ソードアート・オンライン~隻腕の大剣使い~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第44話私じゃ釣り合う訳ない
2025年、中立域・古森
《スイルベーン》を発ってから約三時間、私達は今空中で狩りをしている。討伐対象は羽の生えた紫色のトカゲ、《イビルグランサー》。その数ーーー30体。
「うおぉぉぉぉぉ!」
「せいっ!」
キリトくんが《ブラックプレート》を横に大きく振り、2体を撃破。ミストが縦に連なる4体を槍で串刺しにする。それにより6体の《イビルグランサー》が消滅する。残り24体。
「はあぁぁっ!」
「これでどうや!」
「キャンディ後ろ!」
ライトが長刀を横一文字に振り払い一気に5体を撃破。キャンディはチャクラムを投げ、それが自分の手元に戻るまでに5体を消滅させる。私はキャンディの後ろに接近する《イビルグランサー》3体を弓矢で倒す。残り11体。そんな中ライリュウくんはーーー
「う~ん・・・なんかスッキリしねぇな~・・・」
両手剣《ドラグヴァンディル》を両手で力強く振り、一気に5体を撃破。でも何故か両手剣の戦闘スタイルがあまりしっくり来ないようで、時折空中で立ち止まる事がある。その隙に後ろから《イビルグランサー》が攻撃を仕掛けて来る事もあるーーーまあ後ろに手の甲で殴り付けたり、回し蹴りで逆に5体を返り討ちにしてるから問題ないみたいだけど。残り1体。その1体をキリトくんが追おうとしたけど、リーファちゃんが風魔法で五つの風の刃を作り出し、それをヒットさせて完全に討伐を完了させる。
「みんなお疲れ~」
「援護サンキュー」
「久しぶりにスッキリ倒せたで!」
「やっぱり大勢のパーティだと効率いいな~」
「なんでだろう、スゲー不完全燃焼感ハンパネェ」
「ライリュウには肩慣らしにもならなかったみたいだな」
「挙げ句に素手で倒してたもんね・・・」
私達の中で満足してないのはライリュウくんだけみたいだねーーーん?羽の色が薄くなってる。
「そろそろ翼が限界だわ」
「一度下に降りようや!」
「そうだね。男子達、それでいいよね?」
『おう!』
リーファちゃんも翼=羽の限界に気づき、キャンディが下に降りようと提案する。私も男子達もそれに賛成して リーファちゃんが指差しているポイントにゆっくりと降りていく。
「う~ん・・・ん?みんな疲れた?」
「いや、まだまだ・・・」
「ちょっと休憩すれば全然いけるで?」
「オレはちょっと腰を休めたい・・・」
「ジジイか。でも気持ちは分かる、俺もだ・・・」
「いつからそんな老いたんだ?オレなんてあと二時間は暴れられるぞ?」
「ライリュウくん、いくらなんでも元気過ぎ・・・」
リーファちゃんの声掛けにキリトくんはまだ余裕があると答え、キャンディは少し休めば動ける様子。ライトとミストは半老人化していて、ライリュウくんは全くスタミナが減っていないから私は流石に呆れてる。でもどっちにしろ、ここから先は休憩を余儀なくされるからねーーー
「みんな暫く休憩ね」
「うん、空の旅は暫くお預けよ」
『よっしゃーっ!』
『なんで?』
「あの山や」
ここから見える大きな山。あれが飛行限界高度より高いから、山越えには《ルグルー回廊》という洞窟を抜けるしかない。シルフ領から《世界樹》のある街、《央都アルン》へ向かう一番の難所。リーファちゃんもここからは始めてらしい。《ルグルー回廊》は長くて、途中に中立の鉱山都市があって休めるから、まずはそこまで行く事になる。
今は現実だと夜7時、一応みんなまだまだ平気だからこのあとも冒険を続ける。そこでーーー
「ここで一回ローテアウトしよっか」
「ロ、ローテ・・・?」
「おっと、また聞き慣れない単語が」
「交代でログアウト休憩する事だ」
「中立地帯だから、アバターだけが残るんだ」
「そんでな、代わりばんこで空っぽのアバターを守るんや」
ローテアウトとは各種族の領地などのセーブポイントがないフィールドなどでログアウトする時、アバターだけがその場に残るから仲間に空っぽのアバターを守ってもらう事。今回は私とキャンディとリーファちゃんが先にログアウトして、ライリュウくん達男子達が守ってくれる。「レディーファーストって言うだろ?」なんて、失礼だけど似合わないと思ってしまった。お言葉に甘えて、20分ほど私達の身体を守ってもらおうーーー
亜利沙side
目を開けば見慣れた天井、嗅ぎ慣れた畳の匂い、今時少し珍しい一階建ての和風建築の自宅の私の部屋。部屋着として着ている和服を羽織り帯を締め、下着を用意して浴室に向かう。
自分で言うのは変だけど、私の家系は普通の家庭より少しいいお家である。それぞれ色々な分野で成功していて、叔父は武道の達人で道場を開いている。そういえば、従姉の木霊ちゃん元気かなぁーーー
「亜利沙」
考え事をしながら長い廊下を歩いている時、後ろから声を掛けられた。生まれた時から聞いていた声の主、私の父である。
「随分長かったな。また入るのか?」
「はい。軽くシャワーを浴びてからまた入りますけど、お父さんは心配しな「お前にお父さんと呼ばれたくはないわっ!!」・・・」
父は私に「お父さん」と呼ばせてくれない。別に嫌われてる訳じゃない、ただーーー
「「パパ」と呼べ「パパ」と!!もしくは「ダディ」でも可っ!!」
「・・・ご心配には及びません、パパ上」
ただ呼び方が気に入らないだけで、普通に愛してくれている。私はもう「パパ」なんて呼ぶ年でもないし、「ダディ」と呼ぶのは流石に日本人としては少しおかしいので「パパ上」と呼ぶ事にしている。「パパ上」って言うのもおかしいけどーーー
「お父さん、亜利沙は友達待たせてるんだから早く行かせてあげましょうよ」
「お母さん」
「「パパ」と呼べって言ってるだろうが!」
お母さんが来てれた。パパ上を相手するのに関しては最強の味方、助け船が現れてくれた。確かに竜くん達を待たせてるから早くシャワー浴びて来なくちゃーーー
「そうそう亜利沙・・・彼氏の神鳴君は元気だった?」ニヤニヤ
「彼氏だと!?何処の馬の骨だそいつは!今度連れて来なさい!ギッタギタにしてくれるわ!亜利沙をたぶらかしおってからに・・・!!」
「かっ!?か、かか!かかカカか彼氏じゃないです!!ベベ別にたぶらかれてなんてないですから!!/////」
お母さんってばなんて事を。パパ上も過保護だしーーー竜くんが私の彼氏なんて、私が釣り合わないよぉ/////ーーー
******
「はぁ~・・・」
いつもより少し高めにしたシャワーの流水を浴びて、私は溜め息をついている。竜くんが彼氏って、私が彼女ってーーー釣り合う訳ないじゃない。彼はSAOを最後まで生き抜き、全てを終わらせた《二人の英雄》と呼ばれる最強の剣士。それに対して私はSAOを途中離脱し、安全なALOで遊んでいた弱い女。私じゃ竜くんに釣り合う訳ない。絶対私より素敵の女性がーーー
「そういえば、彼女いるのかな・・・?」
SAOの男女比は圧倒的に男性が高い、でも女性プレイヤーだってかなり多いはず。《閃光》のアスナさんはキリトくんの奥さんだったらしいし、弾くんや未来ちゃんもSAOに入ってから恋人直前の関係まで進展してたし、竜くんだって彼女さんがいたはず。そういえば《ドラゴンビート》ってリズさんが作ったのよね?もしかしたらリズさんとーーー
『いってらっしゃい、ダーリン!』
『ああ、行ってくるよハニー』
ーーーここまでじゃないと思うけどありえない話じゃない。リズさんって確か私達より一つ年上だし、面倒見がよかっただろうし、同年代と比べたらスタイルもーーー
「スタイル・・・」
自分の胸に手を当てて、少し悲しくなる。私の手が伝える感触は16歳になったのに未だ発育しきっていない胸の感触。少し弾力があるだけで大して大きくない、ほぼまな板に近い私の女性の象徴。思ってみれば未来ちゃん大きかったなーーー
『未来ちゃん凄い・・・/////』
『まったく!ナニを食ってたらこんな爆弾が実るんや~?ホンマけしからんわ~~~!』
『ひゃっ!?ちょっと二人ともどこ揉んで・・・!!/////』
ーーー私もあんな爆弾が欲しい。未来ちゃん助けたら何食べてたのか聞いてみようかな?
そろそろ上がろう。みんな待ってるだろうし、これ以上お風呂場にいたら本気で泣いてしまう。すでに涙が溜まって来てギリギリの状態だからーーー
ページ上へ戻る