英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)
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第47話
翌日、レナの朝食を食べたエステル達はブライト家を出ると、辺り一面が霧で真っ白になっていた。
~ブライト家・朝~
「うわ……昨日よりも凄くない?」
「真っ白でなにも見えないよ~。」
「ええ……確実に濃くなってますね。」
エステルは周囲の状況を見て驚き、ミントは戸惑い、クロ―ゼは不安そうな表情で頷いた。
「アガットさんたち、大丈夫だったのかな……」
「うーん、確かに。パトロールだけとはいえちょっと心配かも……」
ティータの心配にエステルは頷いて唸った。
「とりあえずギルドに行きましょう。昨夜のことも含めて色々話が聞けるだろうし。」
「うん、そうね。」
そしてシェラザードに先を促され、エステル達はギルドに向かった。
~遊撃士協会・ロレント支部~
「おはよ~!」
「おはよーございます。」
「おはよ~ございま~す!!」
エステルやティータ、ミントはギルドに入ると朝の挨拶をした。
「あら、おはよう。」
「おう、来やがったか。」
「ゆうべは眠れたかい?」
(………来たか。)
アイナと相談していたアガットとジン、サエラブはエステル達に気付き、それぞれ声をかけた。
「4人ともありがとう。夜のパトロール、大変だったでしょう?」
「あのあの。お疲れさまでしたっ。」
「なぁに、交替しながら仮眠は取ったから大丈夫だ。」
(……別に大した事ではない。)
「約1名、今もホテルで爆睡してるヤツがいるけどな。」
「あ……オリビエさんですか?」
アガットの話を聞いたクロ―ゼは苦笑しながら尋ねた。
「へえ、オリビエも一応、パトロールに参加したんだ?」
オリビエがまともにパトロールをした事にエステルは目を丸くした。
「ははは、まあな。ブツクサ文句は言ってたがやる事はちゃんとやってたぞ。」
エステルの疑問にジンは笑いながら答えた。
「ふふ、後で礼を言っておかなくちゃね。サエラブ、ご苦労さま。今はあたしの中で休んで。」
(ああ。)
「それで……状況はどうなっているの?」
サエラブを自分の身体の中に戻したエステルは真剣な表情で尋ねた。
「パトロールの甲斐あってか新たに昏睡した人は出ていないわ。ただし、昨日昏睡した人は今朝も目を醒ましていない状況よ。」
「そっか……」
「心配だね……」
「うん………」
アイナの話を聞いたエステルは溜息を吐き、ティータやミントは昏睡した市民達を心配した。
「霧の方はどうなの?昨日と比べると深くなってる気がするけど。」
「ええ……濃度が上がったみたいね。それと合わせて発生範囲も広がったみたい。マルガ山道に至ってはほぼ全域が霧に閉ざされたわ。」
シェラザードの疑問にアイナは真剣な表情で答えた。
「そ、そうなんだ……」
「いよいよ大変な事態になってきましたね。」
アイナの報告を聞いたエステルは真剣な表情をし、クロ―ゼは不安そうな表情をした。
「ただ、メンフィル大使館周辺だけは霧がかかってないんだが、エステル。もしかして、ここに来る際に尋ねたか?」
「あ、うん。ここに来る途中メンフィル大使館周辺だけ、霧がなかったから不思議に思って、見張りの兵士さん達に事情を聞いたら元々大使館の周りは聖女様が作った結界によって、魔獣もそうだけど、雨や霧が入らないようにしているんだって。」
ジンの疑問にエステルはギルドに来る際の事を思い出して、答えた。
「ほう………さすがは最高位の術者と言われているだけはあるな………」
エステルの説明を聞いたジンは驚いた表情をしていた。
「………魔術は攻撃、治癒に注目されがちだけど結界をはって魔獣の侵入を防いだり、雨や雪といった天候をよせつけない事もできるわ。………まあ、師匠やリフィアさんクラスの術者でないとできないけど。」
「ケッ。それなら街にもその結界って魔術を使えってんだ。自分達の身だけ守りやがって………」
エステルの説明を補足するように話したシェラザードの説明を聞いたアガットは面白くなさそうな表情で答えた。
「それは仕方ないでしょ。ロレントはメンフィル領じゃないんだから、いくら同盟国とはいえ、そこまでする義理はないでしょ。」
アガットの言葉を聞いたシェラザードは呆れた表情で答えた。
「けどまあ、悪いニュースばかりじゃないわ。うちからの報告を受けて軍が部隊の派遣を決定したの。ロレント市を警備するためにね。」
「ほんと!?」
アイナの話を聞いたエステルは明るい表情をした。
「ええ、すでにヴェルテ橋方面から2個小隊がこちらに向かっているわ。」
「それは心強いわね。街を軍に任せられるならあたしたちも自由に動けるし。」
「ああ、その通りだぜ。早く『結社』の連中を捜してブチのめしてやらないとな。」
「ふむ、ロレント近郊に潜伏しているんだろうか……。今のところ、見当も付かんな。」
「ロレント地方は狭いけど、それでも隅々までは調べられないし……。うーん、何か具体的にできることって無いのかしら。」
ジンの言葉に頷いたエステルはどうすればいいか迷った。
「それなんだけど……。まずは民間人の避難を手伝ってくれないかしら。」
「民間人の避難?」
アイナの依頼にエステルは首を傾げた。
「昏睡事件は霧の発生範囲で起こされている可能性が高いわ。そして今朝、その発生範囲はさらに広がってしまった……。パーゼル農園やマルガ鉱山が覆われてしまうくらいにね。」
「あ……」
「ロレントのお外で暮らしている人や働いている人達がいるものね。」
「なるほど……。農園の一家と、鉱員さんの安全を確保するというわけね。」
アイナの説明を聞いたエステルはハッとし、ミントはロレント郊外に住む市民や働いている鉱員達の事を思い出し、シェラザードは納得した。
「仕方ねえ……。どうやらそっちが優先だな。」
「鉱山と農園というのは離れた場所にあるからな。このまま2手に分かれた方がいいかもしれないな。」
「ええ、その方が効率的ね。」
ジンの提案にシェラザードは頷いた。
「だ、だったらあたしたちが農園じゃダメ?友達の家族がやってるし……」
「ほう、そうなのか。それなら俺たちが鉱山の方に行ってくるか。」
エステルの答えを聞いたジンはこれからの目的地を決めた。
「ああ、決まりだな。オリビエのヤツを起こしてとっとと出発するとしようぜ。」
「フッ、呼んだかい?」
アガットの言葉に答えるかのように、オリビエはリュートを鳴らしながらギルドに入って来た。
「おお、起きたか。」
「なんでリュートをわざわざ鳴らすんだか……」
オリビエの行動にエステルは呆れた表情をしていた。
「ハッハッハッ。今朝もあいにくの天気だからね。せめてボクの華麗な演奏で雰囲気を明るくしてあげたい……そんなステキで心憎い演出だと思ってくれたまえ。」
「ったく、朝からテンションの高いヤツだな。」
相変わらずのオリビエの調子にアガットは呆れた表情をしていた。
「でも、オリビエってばちゃんと見回りしたみたいね。ちょっと見直しちゃったわ。」
「ふふ、そうね。ご苦労さまだったわ。」
「オリビエさん、ありがとう!」
呆れていたエステルだったが、オリビエが真面目に仕事をした事に感心し、シェラザードやミントはオリビエを労った。
「ハッハッハッ。紳士として当然の義務だよ。本当はパトロールがてらエステル君の家にお邪魔しようと思ったんだがね。思った以上に視界が悪くて泣く泣く諦めてしまったのさっ!」
「まったくもう……見直したと思ったら。」
「さてと、オリビエさんにも手短に事情を説明するわね。」
そしてアイナはオリビエにも事情を説明した。
その後エステル、シェラザード、クロ―ゼ、ティータはパーゼル農園に住む市民達をロレントまで護衛する事にし、アガット、ジン、オリビエはマルガ鉱山の鉱員達をロレントまで護衛する事にし、ミントは依頼の対応の為にギルドに待機となり、そしてミント以外のそれぞれのチームがロレント郊外にいる市民達をロレントまで誘導するために行動を始めた…………
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