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歌集「春雪花」

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 刹那ゆえに

  涙なくして

    嘆きたる

 君ぞ去りにし

     風待の月



 ほんの一瞬…待っていても会える時は少なく、それこそ刹那とも言える数分だった…。

 彼にしてみれば、私に想われることなど忌むべきことだろう…。

 知られてはならない…ゆえに、自らを嘆くしかないのだ…涙を見せずに…。

 彼の去った五月の空…目映い陽射しが降り注ごうと、ただただ虚しいだけ…。



 春を眺め

  徒なるも

   生きゆきて

 虚しく過ごす

    けふを厭いし



 柔らかな春の陽射し…山波は新緑が徐々に深い緑へと変わる…。

 私はそんな春の風景を眺め、無駄と知りつつ生きている…。

 虚しいだけの日々…なぜ生きねばならないのか解らず、ただずるずると生きる…。

 ゆえに…今日さえも厭わしく思い、きっと…明日も明後日もずっとずっと…厭わしく思うのだろう…。

 彼を恋しく想うゆえに…。




 
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