英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第57話
~鳳翼館~
「―――やっぱり、俺達”Ⅶ組”は”第三の道”を求めるべきだと思う。貴族派でも革新派でもない、俺達ならではの”道”を。」
リィンは仲間達を見回して提案した。
「”第三の道”か……たしかに我らが貴族連合や正規軍のどちらかを味方するのも違うであろうな。」
「僕達、士官学院生とはいえ、まだ学生だもんね。」
「ええ……今までは貴族連合が攻撃を仕掛けてきた為、”自衛”という形で彼らと戦ってきましたけど……」
ラウラやエリオットの意見に頷いたセレーネは考え込んだ。
「内戦に関わるとなれば、相応の責任が発生するだろう。あの”騎神”がいるとはいえ、よく考えて行動しなくてはな。」
「フン、やはり鍵となるのは、”灰の騎神”か。」
「……ん。ここまで何度も見て来たけどやっぱり”騎神”の力は凄い。使い方次第では、いくらでも内戦に干渉できるはずだし。」
マキアスとユーシスの意見にフィーは頷いて説明し
「”巨いなる騎士”として、各地に様々な言い伝えを残してきた存在ですから……及ぼす影響力を考えれば、慎重な判断が必要そうですね。」
エマは複雑そうな表情で説明を捕捉し、リィン達を見回した。
「あの……一つよろしいですか?」
「セレーネ?どうしたんだ?」
セレーネの言葉を聞いたリィン達はセレーネに注目した。
「”灰の騎神”を使って内戦に干渉した場合…………――――”灰の騎神を所有しているメンフィル帝国”が後で何か言って来るかと思うのですが。」
「え…………」
「ヴァリマールをメンフィル帝国が所有しているって………どういう事よ?ヴァリマールを唯一動かせるリィンが所有者でしょう?」
セレーネの意見を聞いたリィンは呆け、アリサは目を丸くして尋ねた。
「……………言われてみればそうですね。”操縦者であるリィンさんはメンフィル帝国人の”で”灰の騎神”の所有者の上メンフィル帝国軍にも所属しているとの事ですから、広い意味で捉えたら”灰の騎神”は”メンフィル帝国軍の所有物”となります。」
「………そうね。”騎神”は”起動者”の所有物と言ってもおかしくないから、そういう意味では間違っていないわ。」
「しかもエレボニア帝国とメンフィル帝国は戦争勃発寸前の最悪状態……メンフィルが戦争を仕掛ける前に内戦が終結してエレボニア帝国が何らかの形で謝罪や賠償とかをしてメンフィルとの戦争を回避したとしても、絶対後でエレボニア帝国にその件を盾に色々と突き付けてユミル襲撃の件とは別に色々搾り取って来るだろうな。」
「あ………………」
クレア大尉とセリーヌ、トヴァルの説明を聞いたリィンは不安そうな表情をした。
「更にそれとは別件にリィン様とセレーネ様―――――メンフィル帝国人―――それも”メンフィル帝国の貴族”をメンフィル帝国の許可なく内戦に介入させた件についても指摘してくる可能性も考えられますし、リィン様が契約なさっている異種族の方達はメンフィル帝国の”客将”扱いされていますから、”騎神”の件を抜きにしてもリィン様達をメンフィル帝国の許可なく内戦に介入させたとして、エレボニア帝国はユミル襲撃の件を抜きにしてもメンフィル帝国に相当追及される可能性が高いと思いますわ。」
「確かにその可能性も考えられるわね。しかも最悪状態まで陥ってしまった二国間の関係を考えると、相当搾り取ってくるんじゃないかしら?」
「そ、そんな……っ!?」
「……わたくしもそれを一番恐れているのです。それにわたくしは養子縁組とは言え、メンフィル皇家に位置する者。プリネ様やツーヤお姉様が庇ったとしても、メンフィル皇家自身も恐らく黙っていないと思われますわ。」
シャロンとサラ教官の推測を聞いたリィンは表情を青褪めさせ、セレーネは辛そうな表情をし
「リィン……セレーネ……」
「……リィン達が”メンフィル帝国人”である事がここにきて、”枷”となってくるのか……」
二人の様子を見たエリオットは心配そうな表情をし、ガイウスは重々しい様子を纏って呟いた。
「でも、だったらどうするべきだろうねー。みんなそれぞれ、この内戦下でやりたいこと―――っていうか、やらなくちゃいけないことがあるだろうし。」
「……そうだな。貴族連合に捕らわれたエリスとアルフィン殿下……少なくとも俺は、彼女達を必ず救い出さなくちゃならない。」
「わたくしもお兄様と同じ意見ですわ。」
「もちろん僕達も協力させてもらうつもりだ。……貴族連合に逮捕された父さんのことも気がかりだが。」
「……僕も帝都にいた姉さんといまだに連絡がつかないんだよね。父さんには会えたけど……やっぱり心配かな。」
「私も……ラインフォルト社やルーレのみんなが気がかりだわ。シャロンは無事でいてくれたけど、母様は行方すらわからないし……」
「お嬢様……」
「……父上も、カレイジャスで飛び立ったあと1ヵ月も行方がわかっていない。あの人のことだから、そこまでは心配していないが……」
リィンの意見を切っ掛けに身内が心配な仲間達がそれぞれリィンに続くように言った。
「それぞれの身内の行方、か。内戦がこれ以上激化しないうちに何とか手がかりをつかみたいな。」
「フン、俺の身内のほうはその点は心配なさそうだが……内戦下で動くとするなら父と兄との対立は避けられないかもしれん。」
「ゼノやレオ……わたしの昔の仲間も。貴族連合に雇われている以上、またやり合う可能性はありそう。」
「エマとアタシも、近いうちに見極める必要があるわね。ヴィータ―――あの女が”禁忌”を破ってまで何をしようとしてるのか。」
「……ええ、そうね。」
身内と敵対関係であるユーシスやフィー、セリーヌとエマはそれぞれ複雑な思いを抱えていた。
「いずれにせよ、オレはみんなに力を貸すつもりだ。故郷に伝えられる”ノルドの勇士”たちのように……かけがえのないみんなと、第二の故郷を護るために。」
「あはは、もちろんボクも手伝ったげる!いいよねー、クレア?」
ガイウスに続くようにリィン達に力を貸す事を口にしたミリアムはクレア大尉に視線を向けた。
「ええ、もちろんです。私は私で鉄道憲兵隊として果たすべき任務がありますが……今後も皆さんへの助力は惜しまないつもりです。」
「俺もギルド方面の手伝いに戻ろうとは思っているが……サラを通じて今後も色々と手伝えるだろうしな。」
「ふふ、わたくしも”第三学生寮”の管理人としてご奉仕させていただきますわ。」
「ま、あたしも担任教官としてあんたたちの決めた道をとことん見守るつもりだけど。どちらにせよ、もっと具体的に決める必要があるわね。あんたたちがこの先”どう動いていくのかを。”」
「……そうですね。それに今後も、ユミルを拠点に活動していくべきなのか……」
サラ教官の指摘に頷いたリィンは真剣な表情で考え込んだ。
「念の為言っておくけど、”精霊の道”を通れる人数はある程度限られているわ。人が増えた今となっては、今後も利用していくのは正直、無理があるでしょう。」
「そうね……霊力にも限りがあるから頻繁には使えないだろうし。」
「うーん、そっか……」
「まあ、ただでさえ各地でひと悶着起こしているしな……」
「貴族連合も今まで以上に警戒してくるだろう。」
「……それにメンフィル帝国が派遣するユミルの防衛部隊が到着すれば、メンフィル帝国軍が私達―――エレボニア帝国人のユミルでの滞在を許可してくれるかどうかわかりません。」
「そういやユミル襲撃の件からほぼ2週間経っているから、そろそろ到着してもおかしくない頃だな……」
セリーヌとエマの話を聞いたエリオットは残念そうな表情をし、今までの経緯を考えたマキアスは疲れた表情をし、ユーシスは真剣な表情をし、不安そうな表情で呟いたクレア大尉の推測を聞いたトヴァルはメンフィル帝国軍がユミルに到着する時期が近い事に気付き、真剣な表情で考え込んでいた。
「うーん……思った以上に難しい状況ね。」
「ああ、こうしている間にも、内戦とメンフィル帝国との外交問題は刻一刻と悪化している。」
「わたしたちにしかできないこと……それって何だろうね。」
「………わからない……だが見出せそうな気もする。焦らず、じっくりと議論を重ねてみるしかないな。」
「―――フフ、なんだか楽しそうな話をしているわね。」
リィン達が考え込んでいると突如声が聞こえて来た!
「せっかくだから私も混ぜてもらえないかしら?」
「こ、この声は……!」
「……まさか!?」
「姉さん―――!?」
声を聞いたリィン達が顔色を変えたその時突如蒼い鳥が広間に現れると共にクロチルダの幻影が現れた!
「クスクス……久しぶりね、エマ。無事にリィン君達と合流できてなによりだわ。これも女神のお導きかしら?」
「くっ、抜け抜けと……ヴィータ、ノゾキなんて趣味が悪いにも程があるわよ!?」
「姉さん、どこにいるの!?」
「フフ、すぐ近くよ。……ほら、聞こえるでしょう?」
ヴィータの幻影が消えたその時機関音が聞こえて来た!
「こ、この機関音は……!」
「もしかして!?」
「―――空からだ!」
そしてリィン達は慌てて外に出ると何とユミルの上空に貴族連合軍・旗艦―――飛行戦艦”パンタグリュエル”が滞空していた!
~温泉郷ユミル~
「あ――――!!」
「あ、あの銀色の戦艦は確かヘイムダルに現れた……!」
「き、貴族連合軍の飛行戦艦……!?」
「”パンタグリュエル”か―――!」
パンタグリュエルを見たリィンは驚き、セレーネとアリサは不安そうな表情をし、ユーシスは厳しい表情で声を上げた。
「クソ……もともと”魔女”には居場所がバレていたが……!つーか、こんな事をしたらただでさえ、最悪状態に陥っているメンフィル帝国との外交問題が完全に修復不可能になるじゃねえか……!」
「でも、どうしてこのタイミングで……!?」
「ふふ……”準備”が整ったからよ。」
トヴァルとサラ教官が叫んだその時、クロチルダがリィン達の目の前に浮いている状態で現れ
「ヴィータ……!」
「姉さん……!」
クロチルダの登場にセリーヌとエマは驚いた。
「ごきげんよう、Ⅶ組の皆さん。うふふ、可愛い妹との再会を祝して熱い抱擁といきたいけれど。主賓も待ちくたびれていることだし、さっさとパーティを始めましょうか。」
そしてクロチルダが空を見上げると何とパンタグリュエルからオルディーネが現れ、ユミルの上空に現れた!
「ま、まさか……アレって!!」
「”蒼の騎神”……!―――クロウッ!!」
「クク、どいつもこいつも久しぶりじゃねえか。ちょっと乱暴だがお前らの”話し合い”に乱入させてもらうぜ。この―――”オルディーネ”と一緒にな。」
オルディーネからはリィン達が予想していた人物―――クロウの声が聞こえたきた!
「この声……やはりクロウなのか!?」
「間違いない……!」
「ど、どうしてこのタイミングで……!」
声を聞いたラウラとガイウスは真剣な表情をし、セレーネは不安そうな表情をし
「”C”―――クロウ・アームブラスト……!」
クレア大尉は厳しい表情でオルディーネを睨んだ。
「―――行くわよ!」
「ああ……!!来い――――ヴァリマール!!」
セリーヌの言葉に頷いたリィンはヴァリマールの名を呼んだ!
「応――――!!」
そしてリィンとセリーヌはユミルに現れたヴァリマールの中へと入って行った。
「今度は負けない―――必ず乗り越えてみせる!俺達”Ⅶ組”が”道”を切り開くためにも!!力を貸してくれ、ヴァリマール!!」
「承知シタ―――存分ニ”力”ヲ奮ウガイイ……!」
「クスクス、この短期間で更に”騎神”を乗りこなしたみたいね。さすがはリィン君、私が見込んだもう一人の男の子だわ。さて―――それじゃあ”そちらの方”も始めようかしら?」
ヴァリマールの様子を見たクロチルダが微笑んだその時今まで仲間達と合流した際に立ちはだかった”執行者”達と”西風の旅団”の猟兵達に加え、アルティナも転移魔術によって現れた!
「ああっ……!?」
「そ、そんな……!?」
「貴族連合の協力者どもか……!」
強敵の登場にエリオットとセレーネは不安そうな表情をし、ユーシスは目を細めた。
「しばらくぶりやなぁ。フィー、士官学院のボンども。」
「先日の遊撃士に加えて、”紫電”の姿まであるか。」
「ゼノ、レオ……」
「”西風の旅団”……!」
「フン、結社の連中まで……雁首揃えて現れたみたいね。」
「あの子とクーちゃんも一緒みたいだねー。」
「………おかしな渾名で”クラウ=ソラス”を呼ばないで下さい。」
「―――――」
仲間達と共に自分を見つめるミリアムにアルティナは呆れた表情で指摘した。
「フフ、小雪舞うこの郷に再び訪れることになるとは。」
「ここで会ったが百年目!大人しくすることですわね!」
「ま、あれから2日しか経ってないがな。」
「……不覚ですわね。まさかこの郷にここまでの戦力を注ぐとは……」
予想外の戦力の投入にシャロンは厳しい表情で敵を見回した。
「フフ、君達の実力を考えて万全を期したまでのこと。」
するとその時何とルーファスがアリサ達の前に転移魔術によって現れた!
「兄上―――!」
「久しぶりだな、Ⅶ組の諸君。それに親愛なる我が弟よ―――出奔したと聞いていたが思いのほか壮健そうで何よりだ。己自身の”道”を見出す覚悟がようやくできたというわけかな?―――兄であるこの私とたとえ対立する事になろうとも。」
「っ……その通りです!」
ルーファスの言葉を聞いたユーシスは一瞬唇を噛みしめた後決意の表情で叫んだ。
「くっ、彼までここに出向いてくるとは……!」
「貴族連合もいよいよ本気を出してきたってこと……!?」
そしてサラ教官達―――Ⅶ組の”協力者”達はアリサ達を庇うような位置で次々と武器を構え、サラ教官はバルディエルを召喚した!
「―――リィン、ここはあたしたちに任せなさい!君とヴァリマールの相手は他にいるはずでしょう!」
「教官………!」
「へっ、手こずりそうだが相手にとっちゃ不足はない!」
「皆さんのことはどうかお任せ下さい!」
「ふふ、いい機会ですし”一糸”報いて差し上げますわ。」
そしてサラ教官達は執行者達―――貴族連合の協力者たちと対峙した!
「シャ、シャロン……!」
「いくらサラたちでも……」
「相手の方が数が圧倒的に上に加えて、全員実力が……」
それを見たアリサとフィー、セレーネは不安そうな表情をした。
「―――そんじゃ、とっとと始めるとするか!」
「―――来るわよ!」
「うおおおおおおおっ!!」
一方ヴァリマールとオルディーネは空中で剣を交えた後郷から外れた場所に着地した!
「ハハッ……今の一撃を受けきるとはな。少しは”起動者”として成長したってことか?」
「おかげさまでそれなりに修羅場を潜ってきたからな。今度こそ―――お前にこの剣を届かせてみせる!!」
「……クク、まだまだ甘いな。お前の潜ってきた修羅場なんざ俺の足元にも及ばねえ。そいつを改めて思い知らせてやるぜ。」
「クロウッ……!!」
オルディーネとヴァリマールが対峙している中、サラ教官達は戦闘を開始していた。
「教官……トヴァルさん!」
「シャロンも善戦はしているけど……!」
「んー、厳しいかもね。クレアたちより相手の方が数も多いし。」
「ならば、我らも助太刀するぞ!」
「ああ――――総員、戦闘準備だ!」
「―――待ちたまえ。」
アリサ達がサラ教官達の助太刀に向かおうとすると何と騎士剣を持ったルーファスが立ちはだかった!
「君達の相手は私がさせてもらうとしよう。」
「ええっ!?ル、ルーファスさんが!?」
「兄上……!」
「邪魔する気?」
ルーファスの答えを聞いたセレーネは驚き、ユーシスは真剣な表情になり、フィーは厳しい表情でルーファスを睨んだ。
「フフ、あまり大げさに騒いでは郷にも迷惑だろうからね。―――まとめて来たまえ。ユーシス、そなたにも久々に稽古をつけてやろう。」
ルーファスは不敵な笑みを浮かべて全身から闘気をさらけ出した!
「これは……!」
「全然隙がない……!」
「気を抜くな―――兄上は帝国に伝わる”宮廷剣術”の達人だ!全力で行かねば軽くあしらわれるだけだ!」
「心得た……!ゆくぞ、みんな!!」
そしてルーファスとの戦闘を開始したⅦ組だったが、途中までは善戦したが”本気”になったルーファスは凄まじい強さだった為、全員戦闘不能になった。
一方その戦いをユミルから少々離れた見晴らしのいい場所からリウイ達が見守っていた…………
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