英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)
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第155話
ノルティア州南端”黒竜関”上空―――
~カレイジャス・ブリッジ~
「現在時刻10:02―――北北西の風、11アージュ。”黒竜関”の上空を越え、ノルティア州領内に入りました。」
「現在速度、3050CE/h。最大巡航速度に到達しました。」
「こんまま進路と速度を維持。ノルティア本線に沿いつつ200アージュほど距離を取れ。」
「イエス・キャプテン。」
「………………」
部下達の報告を聞いて次々と指示を出す様子のアルゼイド艦長をラウラは呆けた表情で見守っていた。
「これが……巡洋艦の指揮所ですか。」
「な、なんか全てが凄すぎるんですけど……」
「エプスタイン財団製の最新型の情報処理システム……ラインフォルトグループと、ZCF(ツァイス中央工房)と、エプスタイン財団の共同開発というわけですね。」
「うふふ、ちょっと違うわね。メンフィルの魔導技術も加えているわよ?」
「ええっ!?」
「い、異世界の技術まで……」
レンの話を聞いたアリサは驚き、マキアスは信じられない表情をし
「ていうか、ブリッジもまるっきりアルセイユのパクリじゃん。」
「お、お姉様……」
「もう少しオブラートに包んだ言い方をしてあげてくださいよ……」
「まあ、エヴリーヌさんには難しいでしょうね……」
エヴリーヌが呟いた言葉を聞いたプリネとセレーネは冷や汗をかいて疲れた表情をし、ツーヤは苦笑しながら呟いた。
「ハハ、耳が痛いね。―――この艦の開発にあたっては様々な人々の力を借りていてね。技術面といい、資金面といい、色々と迷惑をかけてしまったよ。」
「フフ、さぞかし資金繰りにも苦労されたみたいですね?」
「確かリウイ陛下も融通したと聞いているが?」
オリヴァルト皇子の話を聞いたサラ教官とレーヴェはオリヴァルト皇子を見つめて問いかけ
「ああ、皇帝陛下も含めて各方面から融通してもらった。だが―――その甲斐あって理想……いや、理想以上の性能を持った翼が完成したと思っている。」
「うふふ、防御に関しては”モルテニア”に搭載されてある大規模な魔術結界を参考にした魔導技術も搭載されているのよ?」
問いかけられたオリヴァルト皇子は静かに頷いた後口元に笑みを浮かべ、レンは説明を捕捉し
「魔導技術による魔術結界の機能まで備えているのですか……!」
「フッ、ならば俺のような者にその翼を斬り落とされる可能性も限りなく低いだろうな。」
「レ、レーヴェ……」
レンの説明を聞いたツーヤは驚き、静かな笑みを浮かべて呟いたレーヴェの言葉を聞いたプリネは冷や汗をかいた。
「全長75アージュ。リベールの”アルセイユ”の2倍近い大きさの船体だ。」
「ZCF製の高性能エンジンを20基搭載したことによって、最高時速3000CE/hを実現―――3600CE/hの”アルセイユ”には及ばないものの、高い装甲性能と迎撃能力を誇っていますわね。」
「はあ、詳しいスペックを把握してるし……」
ミュラー少佐と共に説明したシャロンの話を聞いたアリサは呆れた表情で溜息を吐いた。
「し、しかし……聞けば聞くほど凄い艦ですね。」
「ぶっちゃけ、やりすぎ。」
「うーん、開発されていたのはボクも聞いたことあるけど……ここまで斜め上の性能だとはちょっと思ってなかったなー。」
「こ、この艦の凄さは何となく理解しましたが……―――軍属でもない父上がどうして艦長を?それとも正規軍入りを決めてしまったのでしょうか?」
カレイジャスのスペックに仲間達が驚いている中、ラウラは戸惑いの表情でアルゼイド艦長に尋ねた。
「フフ、そなたの疑問も当然だ。だが―――正確にはこの艦はいかなる軍にも所属していない。」
「え……」
「という事は……”皇族の船”という扱いですか。」
「フフ、その通り。帝国軍にも、領邦軍にも属さない、第三の風をもたらすための翼……それを駆っていただく大任を子爵閣下にお願いした次第でね。」
「そう言う事でしたか……」
「……それなら全て納得です。”光の剣匠”が艦長を務める帝国最速の速さを誇る翼……」
オリヴァルト皇子の説明を聞いたラウラとリィンはそれぞれ納得した表情になった。
「ハハ、”牽制役”としては最強と言えるかもなぁ。」
「た、確かに……」
「フフ、まあそういう事さ。」
「艦のクルーの半数は自分の所属する第七機甲師団から一時的に出向している状況だ。だが、残りは民間出身で身分や国籍なども実に様々だ。」
「ちなみに俺も、情報収集役として参加させてもらっていてね。地上に残っているギルド方面との連絡も受け持っているんだ。」
「そうだったんですか……」
「ま、こういった役目はトヴァル向きではあるわよね。あたしだとどうしても切った張ったがメインだし。」
ミュラー少佐とトヴァルの話を聞いたリィンは驚き、サラ教官は苦笑しながら答えたが
「フッ、その点で言えばエステル・ブライトも同じだな。」
「ああん?まさかあたしがあの暴走娘と一緒だと言いたいのかしら!?」
静かな笑みを浮かべるレーヴェの言葉を聞いたサラ教官はレーヴェを睨み、その様子を見守っていたリィン達は冷や汗をかいた。
「いや………でも光栄です!こんな素晴らしい船で送っていただけるなんて!」
「はい……!オリヴァルト殿下が苦心してようやく完成させた船の処女飛行に乗せて頂けるなんて、感激ですわ……!」
マキアスとセレーネは明るい表情でオリヴァルト皇子を見つめ
「ついでという話ですが……このまま帝国全土を回られるおつもりですか?」
ガイウスは静かな表情で尋ねた。
「うむ、帝国各地の緊張を少しでも和らげられるようにな。そして―――”帝国解放戦線”とやらにも睨みを利かせたいと思っている。」
「あ……」
「確かに………飛行艇も使ってたし。」
「そんなの見つけたら、また撃ち落せばいいだけじゃない、キャハッ♪」
「そんな事ができるのはエヴリーヌさんだけですよ……」
アルゼイド艦長の話を聞いたエリオットは呆け、フィーは真剣な表情になり、不敵な笑みを浮かべて言ったエヴリーヌの言葉を聞いたツーヤは呆れた表情で指摘し
「情報局や鉄道憲兵隊も動いていると聞いていますが……この艦なら、それとも違う形で彼らの動きを牽制できそうですね。」
リィンは真剣な表情で推測した。
「フッ、一石二鳥どころか三鳥四鳥といった感じだろう?ボクも気が向いた時には気晴らしに乗せてもらえるし。いずれは帝都上空での『空中リサイタル』なんかも企画したいところだねっ!」
オリヴァルト皇子の発言を聞いたリィン達は冷や汗をかき
「―――まあ、このタワケの世迷言はともかく……この艦ならばルーレまで一時間もかからぬだろう。」
「しばし艦内でくつろぐといい。機関室などの機密エリア以外は自由に見学しても構わない。」
ミュラー少佐とアルゼイド艦長はそれぞれ説明した。
「ありがとうございます。」
「その……お言葉に甘えさせていただきます。」
「そう言えばレン。どうして貴女がカレイジャスの処女飛行に乗船しているのかしら?」
ある事が気になったプリネはレンに尋ねた。
「うふふ、レンが乗船しているのは処女飛行で”エレボニア帝国の皇族であるオリヴァルト皇子に招待されたメンフィル帝国の皇族も乗っている”という事実で、エレボニア帝国民達にエレボニアとメンフィルが友好関係を強めようとしている事をアピールする為よ。」
「なるほど……」
レンの説明を聞いたリィンは納得したが
「……どう考えても怪しい。”殲滅天使”がそんな殊勝な目的で乗り込むなんて、滅茶苦茶違和感があるし。」
「そうだよねー。通商会議ではギリアスのオジサンとカルバードの大統領を嵌めた人がそんな事を考えているなんてありえないよねー。プリネの話だと列車砲の配備場所についてもエレボニア帝国と緊張状態に陥ってもおかしくない場所を提案したのも”殲滅天使”だそうだし。」
「フィ、フィーちゃん、ミリアムちゃん……レン姫を相手にそんな言葉遣いをするなんて、失礼ですよ……」
フィーはジト目でレンを見つめ、フィーの言葉に頷いたミリアムは意味ありげな表情でレンを見つめ、二人の言葉を聞いたエマは冷や汗をかいて二人に指摘した。
「うふふ、レンは言葉遣いで腹を立てるような器量の狭いエレボニア帝国の貴族とは違うから別にいいわよ?」
「あのー、レン君?エレボニアの貴族全てが器量が狭いという訳じゃないんだよ?」
小悪魔な笑みを浮かべたレンの言葉を聞いたリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ、オリヴァルト皇子は冷や汗をかいて指摘した。
「クスクス、わかっているわよ。―――レンが乗船しているのは先程説明した理由もあるけど、もう一つの理由はラインフォルトグループに用があるから、帝国全土を一周した後ルーレに送ってもらう為よ。」
「ええっ!?ラ、ラインフォルトグループにレン姫が……!?一体何の御用があるのですか?」
レンの説明を聞いたアリサは驚き
「―――レン姫は本日の16:30に会長と商談をなさるのです。――――メンフィル帝国の新たな”列車砲”の購入についての商談を。」
「なっ!?」
「ええっ!?新たな”列車砲”!?」
「レン、貴女まさか……!」
シャロンの説明を聞いたアリサは仲間達と共に血相を変えて声を上げ、エリオットは信じられない表情をし、ある事を察したプリネは厳しい表情でレンを睨んだ。
「少なくとも新しい”列車砲”はエレボニア帝国領に隣接しているメンフィル領には配備しないから大丈夫よ、お姉様♪」
「じゃあ一体どこに配備するんですか?」
レンの答えを聞いたツーヤは不思議そうな表情で尋ね
「今の所候補に上がっているのは”テルフィオン連邦”の領土と隣接している”カルッシャ王公領”の国境か、もしくは前の”通商会議”で奪い取ったカルバードの領土よ。」
「ハハ……できれば元カルバード領には配備して欲しくないんだけどねぇ。あそこはリベールとも隣接しているし。」
レンの説明を聞いたオリヴァルト皇子は冷や汗をかいて苦笑しながら呟いた。
「うふふ、そのくらいの事はわかっているわよ。メンフィルとリベールとの関係も考えると配備するのはマズイって意見が多いから、多分そちらには配備しないと思うわ。”列車砲”がすぐに必要なのは長年メンフィルと睨みあっている”テルフィオン連邦”方面だし。」
「しかし何故新たな”列車砲”を購入する事にしたのだ?」
ある事が気になったレーヴェは真剣な表情で尋ね
「”列車砲”を試し撃ちした際の威力を見たシルヴァンお兄様が決めたみたいよ。メンフィルに攻めてくる勢力に対する対抗策として有効と判断したそうよ。あれ一発で軍勢を崩壊させて戦いを楽にする事も可能だから、兵の消耗もそうだけど兵器の消耗も抑えられるから戦略的に考えたらなかなかのものよ。」
「そう、シルヴァンお兄様が……」
レンの答えを聞いたプリネは静かな表情をした。
「ねえねえ、レン。あの屑鉄、そんなに凄い威力だったの?」
「ええ。”パテル=マテル”とも比べ物にならないくらいの圧倒的な火力よ。」
興味ありげな表情をしたエヴリーヌの質問にレンは答え
「”パテル=マテル”……?」
レンが呟いた言葉が気になったマキアスは首を傾げた。
「―――”パテル=マテル”は”リベールの異変”の際、レン皇女が”結社”から奪い取り、今では自分の手足として操っているゴルディアス級の人形兵器だ。」
「なっ……!?」
「”結社”から奪い取っただと……!?」
レーヴェの説明を聞いたラウラとユーシスは驚き
「あたしも話だけは聞いているわ。確かエステル達の話によると”パテル=マテル”の”主人”であるあんたが呼べば来るそうだけど、まさかとは思うけど今も近くで飛んでいたりしないでしょうね?”パテル=マテル”には結社特製のステルス機能もついているから、カレイジャスの索敵装置にも多分引っかからないでしょうし。」
ある事を察したサラ教官はジト目でレンを見つめて問いかけた。
「うふふ、さすがに”カレイジャス”のスピードに”パテル=マテル”はついていけないし、レンはオリビエお兄さんの好意で乗せてもらっている立場なんだからちゃんと気を使って、あの子は今、ケルディック要塞でお休みしているわよ。」
「ハッハッハッ!いや~、それを聞いて安心したよ。さすがに”彼”がこの”カレイジャス”と一緒に飛行していたら、民達を安心させるどころか不安にさせるだろうし。レン君が”カレイジャス”に乗船してから、それだけがずっと気がかりだったんだよね~。」
「……洒落になっていないぞ、阿呆。」
レンの答えを聞いて声を上げて笑った後答えたオリヴァルト皇子の答えを聞いたミュラー少佐は呆れた表情で指摘した。
「ねーねー、”パテル=マテル”って実際どのくらい凄いのー?確か話によると物凄くデカイんだよねー?」
「うふふ、少なくても貴女の”アガートラム”なんか簡単にペシャンコにしちゃうわよ♪」
ミリアムに尋ねられたレンは小悪魔な笑みを浮かべて答え
「むー、大きいからってガーちゃんは誰にも負けないよー!」
「ミ、ミリアムさん……一体何と競っているんですか……」
「俺もギルドの情報で”リベールの異変”で見せたスペックやどんな姿か見せてもらったが、アレは”格”が違いすぎるぞ……」
頬を膨らませて答えたミリアムの答えを聞いたセレーネは呆れた表情で指摘し、トヴァルは疲れた表情で指摘した。
(ねえねえ、ツーヤ。その”パテル=マテル”ってそんなに凄いの?)
(ええ……”パテル=マテル”一機で町一つを簡単に廃墟にできるくらいのスペックはあります。大きさはそうですね……少なくとも第三学生寮よりは大きいと思います。)
エリオットに小声で尋ねられたツーヤは静かな表情で答え
(ええっ!?)
(学生寮より大きい人形兵器……相当大きいんだろうな……)
ツーヤの答えを聞いたリィンは驚き、ガイウスは呆けた。
「その……話はそれましたがオリヴァルト皇子はよかったのですか?新たな列車砲の購入の交渉に向かうレンをカレイジャスの処女飛行に乗せて。」
その時プリネは心配そうな表情でオリヴァルト皇子を見つめ
「ハハ、リウイ陛下やレン君を含めた多くのメンフィル皇族に加えてメンフィル帝国による多大な出資や技術協力によって、このカレイジャスに予定していた以上の性能を搭載する事ができたからメンフィル帝国を代表してルーレに向かうレン君の頼みを無下にはできないんだよね。実際この”カレイジャス”の主砲にはメンフィル帝国の戦艦―――”モルテニア”の主砲と同じタイプを搭載してもらったから、お互い様だよ。」
「ええっ!?じゃ、じゃあこの”カレイジャス”にも夏至祭の時に見たメンフィルの巨大な戦艦と同じ主砲が搭載されているんですか!?」
オリヴァルト皇子の答えを聞いたマキアスは信じられない表情で尋ねた。
「さすがに”モルテニア”の主砲の威力程はないけど、データでは威力を最高値まで溜めればメンフィルが”結社”から奪う前の”グロリアス”の装甲は貫けるくらいのスペックはあると出ているわ。」
レンの答えを聞いたリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ
「レン、貴女ね……」
「”グロリアス”を見た事も無いⅦ組のメンバーに言っても理解できないぞ。」
プリネとレーヴェは呆れた表情で指摘し
「メンフィル帝国の協力のお蔭で予定していた当初より性能も格段に上がり、武装も充実させる事はできたが、それらを使う事態にならない事が一番なのだがな……」
「父上……」
重々しい様子を纏って呟いたアルゼイド艦長の言葉を聞いたラウラは心配そうな表情でアルゼイド艦長を見つめ
「―――空気を重くしてすまなかったな。ルーレに到着すれば放送で知らせる。それまでは艦内を見て回ってくつろぐといい。」
アルゼイド艦長は気を取り直してリィン達を見回して言った。
―――こうしてリィン達は最新鋭の巡洋艦で実習地に送ってもらうことになった。
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