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ラインハルトを守ります!チート共には負けません!!

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第十八話 オーブンでの蒸し焼きは御免こうむります。

 
前書き
 宇宙艦の耐熱限界は、さて何度なのでしょうか。気になります。 

 
帝国歴482年9月2日――。
 ハーメルン・ツヴァイは絶体絶命の中にいた。



 機関長の調べたところによれば、機関そのものは動かせないことはないが、いわゆる「ギア」が高速用に固定されてしまっているため、初動から拘束に達するまで時間がかかり、追いつかれてしまうというのだ。
 この報告をベルトラム大尉が機関長から受け取っている際、機関部所属のシュミット一等兵がある提案を持ち込んできた。それは、恒星アルトミュールの恒星爆発による恒星風を利用して一気に加速するというものだった。
 だが、恒星風の起こるタイミングは過去のデータからの統計でしかないこと、効果的に恒星風に乗るためには、アルトミュール恒星に向けて自由落下し、しかも重力圏につかまれば脱出不可能という一発勝負であったため、ベルトラム大尉は一蹴してしまう。
 さらに敵の艦隊に空母がいるという情報があり、そこから艦載機が射出されれば、駆逐艦等はとうてい逃げ切れないことになる。

ハーメルン・ツヴァイ会議室――。
 ベルトラム大尉がシャミッソー中尉とデューリング中尉を呼び寄せていた。

「さて、君たちを呼んだのは他でもない。機関の修理に手間取っているうえ、修理しても問題あると思われる。さらに敵は戦闘艇部隊を擁していると思われる。かくなる上は軍規にのっとった処置をするほかないと思われる」
「そ、それは・・・・」

 その先をうすうすわかりかけていた二人が何か言う前に、

「軍事機密の漏えいを防ぐため・・・・自沈する!!」

 と、副長は宣言した。

「な・・・・!!」

 シャミッソーとデューリングはやはりそう来たかという表情で顔を見合わせた。

「自爆シークエンスには上級士官3名の同意が必要である。だが、艦長と航海長が不在の今、水雷長と砲術長、そして私の3名で判断することに――」
「お待ちください!!」

 デューリング中尉が待ったをかける。

「なんだ?」
「その、帝国軍の軍規上はそうかもしれませんが、現実には降伏した艦は数多くあります。ですから――」
「私は不名誉な降伏などしない!!ことに、今貴族出身の艦長、航海長、索敵主任、通信主任を欠いている現在、平民出身の我々が、反乱軍に降伏したと知れ渡ったら、なんと平民風情はだらしないのかとバカにされるのだぞ!!」
「・・・・・・・」
「重要な決断だ。今すぐにとは言わない。だが、こうしている間にも反乱軍の艦艇が接近するかもしれない。よく考えておいてくれ。いいな?」


機関室――。
■ ジークフリード・キルヒアイス
 デューリング中尉が、私に報告してきた。やはり副長は自爆をするつもりだ。なんということだ。ラインハルト様、フロイレイン・エリーセルやフロイレイン・ローメルドなら絶対にそんなことはなさらない。最後まであきらめないのに。
 デューリング中尉は反乱を起こそうと持ち掛けてきた。シャミッソー中尉も協力するという。だが、表立って動くわけにはいかないから、要するに私に動けと言うのだ。仕方がないがそれしか方法はないだろう。ラインハルト様たちを助け、艦橋を制圧し、艦の指揮を掌握するのだ。だが、上級士官がラインハルト様だけでは艦を把握できない。水雷長、砲術長の協力が必要だ。
 だが、私一人では無理だ。どうすれば・・・・そうだ、ザイデル伍長に話をしてみよう。


しばらくして――。

ハーメルン・ツヴァイ艦橋――。
不意に扉が開けられ、バラバラと数人の兵と士官たちが飛び込んできた。瞬く間に銃が突きつけられ、艦橋要員たちは身動きできない状態に追い込まれた。

「何のつもりだ!?」

 ベルトラム大尉が驚く。

「ごらんのとおりです。この状態から脱するために、指揮権を預からせていただきます」

 ラインハルトが言う。

「お前たちまでか!?」

 ベルトラム大尉がザイデル伍長たちをにらみつけた。

「すみませんねぇ、副長。だが、俺たちだって生きたいんだ。どうやらその意味ではミューゼル中尉に指揮権を任せた方がよさそうなのでね」

 ザイデル伍長がにやりと笑う。だが、その眼は笑ってはいなかった。それが伍長の真剣さを物語っている。

「くっ・・・・!!」
「賛成だ。私もミューゼル中尉を支持する!」

 真っ先にデューリング中尉が立ち上がった。

「このブラスターにかけて、我々は艦橋を制圧する。副長に同意する者は副長と一緒に監禁させてもらうが、危害を加えるつもりはない。また、中立を宣言する者は任務にのみ専念してもらいたい」

 ラインハルトの声が艦橋に響き渡った。

「ミューゼル中尉、後悔するぞ」
「死んだら後悔などできません」

 結果、副長とエメリッヒ少尉を監禁、他の者は任務に専念することとなった。フィオーナが艦橋に残り、キルヒアイスとティアナが営倉に副長以下を連れていった。

会議室――。
■ ティアナ・フォン・ローメルド少尉

 邪魔な副長を営倉に放り込んでやっと脱出計画の始まりよ。わくわくするわね。

「すると、アルトミュール恒星系の恒星風を利用して脱出するわけか」

 ラインハルトはシュミット一等兵の提案を改めて聞いて興味を示していたわ。

「はい。次の恒星爆発まで17時間。それを逃すと、次は60時間後になります」
「遅すぎるな。17時間から逆算して自由落下を始めるタイミングは?」
「遅くても3時間後には始めないと・・・・。ですが、修理自体は17時間までに完了すれば大丈夫です」
「それでは間に合わないんじゃないか?それにいったん落下をはじめたところでもしも直らなかったのなら・・・・」

 はぁ・・・。デューリング中尉。あんたはホントにチキンなのね。OVAと同じだし。

「いや、17時間あれば大丈夫だ。機関部の全力を上げれば何とかなる」

 機関長が言う。

「なら、機関長には修理に全力を挙げてもらいたい。借りていた部下たちもお返しする」

 と、ラインハルト。

「部下を貸した覚えはないんだがね。さ、シュミット、行くぞ!」
「は、はい!!」

 忙しそうね。私も手伝おうかな。

「人数が足りないなら、私も手伝うわよ。こう見えて機械いじりは得意なんだもの」

 私が提案すると、皆が意外そうだったが、機関長は賛同した。

「そうだな。今は一人でも多い方がいい。頼む」
「会議が終わったら、すぐ後から行くわ」

 機関長がシュミット一等兵を連れて出ていくと、デューリングがたまりかねた様に口を出してきた。

「それにしても本当に大丈夫なのか?あんな一等兵の提案を受け入れて、もし失敗したら――」
「彼の観測データは私も見たけれど、とても精密なものだったわ。大丈夫、きっとうまくいくわ」

 フィオが言う。私も同感よ。

「でもなぁ。あんな兵卒の意見なんか――」
「口を慎め!!」

 ラインハルトがブチ切れた。

「一等兵だろうが士官だろうが関係はない!!シュミット一等兵は大学で天文物理学を専攻していた。その知識は信ぴょう性がある!!それに、エリーセル少尉も言っていたが、私も彼のデータを見て、非常に緻密なものだったと確信した」
「機関の修理が間に合う保証はないし――」

 砲術長も口ごもる。

「私は彼を信じる!!兵を信じずして戦はできない!!」

 かっこいいじゃない。ラインハルト。それだからこそ、私たちはあなたを応援するのよ。

 それからしばらくして、ハーメルン・ツヴァイ艦橋――。

■ フィオーナ・フォン・エリーセル少尉
 私たちがそれぞれの仕事をしていると、足音荒く艦橋に入ってきた集団がいた。ラルフ・ザイデル二等兵を縛り上げて。原作でこのことを知っている私たちは交代でドアの前に見張りに立ったけれど、でも、お互い忙しくてずっと立っているわけにはいかず、しまいには部下を付けるほかなかったの。でも、その部下はここにはいない。きっと監禁されてしまったのだわ。大丈夫だといいけれど・・・。原作で知っていても止めることができなかったのはとても悔しいわ。
 
 それにしてもなんて卑怯なことを!!

「何のつもりか?」

 ラインハルトがベルトラム大尉を見下ろす。その瞬間キルヒアイスが後ろ手でスイッチを押したのが見えた。これで今から艦内の会話は全部放送される。さすがね。

「見てのとおりだ。指揮権を返してもらう!」
「返したらどうするつもりか?」
「帝国軍人として恥ずかしくない決断をする!恒星に船を突っ込ませようとしているようだが、無様に蒸し焼きになるのは御免だ。それよりも潔い最期を迎えてこそ、帝国軍人というべきではないか」

 ベルトラム大尉・・・・なんということを。艦はあなただけでもっているものではないのよ。そこに一人一人の兵士たちがいるのよ。そしてその家族も。あなたはそれを全部巻き添えにしてしまおうとしている。あなたの名誉のために・・・・。
 思わず腰のブラスターに手がかかった。でも、まだ早い。まだ・・・・。


ハーメルン・ツヴァイ艦橋――。

「一兵卒の言葉を真に受けるとはな」
「軍の階級と知識や視野は別の物だ!!」

 そこにザイデル伍長、ティアナたちが飛び込んで来た。

「副長、あんた平民の希望の星じゃなかったのか?」
「俺が?冗談はよしてくれ。俺はお前たちのような負け犬とは違う!!」
「ま、負け犬・・・?」
「そうだ!!軍では身分は関係はない。階級だけがすべてだ!!貴様らはただ徴兵され、黙って甘んじてきただけではないか!!だが、俺が違う!!出世すれば貴族に命令できる!!」
「それがあなたの本心というわけか」

 ティアナが両腕で体を抱くように組みながら前に進み出た。

「そうだ!!」
「くだらない。それじゃあなたも貴族と同じね。ただ身分が階級に変わっただけ。あなたもそこら辺の腐った貴族と、何ら変わりのない偏見的思考の持ち主なのだわ」
「ふざけるな!!貴様は少尉だ。俺は大尉だ。ミューゼル、貴様もだ!!お前は中尉だ!!お前らは黙って俺の命令に従っていればいいんだ!!」
『断る(わ)!!』

 ラインハルトとティアナが同時に言った。

「私はここにいる兵士一人一人の命を預かっている!!そして、今、あなたに指揮権をゆだねないことが最良の選択肢だと私は信じる!!」

 ラインハルトははったと副長をにらみつけた。

「な、なんだと・・・?」
「ミューゼル中尉の言う通りです、副長。私たち士官は兵士一人一人の命に対して、責任を持つ必要性があります。助かる可能性が1パーセントでもあれば、指揮官は最後まで努力し続けるべきです」

 フィオーナが滾々と説得するが、頭に血の上った副長には通じなかった。

「黙れ!!これは反乱だ!!それ以外の何物でもない!!」
「反乱で結構!!」

 ラインハルトが叫ぶ。
「これが、反乱だというのであれば、私は反逆者の汚名を甘んじて受ける!!それで兵士の命が助かるのなら、私は反逆者として堂々と名乗り出よう!!!」

 その時、バラバラと兵士たちが飛び込んできた。

「俺はミューゼル中尉を支持する!!」
「俺もだ!!」
「俺も!!」
「俺もッ!!」

 兵士たちが艦橋に集まってきた。愕然とするベルトラム大尉に向かって、ザイデル伍長が肩をすくめる。

「どうやら副長、兵士たちの中にはあなたを支持する者はいないようですぜ」

 ザイデル伍長の言葉にベルトラム大尉がいったん銃を下ろす。だが、それは跳ね上がってラインハルトの胸に向けられた。

「貴様さえ、貴様さえいなければ!!」
『させるか!!』

 3発の銃声が響き渡った。一発は副長、二発目はフィオーナ、三発目はティアナが放ったものだ。一瞬早かった二人の射撃は副長の銃を正確に打ち抜いていた。

「ぐっ!!!」

 手を庇うようにして副長が崩れ落ちる。同時に肩を撃ち抜かれたロルフが倒れこむ。彼はラインハルトを庇おうと前に飛び出していたのだ。だが、命に別状はない。ティアナはそう見て取った。

「ロルフ、あなた立派よ。よくラインハルトを庇ったわね」

 ティアナがラインハルトの前に飛び出していたロルフの肩に手早く包帯しながら彼の頬を叩く。呆然自失していたロルフは不意に大きく身震いした。

「俺・・俺・・・・!!兄貴・・・・!!」
「ロ、ロルフ・・・・ロルフぅ!!バカ野郎が!!」

 ザイデル伍長がロルフを抱きしめる。

「貴様・・・よくも、ロルフを!!!」

 ラインハルトが副長をねめつけ、銃を突きつけた。うろたえた副長は反射的に銃を構える。だが、焼き切れた銃は役に立たない。
 そこへ、軍医にすがった艦長が姿を現した。

「双方待て、銃を収めよ」
「艦長!!」

 片膝ついていたベルトラム大尉が立ち上がった。ラインハルトともども二人は艦長席の前に並んだ。

「・・・・もとはと言えば、私が不甲斐なくも倒れてしまったことで、二人には余計な心配をかけてしまった。すまない・・・・。だが、私は職務に復帰できる状態ではない。そこで、ミューゼル中尉、君を正式に艦長代理に任命する」
「艦長、あなたはやはり貴族同士で・・・・」
「副長、それは違う。私が彼を選んだのは、彼がこの艦を救おうとする意志を持っているからだ。どうかミューゼル中尉を助けて、この状況を打破してほしい・・・・」

 艦長はそう言うと、意識を失った。

「まったく!!病人に負担をかけるなと言っておいただろうが!!これ以上負担がかかれば私は責任は持てんからな!!」

 軍医が怒りながら艦長を部下たちと共にタンカに乗せて運び去っていった。負傷したロルフも医療班に連れられて出ていった。

 ラインハルトは艦橋を見まわした。

「聞いてのとおりだ。今より私が正式にこの艦を指揮する。副長、異存はないな!」

 ベルトラム大尉が苦渋の表情でうなずく。

「アンカーを切りはなし、自由落下体制に!!」

 ハーメルン・ツヴァイはアルトミュール恒星に向けて自由落下を開始した。

「艦長代理」

 ティアナが話しかけた。

「まだ機関室の修理は終わっていないわ。私もすぐに行って手伝うことにする。いい?」
「お願いする」

 ティアナが出ていってしばらくした後、ラインハルトは通信機を取った。

「機関長」

 ラインハルトが機関室に無線をつないだ。

「すまないが、シュミット一等兵をよこしてくれないか?恒星風の観測に当たらせたい」
『むう・・・。今ただでさえ機関部員の人手が足りないんだ。ローメルド少尉が手伝ってくれているが、何分ギリギリのところで作業しなくてはならないからな。すまないが、誰か応援をよこしてくれないか?』
「応援か・・・・」

 ラインハルトが顎に手を当てて考える。

『私が、行きましょうか?』

 キルヒアイスとフィオーナが同時に言う。だが、ラインハルトとしてはキルヒアイスにはなおも艦橋保安要員として残っていてほしい事、フィオーナには抜けたティアナの代わりに通信・索敵要因として働いてもらっているので、これも残っていてほしい事があった。

「私が行く」

 ラインハルトが顔を上げると、ベルトラム大尉が正面に立っていた。

「どうせ、ここには私の場所はなさそうだ」

 半ば自嘲したようにそう言った大尉だがどこか寂しそうだった。

「しかし・・・・」

 3人は顔を見合わせた。何しろ副長はロルフを負傷させてしまったのだ。ザイデル伍長たちは当然副長に対していい顔をしないだろう。

「機関室が針の筵だということは承知している。だが、もう一度チャンスをくれないか?」

 その真摯な態度は、先ほどまでの侮蔑に満ち溢れていたものとは全く違っていた。

 (これが、きっと本来の副長の態度なのだな。皆に慕われている副長の・・・・。)

 ラインハルトはそう思いながらうなずいた。

「お願いする」

 ベルトラム大尉は敬礼して、艦橋を降りていった。


同盟軍哨戒艦隊 旗艦 アウグスタス
■ シャロン・イーリス中佐 哨戒艦隊参謀長
 やはり実地で捜索をすると、これほどまでに手間がかかるのね。確かにアルトミュール恒星系には無数の小惑星帯が存在するから、これを丹念に捜索するのは至難の業か。でも・・・。

「副官、アルトミュール恒星の表面爆発まで、後何時間?」
「は?あ、はい。すぐに調べます。・・・・・約13時間後です」

 となると、もうアルトミュール恒星に向けて自由落下を始める頃合いね。そうなれば小惑星帯から抜け出してこちらに姿が見えることになるわ。そこを狙い撃ちすればいいわけね。

「参謀長!!」
「どうしたの?」
「恒星アルトミュールに向けて小惑星から隕石群と思われる物体が引き込まれていきます」


 ビンゴ!!それだわ!!捕えた!!!


 思わず微笑が口の端に浮かぶ。あとは誘導ミサイルを数発打ち込めば、それで終わり。誘導システムが恒星風磁場で妨害されるというのなら、単純指向性ミサイルを多数放てばいい。私が命令を下そうとした時だ。

「バカ者!!そんなことは報告せずともよい!」

 不意に遮るようにして司令官が登場する。こんなときにこの人は・・・。司令官室で寝ていればよかったものを。睡眠薬の効きが足りなかったのかしら。どうしてよりによってムーアなんかが私の上につくのだろう。

「失礼ですが、それは私の命令です。どんな些細なことでも報告するように言っておいたのですから」
「なに?参謀長、余計なことをするな!!我々の任務はこの宙域の哨戒だ。どうやら私の不在中に索敵と称して多数の艦艇をばらまいたようだが、あれでは敵の奇襲を受けた時どうしようもないではないか!!」
「この宙域付近の索敵は既に完了済みです。付近には敵艦隊はありません。それに味方艦隊も付近にいますから、仮に敵に襲われたとしても充分対応できます。こちらの布陣や哨戒規模を知られないためにも、今は撃ち漏らした敵を捜索すべきでしょう。それにお忘れですか?第237駆逐隊の進路上に伏兵を置いて、包囲殲滅してこれを撃破するよう具申したのは私です。実際そうなったではありませんか」
「たかが3隻の駆逐艦を破壊したくらいで、出しゃばるな!!」

 思わずこぶしに殺気を込めそうになった。こんな人間、一瞬で殺して見せるのに。でも、ここは我慢。私は微笑した。悲しい性だけれど、私は感情が激したりする時ほど、微笑してしまう。いつか本当に心から笑える時が来れば、いいのだけれど。

「わかりました。では、艦艇を集合させますか?」
「そうしてもらおう。そののちに、この宙域から撤退する。我々は後方に下がり、他の哨戒艦隊と交代することになるのだからな」
「かしこまりました」

 一礼しながら、私は考える。いずれムーアは始末する。彼はトリューニヒトの気に入りだけれど、私も彼の知己だ。うまく言葉を選んで、アスターテまでに彼らの艦隊司令官就任を阻止してやるわ。
 艦隊の集合等に手間を取られれば、どうしてもアルトミュールへの監視はおろそかになる。もともと砂粒のような大きさの上、敵はセンサーの類を切っているだろうから目視での捜索にならざるを得ない。
 私は艦艇に対し、集結命令を下すように通信主任に指令すると、艦橋の所定の席に座った。

 最後まであきらめはしないけれど、どうやら今回はそちらの勝ちのようね。でも、次回はそうはさせないわ。絶対に。



ハーメルン・ツヴァイ、機関室――。

 ハーメルン・ツヴァイはいよいよ恒星風を利用しての脱出作戦を結構という段階にきていたが、ここで大きな問題が起こっていた。

 姿勢制御スラスターの一基が故障してしまっていた。故障した13番スラスターは、艦尾をアルトミュールに向ける際に必要なものであった。
 外に出て作業しなくてはならないが、既に宇宙服の耐熱限界を超えてしまっている。

「やはり船外で作業するしかないか」

 ベルトラム大尉が唸りながら言う。

「無理だ。既に宇宙服の耐熱限界を超えてしまっている。」

 と、機関長。それに対してベルトラム大尉は、

「艦をロールさせて、13番を陰にする。さらに太陽電池パネルで光を吸収し、その陰で作業すれば、何とかなるかもしれない」
「可能なのか?」

 ラインハルトの問いに、シュミット一等兵がお待ちくださいと計算をしてみた。

「なんとか、10分以内ならば」
「よし、俺がやる!」

 ザイデル伍長が進み出た。

「言い出したのは私だ、私がやる。」

 だが、ザイデル伍長はベルトラム大尉をにらみつけ、

「アンタは信用できねえ」

 傍らのモジャモジャ頭の同僚機関兵に声をかけた。

「ブント、お前来い!」
「え、ええ!?で、でも俺船外作業苦手だし・・・・」
「今更怖気づくな!」
「そ、そうじゃねえよ!自信がないんだ。俺のせいで失敗したらみんな終わりなんだぞ!」
「・・・・・・・・」

 作業の重大さに、一同はしばし黙りこんだ。ティアナとフィオーナもだ。内部の機械のことは詳しいが、姿勢制御スラスター等実際に触ったことはなかったのだ。こんなことなら事前に触っておけばよかったと、二人はどうしようもないことを後悔する気持ちでいっぱいだった。

「やはり私がやる。お願いだ、もう一度だけチャンスをくれないか?」

 ベルトラム大尉の真剣な願いに、一同は自然とラインハルトを見た。

「わかった。お願いする。」

 船外の外はともすれば真っ赤に燃えるアルトミュール恒星の炎にさらされて、船体が重フツフツと泡を立てているところすらあった。宇宙の深淵の漆黒の冷たさと、ぎらつく恒星の灼熱の空間が共存している奇妙さはまさに体験したものではないとわからないだろう。

『私、サポートに回るわ』

 ティアナが宇宙服を着て、ハッチ付近に待機している。外に出るのは、ザイデル伍長たちだった。作業時間を考えれば、多人数で行けるものではない。二人が限度だった。

『よし、行くぞ!』

 二人はハッチを開け、外に飛び出した。慎重に舷側に足をつけ、13番スラスターに向かって歩いていく。早くも宇宙服のあちこちが焼け始め、太陽電池パネルも赤くなってきていた。それでも、二人は何とかたどり着き、作業を開始し始めた。


ハーメルン・ツヴァイ艦橋――。

「航海長!6時の方向より、超長距離ミサイル確認!!」

 フィオーナが叫んだ。

「何!?」
「敵に気づかれたようです。幸い敵は安全圏から中には入ってこないようですが、このままの相対速度ですと、ミサイルは本艦に命中します!!」
「回避できるか?!」
「今の補助動力では、無理です!」

 エメリッヒ少尉が苦渋の表情だ。

「着弾まであと3分!航海長!回避できる方法が、一つあります!」

 フィオーナが声をかける。

「わかっている。艦の他のスラスターを噴射させて、ローリングする方法だというのだろう?だが、それでは反動でザイデル伍長たちが跳ね飛ばされてしまう可能性がある」
「航海長!!」

 フィオーナが叫んだ。穏やかで優しい彼女からは想像できないような大声だった。思わずラインハルトは椅子で身動きした。

「航海長、ではザイデル伍長たちを救うために、この艦の兵士たちを犠牲にするというのですか?!」

 いつにないフィオーナの口ぶりにラインハルトは愕然となった。

「それは・・・・」
「このままでは命中は確実です!回避する方法は一つしかないんです!!どうか、ご決断を!!」
「く・・・・・」

 ラインハルトの拳がぎゅっと握られた。だが、当のフィオーナ自身もとてもつらそうな顔をしている。言いたくて言っているわけではないのだと、ラインハルトは痛いほど理解していた。

「やむをえん。キルヒアイスたちに伝えろ!!着弾まであと1分!!20秒後にスラスター噴射開始だ!!遅れるな!!」
「りょ、了解!!」

 エメリッヒ少尉が操作する中、フィオーナはキルヒアイスに連絡した。

「早く二人を収容してください!!敵ミサイル、来ます!!!」

 船外作業ハッチ脇でそのことを聞いたキルヒアイスとティアナは二人を必死に呼び戻していた。

「早くしろ!!時間がない!!」
「急いで!!!」
『OK,終わった!!!今そっちに戻る!!』

 ザイデル伍長たちが焼けただれたパネルを担いで、懸命に戻ってくる。既に外は灼熱状態だ。今恒星に対面したら、恒星風にさらされて、ひとたまりもなく焼死してしまう。
 と、その時だ。あと数歩でたどり着くというときに、ついにハーメルン・ツヴァイがローリングを開始した。その反動で二人が宙に浮きあがってしまう。

「まずい!!」

 ティアナがとっさに外に飛び出した。その時、ベルトラム大尉がザイデル伍長を投げつけるのが見えた。ティアナは自身の命綱を固定柵にひっかけ、身を乗り出しながら思い切り力を込めて、大尉の命綱を引いた。
 後一瞬遅かったら、ベルトラム大尉は恒星風にさらされていただろう。だが、ザイデル伍長が、ついで、ティアナの渾身の力で、引きずられた大尉がハッチ中に転げ込むと同時にキルヒアイスがハッチを閉めた。転瞬、二人は燃え上がったが、自動消火装置が作動し、すぐに消し止められた。

「こちら、機関室。船外作業完了。ローメルド少尉の尽力で、ザイデル伍長、及びベルトラム大尉・・・・無事、帰艦なさいました」

 艦橋に歓声が響き渡った。

「まだ終わっていない!!恒星風、来るぞ!!!」

 ラインハルトが叫んだ。

「姿勢制御、完了!!」
「恒星風到達まで、後15秒!!」
「恒星風到達と同時に機関始動!!最大出力で戦場を離脱する!!」
「10・・9・・8・・7・・6・・5・・4・・3・・2・・1・・機関始動!!」
『動けェェェェッ!!!』

 全員が大声で叫んだ。


 しばらくして――。

 医療室では、アデナウアー艦長がようやく意識を取り戻した。

「おお、気が付いたか」
「あぁ・・・先生か。艦は、どうなっている?」
「あぁ、あんたの見立て通りだよ。あの坊やたち、それからあの嬢ちゃんたちがやってくれた。見事だったよ」
「そうか・・・そうか・・・・。副長はどうした?」
「生きているよ。大やけどを負ったがね、命に別状はない。部下を助けて、自分を犠牲にしようとしていた。それを嬢ちゃんの一人が救ったんだ」
「そうか。立派な副長、立派な部下たちだな」

 艦長はそういうと、再び意識を失った。

「あぁ。みんな立派だよ」

 しみじみと軍医が言った。




数時間後――。

「こちら、駆逐艦ハーメルン・ツヴァイ、艦長代理ラインハルト・フォン・ミューゼル中尉。アルトミュール恒星系で敵艦隊と遭遇戦。僚艦はすべて撃沈、来援を乞う。繰り返す――」
『こちら・・・メルカッツ艦隊所属、巡航艦フレーシェル。貴艦の通信を傍受した。既に一個艦隊がそちらに向かっている。合流されたし』
「こちらハーメルン・ツヴァイ、来援を感謝する!」

 通信を切ると、ラインハルトは初めて表情を緩めた。それは誰もが同じことだった。皆が喜びの声を上げる中、ティアナがそっとフィオーナに話しかけた。

「やったわね。全員、生きて戻ることができたわ。これ、原作よりもいい結果よね」
「ええ・・・ロルフもベルトラム大尉も、生きて戻ることができたのよね。でも・・・・」
「でも?」
「大尉は、どうなるのかなぁって思って・・・・。大丈夫かな?」

 原作と違い、生きて戻った大尉は、兵卒を射殺しようとした事、結果的に誤った判断で艦を危険にさらしたことなどから、軍法会議にかけられるかもしれない。もっともそれはラインハルトのほうも同じことだったが。
 ティアナは大尉の命綱を引っ張った時、そんなことまでを考えていなかった。ただ、体が勝手に動いたのだ。

 アルトミュール恒星系から離脱できた後で、ベルトラム大尉から、なぜ助けたのだ?と聞かれたティアナはこう答えていた。

「なんとなく、だわ」
「なんとなく?」
「あなたが自分を犠牲にして、ザイデル伍長を助けようとしていた姿を見て・・・・いいえ、そうね、もっと前、あなたがたった一人で機関室に行くと言い切った時から、私のあなたに対する風向きは変わった。そんなところかな」

 フッ、とベルトラム大尉は一瞬笑った。全身に火傷を負い、顔にも包帯を巻いているにもかかわらず、大尉が笑ったのがはっきりとティアナにはわかった。

「上官に対して、敬語を使わないとは。だが、フロイレイン・ティアナ。あなたの私に対する評価を、素直に受け止めるとしよう。もちろん、他の事も含めてな・・・・」

 大尉は最後に寂しそうにそう言うと、ティアナを残して医務室に戻っていった。


ティアナはその時のことを思い返していて、フィオーナの問いかけに自然と口が動いていた。

「たぶん、大丈夫な気がする」
「えっ?」
「あの艦長なら、きっとなんとかする、そんな気がするのよね。あれは・・・とてもいい艦長よ。それに、副長も変わったわ。ううん、本来副長が持っているいい部分が顔を出し始めたんだと思うの。もう大丈夫よ。ラインハルトもきっとそう思っているわ」

 ティアナがフィオーナにうなずいて見せた。

「そっか。そうよね。きっとそうよね」


* * * * *
 アルトミュール恒星系に侵入した同盟軍艦隊は帝国軍一個艦隊が救援に駆けつけたため、戦わずして撤退した。そして、ラインハルト・フォン・ミューゼル中尉、ジークフリード・キルヒアイス少尉、フィオーナ・フォン・エリーセル少尉、ティアナ・フォン・ローメルド少尉は、艦長、副長不在の艦を良く指揮し(副長は戦闘行動中に機関部の修理に赴き、そこで大やけどを負ったということにされていたのだ。)駆逐艦隊のなかでただ一隻生き残らしめた事、さらに敵発見の通報をいち早く行ったことなどから、昇進が決まっていた。

「キルヒアイスまで昇進するのね。これは、原作とは違うけれど・・・・」

 フィオーナは意外そうに灰色の目をしばたたかせた。

「私たちも昇進するんだもの。キルヒアイスだけ昇進しないのは後味悪いしね」
「デューリング中尉たちはそのままなのに?」
「まぁ・・・そこは・・・・。」

 ティアナは口を濁したが、すぐに、

「でも、その分私たちは頑張ってラインハルトを支えて、早く戦争を終わらせなくちゃならないからね」
「そうね。そうだよね」

 フィオーナはうなずいた。

 ハーメルン・ツヴァイはイゼルローン要塞に満身創痍のまま入港し、ただちに負傷兵の手当てと、艦の修理が行われていた。そのさなか、昇進が決まったことをラインハルトらは知り、艦長に会おうということになった。

 その艦長室で、お礼言上にまいった4人が会議室で艦長と当惑顔で対面している。艦長は未だに車いすだったが。

「しかし、その、よろしいのですか?」

 ラインハルトが当惑そうに口ごもった。

「何がかね?」
「その、小官たちは反逆罪で罰せられるのかと思っていました・・・・」
「私の艦で反乱など起こったことはないよ」

 唖然とする4人に対して、

「その通りだ。艦長、そして私が負傷し、その不在の間、君たちはよくこの艦を指揮した。そういうことだ」

 全身に包帯を巻いているが、艦長の傍らに立って元気そうな声でベルトラム大尉が言う。

「でも・・・・。なんだか申し訳ないわ。あなたは命懸けで作業を行ったのに、昇進はなしで・・・・」

 ティアナが心底申し訳ない声を出すと、

「はっはっは。そう気にするな」

 ベルトラム大尉が軽く笑う。だが、眼にも口にもどこにも陰ったところはない。

「君たちのおかげで目が覚めたよ。昇進や権威ばかりにかまけていて本当の大切なものを・・・・」

 ベルトラム大尉は、傍らに立っているザイデル兄弟たちを見やりながら言った。兄弟は大尉にうなずいて見せた。

「失うところだったからな。本当に反省したよ。これからは兵たちのことを考えながら、艦長の下で艦を皆を指揮していこうと思っている。もっとも・・・そんな機会があればの話だがな」

 最後は寂しそうだった。大やけどのせいで、下手をすれば退艦になり、どこか内地に勤務するようなことになるかもしれないと思っていたからだ。ところが、艦長がすぐにこういった。

「あるさ。ベルトラム大尉、卿には引き続き私の艦で副長をやってもらうことにした」
「艦長!?」

 ベルトラム大尉が驚いた眼を艦長に向ける。

「ミューゼル中尉から私も学ばせてもらったよ。戦場において私たち士官は、兵士たちを死線に立たせる。だが、その代わり兵士一人一人のことを考えながら指揮をとらなくてはならない。・・・・ごらんのとおり、私は今こんな身だ。しかし、私が艦を下がれば、またどこかの貴族出身の、兵を兵とも思わない艦長がやってくるかもしれない。そうなれば、ザイデル伍長たち、いや、皆が苦労することだろう。だが、私一人では心もとない。副長、すまんがもう少しつきあってもらえないだろうか?」
「しかし・・・私は・・・・・」
「卿も言ったろう?これからは兵士たちのことを考えると。それが大事なのだよ。私たちはこの若者たちには才能は及ばないかもしれない。ならせめて、一人でも多く、兵士を兵士として待遇し、生き残らせるために、働こうではないか」

 ベルトラム大尉がザイデル伍長たちを見ると、二人は副長を励ますようにうなずいて見せた。

「なに、アンタがいないと、どうも張り合いがなくてつまらねえんですよ。また昔の様に楽しくやりましょうや」
「あんた俺を撃ったけれど、兄貴を救ってくれた。それでチャラだよ。もう恨みも悲しみもなしで、また一からやりなおそうよ」

 ベルトラム大尉はしばらく瞑目して、やおらうなずいた。

「そうですな。わかりました。及ばずながらまた一からやらさせていただきます」

 ラインハルトたち4人はほっとしたような感動したような眼でお互いうなずき合っていた。



そして数日後――。

「航海長~~!!!」
「少尉殿~~!!!」
「保安主任も通信主任も索敵主任もお元気で!!」
「お世話になりました~~~!!!」
「また一緒に働かせてください!!」

 ハーメルン・ツヴァイの艦長、副長以下全員が舷側に立って手を振りながら見送る中、4人は艦を降りて、手を振り返していた。

「親愛なる航海長、保安主任、通信主任、索敵主任に、敬礼ッ!!!」

 ザイデル伍長が音頭を取り、全員がまるで元帥閣下に対してするようにビッシリと敬礼した。それに答礼を返し、手を振りながら4人はハーメルン・ツヴァイを後にした。

「どう?ラインハルト大尉。今回のこと、どう思った?」

 歩きながらティアナが話しかけた。ラインハルトはすぐには答えず、息を大きく吐くと、足を止めた。そして、3人をかわるがわる見ながら、しみじみと言った。

「俺はまだまだ人を見る経験が足りないことがよく分かった。人というものは少し会話した程度ではとても思いもつかぬ性を持っている。美点も、欠点もだ。だが、それらを含めての人なのだな」

 3人は同感だというようにうなずいた。

「今回は学ぶことだらけだった。まだまだ俺は学ぶべきことが多い。やはり一部の人間とだけ話していても仕方がないな。だが、そのためにこそ宇宙に出てきた甲斐があったというものだ」
「ええ、本当に、その通りですね」

 キルヒアイスが感慨深げにうなずいた。

「さて、俺とキルヒアイスはいったん艦隊司令部に戻る。オーディンに戻るようにと話があったようだ。フロイレイン・フィオーナとフロイレイン・ティアナは、イゼルローン要塞にとどまるのか?」

 後に述べることになるが、軍隊での女性士官の呼称は「フロイレイン」を付けることになっていることをここに述べておく。もっともまだまだそれは浸透してはいないのだが。

「そのつもりよ。今度は二人とも中尉だもの。どこかの艦の航海長かそこらへんになるんじゃない?」
「そうか。・・・名残惜しいな」

 二人は顔を見合わせて、笑った。

「何か、おかしなことを言ったか?」
「ううんなんでもないです。大丈夫。私たちはきっと会えると思いますから」

 フィオーナがにっこりした。

「どっちが出世してるかな、たぶんあなたの方かもしれないわね。そうなったら私たちを麾下に加えてくれる?」

 ティアナの言葉に、フッ、とラインハルトが笑った。

「それはこちらの方こそ、望むところだ。だが、ただの主従ではない。友人として、俺を支えていってほしい」
「わたくしも、ぜひお二人と一緒に、ラインハルト様と共にありたいものです。どうか、その日までご健勝で」

 そういうと、ラインハルトとキルヒアイスは、背を向けて歩き出した。その姿をフィオーナとティアナは見送っていた。今はまだ小さな背中だが、やがてそれが大きくなり、銀河全体を支えられる巨大な背になるだろう。二人ともそう思っていた。

「ねぇ、フィオ」
「なぁに?」
「私、この世界のラインハルトなら、サポートしてもいいかなって思い始めてきたわ。今までは『ヴァルハラでの超リッチなバカンスのため!!』だったけれど、今は違う。本当にそう思うの」
「私もよ。ティアナ、二人で・・・・・いいえ、教官たちと力を合わせて、ラインハルトとキルヒアイスの二人を支えていきましょうね」

 二人はうなずき合い、宙でしっかりと手を握り合わせた。

 
 

 
後書き
 この後、少し話を再編成するので、次話までに、少々のお時間を頂かせてください。(陳謝!!!) 
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