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英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)

作者:sorano
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第85話

その後エステルとヨシュアはルーアンのギルドに向かい、報告をした後、翌日グランセル城に向かい、アリシア女王と傍に控えているモルガンに”グロリアス”やヨシュア自身が手に入れた結社の情報を話した。



~グランセル城・謁見の間~



「―――以上が、これまでの顛末と”方舟”潜入時に掴んだ情報です。」

「むむ……なんたる事だ。そんな化物じみた巨船がリベールに潜入していたとは……。そんなものを持ち出して一体何をするつもりなのだ……」

ヨシュアの話を聞き終えたモルガンは唸った後考え込んだ。

「『福音計画』の全貌はとうとう掴めませんでした。ですが、彼らはすでに次の行動を開始しています。」

「たしか……第3段階とか言ってたわよね。」

ヨシュアの説明を補足するようにエステルは呟いた。

「大変な事態になりましたね……。モルガン将軍。王国軍の対応はどのように?」

女王は考え込んだ後、モルガンに尋ねた。

「昨夜のうちに、この2人からカシウスに連絡が行ったようでしてな。すでに彼の指示で、全王国軍に第1種警戒体制が発令されております。さらに飛行艦隊を出動させて王国全土の哨戒に当たらせました。」

「そうだったのですか……。エステルさん、ヨシュア殿。本当にご苦労さまでしたね。」

モルガンの話を聞いて頷いた女王はエステルとヨシュアに優しく微笑んだ。

「い、いえ。当然の連絡をしただけですし。」

「正直……もう少し早い段階で連絡すべきだったかもしれません。空賊艇奪還事件の件を含めて本当に申し訳ありませんでした。」

「ちょ、ちょっとヨシュア。」

「いいんだ、エステル。裁きを受ける覚悟はできているから。」

「ふむ……陛下、如何いたしますか?」

覚悟を決めている様子を見たモルガンは女王を見て尋ねた。

「そうですね……。超法規的措置にはなりますが。今回、ヨシュア殿が明らかにした”結社”に関する様々な情報……それをもって過去の行為は不問としましょう。」

「ホ、ホントですか!?」

「ですが……」

女王の答えを聞いたエステルは明るい表情をし、ヨシュアは反論しようとしたその時、女王は玉座から立ち上がりエステル達に近づいて、そして言った。



「いいのです、ヨシュア殿。この程度の裁量……”ハーメル”の遺児たる貴方への償いにもならないでしょうから。」

「え。」

「………………………………」

女王の言葉にエステルは呆け、ヨシュアは静かな様子で黙っていた。

「……どうやらご存じだったようですね。わたくしがあの虐殺事件を知りながらも今まで沈黙してきたことを……」

「ええっ!?ど、どういう事ですか!?」

女王の言葉にエステルは驚いて尋ねた。そして女王に代わってモルガンが答えた。

「戦争開始時、エレボニアは宣戦布告をリベールに行ったが……その時、ハーメル村の虐殺が王国軍によって起こされたという断固とした指摘がなされていたのだ。しかし終戦間際、帝国政府は突如としてその指摘を撤回し、即時停戦と講和、メンフィルとの仲介を申し出てきた。……ハーメルの一件について一切沈黙することと引き替えにな。」

「!!!」

モルガンの説明を聞いたエステルは絶句した。

「……前後の事情を考えると、帝国内部でどんな事があったのか(おぼろ)げながら想像がつきました。ですが、反攻作戦が功を奏し、そして帝国がメンフィルを恐れているとはいえ、帝国軍は未だ余力を残していました。………メンフィルなら帝国を完全に制圧する事も考えられましたが、その間にもまた王国の民に犠牲が出る。そして民達もこれ以上の戦いは望んでいない―――そう判断したわたくしは……その条件を呑むことに決めました。」

「あ……」

「………………………………」

女王の話を聞いたエステルは呆けた声を出し、ヨシュアは辛そうな表情で黙っていた。

「……自国の安寧を優先してわたくしは真相の追及を放棄しました。背後にいるはずの被害者たちの無念を切り捨ててしまったのです。かつてロランス少尉がわたくしに告げた『哀れむ資格はない』という言葉……あれは真実、的を射ていたのです。」

「女王様……」

「……どうかご自分をお責めにならないでください。そもそも虐殺に関わりがない上に自国の平和がかかっていたのです。国主としては当然の判断でしょう。」

目を伏せて語る女王をエステルは心配そうな表情で見つめ、ヨシュアは静かな口調で言った。

「ヨシュア殿……」

「このリベールという国は僕の凍てついた心を癒してくれた第2の故郷ともいう地です。その地を守った陛下のご決断、感謝こそすれ、恨みなどしません。」

「ヨシュア……」

「ありがとう……ヨシュア殿。そう言って頂けると胸のつかえが取れた気がします。」

ヨシュアの答えを知ったエステルはヨシュアを見つめ、女王がヨシュアに感謝したその時



「エステルさん、ヨシュアさん!」

「あ……!」

「みんな……」

クローゼ達が謁見の間にやって来た。

(………ヨシュア……………)

プリネはヨシュアの姿を見ると、辛そうな表情になった。

(………プリネ…………あの様子だとあたしの推測通り、プリネはカリンさんみたいね………)

一方プリネの様子に気づいたエステルはプリネを見つめた。

「エステルさん、よくご無事で……。それに……ヨシュアさんも……」

「よ、よかったぁ……。2人とも帰って来てくれて……!」

「クローゼ、ティータ……」

「2人とも……心配をかけちゃったみたいね。」

クローゼとティータの言葉を聞いたエステルとヨシュアは2人を見た。

「まったくもう……。肝を冷やしてくれるじゃない。」

「へへっ……。だがまあ、家出息子を連れ戻せて何よりだったな。」

「シェラさん、アガットさん……」

シェラザードとアガットの言葉を聞いたヨシュアは2人を見た。

「2人とも……よく無事に戻ってきたな。」

「フッ、これも女神達のお導きというものだろうね。」

ジンやオリビエも安堵の表情を見せて言った。



「うわああああああん!ママが無事でよかったよ~………!それにヨシュアさんも帰って来てくれて本当によかった…………!」

「もう………ミントったら………見た目はあたしより立派な大人なのに、中身はまだまだ子供ね………」

一方ミントは大声で泣きながらエステルに抱きつき、抱きつかれたエステルは苦笑しながらミントの頭を優しく撫でて、諭した。

「フフ、何はともあれエステルが戻って来て、本当によかったね。ミントちゃん、すっごく心配していたもの。」

「………あたしにはミントちゃんの気持ち………わかります。マスターが昏睡した時も凄く取り乱しましたし……」

その様子をリタは微笑ましい表情で見守り、ツーヤは静かな表情で語った。

「え…………君は………ミント………なのかい?」

一方ヨシュアは驚いた表情でミントを見て尋ねた。そして泣き止んだミントは涙をぬぐった後、エステルから離れてヨシュアを見て微笑んで言った。

「フフ………そうだよ。ミント、”成長”したからわからなかったのかな?”パパ”。」

「え。」

「パ、パパって………まだその呼び方は早いわよ~!」

ミントの言葉を聞いたヨシュアは驚き、エステルは恥ずかしそうな表情で言った。

「おや~?”まだ”って事は”いつか”は考えているのかい♪」

「そこっ!黙りなさい!」

オリビエはからかうような表情でエステルを見て、見られたエステルはオリビエを睨んだ。



「あの………ミント?さすがに僕の年齢で見た目は大人の君からそんな呼び方をされたら色々と不味いから、他の呼び方にしてくれないかな……?」

「やだ!ミントとママを心配させた罰として、パパはミントとママの我儘を聞かなくちゃダメ!」

「いや、でも………」

ミントの反論の言葉を言い返そうとしたヨシュアだったが

「い・い・よ・ね?パ~パ?」

「…………………ハイ………(まさかミントがここまでエステルと母さんに似るなんて………やっぱり、エステルの影響かな…………)」

ミントの凄味のある笑顔に負けて、肩を落として頷いた。

「あ、あはは………と、とにかくよかったね、ミントちゃん。」

その様子をツーヤは苦笑しながら見ていた。

「もしかして君は………ツーヤ……なのかい……?」

ツーヤに気付いたヨシュアはまた驚いた表情でツーヤを見て尋ねた。

「はい。お久しぶりですね、ヨシュアさん。………あたしとミントちゃんはヨシュアさんも知ってのとおり、”竜”ですから普通の成長の仕方はしないんです。」

「そうだったのか。……………(え!?ね、姉さん………!?………僕の気のせい……かな?プリネが姉さんに見えてしまうなんて………)プリネも久しぶりだね。」

ツーヤの答えを聞いたヨシュアは頷いた後、プリネを見て心の中で驚いた後、それを顔に出さずに懐かしそうな表情でプリネを見た。

「……はい。お久しぶりですね、ヨシュアさん。私達が別れてから起こった事を聞いて本当に心配していましたよ?」

ヨシュアに見られたプリネは優しい微笑みを見せて言った。

「………君達にも心配をさせて、本当にごめん……」

「フフ……私の事はいいですよ。………ただ、その……ご自分の心配をなされた方が………」

謝罪するヨシュアにプリネは微笑んだ後、苦笑しながら言った。

「え?」

プリネの言葉にヨシュアは首を傾げた。

「その……エステルさんから事の顛末を聞いたリフィアお姉様が………『余の友を悲しませた輩は余自らが二度とそんな事を考えないよう、こらしめてくれる!』………とおっしゃっていましたし、エヴリーヌお姉様は『罰として一杯遊んでもいいよね?キャハッ♪』とおっしゃっていましたので………」

「えっと…………………その…………本当にごめん…………」

プリネの話を聞いたヨシュアは冷や汗をかいて、申し訳なさそうな表情で謝った。

「フフ、物騒な事をお二人はおっしゃっていましたが、実際にそんな事はしないと思いますよ。お二人とも凄く優しい方ですし………(……もし本当にそんな事になったら、私が止めないと………)」

「ま、リフィア達が怒っているみたいに、あたし達に心配をかけるなっていう事がわかったわね?」

プリネの話を聞いたエステルがヨシュアに言ったその時



「まったくもってその通りやで。まあそれは、エステルちゃんにもあてはまるんやけどな。」

ケビンも謁見の間にやって来た。

「あ、ケビンさん!」

「エステルちゃんが掠われた時は目の前が真っ暗になったわ。ホンマにもう……あんまり心配させんといてや。」

「うん……ゴメンなさい。」

ケビンの言葉を聞いたエステルはケビンに謝った。

「んで、こっちが例の……」

「初めまして、ケビン神父。ヨシュア・ブライトといいます。」

ケビンに見られたヨシュアは自己紹介をした。

「うぐっ……予想以上のハンサム君やね。って、オレのこと知っとんの?」

ヨシュアの容姿を見たケビンは唸った後、ある事に気づいてヨシュアに尋ねた。

「あなたの存在については僕の情報網にも入っていました。エステルの危ない所を何度も助けてくれたそうですね。ありがとう……感謝します。」

「むむむ……まあええか。仲直りしたんやったらオレから言うことは何もないわ。…………ただな。」

ヨシュアにお礼を言われたケビンは唸った後、ヨシュアに耳打ちをした。

(……あんまり可愛い彼女を放っておいたらアカンで。オレみたいな悪い虫にコナかけられたくなかったらな。)

(……肝に銘じます)」

「?どうしたの?」

2人の様子を見たエステルは首を傾げて尋ねた。

「いやぁ、ちょいとな。」

「男同士の話をね。」

「なんかヤラしいわね……」

ケビンとヨシュアの答えを聞いたエステルがジト目で睨んだその時

「失礼します、陛下。」



カシウスが謁見の間に入って来た……………!


 
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