ドラゴンクエストビルダーズ:アレフガルドを復活させられてます(新リュカ伝)
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第1章:メルキド編
21:人生色々。お喋り七色。
(メルキド)
リュカSIDE
「僕はね、こう見えても100歳は超えてるんだ。ルビスによってこの世界に召喚される前は、別の世界で生きて……そして天寿を全うして死んだのだから」
「え、リュカって死んじゃってるの!?」
「勘違いしないでスラタン。ルビスの力で生き返ったから、今のこの身体は死んでないよ。でも一度は老衰で死んでるって事だからね」
スラタンに対しての説明口調ではあるのだが、俺はこの部屋に居る全員に説明している。
「んで、前世の僕が生きていた国なんだけど……普通にモンスターと一緒に生活してたからね。スラタンと同じスライムや、“地獄の殺し屋”と呼ばれてるキラーパンサーっていう大きな猫のモンスター等と、仲良く暮らしていたからね」
「えぇ、モンスターと一緒に!? みんな怖がらないの?」
「最初は吃驚してる人が多かったけど、国で一番偉いとされている王様が、率先してモンスター達と仲良くするから誰も怖がらなくなったんだ。なんせ全員その王様の友達だからね……文句なんか言えないんだよ(笑)」
「いいなぁ……ぼくも沢山の人間と仲良くしたいよ」
「スラタンは大丈夫だよ。この町で色んな人間と仲良くしていけば良いんだから。この町でスラタンを敵視するヤツは、僕を敵視してるのと同じだからね。僕だけじゃないよ……ピリンもチェリコもスラタンの友達だから、君を嫌うヤツは美女二人を嫌ってると同じ事になる」
「そうよスラタン。私達はもう友達よ」
「私も最初は吃驚したけど、リュカが連れてきたから友達になれたわ」
女性陣が微妙な雰囲気になってたから、緩衝材的にスラタンを利用しちゃったんだけど、結果OKって事で大満足。
「わ、私も最初はモンスターの出現に驚きましたけど、リュカさんが信用しきってましたし、実害が無い事も確認出来ましたから、友達だと思ってます!」
「僕もですよ! 僕もスラタンのことを心から友達だと思ってます!」
「ワシもだぞ、ワシもお前さん等と敵対する気はない!」
女性陣二人の友好的な言葉に間髪を入れず同意を示したのはケッパー・ショーター・ハゲだ。
やっぱり美女に嫌われるかもしれないという状況は避けたいのだろう。
完璧にこちらサイドに移行した。
「そんじゃさぁ……喧嘩してる二人は無視して、僕等だけでメルキドの町を発展させようぜ」
哀しげな顔から、明るい笑顔に変わったスラタンを囲んで、ワイワイ楽しそうに町造り宣言をしてヒゲとロッシを村八分にしてやる。除け者にされたくなかったら、今後は皆と仲良くすることって意味を込めてね。
「ちょ、ちょっと待ってよ! 俺だって喧嘩したかった訳じゃ……」
「わ、我が輩だって喧嘩したいのではない! この町のことを思っての事であろう! なんせ我が輩は、この町の町長になるべき者なのだからな!」
ロッシは反省した感じで言い訳しようとしてたが、ヒゲのアホは根拠の無い自信で、自らを町長だと言い張った。
「はぁ? 何で貴様が町長になるんだよ馬鹿! 貴様ほど町長に……人の上に立つのに不適格な人物は居ない!」
「な、何を言うか……我が輩のお陰で、メルキドは発展してるのだぞ!」
ヒゲは『我が輩のお陰』と言いつつも、俺等にメルキド録を見せ付けてアピールしてくる。
「貴様が何をした!? そのメルキド録の情報のことを言ってるのか? だとしたら勘違いも甚だしいぞ! 僕等はその情報が無くても町を発展させてきただろう……明確な情報が無きゃ無いで何とかするのが人間だ。何だったら今すぐその本を燃やしてくれても構わないぞ」
勘違いが甚だしいので、火の着いてる煉瓦料理台を指差し本を燃やす様脅す。
だがヒゲはメルキド録を抱き締め、激しく首を左右に振って拒絶の意思を見せた。
内容の善し悪しに拘わらず、その本はヤツにとっての宝物なのだろう。なんせ先祖代々受け継がれてきた物だから。
「わ、我が輩の先祖は……昔のメルキドの長だったんだ。で在れば、我が輩が町長になるのが最有力であろう!」
「黙れ馬鹿。貴様の先祖が町長だったから、昔のメルキドは滅んだんだろうが!」
先日出会ったヒゲの先祖であるロロニアは、良い人ではあっただろうけども人々の上に立つには適してなさそうだった。
「し、しかし……」
まだ諦められない様子のヒゲ。
厳しく言い過ぎて生きる気力を無くされても困るから、やんわりと説得してみようかな……
「いいかいロロンド。人間が2人以上で生活すると、考え方も複数存在することになる。だから話し合いを重ね、互いに譲歩し合うことで皆が暮らしやすい環境を整えられるんだ。だけど“俺の考え方と違うから、奴は排除する”って行動をとると、独り善がりの独裁的な町になっていくんだ。お前はロッシに『出て行け』と言ったね……ロッシの意見を、自分の意見の邪魔者だと判断しちゃったね?」
「あ、あれは……その……コイツは逃げることばかりを考えてるから……」
「それの何が悪い? 生きることを優先するのなら、勝てない敵からは逃げるのも選択肢の一つだ。その為の準備をしろとロッシは言ってた訳ではないが、彼の提案を採用して強すぎる敵が攻めてきた時の事も考慮に入れるべきだろう!」
「我が輩は、このメルキドを安住の地にしようと頑張ってるのだ! 我が輩のだけではないぞ……ピリンもショーターも、誰もが幸せに暮らせる町にしたいんだ!」
心意気は解るが、自分の意見を他人に押し付けすぎなんだよ!
「“安住の地”か……素晴らしいと僕も思うよ。でもね、町や国ってのは人々が暮らしやすくなる為の道具でしかない。町や国の所為で命の危機に直面するのならば、そんな道具は捨てちゃったほうが良いんだ。人間さえ生きてれば、また集まって別の場所に新たな町や国を造ることが出来るからね」
誰だって一度手に入れた物を捨て去ることに抵抗はある。
折角皆で造ってきた町を、もしもの時は捨てて逃げると言われれば、笑顔で納得は出来ない。
皆の顔を見れば、その事がよく解る。
「勿論、捨てて逃げることが絶対条件ではない。あくまで最悪の状態に備えての提案だ。だから僕はロロンドの言う“防御力強化町造り”も進めるべきだと思うし、ロッシの“目立たない町造り”も良い案だと思ってる。だが相反する提案が存在する以上、その折衷案が必要になるだろう。それを決めるリーダの存在も……」
「そうですよ。僕等を統率するリーダーが必要ですよね!」
「ええ、私も常々思ってました」
ショーターとケッパーが話を合わせるかの様に同調してくる。
やはり女性陣2人を先に取り込んだのは正解だったね。
「だ、だから……我が輩が、そのリーダーに……」
「お前がリーダーになったら、昔のメルキドの様に滅びる。なんせ実際に滅ぼした先祖の残した記録を頼りに、町の復興を手伝ってるんだからな」
「で、では誰がリーダーに相応しいんだ!?」
未練だだ残りなのか、恨めしそうに俺を睨むロロンド。
しかし、そうだなぁ……相応しいのは……
「うん。僕的にはピリンが相応しいと思うね」
「「「「えぇぇぇぇ!?」」」」
「わ、私!? ム、ムリだよ私には!」
スラタン以外の全員から驚きの声と、当人からは否定的な発言を浴びせられる。
おいおい、他に誰が居るんだよ?
ピリンは一番最初からの住人で、“皆が仲良く幸せな暮らしが出来る”という明確なビジョンがあるんだから、彼女が相応しいだろうに。
「リュ、リュカさん……リーダーにはリーダーシップが必要だと思うんですよ。ピリンには悪いけど、私には彼女がリーダーシップを持ってるとは思えません」
リーダーシップ? そんな物は後から付いてくるもんだよ、ケッパー君。
「この少人数の町には、リーダーシップなんて未だ必要無いだろう」
「いや必要でしょう。ピリンにロロンドさんを押さえられるとは思えませんが……」
ショーターも不満なのか?
「そんなのはリーダーをサポートする周囲の者が居れば良いんだよ。ケッパー・ショーター・ハゲ……それとチェリコがピリンを補佐してくれれば、この町は今後も発展していくさ。助けてくれるだろ?」
「ぼくはピリンを助けるよ」
「流石スラタン」
スラタンが可愛くて仕方ない。
「そ、そりゃ……ワシ等はリーダーを全力で補佐するつもりだが……もっと相応しい者が居ると思うのだがなぁ」
「はぁ? 誰のことだよ、それ? 自分の事を言ってるんだったら思い違いも甚だしいぞ。貴様のリーダーシップなんぞ、髪の毛の数より少ないからなハゲ!」
「いやいやいや……誰のことでもありません。リュカさんこそが僕等のリーダーに相応しいと思います」
……え、俺!? 嫌だよ俺は! もう前世で懲りたんだよ。国王とかリーダーとか、責任が伴う役職は懲りたんだよ!
危ねーなぁ……前世で王様してたって言ってたら、絶対に押し付けられてた感じじゃん!
言っちゃダメだね。絶対に秘密にするべきだね!
うん。そして何としても、俺がメルキドのリーダーになるなんて状況は回避するべきだね!
リュカSIDE END
後書き
リュカさんの嫌いなこと。
責任を負わされることと、物事を丸投げされること。
でも我が儘なので、他の人に責任を負わせるのと、物事を丸投げするのはOK。
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