英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第7話
~ユミル渓谷道~
「あ……!」
「おお、やったか……!」
「兄様……!」
ヴァリマールの勝利にセレーネ達が喜んでいる中、戦闘を終えたヴァリマールは地面に膝をついた。
「どうやら……霊力が尽きたみたいね。」
「ふう――――ギリギリだったな。」
「まあ、得物がない状態で頑張ったほうなんじゃない?まだまだ”蒼の起動者”には遠く及ばないとは思うけど。」
「……ああ、そうだろうな。」
戦闘を無事終えた事に安堵しているリィンだったが、セリーヌの指摘に複雑そうな表情で頷いた。
「前回ト比較シテ戦闘効率5%向上―――起動者ヨ、更ナル練達ヲ期待スル―――」
「はは……わかった。お前のことはまだよく知らないけれど……俺なんかじゃ釣り合わないほど頼りになる存在であるのはわかる。」
「……フム―――?」
リィンの答えの意味がわからなかったヴァリマールは訝しげな様子になった。
「こうして一緒に戦う以上、俺達は”仲間”だ。待っていてくれ、ヴァリマール。お前の力を完全に引き出せるようもっともっと、強くなってみせる。そしていつかきっと――”あいつ”に届いてみせる……!」
「……………………―――期待シヨウ…………」
リィンの決意を聞いたヴァリマールは再び休眠状態になり、リィンとセリーヌはエリス達の前に現れた。
「兄様……!」
「お見事でしたわ……!」
「よっ、お疲れさんだったな。」
「ええ、セレーネとトヴァルさんも。エリス、怪我はないか?」
「わ、私のことよりも兄様の方が……!話は聞いていましたけど……お身体の方は大丈夫なんですか?」
リィンに心配されたエリスは逆に未知なる経験をしたリィンを心配した。
「はは、少し疲れたくらいさ。前回みたいにやられたら厳しかったかもしれないけど。」
「前にも言ったけど”騎神”のダメージは起動者に返ってくるわ。そう言う意味でも、今後はもっと上手く乗りこなすことね。」
「ああ……そうだな。これから先のためにも……とにかく精進あるのみだ。」
セリーヌの指摘に頷いたリィンは決意の表情になり、リィンの表情を見た3人はそれぞれ察した。
「はは、吹っ切れたみたいじゃないか。」
「ええ……」
「兄様……もう、大丈夫みたいですね?」
「ああ、改めて覚悟は決まった。みんなとまた会う為にも……とにかく前に進んでいくだけだ。エリスやエリゼには、また心配をかけてしまうかもしれないけど……」
「ふふ、そんなの馴れっこです。私や姉様も願っています……兄様と皆さんが再会することを。」
「ああ……!ありがとう、エリス。」
「勿論、わたくしも皆さんとまた会う為に協力しますわ、お兄様……!」
「やれやれ……世話が焼けるんだから。」
「はは、まあこれで一件落着ってところか。」
「クスクス―――それはまだ早いんじゃないかしら?」
リィン達がそれぞれ安堵していると空から妖艶な声が聞こえて来た!
「この声は……」
「まさか―――」
声を聞いたリィン達が驚いて空を見上げるとどこからともなく飛んできた蒼い鳥が石碑に止まった。
「グリアノス……!」
「あの蒼い鳥は確か……!」
「帝都とあの映像で見た……!」
「こんにちは、リィン君。帝都のブティック以来―――1ヵ月半ぶりかしら?」
蒼い鳥―――グリアノスにリィン達が驚いているとなんとグリアノスから女性の声が聞こえて来た。
「こいつは……」
「と、鳥が喋って……?」
「も、もしかしてセリーヌさんと同じ……?」
「ヴィータにグリアノス……!よくも抜け抜けと現れたわね。いいえ―――こう呼ぶべきかしら?結社”身喰らう蛇”の第二使徒、”蒼の深淵”ヴィータ・クロチルダ!」
仇を見つけたかのようにセリーヌはグリアノスを厳しい表情で睨みつけた。
「”使徒”……!?」
「”結社”の最高幹部か……!」
セリーヌの言葉にリィンとトヴァルが驚いているとなんとグリアノスから”蛇の使徒”の第二柱―――”蒼の深淵”ヴィータ・クロチルダの幻影が現れた!
「フフ、セリーヌも久しぶり。妹さんと遊撃士さん、後は”メンフィルの黒き薔薇”の妹さんとはお初にお目にかかるわね。”使い魔”越しで失礼するわ。」
「っ……!?」
「なんて魔力…………」
「ミスティ―――いえ、クロチルダさん。どうしてここがわかったんですか?」
「こちらも君と”灰の騎神”の行方を捜していたところでね。内戦が始まって1ヵ月、動向を追っていたんだけど……この地の”魔煌兵”達の稼働を感知してやっと居場所を突き止めたってわけ。」
「チッ……迂闊だったわね。こんなに早くバレるなんて。」
クロチルダの説明を聞いたセリーヌは舌打ちをして厳しい表情をした。
「フフ、クロウとの一騎打ちもこっそり拝見させてもらったわ。初めて乗ったわりにはよく頑張ったみたいだけど……正直、実力差としては大人と子供の戦いだったわね?」
「くっ……クロウとあの蒼い騎神は今、何をしているんですか……?士官学院のみんなはあれからどうなったんだ!?」
「兄様…………」
「………………」
クロチルダを睨んで叫ぶリィンの様子をエリスは心配そうな表情で見つめ、セレーネは真剣な表情でクロチルダを見つめた。
「フフ、クロウは色々と忙しくしているみたいよ?”蒼の騎士”―――貴族連合の”切り札”としてね。」
「っ……!」
「クロウさん……」
クロウの現状を知ったリィンは厳しい表情をし、セレーネは辛そうな表情をした。
「でも、残念ながら君のお仲間のことはケルディックで”貴族連合”の動きを警戒している”姫君の中の姫君”達を除いて知らないわ。あの子も―――エマも身を隠しているみたいだし。そんなに知りたいなら―――」
リィンのもう一つの問いかけに応えて何かを言おうとしたクロチルダだったが、突如聞こえて来た銃声に目を丸くして答えるのを止め、リィン達は銃声が聞こえて来た方向―――ユミルに視線を向けた。
「え……」
「この音……―――銃声か!?」
「あら、早かったわね。アルバレア公の雇った猟兵部隊……皇女殿下の身柄の確保も時間の問題かしら?」
「猟兵がユミルに……!?」
「ひ、姫様が……!」
「そ、そんな……!?」
「くっ、正気か、お前ら!?ユミルはメンフィル領だぞ!?自国領があの”ハーメル”のように貴族連合―――いや、”エレボニア帝国が雇った猟兵達に襲撃された事”に”英雄王”達―――メンフィルが絶対に黙っていないぞ!?まさかお前ら、内戦も終結していないのにメンフィルと戦争をするつもりなのか!?」
クロチルダの話を聞いたリィン達が血相を変えている中、トヴァルはクロチルダを睨みつけた。
「そちらの動きについては私は無関係なのだけど……フフ、でも急ぐといいわね。一生懸命走れば、何とか間に合うかもしれないわよ?」
そしてリィンたちに助言したクロチルダの幻影は消えた後グリアノスはどこかへ飛び去った。
「くっ……言うだけ言って……!」
「おい、グズグズしている暇はなさそうだ!」
「殿下や郷のみんなが危ない……急いでユミルに戻ろう!」
「「は、はいっ……!」」
トヴァルの言葉にリィン達が頷いたその時、咆哮が聞こえると共に地鳴りがした!
「!?この咆哮は……!」
「まさか――――」
咆哮を聞いたリィンとセリーヌが血相を変えるとアイゼンガルド連峰方面へと続く道から再び”魔煌兵”が現れた!
「チッ!?この忙しい時に!」
「わたくしが倒し損ねた”魔煌兵”……!やっぱり生きていましたか……!」
”魔煌兵”を見たトヴァルとセレーネは厳しい表情をしたその時、石碑が光り、かつてリィン達が対峙した謎の魔獣まで現れた!
「そ、そんな……」
「さっきまで霊力は落ち着いていたはずよ……!まさか……あの女の仕業!?」
新手の登場にエリスは表情を青褪めさせ、セリーヌは厳しい表情をした。
「クッ……(ヴァリマールは動かせない……やっぱりあの”力”を使うしかないのか……!?)」
そしてリィンが判断に迷っていたその時
「――――フウ、こういう時にこそ私達を頼りなさいよね~。」
「今度は私達の出番ですわ……!」
「自然の……精霊達の平和を乱す者は何者であろうと”精霊王女”たるこの私が許しません。」
ベルフェゴール、メサイア、リザイラがそれぞれ現れた!
「ベルフェゴール、リザイラ、メサイア……!」
「―――こいつらは私達が片付けておいてあげるから、ご主人様達は故郷に急ぎなさい!」
「急がないと取り返しのつかない事になりますよ……!」
「私達も戦闘が終わり次第、すぐにそちらに向かいます!」
「みんな…………わかった、ここは頼む……!」
ベルフェゴール達の申し出を聞いたリィンは一瞬迷った後ベルフェゴール達を見つめ
「お兄様、”魔煌兵”に止めを刺さなかったわたくしも責任を取って、ベルフェゴールさん達と一緒に戦いますから行ってください……!」
「セレーネ……わかった!ここは頼む……!」
更にセレーネの申し出にリィンは頷いた。
「”超越した存在”であるアンタ達なら心配いらないと思うけど、せいぜい気をつけなさいよ……!」
「皆さん、ここはお願いします……!」
そしてセリーヌとエリスはそれぞれベルフェゴール達に声をかけ
「よし、ユミルに急ぐぞ!」
「はいっ!」
トヴァルの言葉にリィンは力強く頷いてユミルへ急行し
「―――アイドス!”慈悲の大女神”なんだから、”遅かった時”、貴女の力で助けてあげなさいよ!?」
(ええ、任せて………!)
ベルフェゴールに視線を向けられた神剣の中にいるアイドスは静かに頷いた。
そしてベルフェゴール達が”魔煌兵”と魔獣との戦闘をしている中、リィン達はユミルへと急行した!
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