英雄伝説~光と闇の軌跡~(3rd篇)
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第28話
サントクロワの森をしばらく進み続けていたケビン達にある声が聞こえてきた。
~サントクロワの森~
「や、やめろ………それ以上近寄るなああっ!」
「この声は………」
「ああ………間違いないやろ。」
叫び声を聞いたヨシュアは驚き、ケビンは頷いた。そして声がした方向を見るとそこには木の板に張り付けられ、鼠型の獣人に囲まれたギルバートがいた!
「ほ、ほんの出来心だったんです!二度としませんから!ど、どうか命ばかりはお助けをっ!」
命乞いをしたギルバートだったが、獣人達は理解していないのか、ギルバートに近づいた。
「はあ………なんか妙に円があるなぁ。」
その時ケビンが溜息を吐いた後、仲間達と共に武器を構えて駆け付けた。
「おおおっ!?こ、これぞまさに女神達の導き!神父様!ヨシュア様!どうかどうかお助けください!」
「………仕方ありませんね。」
「見捨てるんも寝覚め悪いし、いっちょ助けたるか!」
ギルバートの嘆願を聞いたヨシュアは溜息を吐き、ケビンは苦笑しながら仲間達と共に戦闘を仕掛けた!
「チュウ!!」
戦闘を開始すると、獣人達は一斉に襲い掛かって来た!
「フフ………痺れたまえっ!!」
しかしオリビエが雷の魔導弾で連射し、敵を狙い撃つクラフト――サンダードロウを放ってダメージを与えると共に敵達の数体を麻痺させ
「はいっ!はいっ!はぁいっ!!」
アネラスはクラフト――剣風閃を放って、さらに追撃をした!
「チュウ!!」
一方敵達もやられっぱなしではなく、麻痺をしていない敵達はアネラスを攻撃した!
「あうっ!?」
「イーリュンよ、お力を!癒しの息吹!!」
敵達の攻撃によってダメージを受けたアネラスだったが、ティナが放った魔術によってすぐに傷が回復した!
「チュウ!!」
それを見た敵達は今度はティナに攻撃しようとしたが
「吹き荒れて!吹雪!!
クローゼが放った魔術によって、氷漬けにされたり、身体のいくつかの場所が凍結し、動きが鈍くなった!
「行くよっ!紅燐剣!!」
「もう、しまいにしよか…………滅!!」
そしてヨシュアとケビンがそれぞれ範囲攻撃をするクラフトを放って、敵達を全滅させた!その後戦闘を終えたケビン達ははりつけにされていたギルバートを助けた。
「はあはあはあ…………ひ、酷い目にあった………」
助けられたギルバートは地面に膝をついて安堵の溜息を吐いた。
「はあ………兄さんも結社の人間やろ?なんで毎回毎回、あんな目に遭ってんねん。」
その様子を見たケビンは呆れた様子で溜息を吐いた後尋ねた。
「し、失敬な………これには涙なくしては語れない波乱万丈にして震天動地の物語があってだね………」
「というよりも………率直な疑問なんですが。どうして僕たちよりも先にこの場所に来ているんですか?」
「そういや、オレたちよりも先に転位陣に入ったってことか?」
ヨシュアの疑問を聞いたケビンはある事に気付いて尋ねた。
「フッ、城で君達と別れた後、僕は市街で甲冑兵に囲まれたんだ。そして獅子奮迅の働きで迫りくる甲冑兵をなぎ倒すうちに何か渦のようなものに巻き込まれてね。ふと気付いたら、絶景を望む建物の前に移動していたのさ。おお、なんという奇跡!女神達はこのギルバート・スタインを物語の主人公に選んだに違いない!」
(ケビンさん、それって…………)
(ああ、戦闘中にたまに発生する”渦”に巻き込まれたんやな………しかしそれで偶然”第四星層”に飛ばされるとは…………)
ギルバートの説明を聞いたヨシュアとケビンは仲間達と共に脱力した後、呆れた様子で会話をし
(あはは………運がいいのやら悪いのやら………)
(フッ………呆れるほどの悪運ぶりだね。)
(え、えっと………女神”達”という事は我が母なるイーリュンも入っているんでしょうか………?)
アネラスは苦笑し、オリビエは感心し、ティナは引き攣った笑みを浮かべていた。
「フッ、感動のあまり声も出ないといったところか。フフ………無理もないだろう。」
「ま、別の意味で感動すら覚えるけどな………それでどうして宿舎から離れてこんな場所に?やっぱ探索でもしてたんか?」
「ギクッ………」
自慢げに語っていたギルバートだったがケビンの疑問を聞いて表情をひきつらせ
「そういえば………さっ『もう2度としません』とか『ほんの出来心』とか言ってましたけどあれは何だったんですか?」
「は、はは………ナンノコトダイ?」
さらにヨシュアの疑問を聞くと片言で答えた。するとギルバートのお腹の音が鳴った。
「ち、違うんだ!これはその………ただ気が抜けただけで………」
お腹の音が鳴った後、自分を黙って見つめるケビン達にギルバートは言い訳をしたが
「………ひょっとして………空腹のあまり、さっきの獣人どもから食料でも盗もうとしたんか?」
「ギクギクッ………」
ケビンの推測を聞いて、図星をつかれた表情をした。
「えっと、その………恥じることはないと思います。やはり食というのは大事ですよね。」
「そ、その………ビスケットでも食べる?おやつに持ってたんだけど………」
「ギルバート………その、よかったら僕たちの”拠点”に来ますか?」
ギルバートの様子を見たクローゼはフォローの言葉を言った後苦笑し、アネラスとヨシュアは哀れむような視線でギルバートを見つめながら提案した。
「そやな………あそこやったら水とか食料も確保できるし。」
「ええ。それに現在の所、あちらが安全地帯となっていますし。」
ヨシュアの言葉にケビン、ティナはそれぞれ頷いた。
「え、ええい!哀れみの目で僕を見るな!あいにくだが食料ならさっきの奴らから盗んだばかりだ!それも1ヶ月くらいは余裕で暮らせるほどの量をね!それにこのギルバート・スタイン、安全地帯等確保しなくても結社のプログラムの野営術等を習得しているから必要ない!」
それを見たギルバートは叫んだ後、ケビン達を迂回して、ケビン達の背後へと走り
「フッ、この食料はぜんぶ僕一人のものだ!貴様等などに一かけらたりとも分けてやるものか!フハハ、それではさらばだ!」
捨て台詞を言って走り去った。
「はあ………話を聞かない兄さんやな。そもそも、こんな場所に1ヶ月もおるつもりなんか?」
「まあ、今は放っておきましょう。そのうち音を上げて、頼ってきそうな気がしますし………」
「ふふ………そうかもしれませんね。」
「はは、その時はせいぜい生暖かく迎えてやるとしようか。」
ヨシュアの推測を聞いたクローゼとケビンはそれぞれ苦笑しながら頷いた。その後ケビン達は探索を再開し、終点に到着した。終点に到着すると妖しげな光陣が現れ、そこから虚ろな目をしたシェラザードと鳥型の獣人達が現れた!
~サントクロワの森・終点~
「シェラさん!」
「…………………」
ヨシュアはシェラザードの名を呼んだが、シェラザードは何も答えず虚ろな目でヨシュアを見ていた。
「おお………シェラ君か!」
「シェラ先輩………!」
「シェラザードさん………!」
一方オリビエは驚きの表情でシェラザードを見つめ、アネラスとクローゼは心配そうな表情で見つめた。
「今度は姐さんかいな………やっぱギルドの訓練場だけあって遊撃士で統一しとるみたいやな。」
「………何とか倒して封印石を回収しましょう。そうすれば本物のシェラさんを解放できるはずです。」
「ああ………!」
そしてケビン達は戦闘を開始した!
「イーリュンよ!我等に祝福を!アルテミスの祝福!!」
戦闘開始早々ティナは魔術を放って、味方全体の身体能力を上げ
「まだまだこれからだよっ!はぁい!!」
アネラスはクラフト――風花陣を使って、攻撃力を上げた!
「「「「……………」」」」
一方鳥型の獣人達は一斉に襲い掛かろうとしたが
「おぉぉぉ!!」
ヨシュアのクラフト――魔眼によって、動きが制限され
「そぉれっ!!」
「ほれっ!ホワイトヘゲナ!!」
「や~っ!エアリアル!!」
オリビエのクラフト――クイックドロウとケビンとクローゼが放ったアーツによってダメージを受けると共に怯み
「はぁぁぁぁぁ、はぃ!!」
さらにアネラスが放った回転による風圧で敵を引き寄せるクラフト――独楽舞踊によって、アネラスの周囲に引き寄せられた!
「身妖舞!!」
「フッ、熱き銃弾を受けたまえ!フレイムショット!!」
「そらっ!!」
「行きます―――フリージング!!」
そしてヨシュア、オリビエ、ケビン、クローゼがそれぞれ攻撃をして止めを刺した!
「………………」
一方シェラザードは魔術――真・大竜巻を固まっているケビン達に放った!
「あいたぁ!?」
「っ!?」
「グッ!?」
「あぅっ!?」
「きゃっ!?」
シェラザードの魔術によって、ケビン達はダメージを受けた!
「…………」
ケビン達がダメージを受けてのけ反っている隙を狙ってか、シェラザードはクラフト――シルフェンウィップをケビン達に放った!
「イーリュンよ!我等に守りの加護を!防護の聖域!!」
しかし後衛でケビン達から離れていた為、ダメージを受けていないティナが放った魔術によって、ケビン達の防御力は上げられ、シェラザードのクラフトを受けたがかすり傷程度のダメージしか受けなかった。
「今助けたるっ!そらっ!!」
そしてケビンはクラフト――セイクリッドブレスを放って、自分を含めたダメージを受けた味方達の傷を回復した!
「…………………」
それを見たシェラザードはアーツを放とうとしたが
「ふっ、これは避けられまいっ!!」
オリビエがクラフト―――スナイプショットを放って、中断させた!攻撃を中断させられたシェラザードは鞭での攻撃に移ろうとしたが
「水よ、お願い!連続水弾!!」
クローゼが放った魔術によって、持っていた鞭が弾き飛ばされた!
「さぁ、行くよ!まだまだまだまだまだまだぁっ!とどめっ!!」
そしてアネラスはクラフト―――八葉滅殺を放って、ダメージを与えた後一端後退し
「これで決まりだよ!!」
剣を構え、そして!
「閃け!鮮烈なる刃!無辺の闇を鋭く切り裂き、仇なすものを微塵に砕くよっ!!」
神速の速さでシェラザードに次々と一撃離脱の斬撃を繰り返した後
「漸毅狼影陣!!」
最後にすざましい一撃をシェラザードに放つと共に駆け抜けた!アネラスが放ったSクラフト―――漸毅狼影陣を受けたシェラザードはなんとグリモアに変身した!
「朧!!」
そしてそれを見たヨシュアがクラフトを放って止めを刺した!するとグリモアがいた場所に封印石が現れ、仲間達と共に武器を収めたケビンは封印石を回収した。
「よし………!」
「これで………シェラさんを解放できますね。」
「フッ………久々の逢瀬というわけだね。」
「ふふっ、楽しみだな。先輩がいてくれたら百人力、間違いなしだし。」
封印石を手に入れたケビンとヨシュアは頷き、オリビエとアネラスは微笑んだ。
「では中にいる方を解放する為に拠点に一端戻りましょう。」
「ええ。そうすれば最後の『修練場』も解放されるでしょうね。」
そしてティナの提案にクローゼは頷いた。
その後ケビン達は封印石の中にいる人物を解放する為に一端庭園に戻った…………
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