思わぬ奇病
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3部分:第三章
第三章
「ほら、これだって」
「カツだからだな」
「そうよ。鶏肉でもカツはカツ」
こう言う。
「気をつけてね」
「全ては健康の為か」
「だから。なってしまってからじゃ遅いの」
食べながらも厳しい言葉が続く。
「わかったわね」
「わかったよ。じゃあ食べるか」
「こういう食べ物だって美味しいじゃない」
「まあな」
サラダを食べてみる。レタスと若布、それに小さく千切りにした人参と玉葱が絶妙なハーモニーを醸し出しフレンチドレッシングが実にそれ等を見事に引き出していた。
「美味いことは美味いな」
「わかったらね。これはこれで楽しみましょう」
「これでもいいことはあるか」
「あるわよ。わかったらさあ」
「ああ、食べるさ」
まだ不満を抱えながらもそのヘルシーな食事を食べ続ける。そうして暫くの間ヘルシーな食事に運動をして過ごしていたがやがて二人のいる惑星で騒動が起こった。
突然身体が変貌し醜く膨れ上がるのだ。それは最早人の原形をとどめてはおらず最早化け物になってしまうというものだ。ある日突然そうなり惑星はパニックになった。そのニュースの報道をテレビで観ながらジョンもクリスティも顔を真っ青にさせていた。
「何なのかしらね、この病気」
「伝染病か!?」
ジョンはまずはこの可能性を考えた。リビングで難しい顔をしている。
「ひょっとしてこれは」
「そうかしら」
「今厚生省が必死になって調べているらしい。症状が出た人間をまず片っ端から病院に入れてな」
「つまり隔離ってことね」
「そうなるな。結局は」
「物騒な話ね」
こう言って不安な顔を見せるクリスティだった。
「こんな怖い病気が流行るなんて」
「そうだな。けれど俺は」
「どうしたの?」
「実は職場に何人もかかっているんだ」
「何人も!?」
「ああ、部長もな」
彼の直属の上司である。
「その病気になって。あっという間に病院送りだ」
「部長さんがおられなくなったの」
「おかげで課長の俺が部長の仕事も代理しているよ」
困った顔で述べるジョンだった。
「全く。他にも部下が何人も同じ病気にかかってな」
「何か不潔な状況なの?」
「いや、全然」
首を横に振って妻の言葉に答える。
「ごく普通のオフィスだぞ」
「それで伝染病に何人もかかるの?」
「そうなんだ。おかしいと言えばおかしいな」
「そうね」
「部長でおかしいと言えば」
いぶかしむ顔でここで言うのだった。
「あれだな。痛風持ちなんだ」
「あら、それなの」
「ああ。好きなものはホルモンとビールでな」
「韓国料理ね」
「それが好きで。それでなんだよ」
「内臓はコレステロール高いのよ」
「わかってるさ」
だから今彼等はホルモンどころか内臓料理も食べていないのだ。そこも注意しているのである。
「それはな」
「痛風ねえ」
「そういえば」
ここで彼はあることに気付いたのだった。
「この病気にかかった奴は皆」
「どうしたの?」
「痛風か糖尿病の気があったな」
「あら、成人病持ちの人ばかりなのね」
「大体そうだ」
こう妻に述べる。
「そうでなかったらそれに近い奴ばかりだな」
「何かそこにあるのかしら」
「さてな。そこまではわからないさ」
彼は医者ではない。ごく普通のサラリーマンだ。だからわかることもここまでだったのだ。しかも何の確証もない話でしかなかった。
「俺は医者じゃないしな」
「そうなの。それにしても」
クリスティはここでジョンを気遣う顔を見せてきた。
「貴方は大丈夫なの?」
「俺か」
「そうよ。職場の人も何人かかかってるわよね」
「ああ」
妻のその言葉に対して頷く。
「そうだけれどな」
「だったら貴方も危険じゃない。そうでしょ」
「言われてみればそうだな」
「一回検査してもらったら?」
「おいおい、また検査か」
今度は笑った。妻の検査という言葉を聞いてだ。
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