歌集｢春雪花｣

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　逢いにけるも

　　　声も少なに

　　　　去りゆかば

　想いしわれに

　　　　月は見えざり

　やっと会えたと思っても…然して話もなく彼は行ってしまった…｡

　私なぞ彼にしてみれば知り合い程度のもの…わざわざ会いに来る価値などないものなのだ…｡

　立ち去った彼の後には月もなく…想い続ける私の目に映るのは､光のない闇夜だけだった…｡

　思いわび

　　雨にうたれし

　　　花水木

　見上げし空の

　　　　光りはかなむ

　叶わぬ恋…叶わぬと知りつつ恋い焦がれ…哀しみに暮れて見上げれば､花水木が空へと満開の花を咲かせていた…｡

　花の上には春雨がそぼ降り､何だか寂しげに佇む花水木…｡

　空は雨雲に覆われ…雲が切れる兆しはない…｡

　私に彼がいないように…この花水木にも太陽の光りはあたらない…｡

　ただただ…それは虚しいだけの風景であった…｡

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