英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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外伝~偽りの楽土の崩壊~
1時間後、メルカバに乗船しているティオを始めとした船員達によるハッキングでクロスベル市内にあるさまざまな画面端末にマクダエル議長の姿が映り、その事に気付いた市民達は次々と集まって画面に注目した。
~クロスベル市内~
「―――クロスベルの市民諸君、及びこの映像をご覧になっている全ての方々に申し上げる。”クロスベル自治州議会”議長、ヘンリー・マクダエルであります。
皆さんもご存知の通り―――先日、前クロイス市長により『クロスベル独立国』の創立が宣言されました。国防軍という軍事組織も設立され、新たな体制に慣れつつある人もいるかとは思いますが………――――ですが皆さん!今一度、考えて頂きたいのです!果たして我々は、この事態を真に”選択”したかということを!
―――無論、現状についての是非は人それぞれあるでしょう!ですが現政府は、真に民主的な手続きによっては成立していません!
自治州議員の多くが拘束され、私自身、監禁された状態で、クロスベルの独立は宣言されました!この宣言が、議会の承認を経ずに個人の独断で行われたものである事は改めて指摘しておきたいと思います。
―――ならば独立の意志を問う、住民投票が根拠となるでしょうか?いいえ、かの住民投票は”決意表明”を行うかどうかを問うものでしかなかった筈です。
国防軍やクロスベル独立国………まして大統領制などの正当性に結び付くものでは決してありません!
そして、そうした手続きの正当性よりも何よりも………私が皆さんに問いたいのは他でもありません。果たしてこの状況は、今の体制は、私達の在り方は”正しい”のか?ただ―――それだけあります。
それを皆さんに共に考えて頂くきっかけとするためにも………――――自治州代表の一人として私はここ『クロスベル独立国』が無効である事を宣言いたします!」
「おお、言っちゃったよ!?」
「で、でもこれで少しは動きやすくなります……!」
ジオフロント内にある隠れ拠点でマクダエル議長の演説を見ていたクロスベル警察の警官や刑事達は明るい表情をし
「ああ………―――セルゲイさん、連中の協力でしょうか?」
「クク………それ以外にはあり得ねぇだろ。さぁて――――忙しくなりそうだな。」
警官達と共に演説を見ていたダドリーに視線を向けられたセルゲイは口元に笑みを浮かべて頷いた。
「そしてそれと同時に………私は今回の件を自治州政府代表の一人として止められなかった責任を取る為に議長の座を降りると共に………クロスベルを真に栄えさせようと考えている方達に後を託す事にしました。―――ご紹介しましょう………皆様ご存知の”六銃士”にして通商会議にて二大国の思惑を見事打ち破ったヴァイスハイト局長とギュランドロス司令です!」
さらに画面端末に映るマクダエル議長が消えるとヴァイスとギュランドロスの顔が端末に映った。
「―――ご紹介に預かったヴァイスハイト・ツェリンダーだ。今はわけあってクロスベル市外に同志達と共に潜伏している。―――だが、隠れるのはもう終わりだ!」
「その証拠に俺達が率いる警備隊がベルガード門を制圧した!クロスベルの民達よ!もうすぐ暗君ディーターの支配から解放してやる!」
「暗君ディーターと魔女マリアベルッ!!”D∴G教団”を影から支援し、クロスベルを……いや、ゼムリア大陸を混乱させた貴様らの罪は重い!」
「俺達がクロスベル市を制圧したその時、テメェら2人とも纏めて処刑だ!せいぜい首を洗って待っていなっ!勿論、愚かなクロイス家に力を貸している屑共も纏めて処刑だっ!!例えば”風の剣聖”……いや、テメェなんぞに”剣聖”を名乗る資格はない!民達を苦しめる暗君を手助けするテメェは”剣魔”がお似合いだ!”剣魔”アリオスと”赤の戦鬼”シグムント、そして”血染め(ブラッディ)のシャーリィ”!テメェらも当然処刑決定だ!」
「そしてクロスベルの民達よ!俺とギュランドロスがクロスベルの”王”となった時こそ、クロスベルは生まれ変わる!」
「ちなみに『独立国』とかしょぼい名前じゃないえぜぇ?新しく生まれ変わるクロスベルの名前……その国名は………」
「「クロスベル帝国!!」」
ヴァイスとギュランドロスが同時に叫ぶと画面にベルガード門にあるギュランドロス達が掲げた国旗と同じ国旗が映った!
「今の話を聞いて自治州如きが”帝国”を名乗る事に疑問を抱く者達も多いだろう。確かに今のままでは”帝国”を名乗るには程遠い。」
「んでもってこう思った奴等も当然いるだろう?どうやって土地や民を増やすつもりだとな?―――答えは簡単だ!今まで圧政を敷いていたエレボニアとカルバードに今までクロスベルを好き放題してくれた礼代わりに二大国に同時侵攻する!!」
「今の話を聞いて無謀と思う者達が多いだろう。だが、そこは安心してくれ。既にクロスベルが”帝国”を名乗った暁には我らが盟友リウイ――――いや、”メンフィル帝国”が同盟を組むことを承知している。これがその証拠だ!」
そしてヴァイスが叫ぶと画面端末にリウイが映り
「――――クロスベルの民達よ。メンフィル大使、リウイ・マーシルンだ。既に知っている者達もいると思うがクロスベルは我が愛妻イリーナの故郷でもある。今まで二大国に苦しめられていた妻の故郷に何か力になれないかと思い、我らメンフィルが懇意にしている商人組織―――”ラギール商会”を通して見守っていた。―――だが、それも終わりだ。混迷に満ちたゼムリア大陸に秩序による平和を訪れさせる為に………そして我が盟友ヴァイスハイトとギュランドロスと共に進む”覇道”の為に我等メンフィルも共に戦う戦友となる事をここで誓おう!」
リウイが”覇気”を纏って宣言した!
~東通り~
「ク、『クロスベル帝国』………!?」
「し、しかも二大国に同時侵攻だなんて……!?」
「め、滅茶苦茶だ……!」
その様子を端末越しで聞いていた市民達は混乱したが
「で、でもあの”英雄王”やメンフィル帝国が味方についている上、なんてたって二大国に大反撃をした”六銃士”がいるんだぜ!?」
「まさに最強にして無敵の陣営じゃねえか!?」
「キャー!二人ともカッコいい―――!!」
「ギュランドロス司令もそうだが、ヴァイスハイト局長も漢らしくてさすがだぜっ!!」
「ヴァイスハイト!!ヴァイスハイト!!ヴァイスハイト!!」
「ギュランドロス!ギュランドロス!ギュランドロス!!」
「”六銃士”に栄光あれっ!!」
「クロスベル帝国ばんざーい!!」
すぐにそれぞれの目に希望の光を灯して嬉しそうな表情で叫び始めた。
「貴様ら何を馬鹿な事を言っている!?ここはクロスベル独立国だ!」
「そして君主はディーター・クロイス大統領だぞ!?」
「解散しろ、解散!!」
その様子を見ていたクロスベル独立国の国防軍の兵士達は慌てた様子で命令したが
「うるさい!暗君ディーターの手先が!」
「クロスベルから出て行け――――ッ!!」
「クロスベルの裏切り者が―――――ッ!!」
「う、うわああああああああっ!?」
「お、応援を……早く応援……ぎゃあああああああああああっ!?」
暴徒となった市民達が束になって次々と兵士達を襲い、圧倒的な数の差によって兵士達は市民達によって一方的に攻撃され続けていた!
「マズイわ……!」
「市民達が暴徒と化しているぞ……!」
「すぐに止めるぞっ!!」
市民達が兵士達に暴行をして少しの時間が経つとギルドの扉が開き、そこから姿を現したミシェルは唇を噛みしめ、遊撃士ヴェンツェルは厳しい表情で言い、遊撃士スコットは暴徒と化している市民達の所に向かおうとした。するとその時
「「静まれっ!!」」
ヴァイスとギュランドロスの同時の叫びを聞いた市民達はそれぞれ攻撃の手を止めた。
「先程の話を聞いて気持ちが流行り、国防軍の兵士達に今までの怒りをぶつけたい者もいるだろう。」
「だがそれをやってしまえば、お前達もディーターやディーターに従う屑共と同じになるどころか”暴徒”とされ、お前達がディーター達の手によって傷つけられるぞ!俺達がお前達に代わってディーターを含めた屑共にお前達の分も含めて怒りをぶつけてやるっ!だからその時まで待てっ!!」
「確かにそれもそうね……」
「ああ………」
「私達のことまでちゃんと考えているなんて、さすがよね!」
「ああ!ディーターとは大違いだ!」
「フン!命拾いしたな!」
そしてヴァイスとギュランドロスの話を聞いた市民達はそれぞれ顔を見合わせた後、一方的に大勢の市民達によって攻撃され、顔や身体中を青痣だらけにし、軍服のところどころが破れて無惨な姿となって気絶している兵士達から離れて行った。
「フウ………しかしそれにしてもこんな状況になる事まで読んだ上一瞬で暴動を止めるなんて、本当にとんでもないわね……」
その様子を見たミシェルは安堵の溜息を吐いた後疲れた表情で呟き
「………市民達が”六銃士”に浸透している証だな……まさかここまで”六銃士”達を慕っていたとは………」
「しかしそれにしても……『クロスベル帝国』……そしてメンフィル帝国と同盟を組んだ上にメンフィルと共に二大国に同時侵攻か………一体ゼムリア大陸はどうなってしまうんだ………?」
ヴェンツェルは重々しい様子を纏って呟き、スコットは厳しい表情で考え込んだ。
「クロスベルの民達よ!今は機を窺う時!現在はクロスベル市を封じる結界の破壊を模索している所だ!」
「結界が破壊されれば俺達がディーターの魔の手からお前達を解放する!その時が来るまで今は耐えろっ!」
「おおっ!!」
そしてヴァイスとギュランドロスの言葉に市民達はそれぞれ力強く答えた。
~ジオフロント~
「………………………」
一方ヴァイスとギュランドロス、リウイの宣言等を全て端末越しで見ていたダドリーは目を見開いて絶句し
「……どうやら局長達は俺達の予想以上のとんでもない野望を考えていたようだな………」
「一部の警備隊や警官達を慕わせ、市民達にも慕われるように動いていたのも………そして”通商会議”の件もメンフィルと協力して二大国の思惑を破ると共に”鉄血宰相”達を嵌めたのも全てはこの為の布石だったのですね………!」
セルゲイは目を細めて呟き、刑事の一人は厳しい表情で呟いた。
「いやー、野心がある人達だとは思っていたけどまさかこんな大それたことを考える人達だとはね~。」
「か、課長!?呑気に言っている場合じゃないですよ!?」
「クロスベルは一体どうなってしまうんだ~!?」
「し、しかし………こうなると予想して動いていたという事は局長達やメンフィルはかなり前からクロイス家の野望に気付いていたとしか考えられないのですが………」
刑事や警官達が混乱や戸惑っている中ダドリーは信じられない表情で呟き
「………恐らくそうだろうな………下手をすればディーター大統領達すら局長達の掌の上で踊っているのかもしれんな………」
セルゲイは重々しい様子を纏って呟いた。
クロスベルで大きな動きがある中、帝国中を回っていたリィン達はユミルでの依頼を達成する為にユミルに寄っていた。
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