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とある狭間の光源支配(デイライト):Re

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序章
  超電磁砲と光源支配②

『初春』


「なんですか?」


零は黒子達との待ち合わせ場所へと向かう途中で初春に尋ねる。彼は普段口数は少ない方なのでこうやって自分から他人に声をかけることはあまりない


『これから会う人物についてなんだが、そろそろ教えてくれてもいいんじゃないか?』


「そうですねー。特別に教えてあげましょう!」


えらく今日は先輩に対して態度が大きいと思いながらも、それだけテンションが上がっているのであり

またその程度のことをとやかく言う性分でもないため、黙って聞き流す


「今日会うのはですねー。なんと…!聞いて驚いてください!!」


『もったいぶるな。さっさと言え』


「常盤台中学のエース…御坂美琴さんです!」


『……』


「あれ…?どうしたんですか?驚きませんでした?」


零は今日一番の溜息を吐いた。予想していた中で最悪の人物とこれから会うことになるとは

別に彼女を嫌っているという訳ではなく、またそれほど親密な関係でもない

ただ、あることをきっかけに出会うたびに勝負を挑まれるようになったのだ


『……帰る』


「え?え?どうしてですかー!?待って下さいよー!」


振り返って帰ろうとする零の腕を初春が引っ張る


「あ、ほら!夜月さん!もう待ち合わせ場所はそこですよ!」


そう言われ、零はそちらを向いた。零自身もたまに利用するファミレスであった。こんなことならもっと早くに聞き出せばよかったと今さらながら後悔する


『……仕方ない』


結論、零は腹を決めた。これから御坂美琴に会うということはどうにも避けられない事実らしい

まさか美琴もこの状況で勝負を仕掛けてくることはないだろう思い、抵抗を止めた

零から力が抜けたことを確認すると、初春は安心したように息を吐いた


そしてファミレスに入って二人を探そうと思ったが、その必要はなかったらしい


通りに面した窓際の席で、常盤台の制服を着た女の子二人が抱き合っている

というよりも一方的に抱きついているという方が正しいだろう

外からでもそのツインテールはよくわかる。常盤台で、ツインテールで、しかもこのような変態行為を公の場で平然とやってのける人物は

零は一人しか思いつかなかった



―――



「――という訳でとりあえずご紹介しますわ」


美琴に殴られのであろう。黒子は頭を擦りながら紹介を始める

ちなみに零は美琴からの刺すような視線を受けていたが完全に無視していた


「こちら…柵川中学一年、初春飾利さんですの」


「は、はじめまして!初春飾利…です」


「それから…」


「どーもー!初春のクラスメイトの佐天涙子でーす!なんだか知らないけど、ついて来ちゃいましたー!ちなみに能力値はLEVEL0でーす!」


「さ、さささ佐天さん!な、何を…!」


LEVEL0であることを強調して皮肉のつもりで言ったであろう佐天に対して初春は明らかに動揺していた


「初春さんに、佐天さん…。私は御坂美琴。よろしく」


「よろしく…」


「お願いします…」


しかし美琴はそんなことは気にすることなく、二人に気さくに挨拶した。想像していた人物と違うことに、佐天と初春は驚いていた


「そしてそこにいらっしゃるは……我が麗しのお兄様ぁ~!」


『くっつくな。暑苦しい』


空間移動を使い、零に抱きつく黒子。零は顔色一つ変えずに黒子と押しのける


「ああん。黒子はそんなお兄様の冷たいところも「アンタ!!」


黒子の変態発言を無視して美琴は零を睨みつける。零は涼しい顔をして視線だけそちらに向けた

『そういえばお前に名乗ったことはなかったな。夜月零だ。よろしくな超電磁砲(レールガン)


「アンタ…ホントにいい度胸してるわね…!いつぞやの決着をここで…!」


美琴は零の態度が気に入らなかったのだろう。バチバチと電撃を纏っている。それを見て零は掌を美琴に向けた


『待て、御坂。お前はこんな街中で始めるつもりか?』


「うっ…」


それを聞いて美琴も冷静になったらしく、電撃を止めた。それを見て零は元来た道を帰ろうとする


「ちょっとアンタ!何勝手に帰ろうとしてんのよ!」


『俺は初春に連れられて会いに来ただけだ。もう目的はすんだんだ。帰ってもいいだろう?』


「いいわけないでしょうがぁ!」


思わず美琴は零に向かって電撃を放ってしまった。しかし零は動じることなく、その電撃を弾く


『お前…さっき言ったばかりだろう?』


「うるさい!」


「お、落ち着いてくださいよ二人とも!」


『俺は冷静だ。あっちの電撃姫に言ってくれ』


「だ・れ・が!電撃姫だってぇ~!」


だんだんとからかうことが面白くなってきたが、これ以上刺激すると本気で電撃をぶっ放しかねない


『わかった。また今度相手してやるから今は落ち着け』


「言ったわね?今の言葉忘れないでよ!?」


何より初春達が可哀想になったので、ひとまず美琴を落ち着かせる


「では、つつがなく紹介も終わったところで、多少予定は狂ってしまいましたが今日の予定はこの黒子がばっちり――」


そして何事もなかったかのように話を進める黒子

その場に鈍い音が響いた。本日二発目の拳骨を喰らった黒子はしゃがんで頭を押さえている。彼女の変態っぷりは今に始まったことではなく、美琴もかなり苦労しているようだ


「ま、こんな所にいても仕方ないし、とりあえず…ゲーセン行こっか?」


「ゲーセン…ですか?」


御坂の口から予想しなかった言葉が出たようで、初春と佐天は顔を見合わせる。

零は隙を見て帰ろうと思ったが、黒子に捕まり、そのまま連れて行かれた



―――



「もう、お姉様ったら…立ち読みとかゲームではなく、もっとこう、お華とかお琴とか、ご自身に相応しい趣味を」


『こいつがそんなことするわけないだろう?』


「それはそうだけど…アンタに言われるとなんか腹立つわね…!」


今にも美琴は零に電撃を飛ばしそうな勢いである。しかし当の本人は涼しい顔で美琴を言葉を聞き流す

そんなやりとりとみて、佐天と初春は御坂美琴という人物が自分達の想像とは全く違う人物であると、本人達には聞こえないように話していた


そして丁度バス停の前あたりで女の人がビラ配りをしていた。その女の人に一番近かった美琴と初春はビラを受け取り、内容に目を通す


「何それ?」


「新しいクレープ屋さんみたいですね。先着100名様にゲコ太マスコットプレゼントって…」


「何このやっすいキャラ?今時こんなのに食いつく人なんて――」


いる訳がない、と佐天は続けたかったのだろうが、前を歩いていた美琴が急に立ち止まり、それに気付かなかった佐天はそのまま美琴の背中にぶつかってしまう


「すみませ――」


「御坂さん?」


「どうなさいましたの?お姉様」


声をかけるも美琴は全く反応しないでじっとビラを見つめていた。何事かと思い、黒子はビラを覗き込む

零も黒子の反対側から美琴のビラを覗き込んだ


「あら~ん?クレープ屋さんにご興味が?それとも…もれなく貰えるプレゼントの方ですの?」


「な…何言ってんのよ!?わ、私は別にゲコ太なんか…。はは…だって蛙よ?両生類よ?どこの世界にこんなもの貰って喜ぶ女の子が――「「あ!」」


視線を逸らしながら言い訳がましくつらつらと何かを述べていたが、その最中、初春と佐天は美琴の鞄に何かがぶら下がっていることに気がついた


まぎれもなく、ゲコ太のストラップだった。美琴は顔を赤くし、二人はどう反応していいかわからず、黒子は笑いをこらえていた


「な、何よ!笑いたいなら笑いなさいよ!」


それまでじっと美琴の顔を見つめていた零を、顔を赤くしたまま美琴は睨んだ


『別に、誰も笑ってないだろう?』


次の零の言葉に、一同は震撼する


『御坂にも、意外と可愛い所があるんだな』


真顔で、というよりもいつもの無表情で、美琴の顔をしっかりと見ながらあっさりと言ってのけた


「な…か、かわ…」


せっかく顔の赤みが引いてきたところで、零の発言に美琴は今度こそ、文字通り顔中を真っ赤にした

それは先程の比ではない
当の本人はそれだけ言うと特に何も変化なく、さっさと先に行ってしまう


「お…お兄様…」


「夜月さんって意外と…」


「女たらしなんですね」



未だ顔を赤くして口を鯉のようにパクパクとさせている美琴を尻目に、三人は顔を見合わせていた。
 
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