英雄伝説~光と闇の軌跡~(3rd篇)
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第15話
~封印区画 第1層~
「これは………」
「ほう………」
封印区画に到着し、周囲の様子にリースは呆け、リフィアは興味ありげな視線で周囲を見回した。
「ここが”封印区画”なのですか?」
「そういえば、ツーヤ達はクーデターの時は僕達とは別行動だったね………うん、そうだよ。ここには太古の人形兵器達が徘徊しているから、一筋縄ではいかないよ。」
封印区画の事を知らないツーヤはヨシュアに尋ね、尋ねられたヨシュアは頷いた。
「へ~………ならちょっとは期待できるかな?キャハッ♪」
ヨシュアの説明を聞いたエヴリーヌは楽しそうな表情をした。
「ここを探索するとなるとそれなりの準備が必要になりそうですね。」
「ふむ………このまま進んでいいものか。」
「まずは遺跡の様子だけでも確かめといた方がいいでしょう。どんな魔物が徘徊しとるか知れたもんやないですし。」
「………確かに。もう少し先まで行ってみるとしよう。」
ヨシュアの言葉を聞いて考え込んでいたユリアだったが、ケビンの提案に頷き、仲間達と共に探索を再開した。そしてケビン達が最初の部屋に入ると、驚くべき光景が目の前にあった。
「へ………」
「な………!?」
「!」
部屋に入り、周囲を見回したケビンとユリア、ヨシュアは驚いた。
「………何か問題でも?」
「一体どうしたというのだ?」
一方事情を知らないリースやリフィアはケビン達を見て尋ねた。
「も、問題もなにも………」
「これは………遺跡の構造が変わっている?」
「ああ………間違いない。この場所には最初の三又路に通じる通路があったはずだ………なのにどうして………」
尋ねられたケビン達は以前来た時は最初の部屋に下の階層に行くエレベーターは無い事―――構造が違う事を説明した。
「勘違い………ではなさそうですね。」
ケビン達の様子を見たリースは呟いた。
「……………なるほど。そういうことか。」
「ええ………その可能性は高いでしょう。」
「おっと………ヨシュア君も気付いたか。なら、確実かもしれへんな。」
「2人とも………なにか気付いたのか?」
ケビンとヨシュアの会話を聞いていたユリアは訳がわからず、尋ねた。
「いや………とりあえずこいつで下に降りましょう。その先に答えが待っているはずですわ。」
「そうか………わかった。」
そしてケビンの答えを聞いたユリアは一応納得して頷いた。
「自分達だけわかってエヴリーヌ達に教えてくれないなんて、なんかムカツク。」
「全くだ。特にヨシュアは性懲りもなく………今度は2人揃って女装をしてドレスを着たいのか?」
一方エヴリーヌは頬を膨らませ、リフィアは頷いてヨシュアを見て尋ねた。
「いやいや!ホンマにすぐにわかるから、ちょっとだけ辛抱して!」
「ケビンさんの言う通り、今度はすぐにわかるから、勘弁して下さい………」
リフィアの言葉を聞いたケビンは慌て、ヨシュアは疲れた表情で答えた。
「ケビンの女装………ちょっと見てみたいかも。」
「リ、リース!?」
そしてリースが呟いた言葉を聞いたケビンは慌ててリースを見た。
「冗談。ちょっと言ってみただけ。」
「………心臓に悪いから、そういう性質の悪い冗談はやめてくれ………(リフィア殿下の場合、ホンマに実行するから怖いねんから………)」
口元に笑みを浮かべて呟いたリースの言葉を聞いたケビンは疲れた表情で溜息を吐いた。そしてケビン達がエレベーターに乗り、降りるとありえない場所に到着した。
~封印区画・最下層~
「………馬鹿な………こんなに早く最下層に到着できるなんて………」
「空間がねじ曲がっている………?」
1層から乗ったはずのエレベーターがいきなり最下層に到着した事にユリアは信じられない表情で呟き、リースは推測した。
「いや、それだけやと遺跡の構造そのものが変わった理由にはならへん。とにかく………一番奥まで進んでみよう。何かが待っているはずや。」
「………わかった。」
「万全の態勢を整えた方がよさそうですね。」
そしてケビン達は奥の大部屋に入った。
~封印区画・最奥~
「………ケビン………」
「ああ………またあの匂いやな………」
「柩のような悪魔が出現した時の匂いか………」
部屋に入り、周囲を見回して何かに気付いたリースの言葉にケビンは真剣な表情で頷き、その様子を見たユリアは察しがついた。
(………どこだ………?)
そしてヨシュアが敵の気配を探ったその時!
「フフ………この匂いに気付くか。さすがは教会の狗………ずいぶんと鼻が利くことだ。」
突如不気味な声が部屋中に響き渡った!
「………誰や!?」
声に気付いたケビンが叫ぶとかつてゴスペルを装着する装置があった場所が空間になっており、そこから不気味な仮面をかぶったローブ姿の謎の人物が現れた!
「!!!」
仮面の人物に気付いたケビンは驚いた。そしてケビン達はそれぞれ武器を構えて警戒した様子で一定の距離をとって近づいた。
「何者………!?」
「………ようやくのお出ましか。あんたが黒騎士の言ってた”王”ってヤツやな?」
仮面の人物をリースは睨み、ケビンは静かな表情で尋ねた。
「フフ、そうだな。この”影の国”を統べているという意味ではまさにその通りであろうな。私のことは”影の王”とでも呼ぶがいい。」
「影の………王。」
「フン、リウイの”闇王”に対抗しているつもりか?」
「だったら、不相応もいいところだね。」
仮面の人物――影の王の名をリースは呟いた後考え込み、リフィアとエヴリーヌは不愉快そうな表情をした。
「はは、その名の由来は聖典には存在していない筈。そうであろう?リース・アルジェント。そしてリフィア・イリーナ・マーシルン。お前は未だにその名を名乗り続けているのか?」
「!………私のことまで………」
「まさか余の名に疑問を思う輩が出てくる日が来るとは思わなかったな………一体それはどういう意味だ?」
自分の事まで知っている影の王をリースは警戒した表情で睨み、その一方リフィアは目を細めて影の王を睨んで尋ねた。
「簡単な事だ。名の由来となった者が蘇ったというのに未だに”その名”を名乗っているからだ。」
「!貴様、なぜそこまで知っている………!余の名の真の意味を知っているのは一部の者達を除いて、我等マーシルン家のみだぞ………!」
そして影の王の次の言葉を聞いて魔力を全身に纏わせて睨んだ。
「フン、よっぽど念入りに探りを入れてたみたいやな。」
2人の様子を見たケビンは油断なく武器を構えて影の王を睨んだ。
「………挨拶はそのくらいにしてもらおう。”影の王”と言ったな…………もし貴様が、この状況を引き起こした黒幕ならば………即刻、王都を元に戻してもらおう!さもなくばこの場で斬る!」
「フフ、そなたの要求はあまりに空しく意味がない。敬愛の心も度を過ぎれば真実を捉える妨げとなろう。解るかな?ユリア・シュバルツ。」
「な、なに………!?」
「やはり……そういう事でしたか。僕達が先ほどまでいたグランセルは全て偽物……いや、”影の国”の中に再現された模造物ですね?」
影の王の言葉にユリアが戸惑っている中、ヨシュアは納得した様子で説明をして尋ねた。
「な………!」
「え………!」
「そんなことって………」
「街まるごと偽物って………そんなこと、できるの?」
ヨシュアの言葉を聞いたユリア、ツーヤ、リース、エヴリーヌは信じられない表情をした。そしてケビンが続くように説明をして、ヨシュアに確認した。
「………しかし、それで一通りのことが説明できる。漆黒の大門に無人の街角………昔に巻き戻った部屋に構造すら変化している遺跡………そうやな、ヨシュア君?」
「ええ、その通りです。」
「クク………やれやれ、そなたは優等生すぎる。もう少し可愛気があった方が私としては楽しめるのだがな。」
「あなたの娯楽に興味はない。………興味があるのはエステルとミントの安否だけだ。」
不気味に笑っている影の王にヨシュアは静かに答えた後、睨んだ。
「フフ、解っているさ。だが、愛する心もまた強すぎれば真実を遠ざける。違うかな?ヨシュア・ブライト。」
「………っ………」
しかし影の王の次の言葉を聞いたヨシュアはかつてエステルと決別した事を指摘され、唇を噛んで黙った。
「そうか………陛下と殿下は今も無事で………女神よ………あなたの慈悲に感謝します。」
一方説明を聞いていたユリアは安堵の表情で祈りを捧げた。
「おやおや………何を安心している?そなたの案ずる者達が無事だと誰が言ったのかな?」
「え………」
しかし影の王の言葉を聞いたユリアは呆けた。そして影の王は自分の片手に封印石を現した!
「なっ………!ま、まさかその石の中には………!?」
封印石の中にいる人物に察しがついたユリアは影の王を睨んだ。
「フフ………お前にとっても他人事ではないぞ、ツーヤ・ルクセンベール。」
「え………」
さらに名指しをされたツーヤが呆けたその時、影の王はもう片方の手にも封印石を現した!
「!?ユリアさんに続いてあたしを名指ししたって事はまさか…………!」
「姉さんの封印石…………!………っ…………!!」
「お前っ…………!」
「その封印石を渡せ。さもなくば貴様に即刻、余が裁きを下す!」
封印石の中に入っている人物に察したついたツーヤは驚き、ヨシュアとエヴリーヌはすざましい殺気を影の王に向け、リフィアは怒りの表情で覇気とすざましい魔力を纏って睨んだ。
「フフ………この”第二星層”における最後の宝物といったところか。そして無論………宝物には試練が付き物だ。」
しかし影の王はヨシュア達の殺気を気にせず、ケビン達の傍に巨大な悪魔を召喚した!
「「!!!」」
「これが………聖典にある悪魔!」
「………フーン、少しはできそうだね。」
召喚された悪魔に気付いたユリアとツーヤは目を見開き、ヨシュアは警戒し、エヴリーヌは殺気を籠らせて睨んだ。
「聖典に記された七十七の悪魔の一匹………煉獄を守る門番の一柱にして数多の魔を従える軍団長………”暴虐”のロストフルム………!」
「………ほう………感じられる力からして”魔神”に近い事や役目といい、ナベリウスに似ているな………」
そしてリースの説明を聞いたリフィアは真剣な表情で敵を睨んだ。
「クッ………何考えてんねん!こんなモン実体化させたら貴様もタダではすまへんぞ!?」
一方ケビンは舌打ちをした後、影の王に怒鳴った。
「フフ、それを何とかするのがそなたらに与えられた役回りだ。さあ、せいぜい楽しむがいい!」
しかし影の王はケビンの怒鳴りを流して、不気味に笑っていた。
そしてケビン達は戦闘を開始した………!
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