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英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)

作者:sorano
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外伝~使徒達への招待状~

―――リベル=アーク崩壊より1ヶ月2週間後――――



~レウィニア神権国・王都プレイア・セリカの屋敷~



―――約束………リカ………で………生き………――――



「…………………」

リベールの異変より数週間後、リベールとは関係のない異世界の国、レウィニア神権国の王都プレイアに居を構えている”神殺し”セリカはどこか懐かしい気分で自室のベッドでまどろみの中にいた。

「セリカ、起きるのじゃ!」

「御主人様~、朝です~。朝ですよ~!」

その時、扉の先からセリカを呼ぶ2人の声が聞こえてきた。

「ああ………」

2人の声に頷いたセリカはベッドから起き上がり、そして扉からは肩まで切り揃えた明るい赤い髪と黄色の瞳を持つメイド姿の少女と、2房に分けたエメラルドの髪と髪と同じくエメラルドの瞳を持つメイド姿の少女が部屋に入って来た。

「レシェンテ~、シュリお姉様がいつもやっているみたいにお願いします~。」

「うむ。……セリカ、窓を開けて風を入れるぞ。」

「ああ。」

エメラルドの髪の少女――セリカの第4使徒、サリア・レイツェンの言葉に頷いた赤髪の少女――かつては”七魔神”の一人であり、紆余曲折があってセリカの第5使徒となったレシェンテがセリカに確認を取って窓を開けた。

「………………」

一方起き上がったセリカは何の夢を見ていたのか、思い出すために物思いに耽っていた。

「御主人様、早く起きるです。お寝坊さんだったら、いけないです。」

その時サリアが飛び掛かって、セリカの背中に抱きついた。

「む、ずるいぞ、サリア!わらわも!」

そしてサリアに続くようにレシェンテはセリカの正面から抱きついた。

「……サリア。以前も言ったが、時と場合を選んでやれ。……レシェンテもだ。」

「はいです。」

「わかったのじゃ。」

セリカの言葉を聞いた2人はセリカから離れた。

「………いつも通り、髪の手入れを頼む。」

「はいです。レシェンテ、お手伝いをお願いしますです。」

「うむ。」

そして2人はセリカの髪の手入れを行った後、掃除を始めた。2人の邪魔にならないようにセリカは部屋を出た。



「セリカ様、おはようございます。今朝の御加減は如何でございますか?」

セリカが広間に出るとエクリアが静かに近づいて来て、丁重に頭を下げて尋ねた。

「いつも通りだ。……だが、お前の方はどうだ?」

「?私もいつも通りでございますが………それが何か?」

セリカに尋ね返されたエクリアは不思議そうな表情をして尋ねた。

(やれやれ………我やセリカが気づいていないと思っているのか、嬢ちゃん。以前来た懐かしい者達………メンフィルの皇女達がここに立ち寄って以降、嬢ちゃんは時折物思いに耽っているのだぞ?)

エクリアの言葉を聞いたハイシェラは念話を送った。

「………私ごときでの事でセリカ様にご心配をかけてしまい、申し訳ありません。」

「いや、いい。……それより良い機会だ。エクリア、お前には聞きたい事がある。」

「何でございましょうか?」

セリカに尋ねられたエクリアは静かな瞳で尋ね返した。

「リフィア達がこの屋敷に訪れて、気になった事がある。…………リフィア達がこの屋敷に訪れた日に、メンフィル王と会ったのか?」

「………………………………」

セリカの問いにエクリアは表情をわずかに暗くして黙り込んだ。

(どうやら、図星のようだの。)

「………そのようだな。………何があった?」

「……セリカ様がご心配するような事はありませんでした。むしろ………私やセリカ様にとって喜ばしい出来事があった事をリウイ様から聞きました。」

(ふむ、セリカや嬢ちゃんにとって喜ばしい出来事とな?一体何だの。)

セリカの問いに答えたエクリアの言葉を聞いたハイシェラは意外そうな表情で尋ねた。

「妹が………イリーナが生まれ変わり、今はリウイ様のご息女の一人に仕えているのです。」

(フム。メンフィル王がセリカや嬢ちゃんを狙う理由は嬢ちゃんの妹――イリーナを生き返らせるため。確かにそのイリーナが生まれ変わったとなるとセリカや嬢ちゃんを狙う理由はなくなるから我等にとっては喜ばしい出来事だが………それならなぜ、暗い表情をする。)

「………それに奴の娘に仕えているというのも気になる。確かイリーナは奴の愛妻だったはずだろう?」

「それは…………」

ハイシェラとセリカの疑問にエクリアが言い淀んだその時

「ご主人様、おはようございます。朝食の準備が整いました。どうぞ、こちらへ。」

いつの間にかシュリがセリカ達に近づいて来て、頭を下げて言った。

「……わかった。行くぞ、エクリア。」

「はい。」

そしてセリカ達は食堂に向かい、それぞれいつもの席に座り、食事を始めた。



「じゃーん!!今朝の献立は………」

食事が始まると青い髪と瞳を持つメイド姿の女性がテーブルに並べられてある料理の説明をしようとしたが

「むぐむぐ、おいしいです!」

「うむ、サリアの言う通り美味じゃな!」

「本当、いつもながら美味しいです、マリーニャさん。」

「こらっ、ちゃんとありがたーい説明を聞いてから、ありがたーく食べなさいっ!」

サリア、レシェンテ、シュリは早速食べ始め、その様子を見た女性―――セリカの第2使徒、マリーニャ・クルップは注意をしたが

「聞いていますよ、マリーニャ。」

エクリアが食事をしながら淡々とした口調で言った。

「でもぉ………」

「能書きより、まず美味いかどうかが大切だ。それは思わないか、マリーニャ?」

エクリアの言葉を聞いて納得していなさそうな表情をしているマリーニャにセリカは言った。

「ああん、御主人様まで~。いつもながら張り合いがないなぁ………」

セリカの答えを聞いたマリーニャは諦めて溜息を吐き、食事を始めた。



「頼もう!」

「ごめんください。」

セリカ達が食事をしてしばらくすると、玄関に取り付けられている呼び板が、小気味よく2回打ち鳴らされ、2人の声が聞こえてきた。

「あれ、またこんな朝っぱらから。相変わらずですね~、あの2人は。」

「……私が出ます。食事中ですがこちらに通しても構いませんか?」

2人の声に聞き覚えのあるマリーニャは苦笑し、エクリアは席を立った。

「ああ。シュリ、茶の用意を頼む。」

「かしこまりました。」

そして少しすると腰までなびかせる蜂蜜色の髪と青い瞳を持つ白い甲冑姿の女性と、同じく白い甲冑姿の大柄の黒髪の男性が食堂に入って来た。

「どうしたレヴィア、また俺に会いにでも来たのか?」

「いや、お前に会いに来たのはついでだ。」

「そうか。それは残念だな。」

「フ、フン!全く、貴様という奴は全然変わらないな。」

セリカの答えを聞いた女性――レウィニア神権国が誇る11騎士団のひとつ、”白地龍騎士団(ルフィド・ヴァシーン)”の団長にして、”レウィニアの白き薔薇”と称えられ、そして10数年前”水の巫女”にある日呼ばれ、”神核”を与えられ、”神格者”になったレウィニアの数ある貴族の中でも名門生まれの女性――レヴィア・ローグライアは顔を赤らめた後、若干怒った様子で答えた。

「………レヴィア将軍。怒る前にまず用件を済ませましょう。」

一方男性は苦笑しながらレヴィアを見て言った。

「そ、そうだな、レフィン。」

男性――レヴィアの幼馴染で”白地龍騎士団(ルフィド・ヴァシーン)”の副団長のレフィン・リンズーベルの言葉にレヴィアは頷いた。



「今回の用件だが………セリカに用ではなく、マリーニャに渡す物があるからこちらに来た。」

「あたしにですか?なんでわざわざレヴィア将軍が………」

レヴィアの言葉を聞いたマリーニャは驚いた後、食事を止めてレヴィアを見た。

「………とにかく、渡すぞ。レフィン。」

「はい。マリーニャさん、どうぞ。」

レヴィアに促されたレフィンはマリーニャに一通の封筒を渡した。

「あたしに手紙……?何でレヴィア将軍達が持っているんですか?」

「……昨日の夜、その封筒が王城に届けられた。それを持ってきただけだ。……とにかく読んでくれ。」

「はあ。」

レヴィアの言葉を聞いたマリーニャは戸惑いながら封筒から手紙を出して読み始めた。その手紙はリフィアからの手紙で数週間後に行うリウイとイリーナの結婚式への招待するから自分の従者であったマリーニャにも是非出席してほしいとの手紙で、封筒の中にはさらに招待状が入っていた。

「……従者って………ったくも~。あの娘は相変わらずね………」

手紙を読み終えたマリーニャは呆れた表情で溜息を吐いた。

「…………………」

一方手紙の内容を聞いていたエクリアは信じられない表情をしていた。

「エクリア母様?どうしたのですか?」

「驚いているように見えるが……今の手紙の内容のどこに驚く事があるというのじゃ?」

エクリアの様子に気付いたサリアとレシェンテは首を傾げて尋ねた。

「………何でもないわ。それでレヴィア様。ただ、手紙を届けに来たという訳ではないのでしょう?」

「ああ。……エディカーヌとも繋がりのあるメンフィルの皇族の……それもかの”闇王”の婚礼の式に我等レウィニアの客将の……”神殺し”の使徒が招かれる………今、城では騒ぎになっている。」

「”闇王”―――リウイ・マーシルンは百数十年前に歴史上、その名と姿を消しましたからね。その”闇王”が再び姿を現し、さらにセリカさんの使徒であるマリーニャさんを招いた。城内ではセリカさんがリウイ皇帝陛下と内密で連絡をとっていたという憶測もされています。」

2人の言葉を聞いて誤魔化したエクリアに尋ねられたレヴィアとレフィンは真剣な表情で答えた。



(フン。下らん事ばかり、考えるだの。)

「…………………で、マリーニャ。どうする。」

2人の話を聞いたハイシェラは鼻をならし、セリカは何も答えず、マリーニャを見て尋ねた。

「え!?……う~ん………もし、御主人様が許可して下さるなら、行こうかなと考えています。リフィアに御主人様とリウイ皇帝陛下は親しくないってレウィニアに伝えるように言っておきたいですし。」

「………そうだな。セリカの疑いを晴らす為にも行っておくべきかもしれんな。」

マリーニャの言葉を聞いたレヴィアは頷いて答えた。

「わかった。マリーニャ、リフィアに俺と奴は親しくない事をレウィニアに伝えるように言っておいてくれ。」

「かしこまりました!あたしがいない間の食事の用意はレシェンテに任せます。………レシェンテ、頼んだわよ。」

「うむ!フッフッフ………セリカにわらわの料理を披露するいい機会じゃな!」

セリカの指示に頷いたマリーニャはレシェンテを見て頼み、頼まれたレシェンテは嬉しそうな表情で頷いた。そして用事を済ませたレヴィア達は王城に戻り、セリカ達は食事を再開しようとしたその時

「あれ?封筒の中にさらに手紙と招待状が……えっと宛名は”エクリア・テシュオス”??ってあれ?」

マリーニャが手紙と招待状を封筒に戻そうとしたその時、綺麗に折りたたまれた手紙と見えないように封筒の中に張り付けられた招待状があり、さらに招待状は2枚に重なっておりマリーニャは宛名を読んだ後、エクリアを見た。

「!!」

マリーニャが宛名を読むとエクリアは目を見開いて驚いた!

「エクリア母様とすっごく似た名前ですね~。」

「似ているというかこの場合だと、私はエクリア様の事を指していると思うんだけど………」

サリアは呑気に答え、シュリは苦笑した後、エクリアに視線を向けた。

「………マリーニャ。差出人はどなたなのかしら?」

一方エクリアは表情には出さなかったが、身体をわずかに震わせながら尋ねた。

「えっと………”イリーナ・マーシルン”って書いてあるけど……あれ??”マーシルン”って、リフィア達―――メンフィル皇家の名前じゃない!」

「………その手紙と招待状………渡してくれないかしら?………”テシュオス”は私の旧い名前だから、私宛よ。」

「へ~………エクリアって、昔は違う名前だったんだ………別にいいわよ。」

そしてマリーニャはエクリアに綺麗に折りたたまれた手紙ともう一枚の招待状を渡した。

「ありがとう。」

一方手紙と招待状を渡されたエクリアは懐の中にしまった。

「……………」

その様子をセリカは黙って見つめていた。その後、食事は終わり、それぞれが屋敷内の仕事に戻り、エクリアは自分の仕事を手早く済ませた後、自室に籠って、懐にしまった手紙を読み始めた。



『―――突然の手紙をお許しください。お久しぶりです、エクリアお姉様。お姉様ももう知っていらっしゃると思いますが、私は”イリーナ・マグダエル”という一人の人間に生まれ変わりました。そして………最近ようやく全てを――”イリーナ・マーシルン”としての”私”の記憶を思い出しました。記憶が蘇った当初、私は純粋に嬉しかったですが、同時に不安もありました。夫が――リウイが生まれ変わった私を受け入れてくれるのかと。けどそのような不安はすぐに解消されました。リウイはそんな事は関係ないといって、かつて以上に私を愛してくれています。そして………皆さんが私とリウイを祝福する為に、私達の結婚式まで挙げてくれるんです。話と言うのは他でもありません。その式にお姉様も是非、出席してほしいのです。もし私達に顔を合わせ辛いというなら、遠くからでもいいので私達の式を見守って下さい。それだけでも私は――貴女の妹、イリーナはとても嬉しいのですから。



メンフィル皇妃、イリーナ・マーシルン』



「イリー……ナ………どう……して………私を……責めないの………?それどころか………私なんかを貴女の晴れ舞台に招待……するなんて事を…………ウッ……ウッ………」

手紙を読み終えたエクリアは信じられない表情をした後、声を押し殺して涙を流していた。そして少しの間泣き続けたエクリアは涙をぬぐって、手紙と招待状を机の中に大切にしまった後、決意の表情になった。そしてその夜。



~夜・セリカの私室~



コンコン



私室で一人、セリカが夜の空を見上げていると扉をノックする音が聞こえた。

「セリカ様、少しよろしいでしょうか?」

「ああ。」

するとエクリアが部屋に入って来た。

「その………実はご相談したい事がありまして………」

「朝の手紙の件か。」

「はい。実は……」

そしてエクリアは自分もリウイ達の結婚式に招待された事、リフィア達がセリカの屋敷を尋ねた頃、リウイと出会い、リウイから何を言われたかを話した。

「……それでエクリア。お前はどうしたい。」

「……できれば、私もマリーニャと共にメンフィルへ向かい……妹が……イリーナが幸せになる瞬間を見たいんです。……ただ、イリーナ達に会うつもりはまだありません。あの娘に会って、謝罪したい気持ちはありますが……………せっかくの結婚式の雰囲気を悪くしたくありませんし………」

「そうか。ならマリーニャと共にメンフィルに行って来ていいぞ。」

「え………よろしいのですか?もし、リウイ様が私の姿に気付いたらセリカ様にもご迷惑が………」

セリカの返事を聞いたエクリアは驚いた後、遠慮気味に言おうとしたが

「その時はその時だ。お前はお前のしたいようにしろ。」

「セリカ様………ありがとうございます。」

セリカの言葉を聞いたエクリアは頭を下げた。

「それでいつ発つ?」

「……数日後には発とうと思います。ここから帝都ミルスまでの道のりはかなりの日数を必要としますので……」

「そうか。ここを発つまでしばらく会えない分、今夜も含めて抱くから覚悟しておけ。」

「はい、セリカ様………」

セリカの言葉を聞いたエクリアは顔を赤らめてどことなく嬉しそうな表情で答えた。そして数日後、エクリアとマリーニャはメンフィルへと旅立つ為にセリカ達に見送られようとしていた。



~数日後~



「……では、そろそろ行くわ。シュリ、私がいない間は貴女に屋敷の事を任せるわ。……サリア、レシェンテ。私達がいない間、シュリを支えてあげてね。」

「あたし達がいない間、しっかり御主人様のお世話をしてね!」

「かしこまりました。」

「はいです~。」

「うむ、任せておくのじゃ!」

エクリアとマリーニャに言われたシュリ達はそれぞれ頷いた。そしてエクリアとマリーニャはセリカを見た。

「……それでは行って参ります、セリカ様。」

「帰って来たら、一杯抱いて下さいね♪ご・主・人・様♪」

「ああ。」

丁重に頭を下げたエクリアと魅惑的な笑みを浮かべたマリーニャの言葉にセリカは頷いた。



そしてエクリアとマリーニャはメンフィルの帝都、ミルスへと旅立った…………






 
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