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戦国異伝

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最終話 天下の宴その六

「熊は知っていても」
「食ったことがあろうとも」
「まさか掌が」
「ここまで美味いとはな」
 思わなかったというのだ。
「燕の巣の吸いものもよかったが」
「鱶の鰭を煮たものもな」
「これもよい」
「絶品じゃ」
 こう言って食する、そして。
 鶴姫は明の酒を飲みだ、こう言った。
「このお酒も」
「よいですね」
「はい」
 市に答えた。
「本朝のものとはまた違い」
「いい味がします」
「蒲萄のお酒もいいですが」
「こちらもまた」
「ふむ。料理はわしも楽しんでおるが」
 信長は周りを見て言った。
「酒を飲めぬのはな」
「そのことはですね」
「仕方ないにしてもな」
 こう帰蝶に言うのだった。
「残念じゃ」
「ではお茶を」
「楽しむか、そしてじゃな」
「はい、能に狂言等も用意していますので」
「それも楽しんでな」
「そのうえで」
 こう夫に言うのだった。
「後は」
「御主の言ったことをじゃな」
「楽しんで下さいませ」
「わかっておる」
 信長は妻に笑みで応えた。
「ではな」
「今はこちらを」
「楽しもうぞ」
 鯛の揚げたものを食べつつ信長は応えた、そして。
 その鯛を食べてだ、家康が言っていた。
「これはまた」
「美味ですな」
「まことに」
彼の家臣達も言う。
「いや、こうした料理があるとは」
「鯛をそのまま揚げる」
「そうしたものが」
「揚げものはよい」
 こうも言った家康だった。
「そして特にな」
「この鯛の揚げものはですな」
「殿のお気に召されましたな」
「そうじゃ、わしは贅沢は好かぬが」
 それでもというのだ。
「これは好きになった」
「我等もです」
「実に」
 徳川家の家臣達もそれぞれ言う。
「こうまで美味いとは」
「いや、これは素晴らしき料理ですな」
「実に」
「うむ、ではこれからも機会があれば」
 その時はというのだ。
「こうして皆で食おうぞ」
「是非共」
「そうしましょうぞ」
 家康の彼の家臣達も満足していた、そしてだった。 
 宴はさらに進み菓子も出てだ、酒も馳走も全て楽しんでからだった。信長は帰蝶の言葉のまま場の者達に言った。 
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