ラインハルトを守ります!チート共には負けません!!
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第三話 とにかく先手必勝です。
前書き
アレーナがマインホフ元帥におねだり攻撃をします。10歳にしてこの手練手管は・・・・っ!!
帝国暦475年2月14日――
ランディール侯爵家居間
■ フリードリッヒ・フォン・マインホフ元帥
久方ぶりにアレーナの顔を見に来た。あれは近年ますますかわいくなってきおる。しゃべりかたは貴族令嬢らしさのかけらもないのじゃが、それもリベラルな親の影響か。じゃが、頭脳のほうもとても10歳とは思えないほど鋭く頭の回転が速いのじゃ。これは将来末恐ろしい。儂がもっと若ければ一緒に仕事をすることもできただろうが・・・いや、アレーナは女じゃ。おそれおおいことじゃが、今の帝国では、とても軍人として出世することなどおぼつかないのう。
そう暗澹と思った時、アレーナが無邪気にも提案をしてきおった。なんと、女性専門の軍士官学校をつくってくれといいよる。儂は驚いた。無理じゃと思った。アレーナは喜ぶかもしれんが、世の中の女性たる者「貞淑であれ。」がモットーじゃからの。この帝国では男尊女卑の風潮がまだまだある。それにこれでは自由惑星同盟とやらの反徒共の考えと同じになってしまうではないか。
「でも、おじいさま。このままでは私はずうっとつまらない退屈な人生ですよ。私は大きくなったら立派な軍人になっておじいさまのお手助けがしたいんです。駄目?ねぇ、駄目?」
「しかしの、アレーナ。軍人という者は殺伐としておるのじゃ。ひとたび戦場にでれば血で血を洗う凄惨な殺し合いの場じゃ。そんな場にお前を連れていけると思うか?それにじゃ、お前ひとりならばまだ何ともなろうが、女性専門の士官学校を創設するなど、前代未聞の事じゃ。多くの者の反対があるじゃろうて」
「ええ~~!?そんなぁ、私一人じゃとっても寂しいもの。大きくなって私が少将になったって絶対周りからいじめられますよ。うう・・・おじいさまはそんなことをお望みなんですか?」
うぬぬ、その濡れた瞳でせめられると儂は弱い。なんだか愛人をなだめているような格好じゃがこれはどうしたことか。
「あ、そうだ。いい考えがあります。実用的な話ですけれど、今帝国の人口は250億、でも男子の戦死率がたかくって兵隊さんたちがいないって聞きました。だから女性をもっと登用すれば戦力の拡張になりますよね、ね?」
「そうはいってもな、アレーナ。そんなものがたとえできても、誰も入らないと思うがの」
「ですね。おっしゃるとおりたぶん最初は誰も入りたがらないと思うんで、辺境の農奴から志願したいという女性及びその家族を引っこ抜きます。もちろん貴族にはこちらで算定した保証金などは払いますけれど、あまり高く設定はしません。最終的には『皇帝陛下の御為にィ!』をつかいます。後、一般の平民女性に対して徴兵制度を設けるっていう噂を流すんです。けれど、事前に士官学校に入って卒業した者は一定程度従事すれば兵役を免除されるっていう噂も流すんです。そして入校した本人と家族には支度金名目で一時金を下賜するんです。これ、どうですか?」
儂は驚いた。わずか10歳でそこまで考えているとは末恐ろしい子じゃ。うむ、ここのところ儂も実績がはなはだしくはない。このままでは予定よりも早く引退してしまうかもしれん。そうなればなったで残りの人生がわびしいものになるじゃろう。ここはひとつ、アレーナの提案に乗ってみるとしようか。幸い儂はグリンメルスハウゼンと同様皇帝陛下のご学友だったということもある。うまくいくかもしれん。
ランディール侯爵家 自室
■ アレーナ・フォン・ランディール
ああ~しんどかった。ああ~疲れたぁ。だいたいどうして私があんな爺様に色目を使わなくちゃならないのかしら。若い男ならともかくさ。爺様のほうも最後には愛人を相手にしているような雰囲気だったし、ちょっとやりすぎたかな。(テヘベロ)
ま~でもこれで一石投じたわよイルーナ。確かに士官学校女性版が設立されれば、私たちにとっても動きやすくなること間違いなしね。最終的には私たちも提督として一個艦隊や軍を指揮してラインハルトに協力することになるんだから。その布石ってわけね。
後は何ができるかしら。あれか、官僚の中にも女性登用の風潮を作り出すことか。でもさすがにそれは時間がかかるかな。まずは軍の方で実績あげて、それを官公庁に波及させるのが一番ベストよね。うん、そうしたほうがいいかも。
後、今日知ったんだけれど、しかもラッキーなことに、おじいさまの知り合いにあのグリンメルスハウゼン子爵がいるっていうじゃないの。しかもご学友だって。普段のおじいさまもグリンメルスハウゼン子爵と同じ居眠り爺様だけれど、意外なところで接点あったのね。聞いてよかったわ。ちょっと興味があるふりをして今度グリンメルスハウゼン子爵と会いたい会いたいって駄々をこねたから、おじいさま、その話もしてくださるはずね。すぐに皇帝陛下の下に行くって言ってたわ。
一応ヘンな横やりが入らないように、女子士官学校設立の話は、皇帝陛下とグリンメルスハウゼン爺様と三人での内密の話ということでくぎを刺しておいた。なんといってもノイエ・サンスーシには『チート共』の一人が居座ってるわけだし。この機会にグリンメルスハウゼン爺様に会われると後々面倒だからね。
さて、『チート共』。そちらはどう出るかしら?
帝国歴475年2月17日―― ノイエ・サンスーシ・皇帝黒真珠の間――
ここに3人の老人が集まって午後のお茶を楽しんでいた。帝国皇帝フリードリヒ4世、グリンメルスハウゼン子爵、軍務尚書マインホフ元帥。皇帝陛下が殿下と呼ばれた時代よりご学友として数々の悪行・・・もとい、放蕩などをした仲であった。
「ほほう、卿の大姪のアレーナと申す者はそのようなことを申したか。はっはっは、面白いのう。グリンメルスハウゼン」
「御意。マインホフ元帥、とても卿の血を分けた親族とは思えぬのう。ほっほっほ」
しわがれた甲高い声でグリンメルスハウゼンはおかしそうに笑う。
「何を言うか、グリンメルスハウゼン。卿とて周囲からは『昼行燈』と呼ばれているじゃによって。儂のことをどうこう言える立場ではなかろう」
そう言いながらもマインホフ元帥も笑い、期せずして老人三人の笑声が黒真珠の間に響いた。
「そうじゃ、アレーナは卿に会いたがっておったぞ。ぜひ一度会ってやってほしい」
「む、よかろう。儂もその子に会ってみたいと思うからの」
「余もそのアレーナに会ってみたい。カロリーネの良い学友になるやもしれん」
では、いずれあらためて席を設けましょうとマインホフが言った。
「さて」
話の区切りがついたところで、フリードリヒ4世が静かに二人を見つめる。
「余の育てているカロリーネも近年とみに利発さを示してきておる。周囲には阿呆だと申す者もおるが、あれは演技じゃ。余はそうみておる」
「皇帝陛下のお血筋は皇女様にもしっかりと受け継がれているようで。バウムガルデン公爵も粋な計らいをしたものですのう」
「御意」
それを聞いたときのフリードリヒの表情に一瞬ちらっと何とも言えない色が走ったのを二人は見逃さなかった。だが、臣下の習い、何も言わなかった。
「グリンメルスハウゼン、マインホフ、そちらも同様であろうが。じゃが、余としてはあれたちに未来を託してみたい」
「陛下のここまでのご堪忍、苦衷、臣らはお察しいたします」
「よい、マインホフ。余などは老い先短い身じゃ。じゃが、のちの世代、そして孫たちの世代にはよりよき道を進んでいってほしい。そのためにならば、余はマインホフ、卿へ力を貸そうぞ」
「ありがたき幸せ」
フリードリヒ4世は早速手元に鈴を鳴らす。かすかな音が黒真珠の間に響き渡ったかと思うと、直ちに従僕が姿を現した。
「ただちに国務尚書、宇宙艦隊司令長官、統帥本部総長を召集せよ。余の思うところを述べようと思う」
それを聞いたマインホフ、グリンメルスハウゼンはよっこらしょと立ち上がる。グリンメルスハウゼンは帰るために。マインホフ元帥の方は先ほどお忍びの姿でここに来たために、素知らぬ顔で軍服に着替え、出直すためである。
ノイエ・サンスーシ 皇女の私室
■ カロリーネ・フォン・ゴールデンバウム
あちゃ~。なんでだろう。今日はグリンメルスハウゼン子爵と軍務尚書のマインホフ元帥がいらっしゃると聞いていたから、ぜひ会いたいって言ったのに、皇帝陛下からとめられちゃった。普段ならすぐに聞いてくれるのに、今日は別の大事な話があるって。
せっかくグリンメルスハウゼン子爵とマインホフ元帥を同時にこっちに取り込める足掛かりできると思ったのに!誰だぁ!?邪魔した奴は!?
皇族らしくないでしょ。そうだもの。だって、私って、根っからの皇族じゃないもの。この世界には転生してきたの。転生って言っても信じてくれないだろうから、黙ってるけれどね。
前世は普通のOLだったのよ。一流商社に入って、結婚寸前の彼氏もいて、人生順調ってとき、ある夏出張先のオフィスビル街を歩いていたら突然の眩暈。気が付いたら、赤ん坊の状態でベッドに横たわっていたってわけ。
つらいわよ~。意識はあるのに、身動きできないってのは。全部人様にやってもらうっていうのもなかなかつらいものがあるわよね。そして、おいおいわかってきた事実じゃあ、私ってゴールデンバウム王朝ってところの皇族に生まれたみたいだってこと。
ゴールデンバウム王朝っていえば、あの銀河英雄伝説の舞台となった王朝じゃないの。ってことは、私銀河英雄伝説の世界に転生したってこと!?
最初は驚いていたけれど、だんだん受け入れざるを得なくなった。もう大切な人たちに会えないってわかった時には一晩中泣いたわ。でもそういってばかりもいられないのよね。この世界に来ちゃった以上は、この世界で生きていかなくちゃならないんだから。
私皇族なんかに生まれちゃったから絶対やばいって!このままじゃラインハルトに殺されちゃうよ~。
でもね、ラインハルト、残念だけれど、こっちは原作の知識すっかりもってるのよね~。だからこっちからしかけさせてもらうわいろいろと。まずはグリンメルスハウゼン子爵を味方につけて、後は色々とラインハルトの提督たちをこっちに引き抜かないと。あ、でもでも、アンネローゼを後宮に入れるのを阻止すれば、ラインハルトがのし上がってくることないんじゃない?お、そうじゃない!でも一応コネクション構築の準備はしておこうっと。
うん、色々とやることはあるじゃん。さ~頑張ろうっと。
後書き
ちなみにカロリーネ皇女殿下の前世は商社のOLの一般職みたいです。結婚して40まで仕事をしてさっと撤退して、後は趣味のインテリアに没頭するのが夢だったんだとか。
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