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英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)

作者:sorano
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第97話

~琥珀の塔・屋上~



「やあ、”漆黒”。久しぶりだね。」

エステル達が屋上に到達すると、そこには白衣を着て、眼鏡をかけた男性が口元に笑みを浮かべてヨシュアを見た。

「あ、貴方は…………!」

男性を見たヨシュアは信じられない表情で驚いた。

「初めて見る顔だが………こいつも”執行者”か?ヨシュア。」

見覚えのない男性を見たアガットはヨシュアに尋ねた。

「………………いえ。あの人は”執行者”ではなく、”蛇の使徒”です。」

「あ、あんですって~!?」

「なっ……………!」

「ふ、ふえええ~!?」

「………エステルとヨシュアさんの話ですとその呼び名は”結社”の最高幹部………でしたね。」

ヨシュアの説明を聞いたエステルとアガット、ティータは驚き、リタは冷静な様子で呟いて、男性を睨んだ。



「F・ノバルティスだ。身喰らう(ウロボロス)の第六柱にして、”十三工房”を任されている。フフ、どうか気軽に”博士”とでも呼んでくれたまえ。」

そして男性――”蛇の使徒”の第六柱――F・ノバルティス博士は口元に笑みを浮かべて自己紹介をした。

「まさか教授以外にも”蛇の使徒”がリベールに来ていたなんて………」

エステルは警戒した表情でノバルティスを睨んだ。

「”十三工房”………?それって一体………」

一方ティータはある言葉が気になり、不安そうな表情で呟いた。

「”十三工房”――飛行艇を初めとし、さまざまな兵器を開発している”結社”の兵器開発部門だよ。」

「……ってことはテメエが”ゴスペル”を生み出した張本人って訳だな………!」

ヨシュアの説明を聞いたアガットはノバルティスを睨んだ。

「フフ。まあ、ある程度は当りだと言っておこう。”ゴスペル”は私が完全に生み出した訳じゃないからね。」

アガットの言葉を聞いたノバルティスは不敵に笑って答えた。

「あ、あのあの。どんな技術でオーブメント内で生成される導力を吸い取る機能を付けたんですか………?」

そこにティータが不安そうな表情で尋ねた。

「ほう?その幼い身でありながら、”ゴスペル”の真の機能に気付いているとはね。名前はなんという。」

ティータに尋ねられたノバルティスは驚いた後、感心した様子でティータの名前を尋ねた。

「ふえ!?ティ、ティータ・ラッセルですけど………」

尋ねられたティータは驚いた後、名乗った。

「ラッセル………フフ……ハハ…………ハハハハハハハ!!これは驚いた!報告には聞いていたが、まさかアルバートの孫が”漆黒”達と共にいたとはね!」

ティータの名前を聞いたノバルティスは呆けた後、急に笑い出して、嬉しそうな表情でティータを見た。

「ふ、ふえっ!?お、おじいちゃんを知っているんですか…………?」

ノバルティスの言葉を聞いたティータは驚いた後、恐る恐る尋ねた。



「勿論知っているとも!かつては同じ師の下で学んでいた学友だからね!なるほど、なるほど!彼の孫ならば”ゴスペル”の機能を正しく理解していてもおかしくないね!」

「え、えっと…………さっき言った事はおじいちゃんから教えてもらった事で、わたしは”導力場の歪み”を発生させる事までしか気づいていません。」

「いやいや。その幼い身でありながら、そこまで気づく者はそうそういない。自分の頭脳を誇りたまえ。………それと、どうだい?その頭脳を結社で使ってみんかね!?私が直々に教えてあげてもいいよ!」

遠慮気味に言っているティータにノバルティスは口元に笑みを浮かべて言った後、興味深そうな表情でティータを見て、なんと勧誘を始めた!

「ふ、ふえっ!?」

「ふざけんじゃねえ!」

ノバルティスの勧誘に驚いているティータを庇うかのようにアガットはティータの前に出て、ノバルティスを睨んだ。

「心外な。今の言葉は本気だよ?それで、どうかな?”結社”には今まで以上の技術があるよ?」

アガットに睨まれたノバルティスは心外そうな表情で答えた後、ニヤリと笑ってティータを見て尋ねた。

「け、結構です!!」

ノバルティスに問いかけられたティータは大声で断った!

「ガーン!!」

ティータの答えを聞いたノバルティスはショックを受けた!



「全く………たわけた事を言う爺さんね…………」

一方エステルは呆れた様子でノバルティスを睨んだ。

「それで博士………僕達の邪魔をする気ですか?………研究者が本分の貴方の戦闘力で僕達に勝てると思っているのですか?」

ヨシュアは双剣を構えて、ノバルティスを睨んで尋ねた。

「まさか。何故、私がそんな事をしなくてはならない?………君達は私の”実験”に付き合ってもらうだけだよ。」

「へ………」

ノバルティスの言葉を聞いてエステルが驚いたその時、今までとは比べ物にならないくらいの巨大な人形兵器が空より飛んできて、ノバルティスの傍に着地した!

「な、な…………!」

「大きいですね…………」

巨大な人形兵器を見たエステルとリタは呆け

「ふ、ふえええええええええ~っ!?」

「なんつう馬鹿でかい機械人形だ………!」

ティータとアガットは驚いた表情で人形兵器を見上げ

「ゴルディアス級戦略人形、”パテル=マテル”……!制御が困難で、開発計画は凍結されたはずだったなのに……!」

一方ヨシュアは信じられない表情で人形兵器――パテル=マテルを見上げた。

「フフ、”漆黒”が”結社”から離れてからは凍結されていたはずだったが、やはり諦めきれなくてね。完全に力を出し切る事は無理だが、自動で戦えるようにはしてある。………忙しい所を”白面”に頼まれて、しょうがなく来たんだ。………少しは私の”実験”の役にたってくれたまえよ?」

驚いているエステル達にノバルティスは説明をした後、凶悪な笑みを浮かべて言った。



「くっ…………なら!………クーちゃん!カファルー!」

余りにも巨大な敵に表情を歪めたエステルは敵の大きさに対抗する為に大型の身体を持つクーとカファルーを召喚した!

「クー―――――ッ!!」

「グオオオオオオオ――――ッ!!」

召喚されたクーとカファルーはそれぞれ辺りを響き渡らせるほどの雄たけびを上げた!

「クーちゃん!カファルー!協力してあの機械人形をブッ壊して!」

「クー!」

「グオッ!」

エステルの指示にクーとカファルーはそれぞれ力強く頷いた。

「みんな!今回は今までと違って、クーちゃんとカファルーを援護する形で戦うわよ!」

「了解!」

「おう!」

「う、うん!」

「ボースで戦った古代竜以来の巨大な相手ですね…………”魔槍のリタ”、参ります………!」

そしてエステル達はゴルディアス級戦略人形”パテル=マテル”との戦闘を開始した!

「…………」

敵は巨大な手でカファルーを攻撃した!

「グオッ!」

しかしカファルーは上空に飛んで、回避し

「クー!」

クーはクラフト――アクアブレスを放った!

「えいっ!」

「そこだぁ!ドラグナーエッジ!!」

「玄武の地走り!!」

さらにティータは導力砲で砲弾を、アガット、リタはクラフトを放ち

「暗黒の炎よ、我が仇名す者を燃やし尽くせ!闇界獄滅炎!!」

「ホワイトヘゲナ!!」

そしてエステルとヨシュアは魔術やアーツを放ち

「グオッ!!」

カファルーは炎の球を吐いて攻撃した!

「…………」

クー達の攻撃を受けた敵だったが、余りにも頑丈な装甲を持っている為、全く傷つかず、背中に付いているエンジンを起動させてエステル達に突進した!

「クー!」

「グオッ!」

しかしクーが身体で受け止め、それを見たカファルーは敵に突進し

「クーッ!!」

尻尾を振るって攻撃し

「グオオオッ!!」

カファルーはクラフト――爆炎スマッシュを放った!



「………………」

2匹の巨体の攻撃に若干怯んだパテル=マテルだったが、気にせず、巨大な手でクーを殴った!

「クー!?」

顔を殴られたクーはダメージを受けると共に怯んだ!

「…………」

さらにパテル=マテルは片方の肩に付いている砲口からエネルギーを放つクラフト――バスターキャノンをカファルーに放った!

「グオオオオオッ!!」

対するカファルーはクラフト―――獄熱ブレスを放って、相殺した!

「癒しの闇よ!闇の息吹!!」

そこにエステルが放った治癒魔術がクーにかかって、クーが受けた傷を回復し

「が、頑張って!!」

ティータはクラフト――バイタルカノンを放って、エステルの魔術で治癒しきれず、まだ残っていた傷を回復し

「大地の盾よ!アースガード!!」

ヨシュアはクーにアーツを放って、クーに絶対防壁を張り

「オーブメント駆動!クロックアップ改!!」

リタもクーにアーツを放って、クーの身体能力を上げ

「はあぁ!フォルテ!!」

アガットはカファルーにアーツを放って、カファルーの攻撃力を上げた!



「……………」

そして敵は今度は標的をエステル達に変えて、エステル達に巨大な手を振るって、攻撃した!

「っと!」

「!」

「わわっ!」

「ッ!」

敵の攻撃に気付いたエステル、ヨシュア、ティータ、アガットは散開して回避し

「フフ………」

リタは霊体であるため、敵の攻撃がすり抜け、そして座っている槍を上空に飛ばし

「魂をも凍らせてあげる………氷垢螺の絶対凍結!!」

さらに魔術を放った!しかしリタの魔術もあまり効いている様子はなく、敵はリタにクラフト――バスターキャノンを放った!

(さすがにあれを喰らうのは不味いですね………)

敵の攻撃に気付いたリタは槍を横に飛ばして回避した。

「はぁぁぁぁぁぁ!」

そしてエステルは敵の足と足の間に来てクラフト――真・旋雷輪を放ち

「プラズマウェイブ!!」

「えいっ!!」

ヨシュアはアーツで、ティータは導力砲の砲弾をそれぞれ敵の足めがけて放ち

「エステル、下がれ!」

「!!」

アガットは両手剣を構えて、エステルに警告した。アガットの警告を聞いたエステルは急いでその場を離れ

「ふおらあぁぁぁ!フレイムスマッシュ!!」

エステルが離れると同時にアガットはクラフトを放って、敵の両足を攻撃し

「クー!!」

クーはクラフト――極突刺の氷牙を放って、全てを噛み砕く牙によって敵の手の指らしき部分を噛み砕き

「グオオオ――――ッ!!」

そしてたたみ掛けるようにカファルーはクラフト――獄蓮の翼を放った!カファルーのすざましい威力を込めた炎の衝撃波によって、敵は怯み

「大海に呑まれなさい!デネカの大海!!」

リタが放った魔術によって塔の端まで圧し飛ばされた!



「らあぁぁぁぁぁぁぁぁ………!くらえっ!ファイナルブレイク!!」

圧し飛ばされた敵にアガットはすかさずSクラフトを放ち

「行くわよ、ヨシュア!」

「わかった、エステル!そこだっ!!」

エステルの呼びかけに頷いたヨシュアは神速の速さで敵を駆け抜けると共に攻撃し

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ………!」

続けてエステルは敵に近づいて、棒で強烈な連打を放って一端後退し、いつの間にか3人に分身したヨシュアと一緒に武器を構え、同時に攻撃――コンビクラフトを放った!

「「奥義!太極無双撃!!」」

2人が放ったコンビクラフトの威力はすざましかったが、それでも敵の装甲を少しだけへっこませるぐらいだった。

「が、がんばらなくっちゃ!ふんふふんふふ~ん♪」

ティータは荷物から何かの機械を出した後、楽しそうに専門者であるかのような指捌きで機械に付いているさまざまなボタンを打った後

「よぉし!!」

ティータは機械を操作するのをやめて、機械を片手に持って立ち上がり、頷いた!すると空より雲を切り裂いた高火力のエネルギーが敵を襲った!ラッセル博士が作った人工天体を地上で操作し、人口天体から脅威の光線放つティータのSクラフト――サテライトビームを受けた敵の周りにはすざましい衝撃波が噴き上がった!衝撃波が消えるとそこには、若干傷は付いているが、それでもまだまだ戦えそうな敵がいた!



「チッ………なんて硬さだ!」

「パワーも装甲も”トロイメライ”以上だなんて……」

「とてつもなく硬い装甲ですね………私の魔槍でも中々傷つかないなんて……(邪竜やアイドスとの戦いの時に使った、とっておきの魔槍を出そうかしら?)」 

まだまだ余力を残しているパテル=マテルを見たアガットは舌打ちをし、ティータは信じられない表情で、リタは心の中で考え事をしながら驚きの表情をしていた。

「グルルルルル……………」

「…………………」

一方カファルーは唸りながら敵を警戒し、クーも静かに敵を睨んで警戒していた。

「ふむふむ!フフ、これは良い”実験”になりそうだね!”パテル=マテル”!出力アップで敵対象を―――」

ノバルティスは興味深そうな表情で見つめた後、何かの装置を出して、パテル=マテルに指示をしようとしたその時、今までの塔と同じようにゴスペルの光が消え、装置の起動も終わり、結界が解けて、元の空に戻った。

「も、戻った……」

「”塔”が解放されたのか……」

周囲の様子を見たエステルは呆け、ヨシュアは警戒した表情をしていた。

「フム、時間切れか。残念だったねぇ……これからが本番だというのに……」

残念そうに呟いたノバルティスは何かの装置を操作した。するとパテル=マテルは空へと舞い上がり、どこかに去った。

「私も”グロリアス”に戻るとしよう。”β”が役目を果たしたら戻ってくるように頼まれているからね。」

「”β”が役目を果たした……?”塔”が元通りになるのも計画の一部だったというのか!?」

ノバルティスの言葉を聞いたヨシュアは考えた後、ノバルティスを睨んで言った。

「フフ、その通り。ここを包んでいた結界は”環”の“手”だったのだよ。」

「”輝く環”の……手!?」

ノバルティスの言葉を聞いたエステルは驚いた。

「さて。それでは私はこれで失礼するとしよう。諸君、また私の”実験”に付き合ってくれよ?フフ………」

そしてノバルティスは何かの装置を操作して、その場から消えた。

「ま、まさか今のって………物質の”転送”………原理的には可能だけど、正直、信じられない………」

ノバルティスが消えたのを見たティータは信じられない表情で呟いた。

「エステル、これからどうするの?」

そしてリタはエステルにこれからの方針を尋ねた。

「………一端アルセイユに戻って、これからどうするか決めましょう。」

「そうだね。」

「じゃ、戻るとするか。」



その後エステル達はアルセイユに戻った。アルセイユに戻った頃には夜になっていた…………





 
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