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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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第190話

和やかで印象的だった後夜祭も残りわずかな時間となり、リィンがエリゼとエリスと共に篝火を見ているとある人物が声をかけてきた。



~グラウンド~



「リィンさん、エリゼさん、エリスさん。」

声に気付いたリィン達が振り向くとクレア大尉がリィン達に近づいてきた。

「貴女は確か鉄道憲兵隊の……」

「クレアさん……」

「クレア大尉。どうもお疲れ様です。」

クレア大尉の登場にエリゼとエリスは目を丸くし、リィンは軽く会釈した。



「ふふっ……そちらこそお疲れ様です。私もステージを拝見しましたが本当に愉しませて頂きました。卒業生として鼻が高いです。」

リィン達”Ⅶ組”のステージを思い返したクレア大尉はリィンを見つめて微笑んだ。

「ええっ!?大尉、もしかして士官学院の出身なんですか!?」

一方クレア大尉が自分が通う学院の卒業生であるという事実に驚いたリィンは信じられない表情で尋ねた。



「はい、第216期生ですね。221期生のリィンさんの5年ほど先輩になるでしょうか。」

「し、知りませんでした……でも、どうして今までその事を自分達に……?」

「特別実習で関わるにあたり、余計な情報を与えたくはありませんでしたから。……それに、卒業してそれぞれの進路に進んでしまったら断たれてしまう縁もあります。特に”トールズ士官学院”では。」

リィンの疑問に困った表情で答えて目を閉じて話を続けたクレア大尉は目を見開いて静かな表情でリィンを見つめた。



「……この学院が普通の士官学院とは違うからですね?」

「ええ、軍人になるのは卒業生の約4割……それも正規軍が3割に領邦軍が1割という割合です。卒業後は、お互い対立する立場になってもおかしくないでしょう。メンフィル帝国の留学生であり、メンフィル帝国軍に所属しているリィンさんもその一人になってもおかしくありません。」

「…………………………」

「「兄様…………」」

クレア大尉の話を聞いて目を閉じて黙り込んでいるリィンをエリゼとエリスは心配そうな表情で見つめた。



「すみません、楽しい夜に無粋な事を言いました。ですが、リィンさんや、”聖魔皇女の懐刀”であるエリゼさんも当然知っているでしょう。……激動の時代が迫ってくるかもしれないと。」

「……はい。」

「……そうですね。」

クレア大尉の話にリィンとエリゼは真剣な表情で頷き

「その……噂に聞くクロスベル方面の事ですか。」

「ええ、それ以外にも様々な導火線が見え隠れしています。だからこそ、何があっても動じない、強い意志が必要になるでしょう。……それこそ特別実習でリィンさんたちが見せたような。」

エリスの質問に頷いたクレア大尉は静かな笑みを浮かべてリィンを見つめた。



「あ……」

「ふふ、今後も機会があれば私もできる範囲で協力します。……サラさんに睨まれない程度にですが。」

「はは……ありがとうございます。少し勇気つけられた気分です。」

「ふふ、どういたしまして―――――……失礼します。」

リィンの言葉に微笑んだクレア大尉だったが、通信の音に気付いて通信を始めた。



「はい、こちらリーヴェルト…………………………え。」

(……なんだ……?)

クレア大尉の様子がおかしい事に気付いたリィンは真剣な表情でクレア大尉を見つめた。

「……誤報というわけではありませんね。わかりました、すぐに戻ります。ええ……殿下たちはそのままバルフレイム宮の方に。……すみません。ちょっと失礼します。」

「あ……」

そしてクレア大尉はリィン達から去り、オリヴァルト皇子とアルフィン皇女に報告し

「エリゼ、少しいいかしら。」

「エクリア様?はい。―――兄様、私も一端失礼しますね。」

「あ、ああ……」

更にエクリアに話しかけられたエリゼもリィン達から離れ、リウイ達と共にそれぞれ真剣な表情で何かの相談していた。

「何だ……?一体何が起こっているんだ……?」

「クレア大尉の様子がおかしかったことと関係があるのでしょうか……?」

その様子を見守っていたリィンは真剣な表情で考え込み、エリスは不安そうな表情をした。するとその時オリヴァルト皇子に目配せされて頷いたアルフィン皇女がリィン達に近づいてきた。



「エリス、ごめんなさい。お兄様がすぐに帝都に戻るようにって……車で来ているから貴女も一緒に帰らない?」

「で、でも……」

申し訳なさそうな表情をしているアルフィン皇女の誘いにエリスは戸惑い

「……エリス、後で連絡する。とりあえず皇女殿下と一緒に戻るといい。」

「兄様……わかりました。」

何かとてつもない事が起きた事を察したリィンはエリスを諭した。その時オリヴァルト皇子がクレア大尉と共にリィン達に近づいてきた。



「すまないね、リィン君。状況は、この後すぐに学院側から知らされるだろう。」

「え…………」

「リィンさん。それでは失礼します。」

「エリスは責任をもって女学院に送り届けますね。」

そしてオリヴァルト皇子達はエリスと共に学院から去り始め、オリヴァルト皇子達に続くように次々とエレボニア帝国の有力者達も学院を去り始めた。

「兄様、陛下達も至急メンフィルに戻る事になりましたので私もこれで失礼いたします。」

「あ、ああ。…………もしかして、オリヴァルト皇子達が去って行った理由と関係あるのか?」

エリゼに話しかけられたリィンは頷いた後真剣な表情でエリゼに尋ね

「…………はい。――――失礼します。」

エリゼは少しの間黙り込んだ後静かに頷き、リウイ達と共に学院から去って行き、リウイ達に続くようにエステル達やセリカ達も学院から去って行った。



「リィン……!」

その時Ⅶ組のメンバーがやジョルジュ達がリィンに近づいてきた。

「みんな……一体、何があったんだ?」

「わからぬ……あんな父上は初めてだ。」

「うちも……母様の端末に連絡があったかと思ったら……」

「僕の所も同じだ。帝都からの連絡みたいだが……」

「私もです。ファーミシルス様からの連絡だったようなんですが……」

「……どうやら尋常ではない出来事があったようだな。」

ラウラやアリサ、マキアスとプリネの話を聞いたユーシスは重々しい様子を纏って呟いた。



「父さんなんか血相を変えてあっという間に行っちゃって……どうやらナイトハルト教官からの連絡だったみたいだけど。」

「ナイトハルトっていやあ、確か……」

「……第四機甲師団の任務でガレリア要塞に行ってるらしいね。」

「ふむ、トワやサラ教官の姿もいつの間にか見えないが……」

そしてアンゼリカが考え込んだその時、ヴァンダイク学院長が後ろにハインリッヒ教頭やトワ、サラ教官、レーヴェを控えさせてグラウンドに現れた。



「来場者の皆様、それに学院生諸君。本日はご来場いただき、誠にありがとうございました。この後夜祭をもって第127回”トールズ士官学院祭”を終了します。」

只事では無い事を感じ取っていたその場にいる全員はヴァンダイク学院長の話を静かに聞き、続きを待った。

「それと―――先程帝国政府より正式な通達がありました。本日夕刻、東部国境にある”ガレリア要塞”が壊滅……いや、原因不明の異変により”消滅”してしまったそうです。」

そしてヴァンダイク学院長の口から出た信じられない話に学院生を含めたその場にいる全員はざわつき出した。

「そちらの方面から来られた方々は、どうか落ち着いて行動されるよう―――」

それから数日―――エレボニア帝国はかつてない緊張に晒される事となった。



帝国時報に掲載された、ガレリア要塞が巨大な球状にくり貫かれた報道写真―――それは、大半の帝国人を戦慄させるほどの衝撃だった。



更に―――真偽は確かではないがここ数日で帝国正規軍の機甲師団が幾度となくクロスベル方面へ侵攻し……その都度、呆気なく撃退されたという”噂”なども広まりつつあった。



そして、IBCの資産凍結により、帝国経済も混乱を来し始めていた。このままでは倒産する企業が現れ、帝都など大量の失業者が出かねない……帝都庁は帝国政府と協力して事態の収拾に乗り出すのだった。



そんな中、長年の宿敵であるカルバード共和国が、クロスベルと結託したという噂も広まっており……ガレリア要塞という”防壁”を失った帝国に侵攻してくるのではないかと、まことしやかに囁かれ始めていた。



そして、緊張が高まっている現在の状況のエレボニア帝国に皇族を置いておくのは危険と判断したメンフィル帝国はプリネ皇女の休学を急遽決定し、プリネ皇女の親衛隊長であるツーヤ・ルクセンベール、副隊長のレオン=ハルト、メンフィル帝国の客将のエヴリーヌもプリネ皇女と共に休学、休職届けを出して学院から去って行った…………


 
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