| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~

作者:かやちゃ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第2章:埋もれし過去の産物
  第46話「前を向いて」

 
前書き
死亡キャラを出したくない的なバカな考えを持っているせいで、死んでしまった際の描写が書けない作者です...。
助からないキャラがいるからこそ、映える作品もあるというのに...!

あ、どの道この小説はご都合主義&作者の趣味全開なので死亡描写がほとんどありません。
(書けないだけなんて言っちゃダメ。)
 

 




       =優輝side=





「.....緋雪....。」

  映像に映る緋雪。
  もう、見る事のできない、“生きて動いている”緋雪の姿。
  ...それを見ているだけで、胸の奥が熱くなる。

【お兄ちゃんがこれを見てるって事は、私はもう、そこにいないか、死んでると思う。】

「っ.....!」

  そしてそれは、自分が死んだ後、僕へと向けたメッセージだった。

【そして、この映像はお兄ちゃんが立ち直れない時のために残したの。...だから、今見ているお兄ちゃんは、私が死んだ事を引きずってるんだよね?】

「....予期していたのか...。」

  映像を撮っていた時、既に緋雪は自分が死ぬ事を予想していた。
  その事に少々驚いた。

【...シャルに教えて貰ったよ。私がかつて...前世の、そのまた前世は、古代ベルカ時代に名を馳せた“狂王”だって言う事、私はその生まれ変わりだという事を。】

「.....。」

【そして、お兄ちゃんは狂王の幼馴染...導王ムート・メークリヒカイトだという事も。】

「シャル、お前....。」

  いつ教えたのか、緋雪はいつそれを知ったのか。
  記憶が曖昧な今の僕には分からない。

【私の前々世...シュネー・グラナートロートは幼馴染のムートを殺したと、歴史では伝えられてるって言う事も教えて貰ったっけ。】

「...歴史ではそうなってる...。」

【けど、それは違う。ムートはシュネーの目の前で殺された。シュネーを...前々世の私を庇って。】

  僕は既に思い出しているけど、この映像の緋雪はそれを知らないはずだ。
  ...でも、まるで自分の事のように...。きっと、魂に記憶が刻まれてるのだろう。

【...シュネーは悲しんだ。そして狂った。彼を殺した者達に復讐するために。】

「.......。」

  その行為は僕にもわかる。
  あの時緋雪と...シュネーと相対した時、それほどまでの狂気と悲しみを感じられたから。

【...覚えてない私にも、その悲しみは分かるよ。】

  他人事だと、あまり実感がないかもしれない。
  だけど、映像の緋雪は、本当にその悲しみを理解していた。

【...そして、これを見ているお兄ちゃんも、悲しみを味わってるんだろうね。】

「っ....。」

【どうして私を助けれなかったか。どうして死なせてしまったのか。悔しくて、悲しくて、心が折れそうで。...きっと、無理してると思う。】

「....。」

  ばれている。予想、されていた。
  僕の今の気持ちが。無理しているという事が。

【悔しいよね?悲しいよね?私も同じ立場だったらそう思うと思う。】

「.....。」

【...でも。】

「っ。」

  儚い、そんな雰囲気の表情が一変し、少し睨むような顔で緋雪は言った。

【甘ったれないで。】

「っ....!?」

【悲しい?苦しい?悔しい?...うん、両親がいなくなった時、私もそうだったからそう思うのは仕方ない。...だけどね。】

  一度そこで一区切りを付け、緋雪は息を吸って言葉を紡ぐ。

【私が死んだから、シュネーが死んだから、それで立ち直れなくなるのは、やめて。】

「っ....。」

【お兄ちゃんも人間だもん。立ち止まる事はあるよね。...でも、いつまでも引きずらないで。前を向いて、ちゃんと歩き続けて。】

  強く、諭すように、緋雪は映像を見ている僕にそう言う。

【...私が死んだら、志導家はお兄ちゃん一人になってしまう。だけど、周りには椿さんや葵さんがいるし、司さん、すずかちゃん、アリサちゃん、士郎さん、恭也さん。他にも、久遠や那美さん、クロノ君とかアースラの人達もいる。】

「......。」

【...決して、一人で背負いこまないで。...もっと、周りを頼って。...もう、お兄ちゃんには、いっぱい頼れる人がいるんだから...。】

  言外に、“私がいなくても大丈夫”だという、緋雪。
  ...自然と、涙腺が緩くなってくる。

【私だって、死ぬのは怖い。死にたくない。...一度死んだのだから、余計そう思える。...だけど、せめて悔恨だけは残したくない。】

「ぁ....。」

【...私は、お兄ちゃんに悲しんでほしくない。泣いてほしくない。...ずっと、支えになりたいって、そう思ってる。だから、前を向いて...立ち止まらないで...!】

  段々と、緋雪の表情が崩れて行く。泣きそうに、なっていく。

【お願い...お兄ちゃん...!心苦しいのは、悲しいのは分かるよ。でも、そうじゃないと...私、安心して、死ねないよ...!】

「.....!」

  それは我が儘で、自分の気持ちを押し付けるだけの詭弁だった。
  ...だけど、僕はその言葉に心が打たれた。

【私は...死なないといけない。シャルが言うには、吸血鬼...生物兵器という概念が、私の魂にまで影響してるから...どの道、長くない。】

「....だから...か....。」

  僕が緋雪を殺すときも、同じことを言っていた。
  本来なら前々世の事だから関係ないはずなのに、あの時は生物兵器として存在していた。
  ...あの時は疑問に思っていなかったけど...なるほど。生物兵器の因子が、魂に刻まれて、それが今になって表に現れた...と言う事か。

【だから、お兄ちゃん。私の分も、生きて。】

「......。」

【私の死を、気にしないでなんて言わない。気にしてもいい、悲しんでもいい。...でも、前を向いて。私の死を、引きずらないで。】

  僕にそう語りかけてくる緋雪の声が、段々と上擦ってくる。
  その目尻には、涙が溜まってきていた。

【きっと、お兄ちゃんは私を助ける方法があったはずだと、そう思ってると思う。...でも、例え方法があったとしても、私は後悔しない。】

「緋雪....。」

  思い出すのは、殺す寸前の緋雪。
  あの時の緋雪の言葉は、本心からの言葉で、確かに死ぬという結果を後悔していなかった。

【...人の気持ちなんて、分かりっこない。だから、この映像を見ているお兄ちゃんがどんな思いをしているのか、正確には分からないよ。】

「...っ。」

【...でも、お兄ちゃんなら、この映像がなくても、いつの間にか立ち直ってると思う。...だって、私のお兄ちゃんだもん。...そう、信じてる。】

  涙を流し、声を上擦らせながらも、緋雪ははっきりと、そう言った。
  その言葉に、一体どれだけの想いが込められたのだろうか。

【だから、ね?私が死んでも、無理しないで。ちょっとずつでいいから、前を向いて歩き続けて。...どうか、幸せに、生きて...!】

「緋..雪....。」

  それは、懇願にも似た、緋雪の想いだった。
  自分が死ぬと分かっても、悲しんでいるであろう()のために、幸せを願う。
  自分の“生きたい”という気持ちを抑えてそう願う緋雪は、どんな気持ちだろうか。
  今は、もうそれを確かめる術はない。

【....さようなら。私の大好きな、お兄ちゃん....。元気でね...。】

「........。」

  涙を流しながら、映像はそこで切れる。

「っ...ぁぁ...!」

  映像が終わり、メッセージを聞こうと思っていた僕の態勢が崩れたからだろうか。
  不意に、涙が溢れてくる。

「ぁああああああああああああああああああああああああああ....!!!!」

  涙を流し、僕は叫んだ。
  悲しみを吐露するかのように。
  緋雪がいない寂しさを、改めて認めたかのように。
  僕は、気持ちを吐き出すように、泣き叫んだ。







   ―――...緋雪、今までありがとう...。もう、僕は大丈夫だ。











       =out side=





「....ん....。」

  志導家の和室にて、椿が目を覚ます。

「(...木刀を振る音?)」

  体を起こした所で、庭からそんな音を聞く。

「...優輝からしら?」

  まだ眠っている葵を放置し、外に出て確認する。
  ...案の定、優輝が木刀を振っていた。

「無理...してる訳ではないのね。」

  昨日は結局、優輝は部屋に戻ってそのまま眠ってしまっていた。
  なので、椿は心配していたのだが...杞憂だったようだ。

「(昨日までの鬼気迫る感じじゃない...。一切の波がない水面のように落ち着いている...。)」

「....ふっ!」

  流れるように、素早く、鋭く木刀が振るわれる。
  それはまるで、呼吸をするかのように自然な動きで、見惚れるような軌跡だった。

「....心構えが違うだけで、ここまで変わるんだな。」

「(...どこか、晴れやか...というか、後ろ暗い雰囲気がなくなったわね...。)」

  今まで悲しみに暮れていた雰囲気と違う事に、椿も気づく。
  そんな椿に、優輝は気づいていたのか、声を掛ける。

「おはよう、椿。」

「...おはよう、優輝。...乗り越えたのね。」

  椿のその言葉に、優輝は微笑む。

「...ああ。緋雪は、僕を信じて逝ったんだ。...その信頼に答えないとな。」

「でも、無理はしないでよね?」

「分かってるさ。...素振りも、今ので終わりだしな。」

  そう言って、優輝は椿に笑いかけてから、家に戻った。
  その笑みに中てられたのか、椿の顔がみるみる赤くなる。

「....もう、不意打ちするんだから...。」

  そう照れ臭そうに言う椿も、笑っていた。
  ...それほどまでに、優輝が立ち直った事が嬉しいのだろう。







「...そっか、立ち直れたんだね...。」

「まぁ...な。本当に心配かけたな。」

  リビングにて、朝食を食べながら優輝は葵と会話していた。

「ううん。あたしとしても、優ちゃんが元気なら嬉しいよ。かやちゃんも嬉しそうだし。」

「っ、あ、葵!いちいちそう言う事言わなくていいの!」

  葵の余計な一言に椿が反応するも、葵の言う通り嬉しそうだった。
  花もいくつか出現しており、嬉しさがよく分かる。

「...なぁ、椿、葵。それとリヒトにシャル。」

「な、なによ。」

〈なんでしょうか?〉

  ふと名前を呼ばれ、何かあるのかと聞き返す椿とリヒト。
  葵とシャルも聞き返してはいないものの、気にしているようだ。

「...これから、何度も失敗したり、躓いたりして立ち止まるかもしれない。...でもさ、少しずつでも、確実に前を向いて進んでいくから...ついてきてくれるか?」

〈...マイスター...。〉

〈マスター....。〉

  優輝は、少し儚い笑みを浮かべてから、皆に対してそう言う。
  緋雪のメッセージを一緒に聞いていたリヒトとシャルは、その意を瞬時に汲み取った。

〈...もちろんです。私は、貴方のためにいるのですから。〉

〈お嬢様が私を貴方に託したのです。途中で見捨てるのはお嬢様への裏切りです。〉

「...リヒト、シャル...。」

  リヒトとシャルの言葉に、優輝は感激する。

「....私達は優輝の式姫よ。支え、ついていくのは当然。...と、言いたい所だけど、今回ばかりはそれを抜きにしてもついて行くわ。...そう、決めたもの。」

「今更だよ、優ちゃん!」

「椿、葵も...。」

  椿と葵もそう言い、優輝は少し泣きそうになる。

「(...あぁ、僕って、こんなに支えてくれる人がいたんだな...。)」

  今まで、一人でも頑張ろうとしていたがための、感動。
  それを優輝は噛み締めていた。

「(...うん。緋雪、僕はこれからも頑張って行ける。....安心して、眠れよ...。)」

  傍にいなくても、きっと見守っているであろう緋雪に、優輝はそう祈った。















       =優輝side=





  緋雪を喪った悲しみを乗り越えて、一段落ついた所で椿に一つ頼んでみる。

「霊力を本格的に扱いたい?」

「ああ。今、魔力は扱えないから、体を完治させる事もできないだろう?霊力なら自然治癒で完治を早めるぐらいはできるかなって。」

  そう。それは霊力の扱い。
  魔力に関してはムートの記憶と経験もあって、完全に習得しているが、さっき言った通り魔力はリンカーコアがボロボロだからほとんど使えない。
  だから、まだ扱いきれてないであろう霊力の使い方を教えて貰おうとした。

「...正直、教える事なんてないわよ?」

「...えっ?」

「だって貴方、記憶が曖昧だけど、緋雪と戦ってた時、魔力と合わせて使ってたじゃない。負担が途轍もないにせよ、合わせて使う程の技量があるんだから、教える事なんてないわよ。」

  椿にそう言われて、ふと思い出した。
  ...そういえば、裏技みたいな強化してたっけ...。

「...まぁ、独特な使い方で、私達が扱う“術”は使えてないから、それは教えるわ。」

「あ、そうか。ありがとう。」

「...優輝の頼みだもの...。」

  ん?今、椿がなんか言ったか?

「霊力そのものの扱い方は分かるわよね?」

「ああ。魔力と同じような感覚だった。」

「...私は魔力を扱わないから分からないのだけど...。」

  そこでひょっこりと葵も会話に参加してきた。

「扱い方は同じだよー。霊力も、あたしの魔力も、リンカーコアの魔力も、皆扱い方は同じ。だからあたしとユニゾンした時はかやちゃんも使えるはずだよ。」

「...いや、今は私じゃなくて優輝の事なんだけど...。」

  葵が元々扱ってた魔力も同じ扱い方なのか...。

「...自然治癒は、霊力を全身に巡らすようにするだけで高まるわ。」

「....そうみたいだな。巡らし方を弄れば、もう少し高めれそうだ。」

「早速使ってるのね...。」

  魔力での身体強化に似ているな。
  しかし、霊力だとなんというか...乾いた喉を水で潤す感じ?なんだよな...。
  ちなみに魔力の身体強化の場合はお風呂とかで体の芯から温める感じだ。

「そっちの魔力と違って、全身を覆う障壁のような物は霊力では常に張っていなかったのよ。術式を込めた物で近い事はできたけど...。」

「...そこで、この技術か...。」

  自然治癒としか言ってはいないが、身体強化も兼ねているらしい。
  これなら、戦闘中で傷ついても戦い続けられるって訳だ。

「....とりあえず、今日はここまででいいよ。治癒力を高めたかった訳だし。」

「明日は学校だものね。分かったわ。ここまでにしましょう。」

「あたし、あんまり来た意味なかった?」

  切り上げて、夕方なのでそろそろ夕食に取り掛かる。
  ...うん、葵が来た意味は...霊力と魔力の共通点を知らせてくれた事ぐらいだな。

「(....悲しみは乗り越えた。もう、無茶する事はないだろう。....だけど、これ以上何かを喪うのが嫌なのは変わりない。)」

  霊力を体に巡らせながら、僕はそう考える。
  ...強くなるのは、変わりない。ただ、無理をするかしないかの違いだけだ。

「(...それぐらいはいいだろう?緋雪。)」

  元々、以前から強くなるつもりではあったんだ。
  強くなるやり方が少々変わっただけで、特に変化はない。







「おはよう。」

「「「.......。」」」

  ...相変わらず、教室の雰囲気は暗めだ。
  緋雪の事は、僕らのクラスでも結構知られてたからな。

「....優輝君...。」

「おはよう、司さん。....もう、大丈夫だ。」

  未だに心配そうな顔で、司さんは僕にそう言ってくる。
  そんな司さんに、僕はしっかりと大丈夫だと伝える。

「っ.....。」

「悲しんで、立ち止まってばかりじゃ、ダメだ。...僕は、緋雪の分も生きる。」

  そう言っても、司さんは暗い表情のままだった。

「....強い、ね。優輝君は....。」

「...強くなんかないさ。...強かったら、緋雪は...。」

  強さが足りないのは、結局変わらない。悲しいのも、変わらない。
  それでも前を向かなきゃと、僕はそう思うようになった。

「..っと、もうすぐSHRだ。席に座っとくよ。」

  そう言って、僕は自分の席に座る。

「....羨ましいな。その心の強さ....。」

  どこか諦めたような、そんな司さんの言葉を聞き逃して...。









「はっ!....せやっ!」

  学校が終わり、僕は家の庭で木刀を振う。
  ...結局、皆暗いままだった。
  昼休みはアリサちゃんとすずかちゃんと一緒だったけど、二人も落ち込んでいた。
  皆、緋雪を喪った事がだいぶショックなんだろうな...。

「(身近な人の死...。...皆は、それを経験してないからかな。)」

  元々、僕みたいなのが異例すぎるんだ。
  普通はこれぐらいショックを受けると思う。

「(でも、乗り越えなければ、何も変わらない...!)はぁっ!」

  ヒュン!と、空気を切り裂く音が響く。
  今行っている素振りは、体に負担は掛けず、尚且つ技術は高めれるようなものだ。
  無理をしないと決めた以上、負担はかけられないからな。

「(僕には“攻撃の姿勢”が足りない。導王流が防御向きなのもあるからだけど...。)」

  だからこそ、自身から“攻撃”する技術を身に付けている。
  導王流は既に極致に至っている。だから、今更それをどうこうしても意味がないからね。

「(幸い、導王流とこの水のように静かな動きは相性がいい。だから...。)はぁっ!」

  木刀を振り、少し離れた所に立てておいた木の棒(創造魔法によるもの)が斬れる。
  水を切るような斬り方で、空気を切り裂き、鎌鼬擬きを発生させたのだ。

「....っと、ここまでにしよう。」

  体の動きに違和感を覚える。
  これ以上は体に負担がかかると察し、僕は素振りをやめて家に入る。

「お疲れ様、優輝。はい、飲み物よ。」

「ありがとう、椿。」

  椿からスポーツドリンクをコップ一杯貰う。
  椿や葵からは、体に負担をかけないという信頼を得たので、こうやって無理しない程度の特訓は普通に認可してくれる。

「...独特な動きだけど、特に何かの流派って訳でもないのよね?」

「まぁね。導王流を参考にしてるけど、なんというか...。」

  さっきの素振りの動きに関して、椿が聞いてくる。
  似た動きはどこかにあるかもしれないけど、あれは一応オリジナルの動きだ。

「...でも、防御主体の導王流を攻撃に変えたから導王流には変わりない...のか?」

「...曖昧ね。」

  所謂防御を攻撃に転換したようなものだ。

「...じゃ、便宜上“導王流・弐ノ型”としておくか。」

「普段の導王流が“壱ノ型”ね。」

  安直だけど、他に特に思い浮かばないし、これでいいだろう。

「さて、夕食にするか。」

「私も手伝うわ。皆でやった方が手っ取り早いでしょ。」

「助かる。」

  椿が葵を呼びに行くので、僕は夕食のメニューを適当に考え、材料を取り出す。

「(...大丈夫、僕はちゃんと前を向いている。)」

  椿と葵が戻ってきて、三人で料理に取り掛かる。
  そして、食材を切りながら、僕はそう思考する。

「(途中、躓くかもしれない、立ち止まるかもしれない。...でも、見守っていてくれ。僕は、きっと前を向き続けるから....。)」

  今はもういない緋雪に向けた想い。
  きっと、ここではないどこかで見守っていてくれてるだろうと、僕は思った。

「....夕陽が綺麗だな。」

「ちょっと、手元危ないわよ。」

「っと、悪い悪い。」

  ふと、窓から綺麗な夕陽が差し込んでいた。





   ―――その色は、とても綺麗な緋色で....。

   ―――僕らを見守っている。...そんな気がした。











 
 

 
後書き
はい。と言う訳で立ち直りました。
上手く文章にできていればいいのですが...。

ちなみに、緋雪のメッセージですが、あれは32話の時に撮りました。
だからあの時泣いた痕があったのです。

...あ、まだ第2章は続きます。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧