英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)
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第115話
~”始まりの方舟”モルテニア・会議室~
エステル達が会議室に入るとそこにはティアやウィル達を除いたメンフィルの将や皇族達がそれぞれ椅子に座っており、そして奥の椅子にリウイとイリーナが座っていた。
「え、えっと………し、失礼しま~す。」
「あう~……何か緊張するよ~。」
「…………………(”モルテニア”内にいるほとんどのメンフィルの皇族、武将が勢ぞろいしているとは………イーリュンの信徒でもあるティアさんや他国のウィルさん達が参加していないところを見て、今の状況を考えると………恐らく結社に何か大規模な戦いを仕掛けるのだろうな………)」
会議室に入ったエステルは静かな空気に戸惑い、ミントは疲れた表情で溜息を吐き、ヨシュアは真剣な表情で周りの人物たちを見回した後、考え込んでいた。
「……来たか。空いている席に座るがいい。」
「う、うん。」
リウイに言われたエステル達は空いている席に座った。
「……ではこれより”グロリアス制圧作戦”の最終軍議を始める。」
「え!?」
「なっ………!」
「あ、あんですって~!?」
リウイが言ったとんでもない言葉を聞いたミント、ヨシュア、エステルは驚いて声を出した。
「エステル、ヨシュア、ミント。お前達が驚くのも無理はないが、今は軍議中だ。静かにするのだぞ?」
「う、うん………」
リウイとイリーナの近くに座っているリフィアの注意を受けたエステル達は黙り込んだ。
「ファーミシルス。地上部隊はどこまで進軍した?」
「ハッ。先ほど”工業区画”の地下道の出入り口に到達し、陣を敷き始めたと報告が入っております。」
(地下道って………)
(僕たちが通って来た道だね。)
ファーミシルスの報告を聞いたエステルとヨシュアは小声で会話をしていた。
「ルース。橋の作成の進行度はどうだ?」
「ハッ。工作部隊の報告によると、既に8割がた、完成しているそうです。」
「サフィナ。竜騎兵達の準備はどうだ?」
「ハッ。私を含め、我等メンフィル竜騎士団、いつでも出撃可能です!」
「機工軍団もいつでも出撃可能です、リウイ様。」
「そうか………」
ルースやサフィナ、シェラの報告を聞いたリウイは頷いた後、ヨシュアを見て言った。
「ヨシュア・ブライト。お前に聞きたい事がある。」
「……何でしょうか?」
「……以前、お前は”グロリアス”の内部に潜入した事があると聞く。そこで潜入したお前にどうしても確認したい事があってな。」
「…………………」
リウイに見られたヨシュアは真剣な表情で黙って、リウイを見た。
「単刀直入に聞く。”グロリアス”の操作は俺達でも可能か?」
「……管制室――”聖堂”さえ抑えれば、”教授”や”執行者”達の認証も必要ないので導力技術に詳しい方がいれば誰でも可能です。」
「そうか。……それと現在”グロリアス”内部に残っている可能性がある”執行者”に心当りはあるか?」
「……恐らく”道化師”カンパネルラなら残っている可能性はあります。彼は”見届け役”で直接計画には関わっていないでしょうし……」
「うふふ、よりにもよってその人がいる可能性があるんだ♪……レンの”お茶会”を少し変えたお礼をしてあげないとね♪」
ヨシュアの説明を聞いたレンは凶悪な笑みを浮かべていた。
「他の者達がいる可能性は?」
「……恐らくいないと思います。教授達はこの浮遊都市の中枢内部の攻略をしているでしょうし。」
「………そうか。後は………」
そしてリウイはヨシュアからグロリアスの防衛設備や内部の状況等を聞いた。
「情報提供、感謝する。」
ヨシュアの情報を全て聞き終えたリウイは頷いた後、全員の顔を見た後、作戦内容を言った。
「――では、今から”グロリアス”内で直接戦う者達の名をあげる。異論のある者は遠慮なく言ってくれ。」
そしてリウイは自分自身とカーリアン、エヴリーヌ、レン、ルース、サフィナ、シェラの名を上げた。
「……以上の者達が兵達と共に艦内に潜入、結社の猟兵及び機械人形達を殲滅しろ。また、執行者と思わしき者を見かけたらそちらの撃破を最優先にしろ。」
「はいは~い。」
「キャハッ♪」
「「ハッ!」」
「御意。」
リウイの指示にカーリアン達はそれぞれ頷いたが
「パパ、少しいいかしら?」
「なんだ、レン?」
レンは手を上げ、レンに気付いたリウイは尋ねた。
「後でセオビットお姉様を召喚して、レンやエヴリーヌお姉様と一緒に戦わせてくれないかしら?」
「………元々奴はマーリオンと共に召喚して戦わせるつもりだったからな。別に構わん。ただし、ミルヒ街道の時のように暴れすぎるなよ?今回は破壊が目的でなく、制圧が目的だからな。エヴリーヌもいいな?」
「うふふ、それぐらいわかっているわよ♪せっかくの巨大戦艦を手に入れる絶好のチャンスなんだから、見事奪って、結社さん達を驚かせてあげましょ♪」
「キャハッ♪じゃあ、魔術はお預けだね。ま、いいよ♪矢を放って、敵の身体を滅茶苦茶に壊して殺すのも面白いし♪」
リウイの忠告にレンは口元に笑みを浮かべて答えた。また、エヴリーヌは凶悪な笑みを浮かべて頷いた。
「お前もだぞ、シェラ。威力のある魔導砲での攻撃は控えておけ。」
「御意。では本作戦の間は魔導銃及び導力銃での攻撃に切り替えます。」
リウイの指示にシェラは淡々と答えた。
「……それとファーミシルス。不満かもしれないが、今回は”モルテニア”と”アルセイユ”の防衛の指揮及びイリーナの警護にあたってくれ。」
「ハッ!”飛天魔”の誇りにかけて、結社の雑魚共にこの”モルテニア”やイリーナ様、そして”アルセイユ”には指一本触れさせません!」
リウイの指示にファーミシルスは頷いて答えた後、ルースを見て言った。
「……ルース。貴方はこの私が直々に鍛え上げ、副官として認めた者。誇り高きメンフィルの将として……”大将軍”たる私の副官として、この私に変わり、必ずやリウイ様に勝利を捧げなさい!」
「ハッ!」
ファーミシルスの言葉にルースは敬礼をして答えた。
「……では具体的な作戦内容を説明する。まずは見張りの兵達を蹴散らし、工作部隊によって作られた橋を先ほどの攻撃によってあいた穴にかけて、出入り口を含めて3ヵ所から潜入する。」
「甲板からの攻撃はどうする気?下手したら狙い撃ちよ。」
リウイの説明を聞いたカーリアンは尋ねた。
「その点に関しては心配いらん。俺達と同時に竜騎兵達を率いたサフィナが空から強襲して甲板の敵を殲滅させる。」
「はい。”空の守護者”の血を引く娘として、父上達の頭上にいる敵達を滅します!」
リウイの説明を続けるようにサフィナは力強く頷いて答えた。
「リフィア、ペテレーネは”グロリアス”付近で兵達と共に”グロリアス”から脱出して来る猟兵達を一人残らず討ち取れ。」
「お任せを。」
「うむ。敗残兵がいると脱出手段を手に入れる為に、こちらに死に物狂いで攻撃して来るだろうしな。。」
リウイの指示にペテレーネとリフィアは頷いた。
「プリネ、ツーヤはファーミシルスと同じくここや”アルセイユ”を防衛する兵達の指揮だ。」
「わかりました。」
「はい。」
(プリネとツーヤは今回の作戦には直接関わらないんだ……よかったわね、ミント。)
(うん………仕方ないとわかってはいるけど、ツーヤちゃんが人を殺している場面はあまり見たくないもの。)
(………………………)
リウイの説明を聞いていたエステルとミントは安堵の溜息を吐き、ヨシュアはどこか安心した様子でプリネを見た。
「……リウイ陛下。少し質問があるのですが、よろしいでしょうか?」
「ヨシュア?」
「パパ?」
ヨシュアの言葉を聞いたエステルとミントは首を傾げてヨシュアを見た。
「何だ?」
「……僕をここに呼んだ理由は先ほどの件でわかりました。……ではエステルとミントは一体何の為に呼んだのでしょうか?」
「あ………」
リウイに尋ねられ、答えたヨシュアの疑問を聞いたエステルは驚いてミントと共にリウイを見た。
「………まさか”メンフィル貴族”だから、陛下達と共に結社の猟兵達を殺害しろとおっしゃるおつもりですか?」
そしてヨシュアは真剣な表情でリウイを見て尋ねた。
「ヨシュアさんの心配は最もですが、それは大丈夫ですよ。そんな事、この私が許しませんし、リウイもそのつもりはありません。」
「イリーナさん………」
イリーナの答えを聞いたエステルは感謝した様子でイリーナを見つめた。
「……イリーナの言う通り、2人を呼んだのは別件だ。」
「えっと……それって、今回の作戦に関係しているんですか?」
リウイの言葉を聞いたミントは尋ねた。
「ああ。お前達への指示は”グロリアス”内に囚われている”結社”とは関係のない”民”達の救出だ。」
「民達って……ジョゼットのお兄さん達ね。元々そのつもりだけど、なんでまた改まって?……こういっちゃ、なんだけどそっちが”グロリアス”を制圧したらわざわざあたし達が助け出さなくても、そっちが助け出してあげればいいじゃない。」
リウイの言葉を聞いて頷いたエステルはある事が気になり、尋ねた。
「では逆に聞くが……戦闘中の我が軍の兵や結社の者達が放った流れ弾に当たらないと断言できるか?グロリアス内は戦場と化するのだぞ。」
「あ………!」
「確かにその可能性は考えられるね…………」
「捕まっている空賊の人達……戦場の真ん中にいるようなものだものね……」
リウイの説明を聞いたエステルはある事に気付いて驚いた表情をし、ヨシュアは真剣な表情で呟き、ミントは暗い表情で答えた。
「……その指示、喜んで引き受けるわ。それとこの事はクローゼ達にも伝えてもいいのよね?」
そしてエステルは決意の表情でリウイを見て頷いた後、尋ねた。
「……ああ。クローディア姫達には警戒だけしておくように言っておけ。……まあ、結社の者達は蟻一匹も通さない布陣で一人残らず滅するつもりだからそちらまで敗残兵が来ることはないと思うが……万が一という事も考えられるしな。」
「その…………結社の猟兵達はやっぱり殺しちゃうの?」
「エステル………」
リウイの説明を聞いて複雑そうな表情をしているエステルをヨシュアは心配そうな表情で見つめていた。
「うふふ、エステルったら何を甘い事を言っているの?捕えた所でいつかは釈放されるじゃない。それで釈放されたら、またさまざまな国を混乱に陥れるだろうし、民を傷つけたりするだろうから、生かしたって害にしかならないじゃない♪それに敵の拠点を抑えるのは”戦”の定石よ♪」
「レンちゃん……」
「………………」
レンの話を聞いたミントは複雑そうな表情をしていたが、エステルは何も言えず黙り込んだ。
「……作戦開始の時間になれば、伝令兵をそちらに向かわせる。それまでに入念に準備をしておけ。……それでは各自解散、そして迅速にそれぞれの行動に移れ。」
その後エステル達はアルセイユに戻り、”グロリアス制圧作戦”の事をクローゼとユリア、そしてオリビエやミュラーも呼んで説明した。
~アルセイユ・ブリッジ~
「まさかここでメンフィルが攻勢に出るなんて………」
「先ほどから大人数のメンフィル兵達が次々と地下道に向かって行ったのはそういう理由だったのか………」
エステル達の話を聞いたクローゼは信じられない表情をし、ユリアは驚きの表情で呟いた。
「ふ~む。噂通り敵には本当に容赦がないねぇ、メンフィルは……」
「……そうだな。かつて叔父上が率いた兵達も”百日戦役”でほぼ全員討ち取られた上、制圧された領を取り返すためにメンフィルに戦いを仕掛けた部隊はことごとく殲滅されたと聞くしな。」
溜息を吐いて語ったオリビエの言葉にミュラーは重々しく頷いた。
「……まあ、そういう訳だから作戦が終わるまで一応警戒しておいて。大将軍さん達が防衛部隊の兵士さんを指揮しているから大丈夫だとは思うけど……」
「……承知した。」
「こちらでも警戒をしておこう。」
エステルの言葉にユリアとミュラーは真剣な表情で頷いた。
「それでジョゼット……どうする?」
「……は?どうするって、どういう事?」
エステルに尋ねられたその場にいたジョゼットは尋ね返した。
「今から行く所は戦場よ。……多分、敵の死体とか誰かが殺されて行く場面とか見るかもしれないし……」
「フ、フン!そんな心配は無用だよ!ドルン兄達を助ける為なら……例え火の中、水の中だって行くんだから!」
「ジョゼット………」
エステルの言葉を聞き身体を震わせながらも自分を叱咤するような様子で言ったジョゼットをヨシュアは心配そうな表情で見つめた。
「ママ、連れて行ってあげようよ。ミントも同じ状況だったら、きっと同じ事を言うと思う。」
「ミント……わかったわ。」
ミントの言葉を聞いて驚いたエステルは頷き
「決して無理をしないようにね。」
「うん!」
ヨシュアに言われたジョゼットは力強く頷いた。その後伝令のメンフィル兵が来て、作戦開始の時刻が近い事を知らされたエステル達は”レールハイロゥ”を使って、グロリアスが停泊している場所に向かった。
~第7ファクトリア~
エステル達がグロリアスが停泊しているエリアの一つ前のエリアに到着すると、そこには既に大勢のメンフィル兵達が整列していた。
「す、すごっ………!あれだけ広かった場所がメンフィルの兵士さん達でうまっているじゃない!」
「……メンフィルはグロリアス内にいる猟兵達を本当に一人残らず、殲滅するつもりのようだね……」
整列しているメンフィル兵の多さにエステルは驚き、ヨシュアは真剣な表情で呟いた。そしてリウイが整列している兵達の前に歩いて来て、鞘からレイピアを抜き、そして全身にすざましい”覇気”を纏ってレイピアを高々と空に向かって掲げて叫んだ!
「これより”グロリアス制圧作戦”を開始する!結社の猟兵達は一人残らず殲滅しろ!結社に我等メンフィルの真の恐ろしさを見せてやれっ!」
「オォォォオオォォォォォォオオオォォッッッ!!!!」
リウイの叱咤激励に応じるかのように、メンフィル兵達はそれぞれの武器を空へと掲げて辺りを轟かせる勇ましい雄たけびを上げ、そしてリウイ達と共に進軍した!
~第3ファクトリア~
「な、な、な……!」
「い、いかん……!出入り口を封鎖するぞ……!」
突撃してくる大勢のメンフィル兵達に猟兵は驚き、もう一人の猟兵は顔を青褪めさせた状態で言った。
「あ、ああ………!」
そして猟兵達は”グロリアス”の内部に逃げ込もうとしたが
「そこだっ!!」
「敵、補足。」
ルースがクロスボウで矢を放ち、シェラが魔導銃の銃弾を放った!
「「グアッ!?う、うあああああああああああああ―――――――――――っ!?」」
ルースとシェラの攻撃によって足を攻撃され、よろめいた猟兵達は悲鳴をあげながら、地上とグロリアスをかけている橋から遥か下の地上へと落下した!
「工作部隊!橋をかけろ!」
「ハッ!」
そしてリウイの指示によって大勢のメンフィル兵達に運ばれた大きな橋がグロリアスの穴のあいた部分にかけられた!そしてメンフィル兵達はリウイ達と共に3手に別れて次々とグロリアスの内部に潜入した!
「クッ……これ以上侵入を許すな――!」
その様子を甲板から見ていた猟兵達は銃を構えたが
「させません!」
「ギャアッ!?」
サフィナ率いる竜騎士団が猟兵達を討ち取った!
「…………」
そして空を飛ぶ機械兵器も現れたが、竜騎士達によって、次々と破壊された!
「全員、内部の猟兵及び人形兵器達の殲滅を開始しなさい!なお、”執行者”らしき者を見つけたら、最優先で撃破しなさい!」
「ハッ!」
そしてサフィナ達も甲板に降り立った後、飛竜から降りて内部に潜入した!
「うふふ、じゃあレン達も行きましょうか♪」
「キャハッ、そうだね♪」
「ふふっ………どうせなら”執行者”とやらを討ち取るわよ♪」
また、サフィナ達と共に飛竜に乗って降り立ったレンと一緒に乗っていたエヴリーヌ、そして翼をはばたかせて降り立ったセオビットも内部に潜入した!
「ちょ、ちょっと……!これはさすがに予定外過ぎだよ……!………参ったなあ………僕一人ではとても防ぎきれないし教授達を呼んだ所で”剣皇”達がいる限り返り討ちにあうし、こっちの戦力は以前のロレントの戦いで大幅に減らされたから、制圧なんてあっという間に終わっちゃうよ……ハア……”盟主”達になんて報告しよう………その前に脱出用の飛行艇の確保をしないと………」
その様子を聖堂にあるモニターで見ていたカンパネルラは大量の冷や汗をかいて、溜息を吐いた後、その場から消えた。
「………どうやら制圧部隊は全員突入したようだね。エステル、僕達も突入しよう!」
「うん、急いで助け出さないと……!」
そしてエステル達もグロリアスの内部に潜入した。
こうしてメンフィル軍による”グロリアス制圧作戦”とエステル達の”空賊救出作戦”が始まった………!
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