英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)
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第102話
~エリーズ街道~
エステル達が街を出て、少し進むと信じられない光景――機械人形、装甲獣、そして猟兵達の大群が遠くにいたがロレントに向かって進んでいた。
「ちょ、ちょっと………!何よ、あれ………!」
「まさかロレントを滅ぼすつもり!?」
目の前の光景を見たエステルは驚き、シェラザードは信じられない表情で言った。
「今すぐロレントに引き返して、対策を練るぞ!」
「はい!」
ジンの提案にヨシュアは頷いた。そしてエステル達がロレントに引き返そうとしたその時
「エステルさん!?それにみなさんも………!どうしてこちらに!?」
何とロレントがある方向から大勢のメンフィル兵達を引き連れ、驚いた表情のプリネとツーヤがそれぞれ白馬に乗った状態でエステル達に近づいて来た。
「総員、停止!」
「ハッ!」
ツーヤの指示にメンフィル兵達は止まった。
「プリネ!ちょうどよかった!結社の連中が………!」
「わかっています。その為に私達メンフィルがロレントにいつも以上の見回りの兵達を割いていたのですから………先ほど見張りの報告を聞いて、迎撃の為にこうしてこちらに来たんです。」
血相を変えたエステルの言葉にプリネは頷き、ゆっくりと進んでくる敵達の大群を睨んで答えた。
「プリネさん。アイナに聞いたんですが、どうして突然大勢のメンフィル兵達がロレントの見回りを始めたんですか………?」
「……”導力停止現象”が起きて数日後、グリューネ門を守る兵よりアリシア女王直筆で書かれた『”導力停止現象”の間、王都を除いた各都市を守ってほしい』という文を持って来て、それをお父様が受け取って了承し、正規軍の兵達を本国から呼び寄せて出撃させたのです。今頃は王都を除いた各都市にも各部隊が各地に待機しているエステルさんとミントの護衛部隊と合流し、到着していると思います。」
シェラザードの疑問にプリネは静かに答えた。
「そうなんだ………でも、本当にいいの?同盟国とはいえ、他国の事なのに正規軍まで出撃させるなんて………」
プリネの説明を聞いてエステルが尋ねたその時
「うふふ、忘れたの、エステル?メンフィルがリベールに対し、2回”無条件”で助けてあげる条約がある事を。」
同じように兵達を引き連れ、飛竜に乗って空を飛んでいたレンが飛竜と共に地上に降り立ち、片手をあげて兵達を停止させた。
「「レンちゃん!」」
レンの登場にティータとミントは驚いて声を上げた。
「キャハッ♪エヴリーヌもいるよ♪」
「ふふっ………久しぶりね。」
「エヴリーヌ!それにセオビットも………」
さらにレンの両横に転移して来たエヴリーヌと、空より降りて来たセオビットを見たエステルは驚いた。
「勿論、余もいるぞ!」
「リフィア!」
さらにレンの背後から白馬を走らせて近づいて来た登場したリフィアを見たエステルは明るい表情をした。
「久しいな、エステル。……………それにヨシュアも。」
「やっほ~。」
リフィアは口元に笑みを浮かべてエステルを見た後、口元は笑っていたが目は笑っていない表情でヨシュアを睨み、エヴリーヌは呑気に挨拶をした。
「ハハ…………久しぶりだね、リフィア、エヴリーヌ。」
「…………エステルから事の顛末を聞き、今度会ったらどうやって懲らしめてやろうかと考えていたが、今は他にすべきことがあるし、後回しにしてやろう。」
「そだね。それより楽しい事があるしね♪キャハッ♪」
「ハ、ハハ………お手柔らかに頼むよ…………」
リフィアとエヴリーヌの言葉を聞いたヨシュアはプリネの話を思い出し、冷や汗をかいて苦笑した。
「殿下!全軍、いつでも出撃できます!」
そこに一人のメンフィル兵が兵達の中から進み出て、リフィアに敬礼して言った。
「うむ。余の指示があるまで全軍、待機だ。」
「ハッ!」
リフィアに敬礼したメンフィル兵はメンフィル兵達の中に戻って行った。
「………先ほどレンが言ったように、リベールはメンフィルが無条件で兵を出す条約の1回目を使った。そして先ほど斥候部隊から報告があってな。こうしていつでも出撃できるように待機させていた兵達を引き連れて来たのだ!」
「そうだったんだ…………えっと、あたし達に何かできる事はない?」
リフィアの話を聞いたエステルは驚いた後、尋ねた。
「大丈夫だ。それにお前達は王都に向かうべきだ。……今、王都は”結社”の者達に襲撃されている可能性がある。」
「あ、あんですって~!?」
「………どういう事だい?」
リフィアの話を聞いたエステルは驚き、ヨシュアは真剣な表情で尋ねた。
「………それは私が説明しましょう。」
その時、サフィナが飛竜に乗った状態で地上に降りて来た。
「サフィナさん!リフィアの話は本当なの!?」
「ええ。目の前の敵軍を上空から偵察していた部下の報告で、赤い飛行艇が数機、王都方面に向かっていったそうです。」
「なんだと!?」
「そ、そんな………!クローゼさん達が危ないよ!」
サフィナの報告を聞いたアガットは驚き、ミントは青褪めた。
「………エステル。ここはリフィア達に任せて、王都に急ごう。メンフィル兵の真の強さは白兵戦だから今の状況でも問題ないし、この数なら迎撃できるだろう。」
「で、でも…………」
ヨシュアの話を聞いたエステルは心配そうな表情でロレントに視線をやった後、ヨシュアを見た。
「ロレントの事は心配いりませんよ、エステルさん。……ほら、見て下さい。」
「へ………?」
プリネに促されたエステル達がロレントを見ると、街全体に何かの膜が覆った!
「あ、あれって………まさか結界ですか!?プリネさん!」
「ええ。お母様、イリーナ様、ティア様、そして”魔道軍団”の数部隊による結界が今、張られました。これで流れ弾が来ても、結界によって跳ね返されますし、結界がある限り敵の侵入を許しません。」
「後、ウィルが街を防衛するために、今ロレントでリフィアの指示を受けた護衛部隊の数部隊をセラウィとエリザスレインと一緒に指揮しているよ。ウィルは防衛戦が得意だから、大丈夫だよ。」
驚きの表情のシェラザードに尋ねられたプリネは頷いて答え、エヴリーヌが続けた。
「余達がいる限り、ロレントには指一本触れさせん!だから、エステル!お前達は今は王都に迎え!」
「う、うん…………!」
リフィアの力強い言葉にエステルは頷いた。
「さてと………こうなって来ると問題はここからどうやって、王都に向かうか……だな。」
「さすがに戦場となる街道で向かう訳にもいきませんものね。」
真剣な表情で呟いたジンの言葉にリタは頷いた。
「………カファルー!」
リタの言葉を聞いて考え込んでいたエステルはカファルーを召喚した!
「カファルー、あたし達を貴方の背に乗せて、王都まで飛んでくれない?」
「……………………………グオ。」
エステルの頼みを聞いたカファルーは少しの間黙っていたが、やがて頷いた。
「ありがとう、カファルー!」
「へ~。カファルーも前と比べて少し変わったね。エステルを乗せるのはまだわかるけど、ヨシュア達も乗せるなんて。」
カファルーの返事を聞いたエステルはお礼を言い、エヴリーヌは興味深そうな表情でカファルーを見つめた。
「だが、それでも乗れる人数が限られるな………」
一方ジンはカファルーを見て、考え込んでいた。
「だったら、ミントが竜になって、残りの人達を乗せて、ママ達について行くよ!ここからなら王都まですぐだし、短時間の飛行ならできるよ!」
「わかったわ!頼むわよ、ミント!」
ミントの提案にエステルが頷いたその時
「フフ………その前にエステル。よいものが見れるから、それを見てから王都に行くがよい。」
「へ?」
不敵な笑みを浮かべて言ったリフィアの言葉にエステルが首を傾げたその時、リウイ、ファーミシルス、カーリアン率いるメンフィル軍が敵軍が進む道を阻むかのように森から次々と出て来て、立ちふさがった!それを見た敵軍は歩みを止めた。
「リウイ様。全軍、いつでも行けます。」
「わかった。」
ファーミシルスの言葉を聞き、漆黒の馬に乗って敵軍を睨んでいたリウイはメンフィル兵達の方に振り向き、鞘からレイピアを抜き、そして全身にすざましい”覇気”を纏ってレイピアを高々と空に向かって掲げて叫んだ!
「これより我らメンフィル軍はゼムリア大陸の盟友、リベール王国の都市、ロレントの防衛に移る!我等に仇名す愚か者共に一人たりとも街に入らせるな!この国を混乱に陥れようとする結社の者共に慈悲はいらぬ!兵は将を良く補佐し、将は兵を震い立たせよ!何人たりとも遅れることは許さんぞッ!!」
「オォォォオオォォォォォォオオオォォッッッ!!!!」
リウイの叱咤激励に応じるかのように、メンフィル兵達はそれぞれの武器を空へと掲げて辺りを轟かせる勇ましい雄たけびを上げた!
「ククク………ハーハッハッハッ!あれが噂に聞く”覇王”か!面白くなって来たぜ!」
その様子を見ていた敵軍の中にいた燃えるような赤毛を持ち、一際大きいブレードライフルを持った男性は凶悪な笑みを浮かべて言った。
「依頼では”時間稼ぎ”と言われてましたが、そんな気はさらさらないのでしょう?団長。」
「当然に決まっているだろうが、ザックス!”覇王”と殺り合える日を楽しみに待っていたんだぜ!」
猟兵――大陸西部最強の猟兵団――”赤い星座”の副部隊長――ザックスの不敵な笑みを浮かべた問いに、”赤い星座”の団長―――”闘神”バルデル・オルランドは凶悪な笑みを浮かべて答えた。
「それにしても副団長やお嬢、ガレスは連れて来なくてよかったんですかい?それも半分の部隊をむこうに残して。同じ依頼を受けた”西風の旅団”は全部隊を引き連れてきているのに。」
「………ああ。………てめえも感じているだろう、ザックス。”覇王”が出た瞬間、襲ってきた”死”の気配を。」
「!!………なるほど。”赤い星座”が壊滅しないよう、副団長達を残して来たのですね。」
バルデルの言葉を聞いたザックスは驚いた表情をした後、納得した様子で答えた。
「クク………さすがに相手が相手だからな。念の為に残してきて、よかったぜ……俺は最後まで楽しむがザックス。お前はいざとなれば、撤退しろ。」
「!?なぜですか、団長!」
「………いつか馬鹿息子が”闘神”を継いだ時、お前が必要だ。だからだ。」
「!!了解!」
バルデルの言葉を聞いたザックスは頷いた。
「クク………まあ、あくまで”もしも”の話だ。この俺がそう簡単に殺られると思っているのか?」
「まさか。………総員、思う存分に暴れろ!」
「オオオオオオオオオオッ!!」
ザックスの号令に”赤い星座”の猟兵達は凶悪な笑みを浮かべ、それぞれの持っている武器を掲げて叫んだ!
「クク………テメエの首………頂くぜ、”覇王”!!」
そしてバルデルは凶悪な笑みを浮かべて、メンフィル軍への突撃を部下や結社の猟兵達と共に開始した!
今ここに異なる世界の軍がぶつかり、殺し合う”戦争”が始まった…………!
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