英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)
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第74話
~遊撃士協会・ボース支部~
その後ギルドに戻ったアガットとティータはラヴェンヌ村であった出来事を話した。
「そっか……。そんな事があったんだ。」
「”剣帝”レーヴェ。とんでもなく大胆な男ね。」
「………………………………」
アガット達の話を聞いたエステルは複雑そうな表情で頷き、シェラザードは気を引き締め、プリネは辛そうな表情をしていた。
「ああ、まったくだ。そんな訳で、みすみす敵を見逃しちまってな……。すまん、弁解の余地もねえ。」
「いや、その場合は見逃すのが正解じゃろう。墓地で騒ぎを起こすわけにもいかんからな。それにしても……その『ハーメル』という名は妙に気になるのう。」
「その名前、前に女王宮でロランス少尉と戦った時にも出てきた気がするのよね。クローゼ、何か知らない?」
謝るアガットを制したルグランは気になった事を呟き、エステルも頷いた後クローゼに尋ねた。
「いえ……残念ながら。たぶんお祖母さまは何かご存じだと思うのですが……。国家間の問題と言うからには教えて下さらないかもしれません。」
「そっか……。オリビエはどう?エレボニアの村なんでしょ?」
クローゼの答えを聞いたエステルは今度はオリビエに尋ねた。
「ふむ……『ハーメル』か。それはまた奇妙な名前が出てきたものだね。」
一方尋ねられたオリビエは不思議そうな表情で答えた。
「奇妙?」
「『ハーメル』というのは帝国最南端にあった村だが……現在、その名前は帝国の地図には載ってないんだ。」
「ええっ!?」
「載ってないって……どーしてなんですか?」
オリビエの話を聞いたエステルは驚き、ティータは尋ねた。
「何年か前に、山崩れがあって、かなりの死者を出したそうでね。今では廃村となっているらしい。」
「廃村……」
「……そうだったのか。」
「で、でも、かなりの死者が出たって……」
「軍が災害救助に出動したから詳しい話は知らないんだが……。一説では、全滅に近かったと言われているそうだよ。」
「ぜ、全滅……」
「確かに、ひどい山崩れだと村が丸ごと呑み込まれることもあるらしい。『山津波』と言うんだそうだ。」
「なるほど、言い得て妙ね。でも、それがどうしてリベールの女王様と将軍に関係してくるのかしら……」
「…………………………」
オリビエの説明を聞いたエステルは信じられない表情をし、ジンは重々しい口調でオリビエの説明を補足し、シェラザードは頷いた後、首を傾げた。一方プリネは静かな表情で黙っていた。
「さて、今のところ全く見当も付かないねぇ。」
「………………………………。まあ、今は気にすることではないでしょう。」
「ふむ、わしの方から帝国のギルドに問い合わせてその辺りの事情を聞いておくか。まあ、『ハーメル』についてはそのくらいにしておくとして……。まずはお前さんたちに今回の報酬を渡すとしよう。」
オリビエの言葉を聞いたエステルは少しの間考えたが気を取り直して言い、ルグランは頷いた後エステル達にそれぞれ報酬を渡し、またミントには推薦状を渡した。
「今回の竜騒ぎは本当にご苦労じゃったな。まさに遊撃士協会の面目躍如といった感じゃぞ。」
「えへへ……そっかな?」
「だが、『実験』そのものは阻止できなかったからな……。あんまり威張れやしねえさ。」
「それに、これで王都以外の都市全てで『実験』が行われたことになるわ。次に”結社”がどう動くか、すぐに見極めないといけないわね。」
ルグランの賞賛の言葉にエステルは照れ、アガットやシェラザードは真剣な表情で答えた。
「それなんじゃが……。お前さんたち、ここらで少しばかり骨休みをせんか?」
「へ……」
「骨休みって……どういうことだ?」
ルグランの提案にエステルは驚き、アガットは尋ねた。
「そのままの言葉じゃよ。ルーアン地方から始まって立て続けに5つの事件じゃ。ここらで休んでおかんと身も心も疲れ果ててしまうぞ。」
「で、でも……」
「また連中が何か起こしたら俺たちが出向く必要がある。オチオチ休んでられねぇと思うんだがな……」
「今回の竜の一件で王国軍の警戒も厳しくなった。その分、こちらに余裕ができたと考えてもよかろう。それに……どうやらクルツたちが目星を付けたらしいのじゃ。」
「ええっ!?」
「目星というと……”身喰らう蛇”の拠点!?」
ルグランの話を聞いたミントは驚き、シェラザードは尋ねた。
「うむ、数日中に確かな情報が入りそうじゃ。もし、連中のアジトが判明すれば一気に忙しくなるに違いない。じゃから休めるうちに休んでおいて欲しいんじゃよ。」
「そっか……」
「ふむ、そういうことならお言葉に甘えさせてもらうべきだろう。コンディションの調整も遊撃士の仕事と言えるからな。」
「確かに……」
「ここいらで軽く一休みも悪くねえか。」
ルグランの話を聞いたエステルは頷き、ジンは納得した表情で言い、シェラザードとアガットはジンの言葉に同意した。
「フッ、いい感じに話がまとまってきたじゃないか。しかし、ご老人。骨休みを勧めるということは何か心当たりがあるのかな?」
「ふぉふぉ。鋭いのう。実は、メイベル市長からいい物を貰っておるんじゃよ。竜事件の報酬とは別にな。」
オリビエの質問にルグランは笑いながら答えた。
「市長さんから……いい物?」
そしてルグランはエステルに何かのチケットを渡した。
「ずばり、南の湖畔にある”川蝉亭”の特別チケットじゃ。お前さんたち全員が3日ほどタダで泊まれるぞ。」
「ほ、ほんと!?」
「まあ………」
「おお……。さすがは名高きボース市長だ。」
「ふふ……先輩らしい心遣いですね」
「えとえと、それって……。みんなでどこかに出かけてお泊まりするってことですか?」
ルグランの話を聞いたエステルとプリネは明るい表情で驚き、オリビエとクローゼは感心し、ティータは嬉しそうな表情で尋ねた。
「ふふ、そうよ。ヴァレリア湖畔にある眺めのいい宿屋さんでね。お酒も料理も美味しいし、舟遊びとかも出来ちゃうわよ?」
「わぁ……!」
「ふむ……そいつは中々良さそうだ。」
「ヘッ、確かにあそこならいい気分転換にはなるかもな。」
「フフ………楽しみですね。」
「疲れを癒すには最適でしょう。」
「うんうん!どうせだったら思いっきり羽根を伸ばしちゃおう!」
「フフ、ミントちゃんったら、はしゃぎすぎだよ。」
エステルの答えを聞いたティータは明るい表情をし、ジンやアガットは頷き、リタとクローゼは微笑み、ミントははしゃぎ、その様子を見たツーヤは苦笑した。
「フム。盛り上がっている所悪いが、今から始める正遊撃士への昇格の式に参加してから、行ってくれんかの?」
「正遊撃士への昇格……?あ………!」
ルグランの話を聞いたエステルは首を傾げた後、すぐに心当たりを思い出し、ミントを見た。
「わあ……ミント、ついに正遊撃士になれるんだ……!」
一方見られたミントは嬉しそうな表情で言った。
「うむ。では、2階で始めるとするか。」
そしてエステル達は2階に上がって行った。
「……本来ならわしがすることじゃが、本人たっての希望じゃからな。エステル、頼んだぞ。」
「うん。」
ルグランに言われたエステルは真剣な表情で進み出て、ミントを見て言った。
「ミント・ルーハンス・ブライト。これより、協会規約に基づき貴女にに正遊撃士の資格を与えます。各地方支部での推薦状を提出しなさい。」
「はい!」
厳かな雰囲気を出すエステルを見ても、ミントは緊張せず、今まで貰った5枚の推薦状をエステルに渡した。
「ロレント支部、ボース支部、ルーアン支部、ツァイス支部、そしてグランセル支部……。5支部全てのサインを確認しました。最終ランク、準遊撃士2級。……頑張ったわね、ミント。女神と遊撃士紋章において、ここに貴女を正遊撃士に任命します。エンブレムを受け取りなさい。」
「はい!」
そしてミントはエステルから正遊撃士の紋章を受け取って、服に付いていた準遊撃士の紋章を外して、正遊撃士の紋章を付けた。
パチパチパチパチパチ…………!
ミントが正遊撃士の紋章を受け取ると、周りは拍手に包まれた!
「おめでと、ミント!」
「おめでとう、ミントちゃん!立派な”パートナー”になった証だね!」
「フフ、立派ですよ、ミントちゃん!」
「おめでとう~、ミントちゃん!」
「フフ、こういう明るい雰囲気は本当に久しぶりですね………おめでとう、ミントちゃん。」
「それにしても、エステルさん達に続く優秀な正遊撃士がまた誕生しましたね。……おめでとう、ミント。」
シェラザード、ツーヤ、クローゼ、ティータ、リタ、プリネは微笑みながら祝福し
「はは、新しいエンブレム、母親のように似合っているぞ。やはり、2人は母娘だな。」
「まあ、俺たちの”結社”の調査の補佐や、俺達が調査をしている間の一般の依頼の片づけ等、今までよく頑張ったよ。」
ジンやアガットは拍手をしながらミントを誉めた。
「おめでとう、ミント!これからもよろしくね!」
「うん!」
そして最後にエステルに祝福されたミントは嬉しそうに頷いた。
その後エステル達は仲間達の一部は先にヴァレリア湖に向かわせ、自分達は掲示板の依頼をある程度片づけた後、休暇をする為にヴァレリア湖に向かった…………
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