお義兄様達の命令に従う必要はないのよ!?」
シズクの行動を見たロイドとエリィは叫んだ。
「………いいんです。お父さんは世界中の人達に迷惑をかけたのですから………お父さんの”罪”を少しでも軽くする為なら、わたしはどうなっても構いません………だから……だからお父さんの命を助けて下さい……!」
「シズクさん………………」
「…………………………」
「クッ……………!」
「マクレイン……お前は一体何をしたかったんだ……ッ!」
しかし寂しげな笑みを浮かべた後涙を流しながらリウイ達に頭を深く下げたシズクの行動を見たティオは複雑そうな表情をし、キーアは辛そうな表情で黙り込み、ロイドとダドリーは唇を噛みしめ
「―――いいだろう。今後メンフィルがアリオス・マクレインに対してこちらからは危害を加えない事は約束しよう。」
「……さすがにこんな幼い娘にそこまで泣かれては頷くしかないな。」
「ああ……ったく、あの馬鹿親父もこんな家族思いな娘を裏切るとは馬鹿な事をしたもんだぜ。」
一方シズクに嘆願されたリウイやヴァイス、ギュランドロスはそれぞれ答えた。
「……お義兄様。シズクちゃんを今後どうされるおつもりなんですか?」
「――――名前を変えた後、ロレントのイーリュンの孤児院に預けて、成長すればメンフィルの何らかの仕事に就いてもらうつもりだ。」
「―――皆様にとっては色々と思う所があるでしょうが、シズクさんにとってはメンフィルに自身の身柄を預ける事が”最善”です。彼女の身の安全が保障される事は当然として、大国であるメンフィル帝国の仕事に就ける事自体もエリートの道を歩めるといっても過言ではありません。」
エリィの疑問にリウイは静かな表情で答え、エリゼは複雑そうな表情でロイド達を見回して説明した。
「………何の権力もないわたし達ではお先が真っ暗なシズクさんのこれからをどうする事もできませんし………アリオスさんから引き離すのは可哀想ですが、将来的に考えてメンフィルに預けられる方がシズクさんの為にいいかもしれませんね………………」
「それにイーリュン教は本当に優しい人達の集まりだから、彼女の事をきっと大切にすると思うわ。」
「…………………」
ティオは疲れた表情で呟き、ロカは静かな表情で説明し、ロイドは複雑そうな表情で黙り込んだ。
「…………あの、リウイさん。シズクちゃんを私と貴方の養子に――――”パリエ家”の養子にしてはいけませんか……?」
「え……………?」
「セ、セシル姉……?」
その時セシルが申し出、セシルの申し出を聞いたシズクは呆け、ロイドは戸惑った。
「―――何故その娘に対してそこまでするのか聞いてもいいか。」
「……………アリオスさんが今回の件に関わった事を知ってからずっと考えていたんです………全てが終わったその時、シズクちゃんはどうなるのかって。アリオスさんは自分の身は自分で守れますが……シズクちゃんはそうはいきませんし、今後陽の当たる場所できっと生活できないでしょう………ずっとその娘をお世話をしていた身としてはほおっておけないんです……!」
「セシルさん……………」
リウイの問いかけに対し決意の表情で答えたセシルの言葉を聞いたシズクは涙を流してセシルを見つめ
「セシル姉……………」
ロイドは複雑そうな表情でセシルを見つめていた。
「もし、引き受けて下さったらイリーナさんかシルフィさんの”使徒”になってリウイさんを一生支え続けます……!だから、お願いします……!」
「なっ!?」
「お、お姉様達の”使徒”!?そ、それって……!」
「”神格者”の”使徒”――――要は不老不死の身になって、リウイ陛下達を支え続けるという事ですか……」
「貴女は自ら”人”の身を捨て、永遠に生き続ける身となってでもその娘を護りたいのね……」
頭を深く下げて言ったセシルの言葉を聞いたロイドとエリィは驚き、ティオは信じられない表情で呟き、ロカは複雑そうな表情で呟き
「そこまでしてその娘を守りたいのか………」
リウイは信じられない表情で呟いた。
「……………例えお前と俺が承認しても、今の”パリエ家”の当主はティアだ。当主であるティアが認めない限り、無理な話だな。」
「―――ならば私が認めればよいのですね、お父様?」
そして気を取り直した後リウイが真剣な表情で答えたその時ティアがリウイ達の背後から現れて真剣な表情でリウイに問いかけた。
「ティア様……!」
「ティ、ティア様!?ケルディックに行っていた貴女が何故こちらに……」
ティアの登場にシズクとエリゼは驚き
「……ケルディックで起こった痛ましい事件で重傷を負った患者達やアルバレア公爵夫妻と共にメンフィルに引き渡されたテロリストの女性の治療も皆さんに任せても大丈夫なくらいまで終わりましたから、昨夜ベルガード門に戻ってきたんです。それよりも………ごめんなさいね、シズクさん…………シズクさんの件を知った時、できれば反対したかったのだけど、シズクさんの今後を考えるとそれが一番良いとしか考えられなくて……………でも、お母様の提案ならばある程度は貴女を自由にできるわ。……………いきなりで申し訳ないけど………実の父親であるアリオスさんと親子の縁を切るのは凄く辛いと思うけど……………代わりに私とお母様が貴女の家族になってもいいかしら?」
エリゼに説明したティアは申し訳なさそうな表情でシズクに尋ね
「そんな……そんな……!わたしなんかがティア様とセシルさんの家族にしてもらえる資格なんて………ましてやお父さんがセシルさんの婚約者さんを殺したのに………そのお父さんの娘であるわたしがセシルさんにそこまでしてもらう資格なんてないのに……!うううっ…………!」
微笑まれたシズクは涙を流して泣き始めた。
「―――私の事は気にしないで、シズクちゃん。アリオスさんがまだガイさんを殺害した犯人だと決まった訳ではないとロイドも言ったでしょう?それにずっと病院で一緒にいたんだから、家族のようなものじゃない。」
「ううっ……ヒック………ありがとう………ございます……………わたしなんかで……よろしければ…………お願いします……………」
自分を抱きしめて優しげな微笑みを浮かべて言ったセシルの言葉にシズクは泣きながら頷いた。
「フフ、これからは私が貴女のお姉さんでお母様が貴女の母親でもあるからよろしくね?」
「は、はい……………よ、よろしくお願いします………ティア姉様……セ、セシルお母さん……………」
ティアに微笑まれたシズクは戸惑いながらティアとセシルを見つめ
「ええ、よろしくね。」
見つめられたセシルは微笑んだ。
「―――――幸いシズクさんは私達と同じイーリュン教の信徒ですからシズクさんが16歳になるまではお母様に預けて、16歳になった時、私の補佐としてイーリュン信徒として働いてもらいます。それならシズクさんがアリオスさんに代わって世界中の人々に罪を償う事もできますから、それでいいですよね?」
「……………まあいいだろう。その娘に関しては何の仕事に就かせるべきか、まだ決めていなかったしな。―――ここでの目的は果たした。撤収!」
「ハッ!」
真剣な表情をしたティアに尋ねられたリウイは頷いた後外套を翻して兵士達と共に部屋を出て行き
(……キーアはこの事を全て知っていたから、俺達に止めるなって言ったのか……?)
リウイ達が出て行った後ロイドは小声でキーアに尋ねた。
(うん………セシルとティアなら安心でしょうー?)
(確かにそうね………)
(もしかしたらキーアはシズクさんがイーリュン教で働いているから、自分もイーリュン教で働こうと決めたのかもしれませんね……)
(ハハ、ありえそうだな。)
その後ロイド達は泣き疲れた影響で眠り始めたシズクをセシルとツァイト、ティアに任せた後部屋を出た。
「しかしマクレインを連れ戻す話はともかく……大統領の関係者達は一体どこに行ったんだ?」
「しかも肝心のキーアさんもいないようだし……」
部屋を出たダドリーとルフィナは考え込み
「………そうだな。」
「……伝言を残したという事はひょっとしてタワーには――――」
エリィが呟いたその時、ロイドのエニグマが鳴りはじめた。
「おっと……(スピーカーモードにするか。)」
鳴りはじめたエニグマに気付いたロイドは通信を開始した。
「ああ、ロイド君達!直通エレベーターのセキュリティ、やっと解除できたよ~!」
「本当ですか!?」
「よかった、これで……」
「ただ、どうも他のフロアにはほとんど人が残っていないんだ。こちらのサーチから逃れて隠れているとも思えないし。」
「それは……」
「おいおい、そんじゃあキー坊たちは一体どこに……」
「……………」
協力者であるロバーツ主任からの意外な情報を聞いたティオは真剣な表情になり、ランディは目を細め、キーアは複雑そうな表情で黙り込んだ。
「ただ一箇所……オルキスタワーの屋上に”誰か”いるみたいだね。あの白い人形と一緒に。」
「……!」
「ほう?たった一人で俺達を待ち受けているとはいい度胸じゃねえか?」
「一体何者かしら?」
「”神機”と共にいるという事はそれで私達を撃退する為でしょうね。」
「……もしかしたら普通のやり方では勝てないと判断して、”神機”による迎撃をする為に私達を待ち構えているのかもしれないわね。」
ロバーツの話を聞いたロイドは真剣な表情になり、ギュランドロスは好戦的な笑みを浮かべ、ロカは眉を顰め、エリゼとルフィナはそれぞれ推測し
「……エレベーターで屋上に行く事は可能か?」
ヴァイスは真剣な表情で尋ねた。
「ああ、ロックは解除したからそのまま上がれるはずだ。行くのであれば気を付けて!」
「了解です。」
「それでは失礼します。」
そしてロイドは通信を止めた。
「”結社”の博士か、それとも……」
「わからん……行ってみるしかねえだろ。」
「近くにある直通エレベーターが使用可能になっているはずです。必要なら1Fまで戻って準備を整えておきましょう。」
「ああ……!」
その後準備を整えたロイド達はエレベーターを使って屋上へと向かった!
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