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ダイエットは一苦労

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4部分:第四章


第四章

 その後祥子は真面目に泣き言も言わずダイエットに取り掛かった。そして遂に撮影の日になった。
「なあ」
「ああ」
 撮影する雑誌のスタッフ達が祥子を見て囁き合う。
「祥子ちゃん痩せたよな」
「そうだな」
 まだ太めなのは確かだがそれでもグラビアに充分なスタイルになっていたのだ。むしろ肉感的で魅力あるスタイルにすら見えていた。
「ねえ祥子ちゃん」
「はい」
 黒のビキニの祥子に声をかける。そのビキニが非常に似合っていた。
「ちょっとポーズ変えてくれる?」
「どんなのですか?」
 今祥子はベッドの上に仰向けに寝ている。その祥子に声をかけたのだ。
「うん、もうちょっと胸をね」
「寄せてみてですか?」
 実際に胸を寄せるとかなりの谷間ができた。痩せても胸は大きいようである。というよりは元々胸は大きいようだ。これはこれでかなりいい。
「そうそう、少しでいいから」
「わかりました。じゃあ」
 言われるままに胸を寄せてみる。するとかなりの胸の谷間が出来上がった。
「こんな感じですか?」
「そう、そんな感じ」
 カメラマンが笑顔で応えてくれた。
「いいよ、それで。凄くいい」
「はい、じゃあこんなので」
「うん、それでいこうよ」
 カメラマンは笑顔で述べる。こんな感じで祥子のグラビア撮影は行われていった。
 その途中の休憩時間。祥子は岩崎さんと話をしていた。黒ビキニから黄色のビキニに変わっている。
「いい感じだよ」
 岩崎さんは笑顔でベンチに腰掛けて紅茶を飲んでいる祥子に声をかけた。半分裸の格好なので身体が温まるようにとホットティーをもらっている。
「いい感じですか、今ので」
「うん、何か思ったよりいいね」
「はあ」
「痩せたじゃない、本当に」
「祥子頑張ったもん」
 その言葉には笑顔で応えてきた。
「大変だったんだよ、ダイエット」
「わかってるよ。けれどそれだけの価値はあったよね」
「うん。そうみたい」
 祥子は笑顔で応えた。
「これでファンの人達喜んでくれるよね」
「そうだね。このままいけばね」
「そう、よかった」
 さらに笑顔を明るくさせた。
「それじゃあこれで」
「何?」
「またお菓子食べられるよね」
「そうなるかな」
「ならないの?」
 その言葉を聞くと表情が暗転した。
「じゃあこのままずっとダイエットしたまま?祥子そんなのしたくない」
「いやいや、そこまではならないけれどさ」
 そう言って祥子を宥めた。
「ただね」
「うん」
「この出版社から写真集の話が出てるんだけれど」
「写真集の!?」
 アイドルの仕事の定番である。これで人気が出たアイドルも多い。やはり水着や制服になったりする。どうやら最近ではかなりマニアックなコスプレのものまであるようだ。
「この前出した写真集は水着とかなかったじゃない」
「うん」
 そうなのであった。その時はどういうわけか普通のフォトエッセイ仕立てであったのだ。そこそこは売れたがやはりアイドルの写真集といえば水着なのでブレイクはしなかった。
「それでも今度はね」
「水着になって」
「それだけじゃないよ」
 岩崎さんはさらに言ってきた。
「制服とか?」
「いや、体操服だよ」
 彼は囁く。
「ほら、ここの出版社の写真集って結構マニアックじゃない」
「そうなの」
 これは彼女も知らなかった。その長い睫毛をパチクリと動かしていた。本当に長く、そして多い睫毛であった。

 
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