英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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外伝~運命が改変されたケルディック~
~ケルディック市・難民キャンプ地点~
「こちらにおられましたか、レオンハルト少佐!」
二人が戦闘を終えたその時、その場に到着したメンフィル兵の部隊がレーヴェに駆け寄って敬礼をした。
「状況はどうなっている?」
「ハッ!放火された建物の消火作業は7割がた終了したとの事です!」
「……そうか。猟兵達の制圧はどうなっている。」
「それが……報告によると数名は取り逃がしてしまったそうです。申し訳ありません!我らの力が足りなかったばかりに敵に逃亡を許してしまいました!」
「構わん。民達の中から死傷者が出なかった時点で俺達の最優先の目的は達している。町の消火が済み次第すぐに傷ついた民達の手当て並びに町の復興を開始しろ。それとそいつらも拘束しておけ。」
「ハッ!」
レーヴェの指示によってメンフィル兵達は気絶した猟兵達を拘束し始め、レーヴェはアガットに背を向けて去ろうとした。
「お、おいっ!?」
「―――市民達の避難誘導を含めた数々の協力、感謝する。お前達遊撃士がいたお蔭で第二の”ハーメル”が起こる事を喰い止められた。」
「………ふん、俺達は遊撃士として当然の義務を果たしたまでだ。礼を言う必要はねぇよ。それに俺だって2度とあんな”光景”は見たくなかったし、俺みてぇな奴を出したくなかったからな……」
レーヴェの口か出た感謝の言葉を聞いたアガットは鼻を鳴らした後首にかけている石のペンダントを手に取ってペンダントを見つめてある人物を思い浮かべていた。
「水際で喰い止める事ができたとはいえ、その事に満足して名匠を始めとした多くの才ある者達によって創られたその魔剣を振るう理由を鈍らせ、以前のお前のように半端者に成り下がらないようにせいぜい気を引き締めておくのだな。」
「るせぇ!余計なお世話だ!そういうテメェこそ、俺に追い越されないようにせいぜい腕を磨いておけ!いつまでも上から目線でいられると思うなよ。すぐに追い上げてやるから覚悟してろや!」
「フッ……その日が来ることを楽しみにしているぞ。」
アガットの答えに静かな笑みを浮かべたレーヴェはその場から去って行った。
~同時刻・ケルディック要塞~
「ば、馬鹿な……!?時間稼ぎをするだけの為にクロイツェン州領邦軍の”主力”まで投入したのに”壊滅”だと……っ!?」
一方その頃領邦軍の司令官はプリネ達との戦いによって絶命した多くの領邦軍の兵士達の死体や機甲兵や装甲車の残骸を見回して愕然とした表情をし
「―――勝負は決しました!命が惜しくば大人しくバリアハートに撤退しなさい!そしてアルバレア公に伝えておきなさい!近日中に貴方はメンフィルによる”裁き”を受け、この世を去る立場である事を!その日が来るまで自分が今まで犯して来た”罪”を悔いていなさいと!」
「グググググ……ッ!おのれ―――――ッ!撤退!撤退だ―――――ッ!!」
「イ、イエス、サー!!」
プリネの宣言に悔しそうな表情で声を上げた後数えられるほどにまで減ってしまった機甲兵や兵士達と共に撤退した。
「マスター、レーヴェさんから先程報告が来ました。猟兵達によって焼き討ちされたケルディック市ですが、重傷者は出てしまいましたが死傷者は今の所ゼロだとの事です。それと、猟兵達に数人逃げられてしまったとの事です。」
「そう……死傷者が出なかっただけ上出来ね。それに逃亡が成功した猟兵達も結局はこのケルディックで果てる事になるのでしょうね。」
「え?それは一体どういう意味ですか?」
目を伏せたプリネの言葉を聞いたツーヤは不思議そうな表情で首を傾げた。
「さっき私の通信機に連絡が来たのよ。―――ベルガード門にいるレンからレン自身がこっちに向かう連絡がね。」
「!それは…………メンフィルによって処刑される彼らとレンさんによって処刑される彼ら………どちらの方が殺され方としてはマシなんでしょうね……」
そしてプリネの話を聞いてすぐに察したツーヤは複雑そうな表情で呟いた。
~ルナリア自然公園・奥地~
「ハア、ハア……何とかここまで撤退する事ができたか……」
「ああ……他の連中はみんなメンフィルに……クソッ!話が違うじゃねえか!何でケルディック要塞が襲撃されているのに町中にあんなにメンフィル兵がいたんだ!?」
「………生き残った我らがメンフィルの裁きを受ける彼らの分も生きて故郷に仕送りをするぞ!」
「おおっ!」
一方その頃ルナリア自然公園まで撤退した猟兵達は公園内に隠している飛行艇の所へと向かっていた。しかし――――
「なっ!?ひ、飛行艇が……!?」
「一機残らず破壊されている……!?」
猟兵達の希望であるはずだった侵入の際に使った飛行艇が一機残らず破壊されていた。
「クソッ!?一体誰がこんな事を!?」
「クスクス、飛行艇を破壊したのはその子よ♪」
そして一人の猟兵が悪態をついたその時、少女の声が聞こえると共にパテル=マテルが猟兵達の目の前に着地した!
「なああああああっ!?」
「き、機甲兵―――いや、違う!?」
「何なんだこいつは!?」
「それにさっき聞こえて来た声の女は一体何者でどこにいる!?」
パテル=マテルの登場に猟兵達が驚いたその時!
「パテル=マテル、握りつぶしちゃいなさい♪」
「―――――――」
「ヒッ、やめ―――――ギャアアアアアア―――――――ッ!?」
少女の声に応えたパテル=マテルが一人の猟兵を両腕で掴んで猟兵を握り殺した!するとパテル=マテルの両腕から絶命した猟兵の血が流れて地面に落ちると共にパテル=マテルは握りつぶした事によって無惨な死体となった猟兵を地面に落とした!
「ヒィィィィッ!?」
「クソ―――ッ!一体何がどうなっているんだ!?」
それを見た猟兵達はパテル=マテルに背を向けて逃げ始めたが、何と自分達の行く手を遮るかのように大鎌を持ったレンが待ち構えていた!
「うふふ、御機嫌よう♪」
「こ、子供!?」
「子供に大鎌………――――!”殲滅天使”か!?」
「何故ケルディックの領主の貴様がここにいる!?ケルディック要塞の防衛の指揮を取っているはずの貴様が!」
レンの登場に猟兵達が信じられない表情で声を上げ
「うふふ、今は領主としてのお仕事はお休み中よ♪そ~れっ♪」
レンは不敵な笑みを浮かべた後一瞬で猟兵達に詰め寄って大鎌を振るうと共に猟兵達の背後へと駆け抜けた。
「ギャアアアアアア――――――ッ!?」
「グアアアアアアッ!?」
「あ、足が……!?」
すると猟兵達の両足は切断され、切断された場所から大量の血を流している猟兵達は悲鳴を上げて地面に倒れていた!
「クスクス、ここで一思いに殺してあげてもいいけど、レン達―――メンフィルの町を焼き討ちしたんだから、楽に死ぬ事なんて許さないわ。せめてこの森に棲んでいる動物さん達の餌になって死になさい。」
「な―――――」
凶悪な笑みを浮かべるレンの言葉を聞いた猟兵達が絶句したその時、血の匂いにつられた数匹の獣型の魔獣達がその場に現れた!
「グルルル……ッ!」
「ヒッ!?た、助けてくれ……っ!ケルディックを焼き討ちしたのは悪かった!だが、故郷に住む家族や人々を餓えさせない為にも仕方なかったんだ!!頼む!命だけは助けてくれ……っ!」
今にも襲い掛かってきそうな魔獣達を見て悲鳴を上げた猟兵はレンに助命を嘆願したが
「うふふ、貴方達の故郷であるノーザンブリアの”今後”は安心していいわよ?ノーザンブリアは近日中にメンフィルによって滅ぼされてメンフィル領になるから、ノーザンブリアの人達は今後メンフィルの保護を受けられるだろうし♪」
「なあっ!?」
レンの口から出た予想外の答えを聞き、信じられない表情で声を上げた。
「―――それでは皆様、良き来世を♪」
そしてレンはスカートを摘み上げて上品に会釈をした後パテル=マテルの片腕に飛び乗り、レンを乗せたパテル=マテルは背中についているエンジンを起動させて空へと飛びあがった後ケルディック市の方面へと飛び去って行き
「グルルルッ!!」
「あ…………」
「うあああああああっ!?」
「女神よ――――」
レン達が去って行くと魔獣達は猟兵達に飛び掛かり、猟兵達を無惨に喰い殺した!
こうして……ゲルドの”予言”通り猟兵達によるケルディックの焼き討ちはされ、重傷者も出たが幸いにも死傷者は出る事は無かった。また、ケルディック要塞に戦闘を仕掛けたクロイツェン州の領邦軍も甚大な被害を受け、多くの私兵達を失ったアルバレア公爵はいよいよ追い詰められる立場となった。
また……後にメンフィル帝国は”予言”によってケルディックの被害を最小限に抑えたゲルドに感謝し、”感謝の証”として出身不明かつ記憶喪失のゲルドにかつてのエステルとミントのように貴族の爵位―――――”子爵”の爵位を授ける事にした。
その事によってゲルドはエステルやミントのようにメンフィル帝国に縛られないがメンフィル帝国の加護を受けられる”自由貴族”となり、貴族として与えられた名は争いを好まず、自分の身より他人の身を心配するその性格から母娘揃って”聖女”の称号で称えられ、ゲルド自身の性格と色々と似ている部分がある”パリエ”が相応しいとの意見があり、ゲルドは”パリエ家”の一員になったという…………
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