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英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク

作者:sorano
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第128話

~隠者の庭園~



ケビン達と共に戻ったティータは封印石を解放した。すると封印石は光を放ち、その光の中から見覚えのある人物が現れようとした。

「ようやく、探していた内の一人を解放できたな。」

「ええ。協力してくれてありがとうございます。」

ケビンの言葉にヨシュアは静かに頷いた。そして光の中から地面に膝をついたレンが現れた。

「……っ!―――お兄様、大丈夫!?どこのどなたか知らないけど”八葉一刀流”の”皆伝者”にして高ランクの遊撃士のレンとお兄様に喧嘩を売るなんて随分とおバカな事を考えて…………あら?」

目を見開いて立ち上がったレンは瞬時に後ろに跳躍すると同時に二振りの小太刀を構えて不敵な笑みを浮かべたが目の前にいるケビン達に気づくと呆けた。

「えへへ……久しぶりだね、レンちゃん……!」

「ハハ、久しぶりだね、レン。」

「……ティータ?それにヨシュアまで………一体どういう事なのかしら?」

嬉しそうな表情で自分に声をかけるティータと懐かしそうな表情で自分を見つめるヨシュアを見たレンは不思議そうな表情で首を傾げた。

「ハハ、幾ら自分の事を”天才”と豪語するレンちゃんでもこの状況には戸惑うか。」

「あら、神父さん。それになんだか見覚えのある人達が一杯いるわね。―――!うふふ、どうやら面白い事になっているみたいね♪それで?これは一体どういう状況なのかしら?」

苦笑しているケビンの言葉を聞いてケビンに気づいたレンは周りにいる懐かしの面々を見回して目を丸くした後初対面のティア達に気づくと小悪魔な笑みを浮かべてケビン達に訊ねた。そしてケビン達はレンに事情を説明し、初対面のティア達は自己紹介を行った。



「………”影の(ファンタズマ)”、ね。………うふふ、中々この世界にピッタリな名前ね。」

「へ………」

「まさか何かわかったのかしら?」

事情を聞き終えた後口元に笑みを浮かべて呟いたレンの言葉を聞いたケビンは呆け、アーシアは目を丸くしてレンに訊ねた。

「わかったって程じゃないわ。確証できるような事が起こっていないから、まだ推測の段階よ。」

「ええっ!?それってどんな事なんだ?」

レンの答えに仲間達と共に驚いたロイドはレンに訊ねた。



「うふふ、悪いけどそれは言えないわ。まだ推測の段階だから、間違っているかもしれない推測を口にしたらみんなを混乱させちゃうし、それに………秘密を持っている方がレディとして魅力的でしょう?」

「レ、レンちゃ~ん……」

「このクソガキは……」

「ハア……こんな時くらいその秘密主義は止めなさいよね………」

しかし笑顔を浮かべて明確な答えを口にしないレンの答えに仲間達と共に脱力したティータは疲れた表情をし、アガットはレンを睨み、シェラザードは呆れた表情でレンを見つめ

「何を言っているんですか!?そこがレンちゃんの可愛い所でもあるんですから!ね、ティアさん♪」

「ええっ!?な、何でそこで私に振るのよ!?た、確かに彼女も可愛いけど………」

真剣な表情で声をあげたアネラスに話を振られたティアは驚いた後小声で呟いた。



「ハハ……そう言えばレン、ルーク兄さんの事だけど……解放されたレンの反応を見る所兄さんと一緒にいたようだね?」

「ええ、それぞれの仕事が終わって一緒に家に帰っている最中に白い光に包まれたわ。」

「!と言う事はルークもこの”影の国”に巻き込まれている可能性は高くなったな……!」

「早くご主人様に会いたいですの♪」

ヨシュアの疑問に答えたレンの答えを聞いたガイは血相を変え、ミュウは嬉しそうな表情で呟いた。

「それとレン。ルーク兄さんの出身や出生だけど……」

「ああ、お兄様が異世界の人で”レプリカ”とかいう存在って話かしら?レンはルークお兄様の正体が何であろうと全然気にしないし、そもそもレンは”ルークお兄様が異世界の人である事を前から確信していたもの。”」

複雑そうな表情で答えを濁しているヨシュアの疑問に答えたレンは驚くべき事実を口にしてケビン達を驚かせた。



「ええっ!?”前からずっと確信していたという事”はレンちゃん、ルークさんが異世界の人だとこの”影の国”に巻き込まれる前から気づいていたと言う事ですよね?」

「一体どこにルークが異世界の奴だって確信するような証拠があったんだ?」

ケビン達と共に驚いたクローゼは信じられない表情でレンを見つめ、フレンは不思議そうな表情でレンに訊ねた。

「一つはお兄様が大切に持っている写真よ。」

「写真……?その写真とやらに一体何が写っていたのだ?」

レンの答えの意味がわからないミュラー少佐は眉を顰めて続きを促した。

「ティアお姉さん達――――お兄様の昔の仲間の人達が全員お兄様と一緒に写っている写真よ。」

「え………もしかしてその写真って………」

「”エルドラント”に行く直前にとった写真だろうな。」

「フフ、懐かしい話ですわね。私も自分の執務室に飾ってありますわ。」

「僕にとってもあの写真は宝物ですの!」

「確かあの写真を撮るのを提案したのってノエルでしたっけ?」

「ええ。―――しかしそれのどこに彼が私達の世界の出身だという証拠があったのですか?」

レンの答えを聞いて心当たりがあるティアは目を丸くし、ガイとナタリア、ミュウは懐かしそうな表情をし、アニスの疑問に頷いたジェイドはレンに訊ねた。



「その写真をお兄様は大切にしていてね。仲間の人達と一緒に写っていた写真を大切にしているんだから、当然お兄様にとってその仲間の人達は大切な存在でしょう?なのにお兄様は今までその人達と接触するような事はなかった上手紙で連絡を取り合っていたのもイオンお兄さんだけだったもの。」

「フム……死別した可能性は考えなかったのか?」

レンの説明を聞いて頷いたバダックは自分が気になっていた事を問いかけた。

「その可能性も考えたけどお兄様、誰かのお墓参りなんて今までした事ないもの。お兄様の性格を考えたら親しい人を亡くしたら絶対お墓参りくらいはするでしょう?だから写真に写っている人達―――ティアお姉さんたちは死別ではなく何らかの事情で会えなくなってしまった……つまり、”連絡が絶対に取り合えない場所”―――”異世界”って事になるでしょう?最初は異世界なんてお伽話のような存在は信じていなかったからその可能性は一端除外していたけど、異世界出身のリオンお兄さんとソフィお姉さんの存在で除外していたその推論が再び浮上したわ。」

「写真一枚だけでそこまでの推論を出すなんて……」

「ハハ、相変わらずとんでもなく頭が冴えている嬢ちゃんだな。」

「あのルークの妹とはとても思えない賢い妹ですよねぇ?」

「というか絶対彼女の方がルークの何十……いえ、何百倍も賢いですよ。」

レンの答えにケビン達と共に驚いていたロイドは信じられない表情をし、ジンは苦笑し、アニスとジェイドはそれぞれ意味ありげな笑みを浮かべてレンを見つめていた。



「レンちゃん、さっきルークさんが異世界の人であると確信する証拠の時に”一つは”と言っていたけどまだ他にもあるの?」

「ええ。もう一つは”環”を取り込んだ”教授”の絶対障壁をルークお兄様が破った件よ。」

そしてティータの疑問にレンは頷いて話を続けた。

「何……?”環”を取り込んだ”教授”の絶対障壁をルークが破った件だと……?」

「そう言えばあの時絶対障壁を破壊するつもりでいたレーヴェは”教授”の攻撃によって中断されて、レーヴェの代わりにルークさんが破壊しましたよね……?」

レンの話を聞いてかつてのワイスマンとの戦いを思い出したアガットは眉を顰め、カリンは戸惑いの表情で呟いた。



「………―――!なるほどね………あの絶対障壁を破るには『外の理』――――”ゼムリア大陸に存在しない力”が必要だったから、『外の理の力』でワイスマンの絶対障壁を破ったルークさんは『外の理の存在』―――――つまり異世界の存在だと判断したのね?」

「大正解♪」

「絶対障壁を破壊できる程の異世界の力……―――!まさかその時ルークが使った”力”は……!」

「間違いなく”超振動”か”第二超振動”でしょうね。そこに付け加えて言えば”ローレライの鍵”も関係しているかもしれません。あの剣もルーク同様あの戦い以降見つかっていませんし。」

アーシアの推測にレンは笑顔で答え、話を聞いていて考え込んでいたガイは何かに気づくと目を見開き、ジェイドはガイの続きの言葉を静かな表情で答えた。

「”ローレライの鍵”……そう言えばルークが得物としている剣もそんな名前だったわね。」

「今まで見た事がない上、どんな名剣にも見劣りしない剣でしたからそれが気になってどこで手に入れたか訊ねても先輩はいつも誤魔化していましたけど……やっぱりそっちの世界の剣だったのですか?」

ジェイドの言葉を聞いてある事を思い出したシェラザードは考え込み、アネラスはティア達に訊ねた。

「……やはり”ローレライの鍵”もルークと共にそちらの世界にあったようですね。あの剣は少々特殊でしてね――――」

そしてジェイドはルークが持つ剣―――”ローレライの鍵”が第7音素(セブンスフォニム)の集合体―――”ローレライ”の力を集結させてその力を自由に扱える剣であり、かつてヴァンとの決戦の際”ローレライ”をその身に宿したヴァンからその剣を使ってローレライを解放した事を説明した。


「………つ、つまりルークさんが持っているその”ローレライの鍵”っちゅう剣は”精霊”の力を宿した剣っちゅう事ですか!?」

話を聞き終えたケビンは口をパクパクさせながら信じられない表情で訊ねた。

「そう捉えてもらっても構いません。”ローレライ”を含めた音素の集合体は見方を変えれば”精霊”といってもおかしくありませんしね。」

「フッ、”精霊”の力を宿した剣か。まるで伝承で出てくるような剣だね。」

「というか実際わたし達の世界でも伝説扱いされていた剣でしたから、まるでも何もその通りです♪」

ジェイドの答えを聞いて静かな笑みを浮かべたオリビエにアニスは笑顔で指摘し、皇族であるオリビエに露骨に媚びを売っている様子のアニスの態度にケビン達は冷や汗をかいた。

「アハハ……あら?でも確かあの時レーヴェの代わりに絶対障壁を破ったのはルークさんの他にももう一人いたわよね?」

「うん。レイスさんも何らかの”力”を使って兄さんと一緒に”環”の障壁を破壊したね。それを考えるとレイスさんも………」

ある事に気づいたカリンの疑問に頷いたヨシュアは心配そうな表情でクローゼに視線を向け

「なっ!?まさかレイシス王子殿下まで異世界の方なのか!?」

「レイシスお兄様が…………で、でもさすがにそれはありえないと思います。レイシスお兄様のご両親―――私のお父様とレイシスお兄様の産みの母親であるロナ様は私達の世界―――ゼムリア大陸で生を受けた方達なのですし。」

二人の会話を聞いてある事に気づいたユリア大尉は驚きの表情で声を上げ、信じられない表情をしていたクローゼだったがすぐに気を取り直して反論した。



「ま、それについてはレイスお兄さんが解放された時に聞けばいいんじゃないの?それよりも………………………………」

「え、えっと……?私に何か聞きたい事でもあるのかしら?」

クローゼの疑問を軽く流した後真剣な表情をして自分の周囲を回りながら自分を観察するレンの行動に戸惑ったティアはレンに訊ねた。

「ええ、一つだけ。ティアお姉さん、だったかしら?料理はできるかしら?」

「え?人並みにはできるけど………」

「まあ、ナタリアの料理と比べれば誰でも人並みにはなりますけどねぇ?」

「というかナタリアのは料理と言える物じゃないですよねぇ?」

「おい……メリルの料理の腕前はどれだけ未熟だったとしても幾らなんでも言い過ぎだぞ。」

「お父様の言う通りですわ!ルークでも作れるようになったのですから私だって、普通に作れますわよ!」

レンの質問にティアが首を傾げている中それぞれからかいの表情をしているジェイドとアニスをナタリアはバダックと共に睨んで反論し

「いや、ラルゴは知らないからそんな事が言えるんだ。ナタリアの場合、その”普通に作った料理”が料理と言える物じゃないんだよ………」

「お黙りなさい!」

「どわっ!?幾らなんでも矢はやり過ぎだろ!?」

更に疲れた表情で呟いたガイの指摘を聞いたナタリアはガイに矢を放ち、放たれた矢をガイは間一髪で回避し、その様子を見守っていたケビン達は冷や汗をかいた。



「…………………うん、合格♪さすがルークお兄様。レディを見る目もちゃんとあるわね♪」

「え………ご、”合格”って一体何の事かしら??」

一方真剣な表情で少しの間黙り込んでティアを見つめた後笑顔を浮かべて呟いたレンの答えの意味が理解できなかったティアは不思議そうな表情でレンに訊ねた。

「や~ね、そんなの勿論ルークお兄様の結婚を前提にした恋人に決まっているじゃない♪これでルークお兄様にもやっと春が訪れるわね♪」

「ふふっ、モテている癖に頑なに恋人を作らなかったルークを心配していた先生とレナさんもようやく安心できるわね♪」

「!!!!!!???な、ななななななななっ!?」

そして小悪魔な笑みを浮かべて答えたレンとレンに続くようにからかいの表情で自分を見つめて呟いたシェラザードの答えを聞くと顔を真っ赤にして混乱した。

「まあ……そちらの世界でのルークは女性達にとってそんなに魅力的な殿方なのですか?」

一方ナタリアは目を丸くしてケビン達に訊ねた。



「ルーク先輩ですか?ええ、遊撃士達の中では多分先輩が一番モテていると思いますよ。先輩って顔は結構整っている上親しみやすい性格ですし、遊撃士としてのランクは最高ランクのA級正遊撃士でもある為稼ぎもいいですから。まあ、さすがにユリアさん程の人気ではありませんけど。」

「ア、アネラス君……そこで私が出てくるのは色々と間違っていると思うのだが……」

「ア、アハハ……」

「フッ………確かに大尉の人気は格が違うから比べる事自体が間違っているな。」

アネラスの答えを聞いたユリア大尉は表情を引き攣らせ、クローゼは苦笑し、ミュラー少佐は静かな笑みを浮かべ

「わたし達からしたら信じられない事だけど、よくよく考えてみたら昔のルークは最悪で家柄しか取り柄がなかったけどまともな性格になったルークって、普通の女性からすれば結構お買い得な男ですよねぇ?」

「しかも稼ぎもいいそうですからね。それらを踏まえると一般的に考えればルークが女性達にモテてもおかしくはありませんね。」

「みゅ?ご主人様は元々優しい方ですから女の人達に人気があってもおかしくありませんの!」

それぞれからかいの表情でティアを見つめるアニスとジェイドにミュウは不思議そうな表情で首を傾げて指摘した。



「ハハ……というか何で最初からティアに的を絞ったんだ?」

「お兄様が大切にしているガイお兄さん達が写った写真の事とティアお姉さん達の男性関係を考えればすぐに気づけるわよ。ナタリアお姉さんは王族かつ既婚者という事を考えると、結婚以前も元々婚約者みたいな将来の相手がいる可能性が高いと考えて除外。アニスお姉さんは当時の写真から推測すると当時の年齢は今のレンと同じくらいだから、消去法で最後に残ったティアお姉さんになるわ。それに大分前にレンがルークお兄様の好きな人の予想としてティアお姉さんを出した時、ルークお兄様、凄く慌てていたもの♪」

苦笑しているガイの疑問に答えたレンは笑顔を浮かべ

「ふふっ、随分と懐かしい話が出たわね。確かあの日はあんたたちが準遊撃士になった日のお祝いの日だったわよね?」

「ええ。レン、ちなみにどうしてアニスさんは自分と同じ年齢だからって理由で除外したんだい?」

シェラザードと共に昔を懐かしがっていたヨシュアはレンの推測を聞いて気になっていた事を訊ねた。

「だって、一般的な男性の平均的な好みを考えたら成長が未熟なアニスお姉さんよりスタイル抜群で美人さんなティアお姉さんが好みと考えるのが普通だし、もしルークお兄様の好みがアガットと同じだったらアニスお姉さんより可愛いレンがルークお兄様のお目にかなわない訳がないもの♪」

「おいコラ!そこで何で俺が出てくる、このクソガキが……!というか前から気になっていたが何でシェラザード達と違って俺だけ呼び捨てにしているんだよ!?」

「そこのロリコン赤毛はどうでもいいとして、このアニスちゃんを目の前にアニスちゃんの成長が未熟って言った上更にアニスちゃんより自分の方が可愛いなんてそんな調子に乗った発言をするなんて………月夜ばかりと思うなよ。」

レンの説明を聞いたケビン達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中アガットはレンを睨み、笑顔を浮かべて呟いたアニスは一瞬”本性”をさらけ出してレンを睨み、それを見たケビン達は再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。



「うふふ、もしお兄様に相応しいお相手が現れなかったら将来大人のレディへと成長したレンが”既成事実”を作ってお兄様のお相手になろうと思っていたけど、ティアお姉さんみたいなレンより遥かにとっても素敵なレディがお兄様のお相手になってくれるのだったら安心してルークお兄様の事を任せられるわ。ルークお兄様の事、よろしくね、ティアお姉さん―――いえ、ティアお姉様♪」

「~~~~~~~~っ!!??」

「そんな事を考えていたんだ、レンちゃん………」

「幾らなんでもマセ過ぎだぞ……」

「というかそれって、本人からしたら”余計なお世話”だよね?」

「しかも”既成事実を作る”って、あんた、大人になったらルークに一体何をするつもりだったのよ……」

(よかったな、ルーク……ティアがいてくれたお陰でお前の貞操は守られた上”ロリコン”の烙印を押されなくて済んだぞ……!)

笑顔を浮かべたレンにウインクをされたティアは顔を真っ赤にし、ティータとジン、ジョゼットとシェラザードは呆れた表情で呟き、ガイは心の中で安堵の溜息を吐き

「いやはや、恋を自覚したエステル君を思い出すくらいの初々しさだね。フフ、ただでさえ素晴らしい色気がより鮮明に出てきたよ♪」

「というか当時の彼女はここまで育っていませんでしたからもしかすれば彼への想いによって更に成長したのかもしれませんねぇ?」

オリビエは酔いしれた表情でティアを見つめ、ジェイドはからかいの表情でティアを見つめた。



「ふざけた事を言わないで!それと中将も何の根拠もない事を言って、周りの人達に私の事を誤解させるような事を言わないでください!」

「いい加減にしろ、このお調子者が……!それと中将閣下もそのタワケの調子に合わせないでください……!」

二人の言葉を聞いたティアは反論し、ミュラー少佐は顔に青筋を立てて二人を睨んだ。

「おやおや……ただの雑談で佐官クラスが階級が遥かに上の将軍クラスの私に意見をするとは中々肝が座った方ですねぇ?」

「ふふっ、堅物のミュラーに自分より階級が上の軍人にそんな態度を取らせるなんて、さすがはボクと同じ声の持ち主だよ♪」

「いえいえ、貴方程でもありませんよ。」

(どっちもどっちですよ……)

「………………」

「しょ、少佐。落ち着いて下さい。」

それぞれからかいの表情でミュラー少佐を見つめるジェイドオリビエの話を聞いたロイドは疲れた表情で心の中で指摘し、ミュラー少佐は顔に無数の青筋を立てて体を震わせ、それを見たユリア大尉はミュラー少佐を諫めていた。

(ハア……あの二人の標的にされた方はたまったものじゃないでしょうね……)

(ハハ……あの少佐も大変だな……)

その様子を見ていたアーシアは疲れた表情で溜息を吐き、フレンはミュラー少佐に同情していた。



「クスクス………――それじゃレンも今後の探索に協力するから、よろしくね♪」

「ハハ……あんだけ場を引っ掻き回しておいて、収拾もせえへんのもさすがやな………ま、嬢ちゃんの力、期待させてもらうで。」

その様子を微笑みながら見た後自分を見つめて申し出たレンに苦笑したケビンは気を取り直してレンの申し出を快く受け入れた。



その後ケビンはメンバー編成をして、ケビン、ヨシュア、アガット、カリン、レン、ティアのメンバーで探索を再開し、ロッジ内にある石碑に転位すると外は夜になっていたので、外を出て探索を開始した。



~ル=ロックル訓練場~



「あれは………!」

「転位陣………次の星層への入口か!」

外に出て、崖の所にある転位陣を見たヨシュアとケビンは真剣な表情をした。

「えっと……このまま先に進みますか?」

「そやな………まずは様子だけでも確かめて―――」

カリンに尋ねられたケビンが頷いたその時、ケビン達の目の前に巨大な妖しげな光陣が現れた!



「くっ………!」

「ここで来たか……!」

仲間達と共に武器を構えたケビン達が警戒していると妖しげな光陣から巨大な戦斧持ち、”第二星層”で戦った悪魔―――ロストルムに似た巨大な悪魔が現れた!

「こ、これは………!」

「うふふ、どう見てもただの悪魔じゃなさそうね。」

「聖典に記された七十七の悪魔の一匹………煉獄を守る門番のもう一柱にして恐るべき禁呪を使う魔導の使い手!”深淵”のアスタルテか!」

悪魔を見たヨシュアは驚き、レンは不敵な笑みを浮かべ、ケビンは真剣な表情で悪魔の正体―――アスタルテの名を口にした。するとその時アスタルテは魔眼を発動してケビン達の動きを封じ込めた!



「うお……っ!?」

「くっ、身体が……!」

「みゅ~っ!?動かないですの~っ!?」

魔眼によって動きを封じ込められたアガットとティアはうめき声を上げ、ミュウは悲鳴を上げた。

「こ、これは………ワイスマンの”魔眼”!?」

「多分あれの原型となった空間そのものを呪縛する禁呪や!クソ………指一本も動かせへんとは………!」

自分達の動きを封じ込めているものの正体が魔眼である事に気づいたヨシュアは驚き、ケビンは真剣な表情で推測を口にした後舌打ちをした。そしてアスタルテは戦斧にすざましい雷を込めて振り上げた!

「くっ………このままじゃ………!」

「………くっ………(こうなったらアレを………)」

絶体絶命の状況にヨシュアが叫び、ケビンが心の中である事を覚悟をしていたその時!



「―――下がりなさい。女神に背く災いなる獣よ。」

なんとアスタルテに法剣の刃が次々と襲い掛かって怯ませ、アスタルテの行動を中断させた!

「リースさん!?」

突然の出来事に驚いたヨシュアは自分達の背後にいる人物―――法剣の刃を戻したリースに気付いて驚いた。

「よかった………間に合ったみたいですね。ここはお任せを………一気にケリをつけます。」

リースは安堵の溜息を吐いた後、アスタルテに襲い掛かり激しい攻撃や高火力のアーツを組み合わせてアスタルテにダメージを与えると共に怯ませた!



「凄いですの!」

「やるじゃねぇか……」

「ええ……まさか単独であれ程の存在と渡り合うなんてね。」

「さすがは星杯騎士……」

「フフ、私達の知り合いの星杯騎士の方達はみんな凄いですね……」

「うふふ、あの調子ならひょっとしたら本当に単独で撃破できるかもしれないわね。」

「リース、無理すんな!一人で調伏できる相手やないことくらいわかるやろ!?」

リースの獅子奮迅の活躍に仲間達が感心している中ケビンは真剣な表情でリースに警告した。



「それでも私は………星杯の従騎士だから………!言いたい事は………山ほどあるけど…………!それでも私はケビンのことを守る………!私を守ってくれた………ケビンと姉様のように………!」

「!!」

決意の表情のリースが叫んだ言葉にケビンは目を見開いた。そしてリースはアーツ―――ラグナブラストをアスタルテに放った!しかしアーツが当たる瞬間、アスタルテは転移してリースの背後に回った!

「あ………」

背後に回られたリースは呆けた声を出した後、慌てて振り向いたその時アスタルテは戦斧をリースに振るった!

「あうっ………!」

「リ、リース!」

敵の攻撃により吹っ飛ばされ、さらに傷を負ったリースを見てケビンは叫んだ。するとその時敵はリースの目の前に転移した!



「う………ぁ…………」

目の前の敵を見たリースが呻いていると敵はリースに止めを刺す為に戦斧に凄まじいエネルギーを溜めて振り上げた!

「いけない………!」

「リースさん!」

「くっ………………っおおおおおおおおおおおッ!!」

それを見たヨシュアとカリンが叫んだその時決意の表情になったケビンは身体全体に何かを溜めて叫んだ後、何かの力を解放して、自分の背中に何かの紋章を現して魔眼による効果と結界を打ち破った!

「!?」

「ケ、ケビン………?」

それを見たヨシュアは驚き、リースは戸惑っていた。また、アスタルテは背後の違和感に気付いてケビン達に振り向いた。ケビンの背中にある紋章はケビンに力を貸すかのように紋章と同じ妖しげな赤い光をケビンに纏わせた!



「クク…………まさかオレにコイツを使わせることになるとはな…………悪魔相手に今更やけど………改めて貴様を”外法”と認定する。祈りも悔悟(かいご)も果たせぬまま!千の棘をもってその身に絶望を刻み!塵となって無明の闇に消えるがいい!!」

そしてケビン達はアスタルテとの戦闘を開始した!


 
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