英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)
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第119話
~アクシスピラー第一層・外~
「ほう……これが”中枢塔”の内部か。」
「外から見た所広いとは思いましたが、ここまでとは……」
「まるで大きな装置の中にいるみたいですね……」
中枢塔に入り、景色を見たオリビエとプリネは真剣な表情で呟き、クローゼは信じられない表情をした。
「それに、この光る液体はいったい何なのかしら……。得体の知れない感じだけど……」
エステルは足場の下に流れている液体に気付き、呟いた。
「……高圧の導力に満ちた液体かもしれない……。直接手に触れるのは止めておいた方が良さそうだ。」
エステルの疑問にヨシュアは静かに答えた。そして、エステル達は時折襲い掛かって来る機械人形達を倒しながら先に進み、上に上がるとエネルギー障壁によって遮られていたので近くの出入り口は開いていたので、そちらに向かった。
~アクシスピラー第二層・外~
「あ……!」
「外に出たね……」
エステル達はしばらく進み、周りを見渡した。
「どうやらかなりの高さまで登ったみたいね……。あれ……?」
周りを見渡したエステルは目の前にある装置に気付いた。
「あれって……何なのかな?」
「ほう……。何かの端末みたいだがずいぶん思わせぶりだねぇ。」
「どうやら調べてみる必要がありそうですね。」
装置を見たエステルは首を傾げ、オリビエは考え込み、クローゼが提案したその時
「いや……それは後回しにしよう。」
「ええ……それより優先すべき事があるでしょうし。」
「え……?」
ヨシュアとプリネの忠告の言葉にエステルが首を傾げた。すると
「フフ。さすがは”漆黒の牙”。気配を断つということは隠れた気配を察するのと同じか。それに”姫君の中の姫君”も気付くとは。フフ、お父上達に鍛えられたお蔭かな?」
なんと、目の前の柱の一本に”執行者”――”怪盗紳士”ブルブランが現れた!
「か、仮面男……!」
「ブルブラン……貴方か。」
「彼が”執行者”の一人ですか……」
ブルブランの登場にエステルは驚き、ヨシュアとプリネは警戒した。
「ようこそヨシュア……それにエステル・ブライト。そしてまさか、我が姫達と好敵手までいるとは……。この怪盗紳士、最高の歓びをもって諸君らを歓迎させていただこう。」
「か、歓迎って……しかも『我が姫”達”』って言う事は……」
ブルブランの言葉にエステルは警戒した後、プリネを見た。
「私……ですか。エステルさん達から私もクローディア姫のように狙われていると聞きましたが………」
「フフ、その通り。ようやく邂逅できたよ、、”姫君の中の姫君”。フフ、噂に違わぬ……いや、噂以上の美しさ、そしてその眼の輝き……素晴らしい!」
「…………………………」
ブルブランの賞賛の言葉にプリネは何も答えず、ブルブランを睨んだ。
「フム、せめて返事ぐらいはしてくれないのかね?」
「……生憎ながら自分を狙う明確な敵と言葉を交わすつもりは一切ありませんので。」
「フッ。これは手厳しい。」
プリネの答えを聞いたブルブランは口元に笑みを浮かべて答えた。
「フッ、なかなか芝居がかった登場をしてくれるじゃないか。」
「……どうやら貴方が最初の障害のようですね。。」
一方オリビエは感心した様子で呟き、クローゼは警戒した表情でブルブランを見た。
「フフ……最初にして最後の障害だ。ここにあるのは、”中枢塔”上層に通じるゲートをロックするための端末でね。これが働いている限り諸君は永遠に”環”に辿り着けないだろう。」
「あ、あんですって~!?」
「……ブルブラン。貴方は、今回の計画のためリベールに来た執行者の中ではもっとも因縁の薄い人物のはずだ。この上、教授に従って僕たちと戦う理由はどこにある?」
ブルブランの説明を聞いたエステルは驚いて声を上げ、ヨシュアはブルブランを睨んで尋ねた。
「フフ……別に私は教授に従っているわけではない。知っての通り、我々、”執行者”は望まぬ命令に従う義務などないのだ。”使徒”はもちろん、たとえ”盟主”の命であってもね。フフ、教授の人形だった君は少々事情が違っていたようだが。」
「………………………………」
「ヨシュア……」
「……………」
ブルブランの言葉にヨシュアは黙り、エステルとプリネは心配そうな表情でヨシュアを見つめた。
「私が拘る理由はただ一つ……。そこに盗む価値のある美しい物があるかどうかだけだ。だからこそ私はここにいる。」
「盗む価値のある美しい物……」
「ふむ、いったいそれは何だい?」
ブルブランの言葉をクローゼは繰り返して呟き、オリビエは尋ねた。
「フフ……それは諸君の『希望』だ。」
「!?」
ブルブランの答えを聞いたエステルは顔色を変えた。
「逆境であればあるこそ『希望』という物は美しく輝く。その煌めきを見るために私はこの場で諸君を待っていた。その結果、夏の花火のように『希望』が消えてしまっても……私はその極みが見てみたいのだ!」
「フン、黙って聞いておれば、『美』の真実をわかっていないようだな。」
ブルブランが高々と言った時、アムドシアスがプリネの傍に現れた!
「アムドシアス……」
(げっ。面倒なのが全員揃っちゃったわ………嫌な予感……)
アムドシアスが自分から出て来た事にプリネは驚き、エステルはジト目になった。
「おお、何という暴言!たかが使い魔ごときがどんな理由で我が美学を貶める!?返答次第では只ではすまさんぞ!」
「誰が”たかが使い魔”だ、愚か者。………我はアムドシアス!ソロモンの一柱にして、美と芸術を愛する魔神ぞ!」
ブルブランの言葉に鼻をならしたアムドシアスは高々と答えた。
「ほう………ここで私と我が好敵手のように新たな”美”を語る者が現れるとは……」
「フフ……ボクはこの状況になるのを楽しみにしていたよ。」
アムドシアスの言葉を聞いたブルブランは少し驚いた様子でアムドシアスに見て、オリビエは口もとに笑みを浮かべていた。
「怪盗紳士といったな………問おう。美とは何ぞや?」
そしてアムドシアスは不敵な笑みを浮かべてブルブランに尋ねた。
「フム、美学問答か。いいだろう、この私の美学が真の”美”であろうことを思い知らせてやろう。」
「フッ、このボクも忘れないでもらいたいね。」
アムドシアスの問いかけにブルブランは不敵な笑みを浮かべ、オリビエは口もとに笑みを浮かべた。そしてまずブルブランが高々と叫んだ!
「美とは気高さ!遥か高みで輝くこと!それ以外にどんな答えがあるというのだ?」
「フッ……何を言うかと思えばそんな陳腐な答えだったとはな。」
「何?では貴様が語る”美”とは何ぞや?」
ブルブランの答えに鼻を鳴らしているアムドシアスをブルブランは睨み、尋ねた。
「フッ……真の美―――それは”古”!!」
「……なにっ!?」
高々と叫んだアムドシアスの答えにブルブランは驚いた!
「”古”があるからこそ、今の歴史、貴様や我達を輝かせる事ができるのだ!それ以外にどんな答えがあるのだ?」
「くっ、小賢しいことを……。だが、私に言わせれば歴史や私達はいつか朽ち果て、忘れ去られる物!歴史や私達がなくても、美は美として成立しうるのだ!そう、高き峰の頂きに咲く花が人の目に触れずとも美しいように!」
アムドシアスの言葉に怯んだブルブランだったが、すぐに立ち直って言い返した!
「やれやれ……2人とも勘違いをしている。」
そして溜息を吐いたオリビエが会話に混ざって来た。
「何?」
「何だと?」
オリビエの言葉に2人は眉を顰めてオリビエを見た。
「以前2人にも言ったように真の美とは愛っ!!愛するが故に人は美を感じる!愛無き美や古など空しい幻に過ぎない!気高き者も、卑しき者も、そしてボク達も愛があればみな、美しいのさっ!」
「くっ、以前と同じ答えを………」
「フム、さすがはこの我が”美”と”芸術”を語る好敵手として認めた者……」
オリビエの答えにブルブランは怯み、アムドシアスは感心した。そして
「むむっ……」
「ぬぬっ……」
「ぐぬぬっ……」
3人は三つ巴の状態で睨み合った!
「ア、アムドシアス……?」
「ア、アハハ……」
その様子を見守っていたプリネは戸惑い、クローゼは苦笑し
「あ~……もう!だからこの3人を揃わせたくなかったのよね……これから戦うってのに、頭が痛くなって来るわ………」
(ハア………そういう事は別の所で好きなだけやってよね………)
「何をやっているんですか………貴方達は………」
エステルと、エステルの身体の中にいるパズモ、そしてヨシュアは呆れて脱力した。
「フッ、アムドシアスと言ったな。その名、覚えておこう。…………だが!ここからは私の美学が真の美である事を教えてやろう!」
そしてブルブランはステッキを振り、人形兵器を3体、エステル達の周りに出現させた。
「さあ、見せてくれたまえ!希望という名の宝石が砕け散るときの煌めきを!」
「ふざけたことを抜かしてるんじゃないわよ!」
「悪いけど、これ以上貴方の好きにはさせない……!」
ブルブランの言葉にエステルは怒鳴り返し、ヨシュアも答え
「ならば逆に証明しましょう……。絆が生み出す希望というものが決して砕け散りはしないということを!」
「そして愛があれば、希望の灯火は永遠に燃え続けるということを!」
「さあ!奏でるぞ!我等の凱旋を!」
「”覇王”と”闇の聖女”より受け継ぎし力……民の為、存分に震わせてもらいます!」
クローゼは決意の表情で答え、オリビエとアムドシアスは高々と言い、プリネはクローゼのように決意の表情で答えた。
そしてエステル達はブルブランとの戦闘を開始した…………!
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