カップルの失踪
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3部分:第三章
第三章
二匹ずついる。どれもつがいだ。彼等はアラガルと趙虎の姿を見るとすぐにガラスのところに来てだ。しきりに悲しそうな声で鳴くのだ。
それを見てだ。まず趙虎が言った。
「何か妙ですね」
「動物園の動物といえばね」
アラガルも言う。その彼等を見ながら。
「普通人の視線に慣れて我関せずだけれど」
「何かこの子達は」
「うん、何かを訴えるような」
そんな感じだとだ。アラガルは見たのである。
「そんな感じだね」
「普通の動物のものじゃないですよね」
「少なくとも動物園のものじゃないね」
こう趙虎に話すのだった。
「これはね」
「ですよね。何なんでしょうか」
「ううん、まさかと思うけれど」
アラガルの勘が動いた。そのうえでの言葉である。
「この子達は虐待とか。そういうことをされてて僕達に訴えたいんじゃないかな」
「虐待ですか」
「餌を碌に貰っていないとかね」
そうではないかというのだった。
「そういうのかな」
「全部の動物がですか?」
「とはいっても」
アラガルは彼等のそれぞれの部屋を見る。ガラス張りなので中は丸見えだ。それぞれの動物に合わせた部屋を見るとであった。
そこにはだ。何処にも餌があった。しかも多量にだ。
水まである。それを見るとだ。
「食べるものには困ってないね」
「そうですね」
こう話すのだった。
「だからこれは」
「食べ物の問題じゃない」
こう結論付けるしかなかった。しかしだ。
動物達はガラスに身体をぶつけたり叩いたりしてだ。とにかく彼等に対して鳴いたりしている。それを見てだ。アラガルはまた言った。
「やっぱり訴えてるね」
「私達に対して」
「うん、皆僕達に訴えてるね」
「じゃあ何でしょうか」
「それがわからない。どういうことかな」
考えてもだった。それがどうしてもわからない二人だった。しかしここでだ。
二人のところにだ。白衣の男がやって来た。白衣の下はスーツだ。白髪で眼鏡のだ。何処か神経質そうな男であった。
その目を見る。見るとだ。
その目は視点が定まらない。虚ろである。それでいて鋭い。二人はその目を見た。
そして瞬時にあるものを察した。しかしだった。
それはあえて言わずにだ。彼が前に来るのを待った。するとだ。
男はだ。二人に対してこう話してきたのだ。
「この動物園は如何でしょうか」
「この動物園がですか」
「どうかというのですね」
「はい、ここはですね」
白衣の男はそのおかしな目で話すのだった。
「様々な動物達がいますが」
「ああ、そういえばそうですね」
「見れば変わった動物達ばかりですね」
普通のゴリラやライオンではない。何かが違う。
細部が歪なだ。そうした動物ばかりなのだ。
二人はそうした動物達をあらためて見てだ。そのことに気付いた。そして男はだ。その二人に対してさらに話をするのであった。
「連合各地から集めています」
「連合各地からです」
「例えばです」
男は彼から見て左手にいるつがいの動物達を指し示した。それは目が四つあるように見える青いオランウータンだった。
「この猿はパナマにいます」
「パナマ!?」
ここで言ったのは趙虎だった。怪訝な顔になっていた。
「その国に、ですか」
「そこから特別に取り寄せた猿です」
こう話すのだった。
「それがこの猿達なのです」
「そうなのですか」
趙虎は表情を消して述べた。
「そうした猿ですか」
「はい、その他にもです」
男の説明は続く。だが、だった。
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