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ラインハルトを守ります!チート共には負けません!!

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第一話 生まれるタイミングが重要です。

帝都オーディン マルトリンゲル地区――。

 ここ、マルトリンゲル地区は帝都オーディンの中で平民たちが暮らす下町地区である。だからといって貧民街というものではなく、小売商人や下級官吏等ごく穏やかで実直な人々が暮らしている。むろん貴族の家も交じっているが、こういう地区に住む貴族というのはたいてい没落しているか、若しくは大貴族との関わり合いにうんざりして引きこもってくるような者であるため、ここでは平民と貴族との対立というのはそれほど深刻ではない。


帝国暦473年4月15日――
■ ヴァンクラフト家の庭 イルーナ・フォン・ヴァンクラフト
 あの大神オーディンの宮殿で、高名なご老人のお言葉と共に送り出された私は、気が付けば私の生前の性だった「ヴァンクラフト」と同じ家名の家に生まれていた。この現世での私の記憶は、生まれて5歳くらいの時から始まったようだけれど、物心ははっきりとしており、ここに来た目的もしっかり覚えていた。言語もすぐにわかったわ。両親は不思議なくらい私の生前の両親に生き写しだったから、きっと神様が取り計らってくださったのだわね。
 小さいころの私は、両親の愛情をいっぱいに受けて育てられた。暮らしは質素だったけれど、そのことでかえってなんでもできる機会を与えられた。料理、洗濯などは生前やっていたからすぐにここでもできるようになったわ。
8歳になり、一応物心がつく年齢になったと判断されたのか、今のお父様が家のことを話してくださった。そのところによれば、ヴァンクラフト家は、元々高名な家柄の貴族だったそうなのだけれど、勢力争いに負けて、半ば追放される形でここにやってきたらしいの。私のひいおじいさまの代の事だそうよ。この生い立ちは後々利用できそうな感じね。


 さて、私がここに来た目的は、老人のおっしゃっていた英雄、ラインハルト・フォン・ローエングラム、今はミューゼルと名乗っているだろうけれど、その人をサポートして覇道を歩ませること。私も銀河英雄伝説は一通り読んで、見て、内容を知っているけれど、さて、どうすればいいのかしらね。


 幸いなことに、両親の話や近所の人の話によれば、どうやら私の家の斜め前がラインハルトの家らしいから、近づくチャンスはそのうちに廻ってくるはず。そのチャンスをどうやってつかむか、ね。噂をすればなんとやら、ちょうど玄関がひらいて人が出てきたわ。

 あら、あれは・・・・?あの整った顔立ちは、ラインハルトとアンネローゼのようね。こうして実際に見るととても仲がいい美人姉弟ね。そして、隣の家の玄関から出てきたのは・・・赤毛の子?まさか、キルヒアイス?
そういえばおかしいわね、キルヒアイスは確か10歳の時にラインハルトが隣に引っ越してきて出会うのに、ラインハルトってもう引っ越してきたのかしら?

 でも、これはチャンスかもしれない。私とキルヒアイスが同時に彼に近づけば、私もキルヒアイス同様の無二の親友の立場に立てるかもしれないから。あら、あの歩道を歩く青い長い髪の綺麗な少女、どこかで見たような・・・・まさか・・・・?


 同時刻、ラインハルトの家の目の前の歩道――。
■ アレーナ・フォン・ランディール
 やれやれ、ようやく死んで天国でゆったり満喫生活と思ったら、またぞろ現世に強制送還。しかもなんだか知らないけれど、爺様の道楽に付き合わされるなんて。あ~どこまで運がないのかしら、私って。爺様連中相手にするのは、生前の侯爵時代で充分だったのに。このミッションが終わったら、あの爺様にお願いして超一流のセレブな天国生活をしばらく満喫できるようにお願いするつもりなのよね。さ、それを夢見て頑張りますか!
 私が生まれたのは、どういうわけか生前と同じ「ランディール」家。しかも爵位も生前と同じ侯爵だっていう偶然。それでいて両親はとぉってもリベラルで私を散々宇宙旅行に連れていってくれたりなんだかんだしてくれたり。ま~ある意味すごすぎる偶然ぶりなのよね。あの爺様もそこは粋な計らいをしたってこと?

 私も8歳になったんで、もう大丈夫だろうって思って、両親に駄々をこねてみた。つまり、一人でいろいろと外の世界を見てみたいと。私を溺愛している両親は、とりあえず一人で外に出てもいいってことになった。もちろんおつきのメイドや護衛の使用人はいるけれど、でも不要なのよね。
なぜって、生前の私は一公国の将軍職についていて、そりゃもうバリバリの武人だったからね。剣をぶん回して戦うことになれてるって今の両親が知ったら流石に驚くと思うので、何も言わないけれど。でも、ひそかに日々訓練中よ。他のみんなもそうなんじゃない?

こうしてただいま散歩中。散歩がてらようやくラインハルトの家までやってきた。あ、庭にラインハルトとアンネローゼ姉妹が出ている。二人して草花に水をやっているところか。ふ~んさすがは美人姉弟ね、今からあんなレベルじゃ将来が末恐ろしいわ。
 さぁ、どうしようかな。ラインハルトとアンネローゼが外に出ているから、いきなりアタックする?それとも様子見る?う~ん・・・。

ってあれ?!あそこの反対側の家の庭にいるプラチナ・ブロンドの髪を後ろでまとめているしっかりそうな顔立ちの美人少女って、イルーナじゃない!?


■ ヴァンクラフト家の自分の部屋 イルーナ・フォン・ヴァンクラフト
 まさかいきなりアレーナに出会うとは思わなかった。生前の私は帝国の騎士団主席聖将(騎士団の№1のことよ。)、彼女はその同盟公国の女性将軍だったから、接点はあるし、お互いのことを良く知っている。そんな二人が出会うということはこれもあの老人の采配なのかしら。私は早速アレーナを家に招き入れた。両親には公園でたまたま会い、一緒に遊んでいたらすっかり仲良くなったということにしておいた。もっとも、アレーナの今の素性はランディール侯爵家という名門らしいので、両親はびっくりして恐縮していた。当のアレーナは相変わらず飄々とした感じだったわね。
 お茶とお菓子を置いて母様が部屋を出ていった後、ひとしきりそれぞれの歩んだ生活について話した。アレーナはリベラルな生活を送ってきたようね。それでこういう性格が出来上がったと言っても納得がいくわ。一通り話が終わったところで、さて、と私は話しかけた。本題よ。

「どうやってラインハルトとキルヒアイスに近づこうかしら、アレーナ」
「決まってるじゃん。ラインハルトが予想より早く引っ越してきたのはラッキーだったわ。私たちもあの輪の中に突撃よ。そうすりゃ幼馴染コンビじゃなくて、幼馴染四天王になれるもの。絶好のタイミングじゃないの」

 私もそれを考えていた。アレーナと意見が一致したので、さっそく実行に移すことにする。英雄と言ってもまだ6歳の子供だもの。そこまで鋭い洞察ができるとは思えないから。
 そういえば、フィオーナやティアナは一体どこに生まれたのかしら?あの二人は私の騎士学校教官時代の教え子だから、よく気心も知っている。あの子たちが加わってくれればとても心強いのだけれど。







 
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