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英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)

作者:sorano
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第116話

~”紅の方舟”グロリアス内~



「こ、これが”グロリアス”の中……」

「……とても船の中とは思えない広さだね……」

グロリアスに入り、ジョゼットとミントは艦内の広さに圧倒された。

「まー、実際ウンザリするほど広いわよ。それに結社の人形兵器があちこちに放たれてるだろうし。……まあ、それもリウイ達が次々と壊していってるだろうから、以前よりは数は減っていると思うわよ。」

2人の言葉を聞いたエステルは疲れた表情で答えた。

「…………………………………………。あんたたち、この艦から脱出したことがあるんだよね?兄貴たちの居場所、見当はつく?」

エステルの言葉を聞いて考え込んだジョゼットはエステルとヨシュアに尋ねた。

「あ、うん……そうね。あたしが最初に閉じ込められていた船室あたりかもしれないけど……」

「いや……あそこは一応、客室だからね。多分、監禁用の牢屋に閉じ込められているはずだ。」

「か、監禁用の牢屋~!?」

ジョゼットの疑問に答えたエステルだったが、ヨシュアが否定して説明し、それを聞いたジョゼットは驚いて声を出した。

「そ、そんな物まであるんだ。前に脱出した時には見かけた覚えはなかったけど……」

「あの時は、脱出防止用の電磁バリアが展開されていたから行ける場所が制限されていたんだ。今はまだ、電磁バリアが展開されていないみたいだから……ドルンさたちを助けるチャンスかもしれない。」

「そ、それで……その牢屋はどこにあるの!?」

エステルとヨシュアが会話している中、ジョゼットが血相を変えて尋ねた。

「……この先の通路に下の階に続く小階段があった。そこを降りれば牢屋のはずだよ。」

「牢屋に降りる小階段ね……。よーし、まずは調べてみましょ!」

少し先を進み、周りを見回したヨシュアの言葉にエステルは頷いて答えたが

「!!………エステル、ジョゼット、ミント………ここからは周りをあまり見ずに何があってもドルンさん達を助ける事だけに集中した方がいい。」

何かを見つけたヨシュアが忠告した。

「へ……?それってどういう………なっ!?」

「ひっ!?」

「あの兵士さん、あ、頭が………!」

ヨシュアの言葉に首を傾げたエステル達がヨシュアに近づいて、ヨシュアが見つめている先を見るとなんとそこには絶望の表情を浮かべた猟兵の生首が血溜まりの中で倒れて自分の身体から離れて転がっており、それを見たエステルは驚き、ジョゼットとミントは表情を青褪めさせて身体を震わせた。

「よ、よく見るとそこらへんにも猟兵達のし、死体が………!」

そしてエステルが首が転がっている猟兵の周辺を見ると、さまざまな攻撃手段によって討ち取られたであろう猟兵達がそれぞれ自分の周辺に大量の血を撒き散らして絶命していた。また、同じように人形兵器達の残骸も転がっていた。

「………リウイ陛下達やメンフィル兵達が討ち取ったんだろう。……3人とも、できるだけ周りを見ないで、前を進む事だけに専念して。敵襲に対する警戒は僕一人でする。」

「う、うん…………」

そしてエステル達は大量の血を撒き散らし、絶命している猟兵達からできるだけ目を背けて先を進み、監禁用の牢屋に到着した。



~監禁室~



「みんな!」

監禁用の牢屋に到着し、エネルギー障壁の先にいるドルン達を見つけたジョゼットは声をあげて、ドルン達の目の前まで来た。

「なっ……!?」

「ジョゼット……それに小僧じゃねえか!」

「お、お嬢!?」

「ど、どうしてここに!?」

ジョゼット達の登場にキール達は驚いた。

「よ、良かった……みんな無事だったんだね……。今、助けてあげるから待っててよ!」

「た、助けてあげるって……。……おい、ヨシュア!いったいどうなってるんだよ!と言うか、どうしてお前らまでこの浮遊都市に来てやがるんだ!?」

「うん、実は……」

訳がわからない様子のキールにヨシュアは今までの経緯を説明した。

「なるほど……そんな事があったのかよ。」

「あのなぁ、ジョゼット……。俺たちはお前を逃がすために身体を張って捕まったんだぞ?それなのにお前ときたら……」

ヨシュアの話を聞いたドルンは頷き、キールは呆れた表情でジョゼットを見て言った。

「か、勝手なこと言わないでよ!独りぼっちになってまでボクは助かりたくなんかない!兄貴たちと一緒に捕まった方がまだマシだったよ!」

「馬鹿、お前は女だろうが!少しは自分の身の安全を心配しろっての!」

「そ、そんな言い方はズルイよ!だいたいキール兄はいつも都合のいい時だけボクのことを女扱いしてさっ!」

(な、なんか……すっごく仲がいいわねぇ。)

(うん、そうだね。)

言い合いをしているジョゼットとキールをエステルとミントは微笑ましく見ていた。

「おいおい、こんな所で兄妹ゲンカを始めるんじゃねえよ。ったく2人とも……いつまで経ってもガキのままだな。」

「ドルン兄……」

「で、でもよ……」

ドルンの言葉を聞いたジョゼットとキールはドルンを見た。



「来ちまったものは仕方ねぇ。一緒に脱出するしかねえだろう。それで小僧……どうやって俺たちをここから出す?」

「……そうだね。どうやら、このエネルギー障壁は完全にロックされているみたいだ。プロテクトを外すのは正直、難しいかもしれない。」

「……なるほどな。」

「そ、そんな……」

ドルンの疑問に答えたヨシュアの話を聞いたキールは真剣な表情で頷き、ジョゼットは悲痛そうな表情をした。

「うーん、力づくでこじ開けられない?爆弾か何かを使っちゃうとか。もしくはカファルー達の協力してもらって、壊すとか。」

「いや、このエネルギー障壁は普通の爆弾じゃ傷一つつかない。かといって強力すぎる攻撃を放ったらキールさんたちが危ないだろうしね。ここは、最新のセキュリティカードをどこかから調達するしかなさそうだ。」

エステルの提案にヨシュアは静かに首を横に振って答えた。

「セキュリティカード?」

「そ、それを使えばこの障壁を消せるの!?」

エステルとジョゼットに尋ねられたヨシュアは障壁の傍にある端末を見た。

「たしか、あの端末にカードを通せば障壁が解除されるはずだ。僕が潜入時に入手したものはもう使えなくなっているはずだから、最新のカードが必要だけどね。」

「な、なるほど……」

「それで、最新のカードってどこに置いてあるものなの?」

ヨシュアの説明を聞いたジョゼットは頷き、エステルは尋ねた。

「前方区画の第二層―――前に君が監禁されていた部屋の周辺に保管されているはずだ。」

「そっか……」

「早速、調べに行った方が良さそうだね。」

ヨシュアの話を聞いたエステルとミントは頷いた。

「キール兄!ドルン兄!それからみんな!そういう事だからもうちょっとだけ待っててね!すぐにカードを見つけて戻ってくるから!」

「はあ……仕方ねえな。」

ジョゼットの決意を見たキールは諦めた様子で溜息を吐き

「小僧……それに遊撃士の嬢ちゃんたち。その跳ねっ返りが無茶をしないように頼んだぜ。」

「ああ、任せて。」

「ま、ちゃんと手綱を握っとくから安心してて。」

ドルンの言葉にヨシュアとエステルは頷いた。

「ふ、ふん……。ボクなんかよりも遥かに無鉄砲なクセに良く言うよね。」

「あ、あんですって~?」

「はいはい、その位で。―――それじゃあ、いったん出口付近にまで戻ろう。前方区画の第2層に行くには反対側にあるエレベーターを使う必要があるからね。」

言い合いを始めようとしたジョゼットとエステルを制したヨシュアは提案した。

「わ、分かった。」

「では、行くとしますか!」

そしてエステル達はセキュリティーカードを手に入れるために目的の場所に向かい、甲板を通って、前方区画の2階に到着した。



「……みんな、構えて!」

何かに気付いたヨシュアは双剣を構えてエステル達に忠告した。ヨシュアの忠告を聞いたエステル達が武器を構えたその時

「う、うわああああああああ~!!そこをどけ――――!!」

恐慌状態に陥り、何かから追われるように何度も背後を確認しながら走っていた猟兵達がエステル達に気付き、攻撃を仕掛けようとしたが

「それっ!!」

「えいっ!!」

「逃がさないわ!!」

「「「ガッ!?…………」」」

背後から追って来たレンには大鎌で袈裟斬りで身体を斜めに真っ二つにされ、エヴリーヌには矢で頭や四肢を破壊され、セオビットには魔剣で縦に身体を真っ二つにされて、絶命した!

「ヒッ!?」

「レ、レンちゃん………」

それを見たジョゼットは悲鳴を上げ、ミントは表情を青褪めさせながらレンを見た。

「あら?」

「キャハッ♪エステル達じゃない。やっほ~。」

「うふふ、どうしたの?空賊さん達を助けるんじゃないのかしら?……っと。その前にこんな邪魔な”物”があったら、エステル達も気になるだろうし、お話しできないわね。……大熱風!!」

エステル達に気付いたセオビットは声を上げ、エヴリーヌは楽しそうな表情をした後、呑気な様子で声をかけ、レンは口元に笑みを浮かべて尋ねた後、魔術を放って猟兵達の死体を焼き尽くした。

「……………………」

「……ドルンさん達を見つけたのはいいけど、エネルギー障壁があってね。それを解除するためにセキュリティーカードを探して、ここまで来たんだ。」

表情を青褪めさせて何も答えないエステルの代わりにヨシュアが静かに答えた。

「セキュリティーカード?もしかしてこれの事かしら?」

ヨシュアの言葉を聞いたレンは懐の中から一枚のカードを出して、ヨシュアに渡した。

「……間違いない。どうして君が持っているんだい?」

レンに渡されたカードを手に取って調べたヨシュアはレンを見て尋ねた。



「うふふ、エヴリーヌお姉様達と一緒にデクノボーさん達の持ち物を調べた時にあったから、何かに使えないかなと思って念の為に取っといたのよ。そのカードならレン達、一杯持っているから一枚ぐらいあげるわ。」

ヨシュアの疑問にレンは笑いながら答えた。

「それはありがたいけど………なんでそんなにカードをたくさん持っているんだい?(まさか………)」

レンの答えを聞いたヨシュアはある事に気付き、真剣な表情で尋ねた。

「うふふ、ただ殺すのもつまんないから、この中で誰が一番多くカードを手に入れたか、今競っているのよ♪殺したデクノボーさんが必ずこのカードを持っているとは限らないから、ちょうどいい遊びなのよ♪」

「あ、遊びって………」

「つ、つまんないって………あ、あんたって娘は…………!」

レンの話を聞いたジョゼットは信じられない表情をし、エステルは身体を震わせて怒りの表情でレンを睨んだ。

「そんなに怒らないでよ、エステル♪レン達は皇族として、武将として力無き民達を守る為に民達を害する”賊”達を排除しているだけなんだから♪エステル達遊撃士も魔獣を倒したりしているでしょ?それと同じ事よ♪それにレンが殺すのはメンフィルに仇名す者や民を害する愚か者だけ。今まで民には一切手を出した事はないわ♪むしろ、エステル達みたいに守ってあげる時もあるのよ?」

「……………っつ!!」

楽しそうな表情のレンの言葉を聞いたエステルは唇を噛んだ後、何かを言いかけようとしたが

「………ちなみに艦内の状況はどうなっているんだい?」

ヨシュアが片手をエステルの目の前に出してエステルを制して尋ねた。

「既に”聖堂”を含めた前方区画はほぼ全て制圧したわ。後方区画の方も4割がた制圧したと先ほど情報が入ったわ。今は残党狩りをやっている所よ。」

「……こんな短時間でグロリアス内をそんなに制圧するなんて………」

「ねえ、レンちゃん……”執行者”には会ったの?」

レンの情報を聞いたヨシュアは信じられない表情をし、ミントは尋ねた。

「ええ。会ったわよ。」

「ん。”聖堂”だっけ?そこなら”執行者”がいると思って、真っ先に行ったら会ったよ。」

「確か”道化師”といったかしら。」

「え……カンパネルラと戦ったの!?」

レンとエヴリーヌ、セオビットの情報を聞いたエステルは驚いて尋ねた。



「戦ったけど、逃げられたのよね~。」

「というかあいつ、弱すぎてつまんなかったよ?」

「でも、いいじゃない。片腕は奪ってやったんだから♪」

エステルの疑問にレンは頬を膨らませて、エヴリーヌはつまらなさそうな表情で、セオビットは凶悪な笑みを浮かべて答えた。

「か、片腕を奪ったって………」

「キャハッ♪転移して逃げる瞬間を狙って、エヴリーヌ達がそれぞれ攻撃をして破壊したんだ♪」

「うふふ、逃げると同時に片腕を破壊された時にあげた悲鳴……最高だったわよ♪エステル達にも聞かせたかったわ♪」

驚いているエステルにエヴリーヌとレンは楽しそうな表情で答えた。

「……さすがのカンパネルラも君達相手には荷が重かったようだね……」

そしてヨシュアは真剣な表情で呟いた。

「うふふ、まあそういう訳だからこの区画の猟兵や機械人形達はほとんど殲滅したから安心していいわよ。まあ、レン達の取りこぼしがいるかもしれないけど、エステル達の実力なら余裕でしょう?」

「う、うん……」

「じゃ、レン達は後方区画の残っている敵の殲滅をしに行くから先に行くわね。そっちもお仕事、頑張ってね♪」

そしてレン達は近くのエレベーターに乗って、どこかに去って行った。



「……ねえ。メンフィルの皇族や武将ってみんなあんな性格ばかりなの?」

レン達が去った後、ジョゼットは唐突に呟いた。

「そんな訳ないでしょ?あの娘達だけよ、あんな無茶苦茶な性格をしているのは。」

ジョゼットの言葉を聞いたエステルはジト目でレン達が去った方向を見ながら答えた。

「……とにかく、カードを手に入れられたんだ。目的は果たした。」

「急いで、牢屋に向かって空賊さん達を助けよう!」



そしてヨシュアとミントの言葉に頷いた2人は急いでドルン達が捕えられている場所に向かった………




 
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