歌集「春雪花」
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想ふほどに
身も虚しきし
春紫苑
手折りて侘し
君ぞ恋しき
彼を想へば想うほど…自分と言うものが虚しくなってゆく…。
私には何もない…。誰かに羨まれる様な財も、才も、力も…。
どうして生まれてしまったのか…寂しさ紛れに春紫苑を摘み取っても、彼を想う心は折ればしない…。
それが一番…辛いのだ…。
花も咲かぬ
身の老いにしも
今もなお
君を想いて
暫し微睡み
何も残せるものもない…私はただ、老いて行くだけの無様な人間…。
それでも…彼を恋しく想い、その全てを欲してしまうとは…。
その想いは叶うことはない…それは有り得ないことであり、有り得てはならないのだ…。
人は…私を嫌うだろう…。それは正に本能なのだ。神の決めた道に背くことなのだから…。
それを知りつつ…それでも彼と共に在れる日を…少しだけ夢見て…微睡む…。
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