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ラインハルトを守ります!チート共には負けません!!

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第四話 あのフラグが立つのです。

 
前書き
やっぱり駄目でした。アンネローゼ様は皇帝陛下のお眼鏡にかなって拉致されちゃうのです。でも、わずか12歳の子供たちにいったい何ができると・・・・!? 

 
帝国暦477年6月18日――。

マルトリンゲル地区 ミューゼル家 
■ ラインハルト・フォン・ミューゼル
 くそっ!!くそっ!!くそっ!!!皇帝陛下の勅命だと!?ご自愛だと!?お慈悲だと!!??ふざけるな!!!どうして、どうして姉上があんな汚らわしい老人のもとに行かなくてはならないんだ!?父さんも父さんだ。全然抗弁もせず、いや、あの金貨に魅せられて自分の娘を、姉上を皇帝に売り渡したんだ!!くそおっ!!
 迎えの車が来るまで、姉上は俺をだき抱えるようにして繰り返し慰めてくれたけれど、全然言葉は覚えていない。最後には悲しそうに俺の下を離れていった。ごめん姉上・・・もう少し俺に力があればこんなことはさせなかったのに!!
 もう日が暮れる。テーブルの上には冷たくなった姉上の手料理が乗っている。最後の手料理だ。俺の好きな料理ばかり並んでいる。姉上・・・本当なら俺が姉上を慰めてやらなくてはならなかったのに、俺に気を使ってくれたんだろう。本当にごめん。でも食欲はない。父さんはどこかに行ってしまった。きっと娘を売り渡した金で酒場で酒でも飲んでいるんだろう。あんなやつ、父さんなんかじゃない!!二度と父さんだなんて呼ぶもんか!!許さない、絶対に許さない!!
 ドアがキイとかすかに音を立てた。顔を上げると、キルヒアイス、イルーナ姉さん、アレーナ姉さんのいつもの顔が並んでいた。いつもと違うのは、どの顔も心配そうだということだ。


■ イルーナ・フォン・ヴァンクラフト
 ラインハルトが落ち込んでいるわ。憔悴もしている。こんな時にお酒を飲みに出ていく
なんてラインハルトのお父様はどうかしていらっしゃるわ。皇帝陛下の勅命なら仕方のない事なのかもしれないけれど、でも・・・・。

「具合どう?何か作る?」

 私の問いかけに、ラインハルトは首を振った。

「食欲はないんだ。それに大丈夫、姉上の作った料理が残っているからそれを温めて食べるよ。」
「もしよかったら、私たちも食べていい?その、アンネローゼの料理を食べることができるのって・・・・」

 アレーナの問いかけに、ラインハルトの顔がゆがんだけれど、それはアレーナに対してではなくて、皇帝陛下に対しての怒りだったように私には見えた。

「あぁ」
「僕も手伝うよ」

 キルヒアイス、アレーナ、そして私がテーブルの用意をし、お姉様の作った料理を温めなおし、電気をつけて部屋を明るくした。最初はラインハルトもナイフとフォークがすすまないようだったけれど、独りで食べるよりも人数がいた方がいいのだろう。徐々に食欲が戻り赤みが戻ってきたようだった。
 でも、ラインハルトは食事が終わらないうちに、そっと部屋を出ていこうとした。

「どこに行くの?」

 私が目ざとく見つけて問いかけた。ラインハルトは答えない。

「・・・・・・」
「お姉様を取り戻しに行こうというの?」
「・・・・・・」

 小さな後ろ姿は微動だにしていなかったけれど、決意はありありと背中に出ていたわ。愚かなことだと思うけれど、でも、とても悲愴で、私には止められそうになかった。

「答えたら、あなたたちを巻き込んでしまうことになるから――」

 小さな声が背中からした。

「ラインハルト!!そんなことを言わないでよ!」

 キルヒアイスが真っ先に立ち上がった。

「そうよ、何言ってるのよ!!私たちは幼馴染じゃないの!!」

 アレーナも立ち上がった。

「どうしてこういう時に黙って出ていこうとするわけ?」
「・・・・・・」
「お姉様を取り戻すなら私たちも戦うわ」

 これにはラインハルトもキルヒアイスも驚いたらしい。ラインハルトはこっちに顔を向けた。

「アレーナ姉さんが?そんな、無茶を言わないでよ」
「言うわよ。それに私たちも全くの非力じゃないわよ。見てたでしょ?喧嘩の仕方を」

 ラインハルトとキルヒアイスは顔を見合わせていた。公園で遊んだ帰りがけに道端で貴族に襲われかけていた若い女性を助けようと、その貴族をわたしとアレーナが袋叩きにしたのをすぐそばで目撃していたからだろうけれど。

「でもね、ラインハルト、あなた個人の力じゃお姉さんは取り戻せないわ」

 私はひたっとラインハルトに目を向けて言った。

「どうして――・・・いや、そうか。イルーナ姉さんやアレーナ姉さんが話してくれたことだね。この帝国には貴族社会があって、僕たちの力じゃどうしようもできないって」
「ええ」
「どうすれば、僕はどうすれば・・・いや、そうか」

 ラインハルトはいったん視線を床に落としたけれど、すぐに顔を上げた。

「力があればいい。貴族、そして皇帝を、ゴールデンバウム王朝も討ち倒せる力があれば!!そのためには軍に入って力をつけ、出世していかなくてはならない。そうなんだね?」
「それだけじゃ足りないわ」

 ここが大事。ラインハルトの今後を左右するうえでの重要な言葉なのだから。私はずっとずっとこの時のために何度も何度も考えていた言葉を紡ぎだした。

「皇帝を倒すまでは非常に厳しい道のりよ。でもね、皇帝を倒して、お姉さんを取り戻して、それで終わりというわけにはいかないわ。皇帝が死んだら、この国はどうなると思う?ゴールデンバウム王朝が滅んだら、今曲がりなりにも穏やかに生活している人たちはどうなると思う?何千、何億という人たちが混乱するわ。あなたはそれを放っておいて逃げるの?自分の目的のために周りを利用するだけ利用して捨ててしまうの!?」

 一瞬ラインハルトの瞳が揺らめく。彼の中には様々な感情、思いが渦を巻いているのだろう。

「違う!!そんなことはしない!!約束する!!僕は姉上を救い出し、この帝国を、貴族なんかにのさばらせない社会にする!!皆が幸せに暮らせるような社会にして見せる!!たとえそのためにどんなに血を流すとしても、最後まで僕は戦う!!絶対だ!!!」

 こう言い放った時、私は電気に撃たれたような気持がした。さすがは英雄ね。何とも言えない気概と威風にあふれていたわ。そしてひたむきさも。なんだかフィオーナのことを思いだしてしまったわ。隣を見ると、アレーナもうんうんとうなずいている。どうやら合格点だったらしいわね。

「ラインハルト、僕も協力するよ」

 キルヒアイスが前に進み出た。

「キルヒアイス!でも、君も巻き込むわけには――」
「僕だってラインハルト、君の役に立ちたいし、アンネローゼお姉さんのことが、その、好きだから・・・・」
「おお~~いったなぁ、この年上好きめ!!」

 アレーナがバシッとキルヒアイスの肩を叩く。キルヒアイスが顔を赤らめる。私は驚いた。まさかここでキルヒアイスの告白をきこうとは思わなかった。原作だとずっとその思いは二人とも秘めていたはずだったから。ラインハルトは突然の告白に驚いたようだったが、すぐに親友の手をしっかりと取った。

「ラインハルト、私も協力するわよ」

 私は二人の手の上に自分の手を重ねた。ラインハルトの手は冷たく、キルヒアイスの手は暖かい。けれど、二人の中にはそれぞれ熱い血が流れている。それを感じ取ることができた。  今の私は演技をしているという自覚はまったくない。これはきっと感情移入なのかもしれないわ。どうやら年月を重ねるうちに、ラインハルトを弟の様に思ってしまっていたらしい。フィオーナを自分の妹と同じように思っているのと気持ちは同じだ。

「私も」

 アレーナも手を重ねてきた。

■ アレーナ・フォン・ランディール
 まぁ、ちょっと原作と違ったけれど、元々私たちが原作にいないんだから、そこは言いっこなしということで落ち着くわよ。よしよし、いい感じじゃないの。


■ ジークフリード・キルヒアイス
 ラインハルトの決意を聞いて僕も協力しようと思った。ラインハルトはアンネローゼさんを取り戻すだけじゃなく、この国を変えてみせると誓ったからだ。僕の父さんは下級官吏だけれど、時折部屋で愚痴をこぼすことがある。貴族出身の人に昇進を横取りされたり、趣味だった蘭の展示会で、自分より劣っている蘭を出品した貴族に優勝を取られたりしたって。父さんでさえそうなんだ。他の人たち、貧しい人たちはどれだけ嫌な思いをしていることだろう。
 だから、ラインハルトの気持ちを聞いたとき、僕はその思いに協力したいと思った。後、つい勢いでアンネローゼさんが好きだなんて言ってしまったけれど、気持ちを吐き出すことができてよかったと思う。ラインハルトもそれを聞いたうえで、でも、僕のことを嫌いにならなくて、しっかりと手を握ってくれたから。イルーナさんとアレーナさんも協力してくれるというから、本当によかった。
 でもこれからが大変だ。あの後4人で少し話した。ラインハルトのお父さんが帰るまでだったから短かったけれど。ラインハルトはすぐに顔に気持ちが出るというから、まずは忍耐を覚えなくてはとイルーナさんがいい、ラインハルトもうなずいていた。イルーナさんやアレーナさんがいてくれて心強い。でも、自分の頭で考え、自分の足であるきなさいとアレーナさんが言っていた。確かにそうだ。いつまでも二人を頼るのではなく、僕も自分で考え自分の足で歩いていこうと思う。
 
 

 
後書き
ちなみにラインハルトの好物の一つは、フリカッセで、最後の献立の一つもやっぱりフリカッセだったのです。 
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