英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第49話
~オーロックス峡谷道~
「なあああああああああああああああっ!?」
「敵戦力、”全滅”。術者ト思ワレル女性カラ測定不能ノ霊力ヲ感知。」
「え………………」
「ハアッ!?き、機甲兵達を一瞬で……!な、何者なの、アンタ!?」
突然の出来事にアルバレア公爵は驚いて声を上げ、淡々と報告しているヴァリマールの中にいるリィンは呆け、サラ教官は驚いた後信じられない表情でエイドスを見つめ、アリサ達は大量の冷や汗をかきながら表情を引き攣らせてエイドスに視線を向け
「そう言えば戦闘前に”エイドス”と呼ばれていたが……――――まさか”本物”の”空の女神”なのか!?」
「ハアッ!?エ、エエエエ、”空の女神”ですって!?一体何がどうなっているのよ!?」
驚愕の表情をするユーシスの言葉を聞き、混乱した様子でエイドスを見つめた。
「初めまして。私の名前はエイドス・クリスティン。一身上の都合でエステルさん達と一緒に行動をしている24歳の”ただの新妻”です♪」
「……………………」
「って、こんな時でもその自己紹介で通すんですか!?」
「うふふ、エイドス様にとっては重要な事なので仕方のない事かと♪」
そして笑顔のエイドスが自己紹介をするとサラ教官は石化したかのように固まり、アリサは疲れた表情で指摘し、シャロンは微笑み
「…………おい。一体どういう経緯があって、あの理解不能な女と一緒に行動をしているのだ?」
その様子を見ていたユーシスは頭痛を抑えるかのように頭を片手におきながらアリサ達に視線を向けた。
「フム……私達もどう答えればいいものやら。」
「何と言いますか……あえて言えるとしたら偶然による出会いと言うべきでしょうか……?」
「……オレ達には良き風の導きによって女神と出会えた……ただそれだけだな。」
ラウラは困った表情をし、エマは苦笑し、ガイウスは静かな笑みを浮かべ
(……ああいう空気を読まずに滅茶苦茶な行動を平気でするとか、さすがはエステルの先祖だね。)
(ちょっとヨシュア!?それ、どーいう意味よ!?あたしがいつエイドスみたいに空気を読まずに滅茶苦茶な事をしたのよ!?)
呆れた表情で呟いたヨシュアの小声を聞いたエステルはヨシュアを睨んだ、
「ア、ア、アンタねえ!?いい加減空気ってものを読みなさいよ!?これじゃあヴァリマールを呼んだ意味がないじゃない!?」
一方ヴァリマールの中から顔に無数の青筋を立て、身体を震わせるセリーヌの文句の怒鳴り声が聞こえたが
「ハハ…………―――戦わなくても、ヴァリマールがここに来た意味はある、セリーヌ。このまま頼めるか!?」
「え…………―――!わかった!」
リィンの言葉を聞いた後すぐに察して頷いた様子の声が聞こえた。するとヴァリマールは跳躍し、アリサ達の傍に着地した。
「へっ!?」
「……!?」
「リィンさん……!?」
ヴァリマールの行動にエステル達は驚き
「エマ、手伝いなさい!”精霊の道”を開くわ!」
「ええ、わかったわ……!ヴァレフォルさん、戻ってください!」
セリーヌの声を聞いたエマは魔導杖を取りだして集中し始めた。するとヴァリマールの足元に魔法陣が現れた!
「これは…………転位の術!?」
「いいわ、このままトンズラするわよ!戻りなさい、バルディエル!」
「エステル、僕達も!」
「うん………!」
そして仲間達は次々とヴァリマールに駆け寄った。
「ま、待つのだ、ユーシス!勝手な事は許さん……!戻ってくるがいい!!」
その様子を見たアルバレア公爵はユーシスを制止しようとしたが
「……しばし、おさらばです。兄上にもよろしくお伝えください。願わくば、ユミルのような無法をこれ以上犯しませぬよう……―――アルノー。一刻も早くメンフィル帝国に謝罪と説明しなければ、アルバレア公爵家―――いやエレボニア帝国が滅亡する事は間違いないだろう。アルバレア公爵家―――エレボニア帝国が大切なら、無理だとは思うが父上にせめてメンフィル帝国に”自首”するよう説得してくれ。」
ユーシスは制止の声を無視して恭しく礼をした後執事に視線を向けた。
「ユーシス様…………」
「待て……!待てと言っているのだ!私の命令が聞けぬのか、ユーシス―――――ッ!!」
そしてアルバレア公爵が怒鳴ったその時!
「――――愚か者!子供は親の道具ではありません!これは自らの”欲”の為に多くの人々を傷つけた貴方への”神罰”です!」
まだヴァリマールに近づいていないエイドスが神槍に膨大な霊力を溜め込み
「七耀よ、其の力を解き放て!セプトブレイカー―――――ッ!!」
神槍から極太の虹色のレーザーを放った!
「な――――グアアアアアアアアアアアア――――――――ッ!?」
「だ、旦那様!?しっかりなさってください!?」
エイドスが放った神槍に溜め込んだ”七耀脈”の霊力を解き放つクラフト―――セプトブレイカーをその身に受けたアルバレア公爵が身に纏う豪華な服は焼き焦げ、またアルバレア公爵自身も全身に重傷を負った状態で気絶し、執事は慌てた様子でアルバレア公爵の手当てをし始めた。
「ユーシスさんに免じて手加減はしておきました。我が”神罰”が”その程度”で済んだ事をユーシスさんに感謝しなさい!本来でしたら、塵も残さず消し飛ばしていたのですよ!」
クラフトを放ち終え、神槍を異空間に戻したエイドスはアルバレア公爵を睨んで叫んだ後ヴァリマールの元へと向かい
「ちょっと、エイドス!?今のはやりすぎじゃないの!?そりゃあたしもあの公爵さんをブッ飛ばしたいとは思っていたけど!」
「フフ、大丈夫ですよ。命は奪っていませんから♪それに私は”空の女神”も絶対に許さないあの罪深い”罪人”に皆さんが崇める”空の女神”に代わって”お仕置き”をしただけですから”空の女神”もきっと私の行為を許してくれますよ♪」
「許すも何も――――」
エステルと会話をしながらヴァリマールの”精霊の道”によりヴァリマールや表情を引き攣らせてエイドスを見つめるアリサ達と共にその場から消えた!
こうして―――リィン達は、最後の仲間であるユーシスと合流しバリアハートの地を後にした。しかし、領邦軍きっての将軍達や結社の恐るべき実力者たち、そして新型の”機甲兵”の登場―――それらは、貴族連合の実力が底知れぬ物である事を示していた。再会の喜びと高揚、そしてこの先への不安と焦燥を同時に感じながら……リィン達はヴァリマールに導かれ、ユミルの地へと戻るのだった。
~ユミル渓谷道~
「……無事についたか。すまない、ヴァリマール。せっかく呼んだのに結局戦わなくて。」
「………まあ、そうなったのも誰かさんのせいだけどね。」
「まあまあ、細かい事は気にしなくていいと思いますよ?」
「こ、細かい事ですか……?」
「しかも張本人のアンタがよくもぬけぬけとそんな事が言えるわね……?」
「セ、セリーヌ、落ち着いて。」
リィンの言葉を聞いてジト目になったエステルを宥めるエイドスの答えを聞いたヨシュアは表情を引き攣らせ、顔に無数の青筋を立てて口元をピクピクさせてエイドスを睨むセリーヌをエマは宥めていた。
「問題ナイ―――幾度カノ戦闘ヲ経テ霊力ノ運用効率モ格段ニ上昇シテイル―――少シハ成長シタヨウダナ―――我ガ”起動者”ヨ。」
「え…………」
「霊力ハ残ッテイルガ次ノ戦イに備エ、コノママ休眠状態ニ移行スル。マタ何カアレバ呼ブガイイ―――」
そしてヴァリマールは休眠状態になった。
「あはは……眠ってしまいましたね。」
「今は休ませてあげましょう。いつも無理をさせているしね。」
「そ、それにしても喋る人形兵器って、色々戸惑うわね~。」
「レンの話だと”パテル=マテル”も意思の疎通はできるそうだけど……」
「一体誰が何の為に作ったのでしょうね?」
ヴァリマールを見つめて苦笑しながら呟いたエステルの言葉を聞いたヨシュアとエイドスはそれぞれ考え込んだ。
「………………………」
「ユーシス……」
「………ユーシスさん。」
「……良かったのか?お父さんとあんな別れ方で……」
目を伏せて黙り込んでいるユーシスに気付いたリィンは仲間達と共に心配そうな表情で見つめて尋ねた。
「フッ、自分で決めた事だ。微塵の後悔もない。とにかく今は前に進むのみだろう。」
「そっか……そうよね。」
「……いずれ話せる日は必ずやってくるだろう。」
ユーシスの答えを聞いたアリサとガイウスはそれぞれ頷いた。
「フフ……少し見ない内にみんな一丁前の顔になっちゃって。」
「ふふっ、皆さん頑張られていましたから。」
「ええ、そうみたいね―――ってなにアレ?」
シャロンの言葉に頷いたサラ教官はヴァリマールの傍にある導力バイクに気付いた。
「導力バイク!?」
「ふむ、一緒にここまで転位してきたようだな。」
「近くに置いてあったから精霊の道に巻き込んだみたいね。」
その後リィン達はユミルへと帰還し、男爵邸に向かった。
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