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歌集「春雪花」

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 雨上がり

  真木も霞みて

   香るれば

 春の終りの

    近きとぞ思ふ



 雨上がり…日も差し、山波が霞みがかっている。

 淡い水墨画の様な山波…風が吹けば木々の香りを運び、中には夏草の匂いが漂う…。

 もう夏へと入り、春も終わりなのだ…そう思うと寂しさが込み上げる…。

 彼のいない夏…彼のいない…二度目の夏が来るのだ…。



 ありもせぬ

  淡き夢見し

    春の夜の

 風吹きにせば

   散りて消えなむ



 叶うはずのない夢…寂しさのあまり夜の闇に映し出してしまう…。

 春の夜はいとも短く…どれだけ夢を見ても儚く消えゆく幻…。

 それこそ…風が吹いて花が散りゆくように…私の見る淡き夢は、夜風に霧散して…消えてしまった…。

 後に残るのは、ただただ虚しい現実だけ…。


 彼のいない…私の世界だけ…。




 
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