英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第8話
リィン達がユミルに到着する少し前、ユミルは猟兵達の襲撃によって混乱に陥っていた。
~温泉郷ユミル~
「こ、これは……!?」
ルシア夫人と共に屋敷を出て来たアルフィン皇女は崩れた建物や燃やされている建物、悲鳴を上げてどこかへと避難して行く郷の民達を見て悲痛そうな表情をし
「……殿下、どうか屋敷の中に隠れていてください。殿下だけは何があってもお守りいたします。」
「で、でも……!」
ルシア夫人の言葉を聞いて、戸惑いの表情をした。
「―――見つけたぞ。」
するとその時猟兵達がアルフィン皇女達の前に立ちふさがった!
「我らは”北の猟兵”―――クロイツェン州と契約を結んだ者だ。エレボニア帝国皇女、アルフィン・ライゼ・アルノール殿下。アルバレア公の命に従い、貴女を”保護”させていただこう。」
「…………っ…………!」
猟兵達の宣言にアルフィン皇女が息を呑んだその時、ルシア夫人がアルフィン皇女をかばうように前に出た。
「お、おばさま……!?」
「退くがいい、女。」
「どうかお引き取り下さい。シュバルツァー男爵家はエレボニア皇帝家に縁ある家柄……あなた方のような不逞の輩に殿下は指一本触れさせません。」
「フン、威勢のいい女だ。」
「……2度は言わん。目標以外はどれだけ被害を出しても構わぬとの指示だが……?」
ルシア夫人の決意を猟兵達は鼻を鳴らした後銃を構えた。
「……………………」
銃を向けられたルシア夫人は動じる事無く真剣な表情で猟兵達を睨み
「だ、だめですっ!!」
それを見たアルフィン皇女が叫んだその時!
「―――はあああああっ!!」
シュバルツァー男爵が猟兵達の背後から剣で奇襲した!
「ぐっ……貴様は?」
「おじさま……!」
「あなた……」
シュバルツァー男爵の登場に猟兵達は驚き、アルフィン皇女とルシア夫人は明るい表情をした。
「ユミルが領主、テオ・シュバルツァーだ。不躾なる客人の相手は私が務めよう。―――参る!」
そしてシュバルツァー男爵は一人でありながら複数の猟兵達相手に互角以上の戦いを繰り広げた!
「ぐうっ……!」
「チッ……」
「……どうやらかなりの手練れのようだな。」
「これでも男爵家に伝わる騎士剣術を修めている身でね。ユン老師やアルゼイド殿とはさすがに比べるべくもないが。」
「フン、皇族が最前線で戦うと謳われているメンフィルの貴族だけはあるな。」
「――ならばこれならどうだ?」
背後から聞こえて来た猟兵の声にシュバルツァー男爵が驚いたその時、子供を捕えた猟兵が銃口を子供に突きつけていた!
「だ、男爵さまぁ……」
「貴様ら……!恥を知るがいい!」
「依頼は冷静かつ確実に―――それが猟兵というものだ。おとなしく投降しろ。さもなくば……」
「くっ……!」
人質を取られた事によって動けなくなったシュバルツァー男爵の背後で猟兵が銃口を男爵に向けて発砲した!
「機銃の音……!?」
「さ、郷に火が……」
一方その頃郷に到着したリィンは表情を厳しくし、エリスは呆然とした表情をし
「チッ、かなりのランクの団が入り込んできてるのか………!?」
トヴァルは厳しい表情で呟いた。
「姫さ――――!!!」
そして郷に入ったエリスは自分が見た光景―――地面に倒れているルシア夫人、血溜まりの中で倒れているシュバルツァー男爵、そして猟兵に拘束されているアルフィン皇女を見て息を呑んだ。
「と、父様!?いやああああああっ!!」
エリスが悲鳴を上げたその時、リィンは憎しみに飲み込まれ―――
「――――――オオオオオオオッッッ!!!」
自らに秘められている”獣”の”力”を解放した状態になった!
「っ…………!」
「なっ、なんだ……!?」
「に、兄様……!」
リィンの変貌にそれぞれが驚いている中、変貌したリィンは神剣を構え
「シャアアアアアアアッ!!!」
「ギャアアアアアアアアッ!?」
電光石火の速さで詰め寄って神剣を猟兵に向けて振るった!”人”が作った武器とは決して比べ物にならない威力を秘める異世界の女神の力が宿る神剣は人間である猟兵の身体を易々と真っ二つにして絶命させ、猟兵を絶命させたリィンは一瞬で猟兵達の背後に回り
「なっ!?」
「はや――――」
「「ガアアアアアア――――――ッ!!??」」
神剣を一閃して猟兵達の上半身と下半身を分かれさせて絶命させた後アルフィン皇女を拘束している猟兵に視線を向け
「ヒッ!?く、くる――――うがっ!?」
一瞬で詰め寄って斬撃を叩き込んで猟兵を吹っ飛ばし
「ギャアアアアアアアアッ!?だ、助げ……グアアアアアアアアア――――ッ!?」
地面に倒れた猟兵の胸に神剣を勢いよく突き立て、神剣に心臓を貫かれた猟兵は悲鳴を上げて呻いていたが
「く……そ……ご……ん……な………所で…………化物……が…………!ゴホッ!?………………」
やがて悔しそうな表情で口から血を吐いて絶命した!
「リ、リィンさん……!?」
一方リィンの変貌にアルフィン皇女は戸惑いの表情で見つめていた。
「ホロビヨ…………―――――オオオオオオッッッ!!」
「ッ……!不味いわね……!完全に暴走しているわ……!」
そして神剣に膨大な力を纏わせて咆哮するリィンを見たセリーヌは厳しい表情をした。
「―――兄様ッ!!兄様……駄目です!憎悪に任せて剣を振るっては……!それでは……8年前のあの日と同じです!」
その時エリスがリィンにかけよって、リィンの背中を抱きしめて必死の表情で叫び
「ッ………エリ……ス…………グッ………ガアアアアアッ…………!」
エリスの言葉に正気を取り戻しかけたリィンは”力”を抑えようとした。
「まだ息がある……!男爵閣下は生きてるぞ!待ってろ、すぐ応急処置を……!」
「―――彼の怪我の治療は私がするわ。慈悲の光よ、今ここに顕れよ!――――聖なる蘇生の息吹!!」
「こっちも気を失ってるだけみたいよ!」
「ええ、先程当身を受けてしまっただけです……!おばさま、しっかりしてください!」
「父様、母様……!」
「……グッ……オオオオオッ…………!」
両親が生きている事を聞いたリィンは必死で”力”を抑え、ようやく元の姿に戻った。
「がはっ……はあっ、はあっ……!」
「兄様……よかった!大丈夫ですか、兄様……?」
「すまない、エリス……俺はまた……自分を見失って……しかも今度は人を…………」
正気に戻ったリィンは辛そうな表情をして無惨な姿になった猟兵達の死体を見回したが
「いいえ、いいえ……!兄様はちゃんと……こうして戻ってきてくれました。それ以上に大切なことなんてありません……!」
「エリス…………すまない、本当に…………」
エリスの言葉を聞いて安堵の表情をした。
「おばさま……!大丈夫ですか、おばさま!」
「…………ぅ………………殿下…………ご無事でしたか…………」
アルフィン皇女の呼びかけに目覚めたルシア夫人はアルフィン皇女の無事な姿を見て安堵の表情をし
「はい……おばさまたちのおかげです!ぐすっ……本当に…………何とお礼を言っていいか……!」
アルフィン皇女は涙を流しながらルシア夫人を見つめた。
「ふふっ……殿下ったら……天使のようなお顔が台無しですよ……?」
アルフィン皇女の無事の姿を見たルシア夫人は再び意識を失い
「……やれやれ。こっちは平気そうね。」
その様子を見守っていたセリーヌは安堵の表情で呟いた。
「トヴァルさん、アイドス様、父様は……!」
「傷に関してはそこにいる女神が回復させたが…………」
「………血を流し過ぎているわね……けど、安心して。”慈悲の大女神”の名に賭けて、絶対に助けてみせるわ…………!」
トヴァルと共に男爵の状態を答えたアイドスは全身から膨大な魔力や神気を解放して最高位の治癒魔術を再び男爵にかけ始め
「女神よ……どうか御慈悲を…………!」
「父さん…………」
エリスは祈りを奉げ、リィンは辛そうな表情で男爵を見つめた。
「―――やれやれ、先走ってくれたものだわ。」
その時クロチルダの声が聞こえた後、グリアノスが空から現れた!
「ヴィータ、あんた……!」
「結社の第二使徒……また絡んでくるつもりか?」
リィン達がグリアノスを睨んでいると再びグリアノスの頭上にクロチルダの幻影が現れた。
「一応、心配になって様子を見に来たのだけど。しかしアルバレア公も面倒なことをしてくれるわね。よっぽどカイエン公を出し抜きたいんでしょうけどさすがに拙策だったわね。」
「………………」
「他人事みたいに…………」
「フフ、そう怒らないで。お詫びと言ってはなんだけど今、後片付けをしてあげる。」
「え…………」
クロチルダの言葉にエリスが呆けたその時、猟兵達の死体が光に包まれ、その場から消えた!
「あ…………」
「ま、魔術…………?」
「転移魔術の類か…………?」
「たまげたな……これが”魔女”の力ってやつか。」
その様子を見ていたアルフィン皇女は呆け、エリスは戸惑い、リィンとトヴァルは真剣な表情で見守っていた。
「騒がせてしまったお詫びよ。アルバレア公には後でユミルには何もなかったという暗示をかけておくわ。これでしばらく、この郷に目を付けられないでしょう。この程度の埋め合わせじゃ許してくれないでしょうけど……」
「えっと、その……」
「ミスティさん、貴女は……」
「―――油断しちゃダメよ!この女はそんなに甘くないわ!」
申し訳なさそうな表情をしているクロチルダを全員が注目したその時、セリーヌが警告した。
「え…………」
そしてセリーヌの警告にリィンが呆けたその時
「―――目標を捕捉しました。」
「え―――」
漆黒の人形に乗った黒衣の少女が突如現れてなんとエリスとアルフィン皇女を漆黒の人形の腕で捕えた!
「エリスッ、殿下!?」
「しまった……新手か!?」
「くっ…………」
「うふふ……アハハハハッ!ダメねぇ、君達。お姫様たちから目を離すなんて。騎士としては失格よ?」
突然の出来事にリィン達が血相を変えている中、大声を上げて笑っていたクロチルダは呆れた表情でリィン達を見つめた。
「くっ…………」
「は、離してください…………っ!」
「……拘束完了しました。第一、第二目標と認定―――任務達成と判断します。」
「―――――」
拘束されてもがいている二人の様子を無視した少女は淡々と呟いた。
「なんだお前は……一体どういうつもりだ!?そ、それにその人形は…………」
「ミリアムって子のアレと同じ……………だが、あんたが連れて来たってことは結社の”執行者”ってところか?」
「……?質問の意図が不明です。」
「ふふ……この子は結社の一員じゃないわ。とある筋から貴族連合へ送られた、”裏の協力者”といったところね。”帝国解放戦線”に”西風の旅団”―――そして我が”身喰らう蛇”と同じく。」
「っ……!」
「ヤバイ名前を次々と…………」
クロチルダの口から出た集団を聞いたリィンは唇を噛みしめ、トヴァルは厳しい表情をした。
「さしずめ私は意地悪な魔女―――この子は案内人の黒兎といったところかしらね?」
「戯言を………!」
「貴女は…………!」
妖美な笑みを浮かべるクロチルダをセリーヌと男爵の治療を終えたアイドスは厳しい表情で睨んだ。
「クロチルダ様、撤退の指示を。ユミル渓谷道より4つの生命体が近づいています。恐らく彼らの援軍かと。」
「フフ……ええ、行きましょう。」
そしてグリアノスが飛び上がると漆黒の人形兵器も空へと浮かび上がり
「兄様っ、兄様―――!」
「リィンさん―――!」
漆黒の人形兵器に囚われた二人はリィンを見つめて悲鳴を上げ
「エリス、殿下!ふざけるなっ……!!二人を、二人を離せッッ!!」
リィンは空を見上げて声を上げた!
「クスクス……既に”物語”は始まっている。足掻いて、苦しんで、幾多の試練を乗り越えて―――”蒼の騎士”の待つ舞台に見事辿り着いてみせなさい。愉しみにさせてもらうわよ?リィン・シュバルツァー君。」
「うおおおおおおおっ…………!!待っていてくれ、二人とも!絶対に―――絶対に取り戻してみせるからッ!」
リィンが攫われた二人の奪還を決意したその頃、クロイツェン州の上空の貴族連合軍・旗艦―――飛行戦艦”パンタグリュエル”の中である人物が遥か下にある地上を見下ろしていた。
ページ上へ戻る